「忘れえぬ人」-山口瞳-

◆ユーロスペースで4年半ぶりに映画「TRAIL」を見ました。鳥取に行きたい~!

黒尾重明、鳥井信治郎、梶山季之、柳原良平、関保寿、中原誠、向田邦子、色川武大、井伏鱒二‥‥などについてつづった文章をまとめた本。途中、ニュースになった人の話が出てきたりするのがちょっと唐突。収録する文章が足りなかったのだろうか?

ギャラリーセプチマの波田野くんが監督した映画「TRAIL」をユーロスペースで見る。去年、達郎のライブと調布でやっていたキンダーフィルムフェスティバルに行ったけれど、ちゃんとした映画を見るのは漣くんが生まれて初めて。4年半ぶりくらい。
あまりにも久しぶりなんで上映中ずっと集中できるのかなとか、いきなり小難しい内容だったどうしよう、ついていけるのだろうか?なんて実をいうとかなり不安だったのですが、実際は頭を空っぽにして100分間映画の世界に引き込まれっぱなしでした。鳥取の自然とちょっとノスタルジックな街の風景がひたすら美しく、でもそれだけでなくて見る人に「!」や「?」を提示し、見る人、見る度に違う解釈せざる得ないというストーリーの共存がめちゃくちゃよかった。
光と影、生と死、現実と非現実、ギターの音の響きと役者たちの声の生々しさ、叙情的な風景と廃墟や見る人を一瞬不安にさせるような映像・・・など相反する要素があくまでも自然に一つの混じり合い境界線のない世界。
そしてストーリー展開に際しての伏線や暗示が、意図的に各所にちりばめられているので、一回見ただけだとその印象に引っ張られてしまったような気がしてしまってます。セプチマの受付でニコニコしながらビールを売っている波田野くんが実は詐欺師なんじゃないかと思ってしまったりして‥‥。

そんなわけで映画を見たあとで「あのシーンがよかった」とか「あれは私はこう思った」とかいろいろ話したりしてから、また見てみたら違う受け止め方ができて楽しいと思う。でもまぁここで独りよがりな解釈を語っても野暮というもの。というか人それぞれの思いを語り合うことが重要な気がしますしね。

あと見終わってからふと大林宣彦監督の尾道三部作や林海像の濱マイクシリーズを思い出しました。もちろん映画の内容も方法論も町へのアプローチも全然違くて、作品としてはむしろ似ているところはほとんどないんですけどね。

それにしても久しぶりに見る映画が「TRAIL」でよかった。映画館で映画を見てその世界に何時間か浸かるのは、いろいろな意味で気持ちもリセットできていい、ということを改めて思った次第。吉祥寺とかでまた上映されるといいなぁ~

「四角い卵」-永井龍男-

◆リッツパーティー@セプチマ

永井龍男は長編になると、短編にある緊張感のある引き締まった感じがなくなってしまって、残念な感じになってしまうのはなぜだろう。「皿皿皿と皿」は短い章をつなぐ形で成功していたので、この形でもう何冊か作品を書いて欲しかったと思う(もしかしたらあるのかもしれないが)。
わたしは小説に対して、別につじつまが合ってないとか、軸となるテーマがないとか、そういうことにはまったくこだわってないんですが、それでもちょっとどうかなって思うくらい。わたしの読み飛ばしてしまっただけなのかもしれませんが、そもそもタイトルがなんで「四角い卵」なのかもわかりませんでした。とはいうものの、まだまだ読んでいない長編が何冊もあるので、どこかで見つけたらまた読みますけどね。

でも年表を見るとこういった長編は、戦後、永井龍男が文藝春秋で仕事ができなくなって、作家として活動し始めた頃に多く発表されていて、その後だんだんと短編が主になっていくという感じなので、もしかしたらこの辺の作品は習作ぽいのかなんて気もします。もしくは生活のために量産しなくてはいけなくて、あまり熟考できてないままの作品とか。実際、戦後1949年に「ああ、この一球」を出した後、1950年代に22冊も本を出してるんですが、1960年代になると12冊、1970年代には13冊とかなり減ってます。単に年齢的なことなのかもしれませんが‥‥
そういう意味も含めてこの時期の作品を、永井龍男自身がどうとらえていたのかちょっと気になります。全集とかにもちゃんと収録されてるのでしょうか?

週末はセプチマでやっていたリッツパーティにいってきました。名前のとおりいろいろなものをのせてリッツを食べながら、ライブを楽しむというセプチマらしいイベント。ディップも定番のチーズ系からカレー風味なもの、アイスなど全部食べきれないくらいたくさん種類があっていちいち迷ってしまいました。うちはさくらんぼを持って行ったのですが、けっきょく漣くんと暁くんがパクパク食べてたという感じでした。

-
ライブの方はFriendly Hearts of Japan、Miitsy、地底紳士、Yoshino momoko – Yamamoto sei、Miss Donut(a.k.a. Americo)、pagtas、フムフムといったラインナップ。行く前にまったくチェックしていなかったのだけれど、Momo-Seiはチロリアンテープやサニチャーのヨシノモモコとプレイメイツの山本聖の二人組だったんですね。
ギター2本と二人のーヴォーカルというシンプルだけどメロディとハーモニーが心地よい、なんていうのかな、すごく気分が高揚するとかじゃなくて、歩いてるうちに地面から10cm浮き上がるような気分になるようなウキウキ加減がよかったです。セプチマという会場自体の響き加減も二人の奏でる音楽にあっていたような気がしました。一番最初のライブというとこもあり、子供たちもリッツ片手に最前列で聴いてたので、ゆっくり聴けてよかったです。

でも、その後は中に入ってリッツを食べたと思ったらすぐに外に出て駆け回ったりして、それを追いかけるのに精一杯で、ライブどころではなかったのがちょっと残念。特にフムフムさんがライブで使用したシャボン玉マシーンを庭に出してくれてからは、それに夢中で、シャボン玉液がなくなるまで遊び倒してました。
あと、かなり山本聖さんに二人が絡んでて、勝手に名付けたパンチを浴びせたり、一方的にウルトラマンの話を話したりたくさん遊んでもらってしまいました。みなさん、ありがとうございました!山本聖さんは福生でいろいろイベントを行っているみたいなので機会があれば行きたいです。

このあともセプチマではFilFilaが出る「逆まわりの音楽」やQuinka with a Yawnが出る「すなななフェス」など気になるイベントがあるので(しかもその時期、ミオ犬たちが長崎に帰省するので一人なのだ!)、うまく都合をつけて遊びに行きたいと思ってます。

 →ギャラリーセプチマのサイトはこちら

「衣食住」-志賀直哉-

◆漠然と音楽を聴いたり本を読んでちゃダメなのよ

「すべての道は志賀直哉に通ず」と思ってしまうくらい、わたしが読んでいる本には志賀直哉が登場しているような気がするのだれど、志賀直哉自身の本は、「小僧の神様」「城の崎にて」などが収録されている短篇集と「暗夜行路」を中学の時に読んだくらいだったりする。話に出てくる度にちゃんと読みたいと思うんですけど、なんとなく後まわしみたいな感じになってしまってたんですよね。
そんなわけで実質、志賀直哉の一冊目は、衣食住に関連する随筆と短編を収録した三月書房の小型愛蔵本。タイトルは「衣食住」だけれど、「食」についての作品はあまりなく、「住」がわりと多めになってるかな。そのほかにも泉鏡花、菊池寛、太宰治、永井荷風といった作家について書かれたものも収録されています。
個人的には“木の葉が弱い風に揺られているの見ていたら強い風が来て葉の動きが止まった”という描写が出てきたのがちょっとうれしい(記憶で書いてるので実際の文章は違います)。これについては吉田健一が、“強い風が吹いてきて葉の動きが止まるなんておかしいじゃないか、これは作者の思い違いに過ぎない”、みたいなことをどこかに書いていたらしく、それに対して尾崎一雄が、“強い風が吹くことで片方に押しやられるので動きが止まるのだ、そんなことが分からない評論家なんてバカだ”といったことを書いてたのだ。まぁわたしは吉田健一も尾崎一雄も好きですけどね。しかし一冊目でこの文章に出会えるとは!(といいつつ付箋とかしてないのでどこだかわからなくなってしまってるんですけどね‥‥)

アトランティックの名盤が1000円で出ているのを機に、今年に入ってからわりと古いリズム&ブルースやソウルをよく聴いてます。60年代のソウルと言えばモータウンとかシカゴなどのノーザンソウルしか聴いてなかったので、何気に60年代のサザンソウルは始めて聴くものが多い。なんたってアレサ・フランクリンでさえカーティス・メイフィールドが関わったものしかきいてませんでしたから。歌のうまいヴォーカリストと、それを的確、かつ力強い演奏で支えるバックバンドというある意味シンプルな編成のものが多いのですが、ノーザンにしろあるいはソフトロックにしろ、どちらかというとヴォーカルもサウンドの一部で、バックの演奏(アレンジ)やコーラスも含めて一つの世界を作っているといったものを聴き続けてきたのでなんとなく新鮮。
しかし1000円シリーズを適当に聴き続けてるだけでも60年代ソウルの広さと深さに溺れそうになってしまいますね。ほんと「今年はソウルばかり聴いてます」なんて軽く言ってる場合ではなくて、「これから10年間ソウルばかり聴くつもりです」くらいの気合を入れないとダメなんでしょうねぇ‥‥

で、話が変わりますが、4月からネットラジオで、伊藤銀次の「ポップファイルリターンズ」という番組が始まりました。これは伊藤銀次がデビュー40周年を振り返り、その時々のターニングポイントになった自分の曲にまつわる話をするプログラム。福生時代のことから始まってようやく佐野元春や沢田研二と関わるようになった頃の話まできているのですが、けっこうおもしろくてカヌー犬ブックスの作業をしながらつい何回も聞いてしまってます。この辺の頃のミュージシャンの話はおもしろい。先日出た牧村憲一の「ニッポン・ポップス・クロニクル 1969-1989」も合わせて読みたくなりますね。
その中で大瀧詠一が伊藤銀次に「オールディーズを聴くんならただ漠然と聴いてちゃダメだ。銀次がビートルズやマージービートが好きならまずはそこを起点として、それらのバンドがカバーした曲のオリジナルから聴くとか、なにかしら系統立てて聴かないと、オールディーズの海で迷子になってしまうよ」みたいなことを言われたという話してて、どっきりした次第。

う~ん、アトランティックの1000円シリーズを適当に買うなんてCDの聴き方はダメですね。これに関わらずネットでいろいろ調べられるようになってから、聴き方が雑になってるような気がします。適当にそのジャンルのミュージシャンやアルバムを調べてリストにして、youtubeでちょっと聞いて買うかどうか決めるって感じですもん。
しかしだいたいのジャンルでディスクガイドとか出てるし、今どきプロデューサーやバックのミュージシャンとかを見てCD買ってる人なんてほとんどいないんだろうなぁ。そもそもCD買ってる人ももうそんなにいないんでしょうけど‥‥

「私の好きなもの 暮しのヒント101」-岡尾美代子、高橋みどり、東野翠れん、福田里香 ほか-

◆第三回東京蚤の市に出店しました。皆さまありがとうございました

週末は東京蚤の市に出店しました。出店するお店もだんだん多くなり、よい天気のもと、たくさんのお客さんで会場が賑わっていました。Good Food Marketも含めて京王閣のイベントへの出店も4回目目になりますが、いつも楽しい時間を過ごさせていただいてます。遊びに来ていただいた方々、そして手紙社をはじめとしたスタッフの方々、ありがとうございました。

「私の好きなもの 暮しのヒント101」は、ツイッターでちょっと話題になっていたので気にはなっていたものの、吉祥寺のリブロで立ち読みした感じではそれほどひかれず、買う気もなかったのですが、実際に読んで見たらおもしろくてちょっと得した気分。やっぱり気になったものはちゃんと読んで(見て、聴いて‥‥)みるべきですね。
紹介されているものや場所などもいいのですが、それぞれの文章がとても素敵な雰囲気を持っているので、ただの「もの紹介」の本になってないのがいい。なので、あえてここではどんなものが紹介されているかは書きません。本屋さんで実際に手にとってページをめくって欲しい。

わたしはやっぱりモノそのものよりもそれどうやって出会ったかとかそれと一緒にどう過ごしてるかと言ったことを読む方が好きですね。単に植草甚一の影響が大きいだけなのかもしれませんが。
わたし自身もモノそのよりも「これをどこで買ったとか、その時なにしてたとか、それを持ってどこに行ったとか」そういうことを思うことのほうが多いです。そう言った意味で前に東京蚤の市のサイトに紹介された時に書いたように、何年かしてから「これは東京蚤の市で買ったもので、誰と行ってベンチに座って何を食べて、友だちとどんなことを話して、どんなライブを見て‥‥」みたいなことを思い出してもらえたら、うれしい。
って書きながらそんな風に思い出すような本をわたしはお店に並べられてるかな、なんて思ったりして、ちょっと反省してます。次回、出店する時はそういう視点も加えて本を選んで持って行きたいです。

-
ちなみに今回の蚤の市では、わたしはアンクルトリスの小さなグラスを買いました。昔、こういうノベルティの小さなグラスを集めようと思ったこともあって、西荻の古道具屋とかでいくつか買ったりしてました。でもここ数年はまったくチェックしてなかったこともあり、帰ってきて持っているグラスを見てみたら同じイラストのグラスを持っていてちょっとがっかり。まぁ色が違ったのが救いか。
ビールを飲むには小さいけれどワインを飲むにはまぁまぁいい感じの量なので、これを機にまた集めたいな、なんて思ってみるけれど、小物が並べられているような古道具屋なんて、漣くんや暁くんがいたら怖くてなかなかいけないな。

「並木印象」-石田千-

◆ゴールデンウィークはフリーライブ三昧?Bloodest Saxophone、宮内優里そしてCOINN

石田千の本はテーマが決められているものがいい。でもその世界に入り込むとおもしろいのだけれど、気持ちが入らないと文面を上滑りするようでなかなか頭に入ってこなかったりします。優しい文体だけれど、さらっとは読み飛ばせない感じ。そこが石田千の本の魅力でもありますね。

ゴールデンウィークは近場をうろうろして、なぜかフリーのライブをよく見てました~

吉祥寺音楽祭の一環でパルコの前の歩行者天国で見たBloodest Saxophoneは中学のときの同級生がやっているバンド。中学に入った時に出席番号順の席ですぐ後ろに座ってたのがテナーサックスの甲田伸太郎でした。前々から母親から「伸太郎くんが今でもバンドをやっているらしいのだけれど知ってる?」と言われていたのですが、去年たまたまネットで見つけてfacebookでつながったりしてる。不思議。
-ジャイヴというか50年代のジャズやリズム&ブルース、ブルースに影響を受けたインストバンドで、いい意味でストレートなエンターテインメントなジャズの演奏がいい。パルコ前のライブでもプラターズの「「Twilight Time」を豪快にカバーしてました。機会があればライブハウスでビール片手に聴きたい。そういう音楽。声をかけたらわかってもらえてうれしかったです。高校は違ったし成人式もあまり記憶がないので、会うのはたぶん30年ぶりくらいですから。う~ん。

ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTでやっている「デザインあ展」では、展覧会が始まった時から行こうと思っていた宮内優里のフリーライブ&ワークショップ。前日のUSTで展覧会のほうがかなり混んでいると話していたので見れるかどうかドキドキしていたのですが、11時前にミッドタウンにいくと会場の前はすでに長蛇の列になっていて1時間待ちというね‥‥。それでも後半、みんなで「あ!」とか言って録音する場面には間に合ってなかなか楽しかった。漣くんは例によって恥ずかしがってなかなか叫んだりしなかったけど、なぜか家に帰ってから突然「あ!」とか「ああぁ!」とか言い出したりしてあいかわらずでした。
展示のほうは体験型の展示が多く子供でも楽しめるものだったのですが、なんせ人が多くてなかなか順番が回ってこなくて、待っている間に暁くんがどこかに歩いてしまったり、漣くんも待つのにちょっと飽きてしまったりという状態。特に漣くんは強引にやりたいところに入っていったりするタイプではないしね。逆に暁くんは好き勝手に列に割り込んでいってしまったりするので、けっこうたいへんでした。結局一番気に入ったのはコーネリアスの音楽に合わせて壁に映像が映し出される部屋で、音楽に合わせて体を動かしたり映像を指さしてみたりしてはしゃいでました。しかしこの展示で1000円はちょっと高い気がしますがどうでしょ?
ちなみにワークショップで録った宮内優里の曲はまだ聴いてません。

-
最後は立川のルミネの屋上でやっていた青空ガーデンでのCOINN。青空ガーデンにははけのおいしい朝市のメンバーも出店しており、子どもを連れた友だちもたくさんきていて、天気もよかったしこどもの日らしいいい雰囲気でした。COINNは3月にもセプチマで見たばかりだったのですが、セプチマといい青空ガーデンといいいい場所で見れてよかったです。
ミオ犬は漣くんと宇田川さんのワークショップで勲章ブローチを作ったり、暁くんは同じくらいの歳の子どもとじゃれたりして、わたしはクルミドコーヒーのカフェラテとシンボパンのパンを食べながらのんびりと鑑賞。

やっぱり夜、ライブハウスとかに出かけるのがなんとなく難しいので、昼にやるライブでできれば子どもが騒いだときにどこかに逃げられるところ、って考えると、なんとなくなにかのイベントでやってるライブに行くことになってしまうんですよねぇ。あ、だからみんな子ども連れてフェスに行くのか!

「マリオ・ジャコメッリ写真集」-マリオ・ジャコメッリ-

◆「マリオ・ジャコメッリ 写真展」&「アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密」@東京都写真美術館

先週の金曜日は会社の引越しがあって5時に会社を出なくていけなかったので、写真美術館でマリオ・ジャコメッリとアーウィン・ブルーメンフェルドの写真展を見てきました。

マリオ・ジャコメッリは前の展覧会を見そびれてからずっと気になっていた写真家。今回もポスターに使われていた神学校の生徒たちが輪になっている写真が印象的でいつか写真集を買おうと思ってました。
一つのテーマで何枚かの作品で表現するという手法で、かつイタリアの日差しの強さをおもわせるような(まぁ実際に行ったことはありませんが)コントラストの強い写真は、鮮明に強く印象に残ります。神学校の生徒たちを被写体にした先の写真のような叙情的なものだけではなく、貧しい家に生まれ早くに父親を亡くし母親はホスピスで働いていたという生い立ちを反映し、ホスピスの老人たちや農夫、移民などを被写体とした社会的なテーマも扱っています。またシリーズや写真の内容によって現像の方法を大胆に変えているのも興味深かったです。この辺の違いはやはりプリントを見るとだとよく分かりますね。

アーウィン・ブルーメンフェルドの方は、「ハーパース・バザー」や「ヴォーグ」などのファッション誌を中心に活躍した写真家。1930年代の作品や作家自身が選出した名作100点、カラー復元された美しいファッション写真などが展示されています。
カラー復元された作品は、ちょっときれい過ぎるかなというくらい鮮明な色彩になっていて、どことなく違和感がありましたが、モデルのファッションや小物、そして構図などどれも洗練されていて、これらの写真が1940年代から1950年代、戦中から戦後間もない時期に撮られたものかと思うと、なんだかクラクラしてしまいます。
ファッション写真以外にもシュルレアリスムに影響されたと思われるモノクロ写真や抽象的な風景写真なども展示されており、わたしとしてはこれらの写真のほうにひかれました。

一方で、ドイツに生まれユダヤ人迫害の嵐から逃れてオランダ、フランス、アメリカと移り住んだり、徴兵をされたり、収容所に抑留されたり、自分の経営する店が破産したりと、かなり波乱に満ちた人生だったようで、ファッション写真に交じって髑髏なヒトラーの写真なども展示されており、華やかな面だけでも個人的な面だけでもなく、その両方にスポットを当てた展覧会になっていたのがよかったです。

「木靴の山」-井伏鱒二-

◆国立お花見ストリートライブ「桜らいぶ」で土生”Tico”剛のライブを見てきました

このところ身辺雑記的な随筆しか読んでなくて、純粋に小説、フィクションを読むのはほんとうにひさしぶり。もっといろいろな種類の本を読まなくてはなぁ。まぁ流行りのビジネス書とか自己啓発的な本は読もうとは思ってはないんですが。
基本的に本を読むというのは娯楽なので、それを読むことによって何か得になるとか、まったく考えてないかも。

週末は、漣くんがミオ犬と一緒に出かけたので、わたしはめずらしく暁くんと二人で国立へお出かけ。国立は、漣くんが2歳くらいまではニチニチ日曜市などによく行ったものですが、意外と子供向けの施設が少ないので、最近はどうしても近くだと国分寺や立川、吉祥寺あたりに行ってしまいがちです。

そんなわけで、まずは定番のロージナ茶房でお昼ごはん。ここはあんまり子ども向けというわけではないけれど、基本周りは大人数でおしゃべりをしててにぎやかだし、ちょっとぐらいうるさくても目立たないところがいい。食べものの量も多いので、二人で分けて食べられるしね。
しかしロージナにくるお客さんって、みんながみんなそんなに若いってわけではないのだけれど(もちろん学生の団体もいますが)、どこか学生気分をそのまま残したまま大人になったような人たちが多くていいなぁと思います。

-
ロージナのあとはレットエムインまで行って家具や雑貨を見たり、最近できたroom 103をのぞいたり、雑貨屋さんでフレッドくんグッズを買ってみたり、ブックオフやみちくさ書店、谷川書店、国立本店などの古本屋を回ってみたりして、夕方にはスターバックスの前で行われていた、お花見ストリートライブ「桜らいぶ」のリトルテンポの土生”Tico”剛やReggaelation IndependAnceのストリートライブを見たりして国立散歩を満喫。
天気もまぁまぁよかったし、夕暮れに国立の学園通りに響くスティールパンの響きが気持ちよかったです。今年は桜の開花が早くて、しかも週末からの雨と風で花が全部散ってしまっていたけれど、これが満開の桜の木の下だったら、もっと時間があってビールとか片手に見れたらなんて贅沢だっただろう、なんて思ったりして。
-
ところで暁くんといえば、ロージナを出たあとライブが始まるまでのほとんどの時間ベビーカーで昼寝をしてましたとさ。

「四季八十彩」-池田弥三郎編-

◆築地・新橋、レトロ喫茶めぐり3

食を中心に日本の暮らしについての随筆を歳時記風にまとめたアンソロジィ。串田孫一や藤枝静男、荻昌弘、辻邦生、芝木好子、飯田深雪、永井龍男、沢村貞子、岡部伊都子、辻勲など執筆陣が豪華。日清製粉の創業80年を記念に80の随筆が収録されています。
日清製粉は小麦粉の本とかなにげにいい本を出しているなぁと思う。というか、1990年代はじめくらいまでは、こういった自社に関連する内容を、企業が編纂して出版しているというケースがわりとあったような気がするのですが、最近はあまり見かけないような‥‥。単にそういったものも普通に出版社から出てるだけでしょうかね。

さて、築地・新橋、レトロ喫茶めぐり第三弾。

-■いまあさ
ここは、明治に創業したすき焼き屋さんがやっている喫茶店。看板のデザインや店内の様子がモダンでかわいかったです。朝に行った時はお客さんが誰もいなくて、BGMにNHK FMの「元春レディオショウ」の再放送が小さめの音でかかっていて、わたしとしてはかなりいい感じでのんびりしちゃいました。店内のBGMはいつもラジオなのでしょうかね。

昼ごはんもここでドライカレーを食べたのですが、こちらはまぁふつうに喫茶店メニューでした。すき焼き屋さんがやってるということでちょっと期待したんですけどね。ちなみにすき焼き屋さんのほうのランチは一日限定で1000円の定食があるようです。こちらはMTGが終わる時間がいつも1時半くらいになってしまうので断念。さすがに1600円のすき焼きを普通のランチで食べるのはねぇ~

あとで調べて見たらマッチもいい感じのデザインらしいのでもらえばよかったです。いつもはタバコを吸わないのでこういう時、忘れてしまいますね。

-
■洋食すいす
会社の人に新橋に大きなメンチカツを食べられるところがあると聞いて行ってみました。MとLのサイズを選べるようになているのですが、わたしはMを注文。それでもかなり大きくて、午後はずっとお腹が苦しかったです。ランチタイムは2時までで、お店に入ったのが1時半くらいだったのですが、お店の中はほぼ満席で、スーツを着たたくさんのサラリーマンがLサイズのメンチカツをほおばっていました。メンチカツ自体はどことなくふわっとした柔らかめなので、サイズは大きいけれど、最初に見たときに思ったよりもさくっと食べられる感じでした。
もちろんほかにもメニューはあるので、夜にきてこれをつまみにビールを飲んでみたいと思うけれど、夜の営業時間が5時から8時までなので職場が近くでないとちょっと無理かな。
-
■喫茶ひよ子
築地駅の近くにあるこじんまりとした昔ながらの喫茶店。とりあえず安い。わたしはフルーツジュースとミックスサンド、そしてコーヒーゼリーを食べたのですが、これでだいたい700円くらい。
もちろんサンドイッチなど量は多くないけれど、もうちょっと食べたかったらゼリーじゃなくて130円のホットドッグを頼んでもいいしね。軽く食べる分には全然いい感じです。コーヒーも150円なので近くにあったら入り浸りそう。
全席喫煙化なんのでちょっとタバコの煙は気になりますが、その割にはお店の中もきれいだし、サンドイッチの並べ方もていねいでマスターの性格があらわれてます。
--
■カフェ・ド・カナール
ニュー新橋ビルの1階にある喫茶店。朝で駅前ということもあり待ち合わせっぽい人たちや打ち合わせをしている人が多くいました。メニューにはいろいろな種類のコーヒーや紅茶がありちょっと値段も高めですが、いろいろこだわってそう。それも含めて内装もテーブルや椅子も落ち着いていてこれぞ王道な喫茶店いう雰囲気。
--

「落葉・回転窓 木山捷平純情小説選」-木山捷平-

◆築地・新橋、レトロ喫茶めぐり その2

文芸文庫とはいえ、新しく木山捷平の本が新しく文庫本で読めるなんてうれしいですね。まぁ値段は文庫本とは言いがたいですけど。

3月も築地方面への外出が多かったので、築地や新橋でコーヒーを飲んだりしたり、ランチを食べたりという1か月でした。そんなわけで築地・新橋のレトロ喫茶店・定食屋めぐりの続きを。

■ポンヌフ
コリントでパンケーキを食べている時に、周りでたくさんの人がカレーやナポリタンと言ったザ・喫茶店メニューを食べていたのを見て、なんとなく昔ながらのナポリタンが食べたくなり、ナポリタンがおいしいという新橋ビルの一階にあるポンヌフへ。

銀のお皿に山盛りのナポリタンにハンバーグもついていてそれだけでもかなりお腹いっぱいになるのですが、プリンもおいしそうだったので、ついナポリタンとプリン、そしてコーヒーのセットを注文。
最近ではあまり見なくなった太い麺を柔らかめに茹でて、ケチャップで味つけしたナポリタンはまさに昔ながらという形容詞がぴったりでした。量も多いし途中で飽きそうだな、なんて思いつつチーズをかけたり、タバスコを加えつつ食べたのですが、多分、そんなことしなくても普通においしい。会社の近くにお店があったらときどき思い出したように食べにきそうです。
プリンもちょっと硬めで舌触りもよく手作りという風合いで、これとコーヒーだけでお茶しにきてもいいかもという気持ちになりました。

-
■パーラーキムラヤ
ポンヌフと同じ新橋ビルの地下にある喫茶店。店内の装飾も適度に品がよくて落ちつけます。ここは朝にちょっと寄ってコーヒーしかのまなかったのですが、ナポリタンやオムライス、パンケーキなどのメニューもあってお昼によってものんびりできていいかも。といいつつ会社のメールに返事をしたりしてて実際はゆっくりという感じでもなかったんですけどね。
--
■マックモア
築地の場外にある喫茶店。なのですが、その時期によって一番おいしい生のマグロを使うというランチが有名な喫茶店。実をいうと前日に築地で食べた丼がいまいちだったということもありおいしさ倍増でした。喫茶店なのでサイホンで淹れたコーヒーもランチは半額でつけることもできます。
-
築地場外は昼過ぎに行くといろいろ安くなっていて、買って帰りたいものばかりでしたが、そのあと会社に戻るということを考えると生ものを買って帰ることもできず、クジラの竜田揚げなどを歩きながら食べつつちょこっとだけうろついて帰ってきました。

さて、とりあえず今日はここまで。3月の築地・新橋喫茶店巡りはまだまだ続きます。

「花と魚と」-柳原良平-

◆(今さらですが)GOOD FOOD MARKETに出店しました!きていただいたみなさまありがとうございました。
柳原良平というと船やアンクルトリスのキャラクターをもとにしたイラストが多いけれど、これは船や港ではないことをテーマにした画文集。花や木、魚や動物、昆虫などの絵とそれにまつわる柳原良平のエピソードがつづられてます。原画がどのくらいの大きさか分からないけれど、15cmくらいの小さめの正方形で、ちょっと余白があるような額に入れて飾っておいたらかわいいかもしれません。
まぁ船や港が多いと言ってもそれはおとな向けの画文集の話で、子供向けの絵本については、日常生活で使う道具や野菜、はたまた七福神や干支などいろいろなものが出ていますけどね。

こちらももうとっくに過ぎてしまったけれど、3月16、17日に調布の京王閣で行われたGOOD FOOD MARKETに出店させていただきました。
日曜はちょっと風が強くて肌寒かったけれど、おおむね天気もよく、たくさんの人にブースまできていただきありがとうございました。

今回はイベント名のとおりパンやお菓子からお米や野菜までさまざまな食べ物屋さんが出店したイベントで、事前に紹介されているお店を見ていたらどれもほんとうにおいしそうで、正直、この中に混ざって本を売るのはちょっと厳しいかも?なんて思っていたのですが、そんな心配をする必要もなくいろいろな人が本を手にとって見てくれてうれしかったです。

-
-
カヌー犬ブックスのブースの様子

できればお店の前にイスや机を置いて、パンを食べたりコーヒーを飲んだりしながら本を見てもらえるといい感じかなと思っていたのですが、本以外にいろいろ持って行くのもたいへんだし、会場も広いしなかなか難しいですね。

うちの周りはいつものように、漣くんや暁くんが友だちの子供たちとはしゃいだり走りまわったりして終始にぎやかでした(それでいいのか悪いのか分かりませんが)。お隣のモダンクラシックスさんも小さな赤ちゃんを連れて出店していたので、いつか一緒に遊べたら楽しいかも、なんて思いました。
毎回、普段なかなか会う機会が作れない友達がきてくれるのも、うれしいことの一つなのですが、今回は最近、Facebookで再会した友だちが来てくれて10年ぶりぐらいに会えたのがうれしかったです。昔、家族で西荻で飲みに行ったときに今の漣くんぐらいの歳だった女の子が中学生になるってのを聞いて、流れる年月の早さにびっくりしましたが。次回はうちに遊びにきてくださいね。

あと、イベント用にとっておいた「世界の料理」シリーズを、その本がきっかけで料理研究家になり長年探していたという人の弟さんにまとめて買っていただいて、とても喜んでいただけたことや、吉田菊次郎の本を手にとって「これ私が作ったんですよ」と話しかけてくれたデザイナーさんなど思いがけない出会いがありました。それからこう言ってはなんですが、土曜日は割とお客さんも少なめだったので、パンやお菓子などをいろいろ買ってきてのんびりと食べたりと、楽しい二日間を過ごさせていただきました。

-
たいやきやゆいのたいやきと「世界の料理」シリーズ

定期的にイベントに出るようになって普段ネットではできないことが、いろいろできるようになってきて、ちょっとずつでも幅を広げられたら、と思っています。