「わたしの生活手帖」-山口瞳-

◆右に見える競馬場、左はビール工場♪
単行本未収録のエッセイ集。前回読んだ「わが師 わが友」のように明確なテーマがないので、どこかまとまりのない感じがします。今の作家がツイッターでつぶやいたら炎上しそうな偏見で言いきってしまう話の展開にちょっとドキドキするけれど、読んだ人それぞれが受け入れるか受け入れないかは別として、こういう主張ができるという余裕が大切なのだなぁと思う。一方、この内容だから単行本未収録だったのだろうなぁとも思いますけどね。
そういう意味でも、もう少し見せ方というか伝え方を考えた編集の仕方がある気がします(って上から言ってますが)。意地の悪い言い方をすると、こういう本が河出書房新社から出るなんてなぁ、なんていっちゃいますヨ。

-前回に続いて2月の話になってしまいますが、山口瞳と言えばサントリー、というわけではないですが、府中にあるサントリー工場へ工場見学に行ってきました。サントリーの工場見学は、府中にある武蔵野工場のほか全国で9か所の工場が見学でき、工場に合わせてビールやウィスキー、ワイン、天然水などの製造工程を見学できます。武蔵野工場は、ユーミンの歌にもあるようにビール工場なので、「ザ・プレミアム・モルツ」の製造工程を見ることができます。
ビール工場の見学なんて最後にビールを飲むことが目的のほとんどなんですが、単純に製造のための機会を見たり、動いている様子を見ているだけでワクワクしてしまいますね。子どもたちも原料となる「天然水」「大麦(麦芽)」「ホップ」の説明や発酵、ろ過など、説明を聞いているときは退屈そうにしていたモノの、大きな機械を前にするとなにをするのかはいまいち分からないもののそれなりに楽しそうでした。特にたくさんの缶が次々と機械の上を動いていく詰の工程になると見いってました。やはり動きは大切。その点うちの会社となぁ‥‥(以下自粛)。

-まぁそんなこと言いつつ最後のプレミアム・モルツの生を飲むのが一番の楽しみなんですけどね。わたしは子ども連れということもありのんびり2杯いただいたって感じだったのですが、まわりの人の限られた時間のなかでぐいぐい飲む勢いがけっこうすごかったですヨ~
機会があれば今度はお菓子工場とかに行ってみたいかも。チチヤスとかも工場見学できるんですよねぇ。広島なんで遠くて行けないですけど。

ちなみに漣くんは、工場見学に行ってからというもの、スーパーとかでビールの缶を見るたびに「サントリーだ」という言うようになってしまいました。で「あれはアサヒだよ」と訂正すると、「アサヒ・サントリーだね」と、なかなか譲らないところが誰似なのか‥‥

もうひとつ府中で山口瞳にゆかりのもの、ってわけではないけれど、暖かくなったら競馬場にも行かなくてはネ。去年はミニ新幹線が動いてなかったんですよ。

「世界のグラフィックデザイン103 カリ・ピッポ」-カリ・ピッポ-

◆「Kari Piippo Posters & Drawings」@ギンザグラフィックギャラリー
展覧会が終わってもう1か月も経ってしまっているのでいまさらなんですが、ギンザグラフィックギャラリーで2月にやっていた「Kari Piippo Posters & Drawings」展を見てきました。
カリ・ピッポは、世界中のさまざまなポスター展でたびたび受賞するなど、特にポスターなどの分野で活躍しているフィンランドのグラフィックデザイナー。フィンランドのデザインというと、マリメッコを始めたとしたテキスタイルやイッタラなどの食器、アアルトの家具などが思い浮かびますが、意外とポスターなどのデザインは紹介されてないような気がします。
この展覧会のサブタイトルが「Simple Strong and Sharp」となっているように、カリ・ピッポのポスターは、最小限の力強いタッチで構成されたタイポグラフィーやイラストが印象的です。かつ、そこに描かれているものがちゃんとポスターの意図する内容と合致しているので、ちょっとじっと見ていると「あ、そういうことね!」という発見があって楽しい。
スイスのデザイナーのようなかっちりとした構成とフランスのポスターのユーモアのいいところをあわせもったようなポスターの教科書とも言える作品で、世界中でレクチャーやワークショップを開催しているというのもうなずけます。
一緒に展示されているドローイングをみるとこういった発想が、普段の生活の中の出来事や思いつきの積み重ねによるものだということも分かります。
初日にはカリ・ピッポ自身によるギャラリートークもあったみたいなので参加したかったですね。ワークショップの様子を撮ったドキュメンタリーとかあったらおもしろそう。

「国立の先生山口瞳を読もう」-常盤新平-

◆常盤新平は高校生時代の先生だった?
1か月ぶりの雑記。というか途中まで書いて1か月放置していたので、この後なにか河口と思っていたのか忘れてしまいました。なので、まぁこのままで。

1月の終わりに翻訳家の常盤新平が亡くなったのを知り、久しぶりに常盤新平の本を読みたくなってアマゾンでいろいろ見ていたらこんな本が出ていたことを今頃知りました。
常盤新平は10代から20代前半くらいまで、「ニューヨーカー」やマフィア、1920年代のアメリカなどついて書かれた本をほんとによく読みましたね。ひと時のわたしにとって先生みたいな人でした。それに比べてなにげに常盤新平が翻訳した本って読んでないかもしれません。ざっとウィキペディアでリストを眺めると「彼らは廃馬を撃つ」「汝の父を敬え」「素晴らしいアメリカ野球」「ニューヨークは闇につつまれて」「ニューヨーカー・ノンフィクション」「ブルックリン物語」「夏服を着た女たち」「心変わり」「ビッグ・アップル」「ザ・ニューヨーカー・セレクション」「混合ダブルス」「ゴールデン・ピープル」「夏の日の声」「大雪のニューヨークを歩くには」ってまぁまぁ読んでるか。小説のほうは「遠いアメリカ」「罪人なる我等のために」だけしか読んでないです。最近のエッセイもほとんど読んでなかった。

今、あらためて思うのは、繰り返しになるけれど、常盤新平は先生だった、ってことですね。だから自伝的な要素が含まれている小説や、自分のことを語るようになってきた最近のエッセイを読めなかったんじゃないかと。だって自分がいま中学生だったとして、尊敬している担任の先生が不倫して子どもまで作って奥さん病気になって‥‥なんて聞きたくないじゃないですか。今だったらさ、大人になってるから先生も大変だったんですねぇ、なんて普通に言えるけど。
そんなわけで今だからこそ常盤新平の本を読んでみようと思う。いや、ちょっと遅かった。もう少し早く30過ぎくらいの時にもう一回、常盤新平を見なおしてみるということをすればよかったと思いました。

「鶴の舞」-野尻抱影-

◆築地・新橋、レトロ喫茶めぐり
野尻抱影は、星座とその伝説を解説した本をいくつも出しており、星の和名の収集研究で知られている英文学者、天文民俗学者。作家、大佛次郎の兄で、今回ウィキペディアを見て知ったのだけれど、血のつながりはないですが、中川翔子と姻戚関係でつながっているらしいです。
さてこれは星とは関係ないテーマでつづられた随筆集(星にまつわる話もすこしあり)で、構成としては、生まれた場所である横浜の明治時代からの風物から現在までの思い出をつづったもの、落語や芝居、古典について語ったもの、南アルプス登山にまつわるものなど、いくつかのパートに分けられています。
横浜の話などは弟の大佛次郎や獅子文六の随筆などとあわせて読んいくとおもしろいと思うし、身辺雑記的なものも少しだけ天体の話が出てきたりしてよかったのですが、古典や山の話はあんまりついて行けず、って感じでしたね。そもそも山や渓谷の地名がわからない‥‥。前回、文章を書く(読む)ためには草木の名前を知っておくべきと書きましたが、日本の細かい地名もちゃんと知っておくべきかと(あと、教養として古典もね。その辺、わたしは理系なんでかなり弱いのです)。

装丁は、佐多芳郎。山本周五郎の「樅ノ木は残った」「ながい坂」、平岩弓枝の「南総里見八犬伝」、円地文子の「国性爺合戦 近松物語」などの挿絵を描いた画家。「四十八人目の男」「桜子」「冬の花」「今日の雪」といった大佛次郎の作品の挿絵や装丁なども多く手掛けているので、そのつながりでこの本の装丁を手がけた感じでしょうか。

-2月の後半からわけあって仕事で築地方面への外出が多くなってきたので、少しの時間を使って築地近くでランチをしたりお茶したりしてます。時間的に築地市場の中でごはんを食べるということはできないのが残念なのですが‥‥

といいつつ、まずは朝の訪問に合わせてまず築地市場の中にあるセンリ軒へ。朝ごはんを食べてきたのでとりあえずコーヒーとチーズケーキ。カウンターに座っても椅子をちょっと後ろにしたら壁によりかかれてしまう通路の狭さがけっこう好きです。カウンターだけに店員さんや常連の人たちの話が直接聞こえてきて、なんとなく気になってしまい本に集中できないんですけど、まぁ真剣に本を読みたいわけでもないのでそれでいいのではないかと‥‥。
築地市場の中の喫茶店と言うとここともう一つ喫茶 岩田があります。こちらはメニューにフレンチトーストがあったので、次に機会があれば朝ごはんを食べずに来てフレンチトーストを食べたいですね。

-新橋の喫茶ジャパンは前に純喫茶コレクションというブログを読んでいた時に知って、前から行きたいと思っていたところ。新橋を降りてSL広場を抜けてちょっと行ったところにあります。(築地市場と逆じゃんというツッコミはなしで)
看板も昭和なフォントですが、店の前に置いてあるショーケースもなかなかいい。形や中に置いてあるメニューは古めかしいけれど、ケース自体はすごくきれい。細い階段を降りていくと、なんの前ぶれもなく店内が広がる感じで、思っていたよりも広くてテーブルの間隔もひろくてゆったりしていました。ぜんぜん雰囲気は違うけれど、京都にあるオパールというカフェが移転する前、エレベータから出るといきなり店内になっていて、ドアが開くと開放的な気分になったのを思い出しました。
外に置いてあったショーケースもそうだけど、お店自体は古いみたいだし、置いてあるものも新しいわけではないのに店内の感じがとてもきれいで清潔感があるのがとてもよかったです。ここではあまり時間もなかったのでコーヒーのみ注文。座り心地のよいイスに座って本を読んでいると打ち合わせに行く気力がどんどんなくなってしましますヨ。

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で、場所がらと時間帯も朝ということもあって、会計をすますと「いってらっしゃい」と見送られました。

続いては築地市場の浜離宮の近くにある喫茶コリント。友だちにここのフルーツパンケーキを勧められたので、一緒に行った会社の人とランチ。ここもお店の雰囲気はまさに昭和。

注文したのはもちろんフルーツパンケーキ。まずびっくりしたのはそのパンケーキの大きさとフルーツの量。フライパン一杯の大きさくらいのパンケーキが2枚もあり、フルーツもパイナップルなんかは小さめのものとしても1/4くらいあったし、そのほかにいちごやバナナ(これも一本)、オレンジやグレープフルーツなどが盛りだくさんでした。

そして店内はほとんど近くの会社に勤めるサラリーマンで、わりと平均年齢の高めの人たちがパンケーキと格闘している姿はちょっと不思議。カレーやナポリタンといったメニューもあるのですが、どれも量が多かったです。

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次に外出する時に食べたフランクパンケーキ。これも一見ウィンナーのようですが、見た目よりもかなり大きいのです。

ちなみにわたしは2回ともパンケーキを食べきれず、残しました。

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「続 春夏秋冬帖」-安住敦-

◆ジブリ美術館に行ってきました
久保田万太郎から引き継いで主宰した俳句雑誌「春燈」の編集後記をまとめた本。その前に出た「春夏秋冬帖」から10年くらいの年月が経っているので、その間に書かれたものが厳選され、お正月用の繭玉を作る話に始まり大晦日で終わるという一年の流れに合わせて再構成されているという感じでしょうか。
前にも書きましたが、書かれた年に関係なく再構成されているので、読み進めていくと一気に年代が進んだり戻ったりして「ん?」と思うところもときどきあります。ただ俳人らしく季節をいろどる草木や風景、その時々の行事など、季節のうつろいをつづった描写が多いこともあり全体としてはスムーズな流れになっています。
残念なのは、わたしが出てくる花や木の名前をあまり知らないこと。いや、知らなくても雰囲気が伝わってくるのですが、やはりちゃんと分かってて読むとぜんぜん違う感銘を受けるんだろうなぁと思います。
文章を書くのなら草木の名前を知らなくてはダメだ、といったのは山口瞳の師匠、高橋義孝だったか、山口瞳本人だったか。永井龍男も同じようなことを言っていたような‥‥。

-10年ぶりくらいにジブリ美術館に行ってきました。でもわたし自身はいわゆるジブリ映画というものをほとんど見たことがないのです。年齢的にも「風の谷のナウシカ」が公開されたときは中学3年だったしね。もう2、3年遅く生まれてたら見てかも。この辺の2、3年はけっこう大きい。宮崎駿とぜんぜん意識してないけど、「アルプスの少女ハイジ」とか「未来少年コナン」とか「ルパン三世 カリオストロの城」は普通にリアルタイムで見てたしね。そんなわけで子どもが「となりのトトロ」とか「崖の上のポニョ」とかテレビで見て盛り上がってるのでまぁ行ってみますか、という感じ。
まぁ今一番漣くんが気に入ってる宮崎駿作品は「パンダコパンダ」なんですけどね。

親バカな発言をしちゃうと、やっぱり子どもが一緒だと楽しい。漣くんや暁くんが猫バスに乗ったりできるってのもあるけど、単に螺旋階段登るだけ、館内を歩き回るだけで楽しめます。展示されていたり販売されてる絵本とかもいろいろ参考になるし。そんな中でなぜか堀田善衛のDVDや著作集があったりしておおっ!と思ってみたり‥‥。
-けっきょく途中ごはんとかお茶とかしながらも12時に入って5時まで遊んでしまいました。館内はわりとカップルできている人が多かったけど、わたしの場合ミオ犬と二人だったら絶対5時間もいられない。

で、すみません。ここまで書いてみたものの、わたし自身ここに来ていろいろ発見したとか、宮崎駿を再認識したとか、ないッス。もしかしたら何年か後、漣くんとジブリ映画を映画館に見に行くようなことがあるのかもしれないけど、自分からはあいかわらず見ないかも。う~ん、なんだろ?別に嫌いとかではないんですけどね

とりあえずわたしのジブリ美術館での収穫は、トトロのフローティングペン。なんか最近またフローティングペンがわたしの中でブームになりつつあるのです。

「ピーナツ・バターで始める朝」-片岡義男-

◆東京おもちゃ美術館や消防博物館、フクナガフルーツパーラーと四谷三丁目でいろいろ
片岡義男は2012年も小西康陽との共著「僕らのヒットパレード」をはじめ(まだ読んでない)、エッセイを4冊、写真集、小説を1冊ずつと相変わらず本を出し続けている。さすがに2010年、2011年はそれほど出していないけれど、2009年は3冊出してる。その衰えない好奇心と創作意欲はどこから来るのだろうか。今知ったのだけです今年で73歳、あ、ちょうどわたしの父親と同じ歳なんですね。う~ん(特に大きな意味はなし)

さてこの本は2009年に出たエッセイ集。特に決まったテーマはなく、いろいろな媒体に発表した音楽や本のこと、食べもの、文房具‥‥など、片岡義男の興味の向くままにつづられた43篇が収録されています。

ざっとタイトルと並べてみると

    旅と小説はどのように関係し合うのか
    瀬戸の潮風、うどんの香り
    アイスクリームには謎がある
    天赴羅蕎麦はこうして生まれた
    『草枕』のような旅を
    サソエツ、ニッタケ、コダワラの女たち
    猫が階段で寝ている
    猫のことを書くなら
    ピーナツ・バターで始める朝
    ハワイの田舎町を訪ね歩く
    今日も小田急線に乗る
    商店街が終わって三叉路になるところ
    本を三冊買う
    真夏のシャーロック・ホームズ
    僕はチェリーを忘れてた
    後悔くらいしてみたい
    手帳が溜息をつく

‥‥などタイトルを見ているだけでちょっと読みたくなってきませんか?という気持ちがする一方で、このタイトルを見ただけで敬遠する人もいるのかもしれないなんて気もしてしまうのは、片岡義男の文章は、ときおり気障な言い回しで話が進められるというか、もったいぶった口調というか、レトリックで書かれた独特の口調で書かれているのがタイトルからなんとなく伝わるような気がするから。その辺が好みの分かれるところなんだろうな、と思う。
でもその点を考慮してもエッセイストとしてファンだけではなくもっと広く読まれてもいいんじゃないかな。(余計なお世話か!)

-先週の金曜は、お休みをいただいて四谷三丁目にあるおもちゃ美術館に遊びに行ってきました。おもちゃ美術館は、閉校になった小学校の教室に厳選されたおもちゃを展示し直接遊べるようになっている施設。
置いてあるおもちゃは、木琴や大きなソロバン、カラコロきれいな音の鳴るおもちゃ、ままごとのおもちゃ、ゲームなど木を使ったシンプルなおもちゃが多く、一緒に遊んであげないと分かりにくいものもけっこうありました。そんなわけで最初のもくろみとしては子どもたちに勝手に遊んでもらって、わたしはのんびり見てればいいかなと思っていたのですが、漣くんはすぐに「おとうさんこっちきて」と一人で遊んでくれないし、暁くんはちょこちょこ歩きまわってどこかに行ったり、おもちゃを倒したり投げそうとしたりして目を離せないし、けっこう疲れました。2歳以下の赤ちゃんのための木育ひろばもあるのですが、こちらは3歳以上は中に入れず。う~ん‥‥。

-おとうさんの楽しみとしては、4月7日までやっている企画展「アメリカと日本の古き時代の玩具- FISHER・PRICE TOYS & JAPANESE TOYS in 1930-1980 -」かな。あと昔の小学校を利用しているので、館内(校内)を歩いてるだけでもわりと楽しかったです。
それから大通りを横に抜けて美術館前の路地が、特になにもないけれどいい感じの路地になっていてよかったです。新宿御苑から曙橋、四谷三丁目あたりの路地は、例えば谷根千のような“何か”があるわけではないけれど、ちょっと前の路地の様子がそのまま残っていてよいです。昔、セツ・モードセミナーに通っていた友だちとあの辺をカメラ片手に歩きまわったりしたことを思い出しました。セツ自体もいい感じの建物だったなぁ~

-ついでに四谷三丁目に直結している消防博物館にも寄りました。こちらは屋外には消防ヘリコプターが置いてあって操縦席に入れたり、昔の消防車がそのまま展示されていたり、災害が起きた時の様子を映し出すモニターがあったりと、小さな男の子が喜ぶものが満載で、漣くんも大はしゃぎ。帰ってからも消防車の話ばかりでこっちをメインで遊びに行けばよかったと思うほどでした。まぁそういうものです。

帰り際にはフクナガフルーツパーラーへ。一階が果物屋さん、二階がフルーツパーラーになっているちょっと昭和な雰囲気のお店。通りから店内が見えないので子どもを連れて入るのはどうなのかなと思ったけれど、全然平気でした。ほかにもベビーカーに赤ちゃんを乗せてる人もいたし、帰りにはお店の人に近くにあるらしいアンパンマンショップのショップカードをもらったくらい。まぁでも平日の中途半端な時間だったので空いてたからってのもあると思いますが。
パフェがおいしいらしくその時にいたお客さんもほとんどがパフェを食べていましたが、1歳児がいるのでフルーツサンドを注文。柔らかなパンとイチゴやパイナップル、キウイなどのたくさんのフルーツ、そして生クリームのバランスがとてもよく、ふんわりとした食感でおいしかったです。

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「作家の旅」-コロナ・ブックス編集-

◆年末からジャイブ/ジャンプのCDをよく聴いてます
コロナブックスの「作家の~」シリーズの何冊目?旅をテーマにその作家の文章+写真+その作家の家族による思い出というほかのシリーズと同じ構成でになっており、安心して読めます。ただ何冊か読んだせいもあるかもしれませんが、とりあげられている作家が、山口瞳、寺山修司、田中小実昌、吉田健一、澁澤龍彦など、このシリーズによく登場する作家が多いような気がするのがちょっと物足りないかな。いや、単に自分が好きな作家や旅と言ってすぐに思い浮かぶ作家が多いので新鮮味がないだけかもしれません。好きな作家の話なんでそれはそれで何回読んでもいいんですけどね。
そういう意味では、“おやつ”、“酒”、“食卓”、“家”‥‥と分野を広げていくのと並行して、「作家の旅 第2集」「作家の旅 第3集」‥‥と一つのテーマで何冊か出していくのもおもしろいのかなと思いますがどうでしょう。まぁ売り上げはだんだん落ちていきそうですけど。

去年の終わりからいろいろな要因が絡んで、ルイ・ジョーダンやスリム・ゲイラード、キャブ・キャロウェイ、ルイ・プリマといったジャイブ/ジャンプのCDをよく聴いてます。

ジャンプ/ジャイヴとは、簡単に言うと、ビッグバンドによるスイングジャズが、若者のダンスミュージックとしては物足りなくなって来た時代に、若者のためのダンスミュージックとして生まれたブルースが主体としつつパワーがあって陽気で跳ねるようなサウンドにおもしろい歌詞を乗せたエンターテイメント性にあふれた音楽。そしてジャズからリズム&ブルースやロックへの橋渡し的な存在、という感じですかね。細かくわかってないんでざっくりとした説明ですみません。そもそもジャイブとジャンプの違いも分かってないんですよ。

デヴィッド・ボウイが主演したジュリアン・テンプル監督の「ビギナーズ」という映画にスリム・ゲイラードが出ていてそのサントラを聴いたのがきっかけで、80年代終わりから90年代初めに一度自分の中でのブームがあって、その時に何枚か聴いたのですが、当然、その頃はあまりCD化もされてなかったし、アナログも手に入りにくかったので、この手の音楽をまとめて聴いたのは初めてかも。

ちなみに「ビギナーズ」は「ラビリンス/魔王の迷宮」とともにデヴィッドボウイが出演した失敗作として記憶されている映画ですが(笑)、サントラはシャーデーやスタイル・カウンシル、ワーキング・ウィーク、ジェリー・ダマーズなど、ジャズとかボサノヴァとかをとり入れたイギリスのアーティストが参加していていいのですよ。

まだそんなにたくじさん聴いてるわけでもないし、詳しいわけでもないですが、例によって備忘録として、よく聴いたCDを何枚か紹介。あまりにも基本的なミュージシャンなので、少しずつ何回かに分けて紹介しようかな、とか思ってます。あと、基本的にベスト盤ばかりです。(それぞれのミュージシャンでいろいろベスト盤が出ているのでどれを買うべきなのか初心者はほんと迷います)

-■「Are You Hep to Jive」-キャブ・キャロウェイ-
まずは映画「ブルースブラザーズ」にも出演し、ジャイブ/ジャンプと言ってすぐに思い浮かぶキャブ・キャロウェイのベスト盤。彼の全盛期とも言える1930年代後半から1940年代後半に録音された代表作を収録。今回選んだCDは1950年代に録音されたものが多いので、音だけ聴いていると、それらに比べてわりとおとなしめのストレートなジャズになっているし、コーラスなどもちょっと古い感じになってます。まぁそれが本来のサウンドなんですけどね。逆にそのゆったりとしたサウンドのせいで、猥雑な雰囲気がきわだってるとも言えるかな。音だけよりも映像で見たい気がしますね。

-■「Rock’n’ Roll」-ルイ・ジョーダン-
かつてのヒット曲などを1950年代半ばに再録音したもの。クインシー・ジョーンズがプロデューサーをつとめています。「私の考えるジャズ」とほぼ同時期の仕事になるのかな。そんなわけでバックのサウンドはかなり洗練されておりそれに合わせてかルイ・ジョーダンのヴォーカルもどこかモダンな感じがします。録音されている音もいいです。ストレートなジャズヴォーカルっぽい曲からノベルティ的なもの、ラテン音楽など幅広い曲調の曲が収録されてて飽きません。それからロックンロールというにはちょっとモンドな音やフレーズのエレキギターが意外といいアクセントになってます。

-■「Greatest Hits」-ビッグ・ジョー・ターナー-
なんとなくジャケットで選んでみたCD。CDなんで迫力は半減してると思われます。レーベルもアトランティックなので、初めて買うビッグ・ジョー・ターナーのCDとしてはベストなのではないかと‥‥。大ヒットした「Honey Hush Shake Rattle And Roll」「Fip Flop And Fly」やロックンロールの名曲「Sweet Sixteen」「Chain Of Love」といった曲をブギ~リズム&ブルース~ロックンロール・ナンバーがいい。ただアトランティック時代以外は、カウントベイシーやデューク・エリントンなど共演するなどかなりジャズ寄りな活動が多かったようなのでその辺も聴いてみたいですね。

-■「Laughin in Rhythm: Best of Verve Years」-スリム・ゲイラード-
1940年代から1950年代初期のVerveに所属していた時期のベスト盤。歌だけでなくピアノ、ギターなどの楽器も弾き、タップダンスもしちゃうという多才なミュージシャン。芝居がかった感じの歌も多いので、どんな内容を歌ってるのか分かるともっと楽しめるんだろうなと思います(ジャンプ・ジャイヴの歌手全体に言えることですが)。“コメンナサイ~♪オハ~ヨ~♪”と歌う「Gomen Nasai」も収録されてます。1930年代後半のスリム&スラムやベーシスト、バム・ブラウンと組んだ時代、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーなどをフューチャーした録音などの音も聴いてみたい。

-■「Capitol Collectors Series」-ルイ・プリマ-
ルイ・プリマは、ヴォーカリストとしてはもちろん、トランペッター、バンドリーダー、「Sing Sing Sing」を作曲した作曲者でもあるというマルチプレーヤー。これはキャピトル時代(1950年代?)の曲を収録したベスト盤で、「Sing Sing Sing」やブライアン・セッツァーがカヴァーしていた「Jump Jive an’ Wail」などの代表作をはじめ、当時の妻だったキーリー・スミスとのデュエット曲も収録。時代によってサウンドが異なるようですが、この時代はキャピトルですし30年代、40年代をちょっとノスタルジックに振り返りつつ、わかりやすく軽快なノリのサウンドになってます(偏見か)

「私の好きな料理の本」-高橋みどり-

◆「田中一光とデザインの前後左右」@21_21 DESIGN SIGHT
去年、最後に読んだのは、高橋みどりさんの「私の好きな料理の本」。通勤の電車の中で読むのがもったいなくて、昼休みにひとりでごはんを食べている時に、これうちにあるなぁとか、これ前にうちにあったけどすぐに売れちゃったなぁとか、こういう本を扱いたいなぁ、なんて思いながらページをめくってました。

夏に「暮しの手帖」で“私の好きな料理本”という特集とした時に、

「料理本はヴィジュアルもきれいだし、昔の本はイラストなどもかわいいものが多いし、いろいろな人がおすすめの料理本を紹介する本があったらおもしろいと思うのですがどうなんでしょう。そんなに多くの本を載せなくてもいいし、本の厚さも薄くていいのでオールカラーで、できればハードカバーだとちょっとうれしい。和書と洋書の2部構成になっていて、それぞれ数ページずつちょっとしたテーマにあった本を紹介して、そのあいだに料理家を紹介するコラムや本を作ったときのエピソードが掲載されているとか‥‥などなど、と妄想。」

などと書いてみたけれど、この本でだいたい実現された感じになっていてうれしい。もちろんいろいろな人のおすすめの料理の本が載っているわけではなく、あくまでも高橋みどりさんの好きな本が主に紹介されています。でもその本に関連する人にインタビューをしていたり、インタビューしている人に関連するほかの本やその人がすすめる本なども紹介されているので、テキストも紹介されている本を補足しているだけではなく読み物としてもおもしろい。
インタビューでは、それぞれの本が単にいろいろな料理やそのレシピを紹介するだけでなく、その時代背景や料理の種類によって見せ方を工夫していたり、取り上げた料理自体の歴史や作者との関わりなど、レシピをさらっと見ているだけでは分かりにくい試行錯誤があったことが語られており、これから料理の本を読む時に、そういうことを頭においておくと、いままで気がつかなかったことに気がついたりして、また違う角度から料理の本を楽しめるようになりそうです。

それからその本に掲載されているレシピも別に掲載されていて、本だけでなく実際の料理の写真も掲載されているので、ページの見た目もちょっと華やかになってます。

-去年の9月からミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTでやっていた企画展「田中一光とデザインの前後左右」がもうすぐ終わってしまうので、金曜日、会社帰りに見てきました。21_21 DESIGN SIGHTは、ときどき前を通るけれど中に入るのは初めてで、受付から階段を降りて展示会場まで行く構造になっていることにちょっと驚いたり‥‥(設計は安藤忠雄)。

田中一光については特に好きというわけではなく、一連の西武や無印良品のポスターや広告や印象的にタイポグラフィを用いたデザインといったくらいの知識しかないのですが、作品をまとめてみてみると、大きなサイズのポスターが多く展示されていることもあってインパクトがあるなぁと思いました。まぁやっぱり見たとこのあるデザインのものが多いんですけど、一つ一つを広告としてさまざまな場所で見ているだけでは分かりにくい工夫や作風の違いが分かったりして認識を新たにしました。

日本の伝統文化のデザインを取り入れたものや日本語をもとの文字が分からなくなるくらい崩したものもおもしろかったし、ロゴや河出から出ている「今日の海外小説シリーズ」や山口瞳の「血族」「家族」といった単行本の装丁、雑誌のエディトリアルデザインも気になりましたね。

最近、会社の人に田中一光の本ももらったので、今読んでいる本を読み終わったら読んでみようと思ってます。

ちなみに21_21 DESIGN SIGHTの次回の展覧会は「デザインあ展」。2月8日から6月2日までと会期は長いですが、できるだけ早めに見ておきたいところ。

「たのしい写真―よい子のための写真教室」-ホンマタカシ-

◆明けましておめでとうございます。今年もカヌー犬ブックスをよろしくお願いします。
予定では、これを年末の30日にアップして、もう一冊、大晦日に紅白とかカウントダウンとかおママ対抗歌合戦などを見ながら今年一年(もう去年ですが)に読んだ本を振り返ってみようというつもりでした。でもツイッターなどにも書いたように30日に39度の熱を出して寝込んでしまい、気がつけば年を越し2日、そして3~4日は二宮に帰省したりして、すでに5日になってしまいなんだか振り返るという感じでもなくなってしまいましたね。まぁ振り返ってみて特にどうというわけではないんですけどね。
それにしても風邪をひくとだいたい39度以上の高熱になっちゃうというのは子どもの頃から変わってない。でもそのくらい熱が出るとさすがにもう何もできないので、いろいろあきらめがついていいのですが‥‥。

去年は写真についての本をいろいろ読んでみようと年の初めに思ったのですが、古本屋でしか本を買わないのである程度読むとなかなか読みたい本を見つけられなくなってしまい、なんとなくフェードアウトしてしまいました。
で、結局読んだ本は、「明るい部屋―写真についての覚書」(ロラン・バルト-)、「写真術―21人の巨匠」(ポール・ヒル、トーマス・クーパー)、「写真の時代」(富岡多恵子)、「私の写真作法」(植田正治)、「写真の秘密」(ロジェ・グルニエ)、「僕とライカ」(木村伊兵衛)の6冊のみだったので、年の最後の読書は、ホンマタカシの「たのしい写真」で締めてみました。このシリーズは最近パート2も出ているのですが、そちらは市川実日子のデビューから現在までのポートレート集になっていて今さら買うべきかどうか迷ってしまってます。
あとはアンリ・カルティエ=ブレッソンのこころの眼―写真をめぐるエセー」とヴァルター・ベンヤミンの「図説 写真小史」とロベール・ドアノーの「不完全なレンズで」、セルジュ・ティスロンの「明るい部屋の謎」、ゲルハルト・リヒターの「写真論/絵画論」、スティ-ヴン・ショア-の「写真の本質」、中平卓馬と森山大道、荒木経惟あたりの本は1冊ずつくらい読んでおきたいと思っているので、まだまだ先は長そう~

さてこの本では、ホンマタカシが影響を受けたと思われるブレッソンを中心とした決定的瞬間、エグルストンを中心としたニューカラー、そしてニューヨーク近代美術館の写真部長になったピーター・ガラシが提示したポストモダンの3つの概念を中心におき、「講義篇」「ワークショップ篇」「放課後篇」「補習篇」を4部で構成されてます。
まずその3つの概念を説明した後、それを念頭にある課題に対しての写真を撮ったり、そこからちょっと違う視点で3つの概念に基づいた例を出してみたりと、あえて焦点が絞られている分、さまざまな角度からわかりやすく、また具体的な指摘がされていたりしておもしろい。
また去年、オペラシティ行われた「ニュードキュメンタリー」と同様に、この本で記載されている内容に対してもそういったポストモダン的な手法が随所にとられているのも楽しく、さらりと読めてなんとなく写真のことがわかった気になってしまうところがこの本のすごいところだなって気がします。でもそこで分かった気になっているとあとから「あれ?」って感じになりそうだなと思うのは、ホンマタカシの写真もそんな感じだから。
また上記であげたような写真についての本を読んだ後、読み返してみたらちょっと印象が変わるのかもしれません。適当。

「放浪時代/アパアトの女たちと僕と」-竜胆寺雄-

◆吉野英理香写真展「Digitalis」@タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
竜胆寺雄の名前を知ったのはここ1年くらいのことだと思うのだけれど、どこで知ったのかは忘れてしまった。手帳の読みたい本のリストに入ってる作家の中では、ちょっと作風が違う作家なので気になってるんだけど、思いだせない。

竜胆寺雄は、昭和初期に「放浪時代」でデビューし、高等遊民というか大正・昭和初期のモダンガール・モダンボーイの生態、昭和初期の風俗を描いた作品を多く発表している作家。車庫(ガレージ)、多謝(メニサンクス)、拡声器(スピーカ)、広間(ホール)、涼台(テラス)、虹形(アーチ)、筆触(タッチ)、受信機(セット)‥‥と、ルビがふってある単語をピックアップするだけでその作風や雰囲気をなんとなく想像できるのではないでしょうか。
ただしこのほかにも歴史小説、童話、シナリオ、コント、SF、ファンタジーなど多岐にわたるジャンルの作品を発表しているようです。でもこの本以外には簡単に手に入りそうなものはなさそう。ちなみに1980年代に全集も出ていて、月報に村上春樹が文章を寄せていいるらしいのですが、これらも手に入れるのは難しそう(日本の古本屋で検索したら全12冊で20000円くらいでした。そんなに高くはないですね)。

そして、「放浪時代」の発表から6年後、この本にも収録されている菊池寛や川端康成などの実名を挙げ文壇の腐敗を攻撃した「M子への遺書」発表。それによって文壇的地位を失い、以後、文学活動ができなくなったとされています。今ではそれは竜胆寺雄の被害妄想、誇大解釈だったという説が主流になってるみたいですけど。まぁでも現状で手に入る本がこれだけということを考えると単に被害妄想と片付けてしまっていいのかという気もしないでもないですが‥‥

-先週は、昼休みにタカイシイギャラリーでやっていた吉野英理香の写真展を見てきました。郊外の風景や部屋の中の様子などを深めの色合いで撮ったカラーの作品が展示されてます。普段、自分の撮る写真も含めてわりと淡い色合いのカラー写真を好んで見ているせいもあって、久しぶりにこういう色合いのカラー写真を見ると新鮮でした。

もともとはモノクロのスナップ写真を撮っていたらしく、最近になってカラー写真の作品を撮るようになったとのことですが、モノクロの作品をちゃんと見たことがないので、カラーになってどのように作風が変化したのかなどはわかりません。そもそも吉野英理香という写真家の写真を見るのもはじめてだったもので‥‥。

会場のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは会社から近く、昼休みにちょっと見に行けるので、知ってる・知らないに関わらずできるだけ時間を作って通おうと思ってます。最近はいろいろ調べたりして新しいものを探して、かつそれを見に出かけていくというのができなくなっているので、自分の周りのものに対しては、知ってる・知らない、あるいは好き・嫌いに関わらずできるだけ触れておくようにしたいな、と。などといいつつ、国立新美術館やサントリー美術館、ミッドタウンのギャラリーなどにはぜんぜん行ってませんが。
ちなみにここを知ったのは去年の年末でラリー・クラークの展示をやっていた時で、今年に入って、植田正治、奈良原一高、田原桂一の展示を見に行ってます。奈良原一高、田原桂一のように前後期で展示を分けたりして、通してみると割とたくさんの作品に触れることができたりするのも、ここの個展のいいところです。