12月に獅子文六展に行く前にギンザ・グラフィック・ギャラリーでやっている「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」展に行ってきたので備忘録として。
カール・ゲルストナーは、スイス航空のCIやフォルクスワーゲン、シェル石油のロゴタイプなどを手掛けたことで知られるスイスを代表するグラフィックデザイナー。医薬品メーカーのガイギー社のデザインチームで、同社の広告を多数手がけた後、1959年にコピーライター兼編集者のマルクス・クッターと広告代理店「ゲルストナー+クッター」を設立、1970年からは同社を離れてからはよりアートな活動をしています。基礎理論を近代的なグラフィックデザインの手法に展開し、27歳で「冷たい芸術? Kalte Kunst?」、30歳で「デザイ二ング・プログラム」、その後も「色の形―視覚的要素の相互作用」といった著作を出している理論家でもあるそう。
今回の展覧会では、ガイギー社に在籍していた頃のものからデザインと並行して取り組んだアート作品まで、広告デザイン25点、傑作ポスター9点などを展示しています。広告やポスターはマルクス・クッターのコピーと写真をうまく配置し、一見するとすごく洗練されたデザインだけれど、コピーの翻訳と合わせてみるとどこかユーモアもあって、広告デザインの見本のような作品ばかりでした。地下に展示されているアート作品のほうは、広告などでのタイポグラフィーの構成をより進めたもので、なんとなく北園克衛のコンクリート・ポエトリーを思い浮かべてしまったけど、たぶん、両者の関連性はないと思います。
こういうのを見ると、ついアイデアを拝借してショップカードとか作ってみちゃおうかななどと思ってしまうのは渋谷系育ちだからでしょうかね。まぁ実際にはデザインセンスがないので「なんかぜんぜん違う!」ってものにしかならないのが哀しい‥‥
そんなわけで、久しぶりに「構成的ポスターの研究―バウハウスからスイス派の巨匠へ」を眺めてみたりしてます。この本は多摩美術大学ポスター共同研究会によるもので、デザインの研究に主眼をおいているので、デザインの理論的なところは読んでも理解できないんですけど、作家の紹介部分を読みつつ、ポスターの写真を見ているだけでも楽しい。この本を買ったくらいに、「Karl Gerstner: Review of 5 X 10 Years of Graphic Design Etc.」というカール・ゲルストナーの作品集も出ていて、よくリブロや青山ブックセンターでいつか買おうと思いながら立ち読みしてたことを思い出したりしました。
結局、その本は買ってはないんですが、そういう風に本を手に取れる場所があるってことは大事だと思う。アマゾンとかで欲しいものリストに入れておいても、買おうって気持ちが盛り上がらなくて、放置状態になっちゃうんですよね。なので、復活した渋谷のパルコにパルコブックセンター/ロゴスが入らなかったのは寂しい。今では渋谷なんてそんなに行かないけどね!
そういう意味では、子どもが生まれた後の本の情報源として、立川のオリオン・パピルスの存在は大きかった。武蔵小金井に引っ越してきてしばらく経って、吉祥寺より立川に行くことが多くなった頃、よく夫婦で順番に子どもたちに絵本の読み聞かせをしつつ、空いたほうが、自分の興味のある本を探したりしてました。子どもたちが大きくなって、本屋行くと2時間くらい児童書コーナーを行ったり来たりしているのを見ていると、今、オリオン・パピルスがあったら‥‥と思ってしまいます。実際には、売り場面積も広いし児童書も多いので、「オリオン・パピルスよりジュンク堂に行きたい!」って言われそうだけれど‥‥