◆command records、project3のレコード(ジャケット)
あとがきによると、1989年に新潮社から出たものに、「もうひとつの旅」を除き、1983年に福武書店から出た「詩人の魂」から「岬の輝き」を加えた7篇を収録した本。これが「決定版」とのこと。
気がつけばいつも身辺雑記的な随筆しか読んでないので、久しぶりフィクションを読んだ気がします。主人公はすべて山田稔ぽいのですが、ストーリーに関してはフィクションになるのかな。“死”や“忘却”といったことをテーマにした作品が多く、重いようでありながら軽快さも持ち合わせていて、かつその設定で私小説ぽさを出しながらも、それぞれのエピソードがきちんと絡み合い影響しつつ話が進んでいくところなど、フィクションとして計算されていたりして、なんだか不思議な味わいの作品集でした。
12月が近づくとなんとなくイージーリスニングのレコードが聞きたくなります。昔はこの時期になると、夜中にココアとか飲んだりクッキーを食べながら、フォー・フレッシュメンとかハイローズ、ミルズブラザーズ、パイドパイパーズといったコーラスグループを聴いていたものです。まだ家でお酒を飲むという習慣がなかった、20代真ん中くらいの頃。そう考えるといつから夜、家でお酒を飲みながらパソコンの作業などをするようになったんだろうか?わりと最近?
で、わたしはクリスマスアルバムというものをほとんど持ってないんですけれど、そういうコーラスものやイージーリスニングの軽快なオルガンやヴィブラフォンの音、リズミカルなテンポのストリングスのアルバムをクリスマスアルバムの代わりにしている感じですね。クリスマスアルバムって聴く期間が限られるので、なんとなく今買わなきゃ、今聴かなくちゃというせわしない気分になってしまうんですよね。逆に期間が限られてるところにクリスマスアルバムを聴く楽しさがあるんだろうな、とも思いますけど。
加えてイージーリスニングはCDで手に入れるのが難しいので、レコードで聴いてるってのものんびりした気分になっていいのかもしれない。同じ作業しながら聴くにしてもパソコンに取り込んだ音源を小さなスピーカーで流しっぱなしにするよりも、レコードを聴いてるほうが音楽をちゃんと聴いているような気がします。15分に一回レコードをひっくり返したり(昔のレコードは収録時間が短い)、レコードラックからレコードを探したりしなくちゃいけないのも、いい気分転換になってるしね。そんなわけで11月後半から久しぶりにレコードを聴きながら夜を過ごす楽しさを味わってます。ついでにたまにはビールやワインでなく、ココアとかカフェオレとか飲んでみようかな、なんて思ったりして‥‥。
そんなイージーリスニングのレコードを出しているレーベルといえば、キャピタルやUnited Artists、RCA、Dot、Decca、Dynagrooveなどが思い浮かびますが、なんといってもcommand records、project3が好きです。いや、直球で申しわけないです。モンド世代には有名な「スペースド・アウト」で有名なイノック・ライトが手がけたレーベル。パーカッションを多用しステレオを意識したギミックあふれるアレンジが特徴のアルバムが多く、今ではモンドなレコードとして取り上げられることが多いのですが、モンドというほど奇をてらったところはないような気がします。まぁしっとりとしたストリングスで聞かせるという類のものではないですけどね。ギミックとしていろいろな楽器を使用しているので、どのレコードを聴いても似たような感じで飽きてしまうということがないがいい(あくまでも個人的な感想)。
ジャケットも購買層に合わせてか、わりときちんと作ってあってダブルジャケットが多いし、厚紙もいいものが使われているような‥‥そして、ジャケットデザインもいいんですよ。基本的には色数も少なく幾何学模様を組み合わせたものや抽象的なパターンを用いたものが多いのですが、シンプルだけれどどこかモダンで、LPジャケットならでは雰囲気です。
そんなcommand recordsのジャケットデザインを多く手がけているのが、チャールズ E.マーフィー。アートディレクションということで、イラストなどが入るときは別の人に依頼しているらしいのですが、よくわかりません。command records以降の仕事もよくわからないのですが、なんかface bookもあってそちらを見ると、晩年は都会ニューヨークの街並みを油彩で描いていたらしいです。作風はまったく違いますが、こちらもなかなかいい感じで、こんな絵のイージーリスニングアルバムがあったら一枚買ってしまいそう。でもcommandとはまったく異なるサウンドなんでしょうけどね。