◆「植田正治の道楽カメラ」@アツコバルー
前に読んだ「洋食屋から歩いて5分」がタイトルのわりにはそれほどテーマのしばりもなくゆるい感じで食べものについて書かれたエッセイ集だったので、これもそんな感じだろうと思って買ってみたら、ナポリタンにまつわる話しか書かれてなくてちょっとびっくり。
戦後の日本でナポリタンが生まれたエピソードから、ネーミングの由来や考察、調理法、社会学的なアプローチ、ナポリタンに関する自身の思い出、軽い読み物風のエッセイなど、一冊丸ごとナポリタンづくし。そして随所に戦後の日本の世相やアメリカの影響などの考察がはさまれてるのも片岡義男らしい。ここまでたたみ掛けられるようにナポリタンについて書かれていると、なんとなく書かれていることがほんとうなのか、実は片岡義男が考えたフィクションが混ざってるのでははないか、という気もしてしまいます。特に子どもの頃の体験談やエッセイ的なものはかなりフィクションが入ってるのではないかと読みながら疑ってみたりして、単にナポリタンのことが書かれているだけではないおもしろさがあります。
加えて3月に新橋にあるポンヌフというところで昔ながらのナポリタンを食べたときに、ちょっとわたしの中でナポリタンブームが起きそうになったことも、この本がよりおもしろく感じられた原因かもしれません。
とはいうものの、わたし自身はピーマン嫌いなので、どこかに行ったときにナポリタンを頼むということはほとんどありません。もし注文したナポリタンに薄切りされたピーマンが入ってた場合、それを取り除きながらナポリタンを食べるなんて、あまりにも面倒だし味気ないですもんね。
今年は、植田正治の生誕100周年のわりには、それほど企画展とかないなと思っていたら、秋になって東京ステーションギャラリーで「植田正治のつくりかた」、渋谷のアツコバルーで「植田正治の道楽カメラ」、東京都写真美術館「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ-写真であそぶ-」と題された展覧会が行われ、テレビとかでも取り上げられているよう。個人的にはスケジュールをばらしてほしかったという希望もありますが、この機会にできるだけ見ておきたいと思ってます。
そんなわけで、先週の水曜は渋谷に飲みに行ったので、その前に会期が延長されていたアツコバルーへ。ここはほかの2つと比べて会場は大きくないけれど、家族をモデルにした初期のモノクロ作品、時折訪れた東京渋谷の街角、ファッション誌の子供写真など未発表作品を中心に展示されているとのことだったので気になってました。あと、会場が大きくない分、気軽に見に行けるのがいいよね。
まぁ実際にはそれほど植田正治を研究しているわけではないし、記憶力もあまりないので、未発表かどうかはあまり関係ないんですけどね。被写体として見慣れている家族の写真だけでない子どもたちの写真や写真館など建物の写真が個人的には新鮮だったかな。
ついでに、前から欲しかった切手シートも購入。別に切手を集めているわけでもないし、絶対に使わないことを考えると、それ買ってどうするんだ?という気もしないでもないですけど。
あと、アツコバルーは、ギャラリーとしてはスペースが広めでゆったりしていて、ワンドリンクがついているので、ひと通り見た後でちょっと椅子に座ってお酒を飲んで、それからまた写真を見たり、とのんびりできる感じがよかったです。わたしが行ったときはカウンター席が満席だったのですが、カウンターに座ってギャラリーの方(アツコさん?)とちょっと写真について話をしたりするものいいかもです。お酒が入ってる分、気軽に話せそうですし。好きな写真家や作家の展覧会だから、というだけでなく、機会があればたびたび立ち寄ってみたいギャラリーです。