「辻静雄コレクション3」-辻静雄-

◆今城純写真展「walk home in d elight」@ポーラ・ニュージアム・アネックス

「料亭『吉兆』主人・湯木貞一氏を案内してヨーロッパ最高の料理を味わってまわる美食三昧の旅の紀行『ヨーロッパ一等旅行』、フランス料理の最高水準を体現するパリの一流レストラン31店の興趣尽きないエピソードや特別料理の作り方をつづる『パリの料亭』を収録」

前回の雑記で、松浦弥太郎や岡本仁について、この人たちみたいなライフスタイルの生活はおくれないなぁ、なんてことを思わされてしまうって書きましたが、ここでつづられるのは、もう贅沢、そして優雅すぎてまったくの別世界。まったく同じ世界は味わえないけれど、ちょっと背伸びしたらの片鱗だけでも味わうことができるかも?といった可能性はまったくないし、辻静雄も「こういう料理を味わえたければここやあそこがおすすめ」みたいなことをさらっと書いているけれど、全体を通して素人にわかるかという気概が伝わってきます。その突き放した姿勢があるからこそ、40年前に書かれたもので、一応お金持ちのためのヨーロッパで美食を味わうためのガイドブックという体裁をとっているにもかかわらず、今読んでもおもしろいんだと思います。そもそも40年前にヨーロッパに旅行してここに書かれているお店に行くような人が、これをガイドブックとして利用するかというのは疑問な気がしますが。
まぁそんな内容なので、おもしろいことはおもしろいのですが、「ヨーロッパ一等旅行」と「パリの料亭」と2冊まとめられていっぺんに読んでると、正直最後のほうは食傷気味というかもういいかなという気分になりがちなのでほかの本と平行で読むのがおすすめ。あと湯木貞一にヨーロッパ最高の料理を案内するというわりには、あんまり湯木貞一の反応などについて書かれていないのがちょっと残念。

年末は忘年会の季節。めずらしく銀座で飲むことになったので、ちょっと早めに会社を出てポーラ・ニュージアム・アネックスでやっている今城純の写真展「walk home in d elight」へ。いや、ほんとうはギンザグラフィックギャラリーでやっていたヤン・チヒョルト展に行く気だったのですが、26日で終わってしまってたんで‥‥。てっきり月末までやってるかと思ってました。

今城純は、昔、青山ブックセンターで写真集をちょっと見たくらいで、それほど気にしてはなかったのですが、北欧のクリスマスをテーマにしたとういうこと、そしてちらしで使われていた横を向いているサンタのかっこうをした店員がいる小さな小屋のようなお店の前に立ってる二人の女の人の写真がよくてちょっと見に行きたくなりました。
全体的な淡い色合いのカラー写真で、夕方から夜にかけての寒そうな北欧の街を飾る暖かな電飾の光が印象的な写真が展示されています。わたしが北欧に行ったときは夏のはじめの頃で、11時くらいまで明るくて、夕方から夜になるまでの時間がゆっくりとしていてよかったのですが、クリスマス時期の北欧も楽しそう。寒さや日の短さでなんとなく沈んでしまいそうな気持ちとクリスマスが近づいてウキウキするような気持ちが、静かに混ざり合ってる。今城純はそんな街中をカメラ片手にどんな気持ちでどんな足取りで歩いたのだろうか。スキップしたい気持ちとつい方を丸めてしまいそうな気分を抱えながら、でもさ楽しみを胸に歩いて家に帰ったのだろうか(“walk home in d elight”)?

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ちなみに写真集のほうは綾瀬はるか、菅野美穂、蒼井優、市川実和子、夏菜、深田恭子、アリス、チェルシー舞花‥‥などの女優や女性ミュージシャン、モデルのポートレイトを収めた「milk tea」とロンドン近郊の土地を歩き、その風景を切り取った「earl grey」の2冊が出ているようです。