「ちよう、はたり」-志村ふくみ-

◆やぼろじ ガーデンパーティー
明けましておめでとうございます。
今年もカヌー犬ブックスをよろしくお願いいたします。

志村ふくみの本を読むのは「一色一生」に続いて2冊目。仕事に対する探究心やひたむきさはどことなく辰巳芳子に似てる。二人とも1924年、大正13年生まれ。この時代に女性が仕事を持って生きていくためには、どれほどの決意と絶え間ない努力の積み重ねが必要だったんだろうと思う。ちなみに児童文学作家の神沢利子やいぬいとみこ、女優の淡島千景や高峰秀子、越路吹雪も同じ歳です。

志村ふくみは、母親が若い頃に柳宗悦の民芸運動に共鳴して織物を習っていた影響で、17歳の頃から母親から染色を習い、離婚後、30歳を過ぎてから本格的に染色家としての道を歩みます。1957年に、日本伝統工芸展に初出品で入選した後、数々の賞を受賞し、農村の手仕事だった紬織を「芸術の域に高めた」と評価さされることになるのですが、同時に柳宗悦からは「あなたはもう民芸作家ではない。」と言われ破門となります。このことはたびたび出てきて、これが自身の道を歩むきっかけになったと思われますが、わたしの知識では、その言葉がどういう意味を持って発せられたのか、いまいち理解できないままになっています。その後の柳宗悦との関わりについてもまったく書かれていないので破門になったことは事実だろう思うのですが、なんとなく腑に落ちない気分になってしまうのは、わたしがまだ柳宗悦について詳しく知らないからなんでしょうねぇ。

年末はやぼろじ ガーデンパーティーへ行ってきました。
やぼろじは、江戸時代からの旧家を改装してカフェや工房、ガーデン、オフィス、シェアハウスなどに利用しつつ、地元のつながりを大切にしたイベントを行ったりしているコミュニティ(?)。谷保駅というちょっと行きづらい所にあるのですが、自然や畑に囲まれたいい環境でガーデンパーティーでもレットエムインやアンティークエデュコ、古本泡山、ゆず虎嘯といった古道具屋さんや古本屋や、たいやき屋ゆい、やまもりカフェパンとお菓子mimosaなどの飲食店が出店するだけでなく、やぼろじ音楽隊によるライブや鼓狸、餅つきや豚の窯焼きといったイベントも開催されていました。そのせいか子ども連れの人も多く、庭はたくさんの人でにぎわっていました。

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この日ははけのおいしい朝市にも参加しているヨシタ手工業デザイン室の個展も開かれていました。
個展では吉田守孝さんがデザインしたお椀やおたま、ピーラー、ナベシキといった生活用品だけでなく、図面やプロダクトができる前のモック、完成前のパーツなども展示されていました。
どれもシンプルな形のプロダクトなのですが、とりわけ曲線の美しさが目を引きました
会場では手書きの設計図をもとに職人が製品に仕上げていく映像もiPadで見れるようになっていて、例えば一本のステンレスが丁寧に折り曲げられピーラーなどになっていく過程がわかるようになっています。
最初は何を作っているのかわからなくて、ただ金属を折り曲げているだけの映像なのですが、ある工程を経たときに完成する製品が分かる瞬間があり、それを見ていた人たちが、大人も子どもも同じく「あっ」と小さな声を上げて息を飲む光景が印象的でした。なんかマジックというか、ものが生まれる瞬間そこにあって、しかもよくテレビで工場で製品ができるまでの映像を映している番組がありますが、それとはあきらかに違う美しさがあるのです。残念なことにうちの子どもたちは会場で大騒ぎしてしまったので、外で遊ばせておいて、親が交代で展示を見たのですが、こういう瞬間を子どもたちに見て欲しかったですね。