「ひまつぶし」-吉田健一-

◆ゲイリー・ウィノグランド展@タカイシイギャラリーとジョナス・メカス展@ときの忘れもの
婦人画報の連載をまとめたもの。婦人雑誌ということだけあって、「食」や「暮らし」といった身近なテーマを取り上げつつ、戦後の日本についてつづっている。吉田健一はこの手のエッセイが多いけれど、わりと「日本はだめだ」的な話になってそうでなっていないところがよい(なってる場合も歩けど)。この本ではわりとヨーロッパの国と比べるときでも、ヨーロッパが優れているということにはならなくて、ヨーロッパはこうで、日本はこうだけれど、そもそも歴史も違うし、日本はもともとこうだし、まだ戦争が終わって間もないのでこれからこうしていくことが大切なのだ、みたいな感じで話が進められていく。
また戦前戦中に比べて今(と言っても1950~1960年代だが)がよい、もしくは戦前戦中はひどかったと、単純に言うこともなく、戦前にはちゃんとした日本の文化があり、それが戦争をすることで忘れさられてしまったという認識で、きちんと戦前の日本の文化を評価ししているところも吉田健一のいいところだと思う。そして戦争中は、平時ではないのだからそれまでの文化が廃れたり、軽く扱われたりすることは仕方なくて、しかしそれはそれでもう戦争も終わったのだから、これからでも少しずつでもそれを取り戻していけばいいし、そういう文化を軽く扱うような状況を作る戦争をするべきではないのだ、と。ある意味すごく楽天的な人なのかもしれません。

ちなみにこの本の題字は井伏鱒二によるもの。吉田健一と井伏鱒二というと作品を読んでいるだけではなんとなく結びつきません。井伏鱒二の随筆で、銀座・新橋での飲み仲間だったことや一時期、同じ同人誌に参加していたいことが書いてあった記憶があるけれど、まさか飲み屋で飲みながら勢いで書いた(頼んだ)ものでもないだろうし。どういう経緯だったのかちょっと知りたいです。きっとおもしろいエピソードがあるはず‥‥

なんだか最近は展覧会の話しかしていないような気がしますが、年末は、タカイシイギャラリーでやっていたゲイリー・ウィノグランドと、ときの忘れものジョナス・メカスの展覧会を見てきました。

-ゲイリー・ウィノグランドは、もともとは広告の写真を撮っていたのですが、ロバート・フランクの影響を受けて1960年代前半からストリート・スナップを撮り始めた写真家。広角レンズを着けたカメラで、人物などを近い距離から撮影するという手法を用いています。そのため人物だけでなくその周りの風景や歩く人なども一緒に撮影されているのですが、広角レンズで撮っているため、被写体の比率が微妙に変わってしまったり、垂直に建っているはずの建物が斜めになってしまったりして、不安定な構図の写真になっています
ただ写真自体は実験的というほどのものではなく、基本的にはニューヨークの路上を写し取った作品という感じでした。
展覧会では「The Animals」(1969年)と「Women Are Beautiful」(1975年)の2つのシリーズからの写真が展示されており、基本的にはニューヨークの路上を写し取った作品と言えるもので、実験的な要素はちょっとしたスパイスという感じでした。
偶然にも、ちょうど何年かぶりにOM1にフィルムを入れて子どもを撮っていたので、すぐに真似をしたくなるわたしとしては、OM1に広角レンズを着けていろいろ撮ってみようと思ったりしてます。

-ジョナス・メカスのほうは「ジョナス・メカスとその時代展」というタイトルどおり、アンディ・ウォーホルやピーター・ビアード、ジョン・ケージといったアーティストの作品も展示されていて、ジョナス・メカスの作品は10点ほど。ただ日替わりでジョナス・メカス映像作品の上映も行われていました。わたしが行ったときも「Walden」という日常の風景を切り取った作品が上映されていましたが、時間がなくてちょこっと見て出てきてしまいました。映像もいいけれど、1時間以上見続けるのはちょっと辛いかも?それよりもやはりフィルムをつなぎ合わせてプリントした作品のほうが好きですね。ジョナス・メカスはきちんとまとめた形の展覧会をどこかでやって欲しいなぁ。

ほんとはもうひとつ、仕事納めの日にフレックスで早めに会社をあがって、ステーションギャラリーでやっていた「植田正治のつくりかた」も見ようと思っていたのだけれど、こちらは仕事が終わらず見れず。年が明けて開催期間が終わってしまいました。ザンネン。
大きな会場の展覧会はある程度時間をとらなくてはいけないので、なかなか行けないけれど、ちょっと時間が空いたときに寄れるギャラリーには、今年も都合がつく範囲で行きたいと思ってます。