「名残りの東京」-片岡義男-

◆片岡義男と東京とワールドハピネス
あんまり見つからないこともあって、最近は片岡義男の本をチェックしていない。昔作っていたフリーペーパーに、夏は暑くて難しい本なんて読む気力が出ないから、片岡義男のエッセイくらいが軽くもなく適度に理屈っぼくてちょうどよいのだ、みたいなことを書いたっけ。
そんな片岡義男のエッセイに自身の写真が添えられるようになったのはいつ頃のことなのか分かりませんが、気がつけぱ、写真だけの本(写真集ともいう)を何冊も出すようになっていて、ウィキペディアに「写真家としても活躍している」などと書かれるようになってました。

この写真集もそうだけれど、基本的には、東京の片隅で忘れられた風景や物を写した写真が多い。それらの写真を写真としてどう評価するかについては、わたしはまだ結論が出ていないのだけれど、少なくとも片岡義男の東京に対する想いみたいなものが伝わってくる。そもそも片岡義男がいまだに東京に住んでいて(いや、住んでないのかな、わかりません)、今でも、いい意味でも悪い意味でも東京という街にこだわっているということが、なんとなく不思議な気がします。
単なるイメージでしかないけれど、とっくの昔にハワイとかロサンゼルスとかに移住して悠々自適な生活を送りつつ、ときどき雑誌の連載をまとめたエッセイなどを出してます、みたいな生活を送っていても不思議ではないと思うんですよね。もしかしたら、東京と同じように、片岡義男が昔ハワイという島に感じていた「何か」はなくなってるのかもね。適当ですが‥‥。

そういえば片岡義男が愛用しているカメラはオリンパスOM1ということをどこかに書いていて親近感を覚えたものだけれど、今でも使っているのでしょうか。いきなりデジカメとか使ってないですよね。これも個人的な勝手な思い込みですけど、OM1でなくてもよいので片岡義男にはフィルムのカメラを使い続けてほしいです。

土曜日は中日黒を歩きまわり、日曜日はワールド八ピネスに。実を言うと前日まで日曜がワールドハピネスだってことを忘れていたのだけれど、夜、友だち誘われて気がついた次第。ちょっと体調が悪かったし、日曜にやろうと思っていたこともあって迷ったのですが、ミオ犬と電話で話していたら 「ワールドハピネスなんてあと3年は行けないよ」と言われ行くことに‥‥。そう言われちゃったらねえ~

今年は炎天下→夕立ちというワールドハピネス始まって以来の過酷な天気だったらしいのですが、まあぎりぎり持ちこたえました。もうちょっと気温も低くてときどき曇るような天気で、のんびりビールでも飲みながら見たかったってのはありますけどね。友だちがいろいろ食べものを作ってきてくれたりしたんですけど、ほんとのんびり食べたり飲んだりって感じじゃなかったですもん。

それでもライブのほうは楽しかった。特によかったのはビートニクスとKimonos、 Salyu×Salyu、そしてYMO。
YMOは初めてライブを見たのですが、原曲を崩しているわけではないのだけれど新しい音楽になっているという曲のアレンジと演奏がすごかった。この演奏を見るだけでも毎年来てもいいと思いましたね。あと、なにげに一番見たかったSalyu×Salyuは4人のメンバーとバツク合わせて全体のアンサンブルが、決まっていて隙がなかったです。逆にその隙のない分、ときどきマントラみたいな瞬間もありましたが(笑)。

なにげにキッズコーナーも充実していたし、下は芝生だし、子ども連れも多かったし、最後までいないにしても、天気が良かったら来年は漣くんを連れて行けたらねえ、なんて思ったりするけれど、どうだろうねえ。

「ウェイストランド・ガイド」-後藤繁雄-

◆僕らがポラロイドで写真を撮る理由。(そんなことはひと言も書いてない)
この本は何年か前に、カヌー犬ブックスで売ってしまったのをちょっと後悔していた本。先日、古本屋で見つけたので、後悔しないようとりあえず購入してみました。

前に持っていたときはポラロイドの写真だけしか見てなくて、旅日記のほうはまったく読んでなかったのですが、今回買いなおしたことだしと思い、日記のほうも読んでみたら、ピーター・グリーナウエイやデレク・ジャーマン、ガス・ヴァン・サント‥‥など、90年代のアイコン的な人が出てきて、ちょっぴり懐かしい気分になりつつ、ポラロイドの独特な色合いの写真と合わせてみていると、、今の現実から浮いてしまっているかのような錯覚に陥ってしまいます。

最近「ふらふら日記」「歩くキノコ」「世界漫遊随筆抄」となぜか旅の本ばかり読んでいるのは、まったくの偶然なんだけれど、なんとなくどこかに行きたいなあという気分のあらわれなのかもしれません。まあよくわからりませんが。そもそもわたしはあんまり旅行とかに行くほうではないのですよ。かといって、一日中家にいるのも好きじゃなくて、もし長い休暇があったら、毎日、カメラとか持って近場をふらふらして過ごすんじゃないかと思う。そうやってふらふらすることで旅への欲求を少しずつ発散させているのかも、なんて思ったりして。でもそう書くと、旅行好きの人は普段はインドアの人が多いみたいな感じになっちゃうけど、実際はどうなんでしょうねえ?
そんな気分で、長畸に行ってきました~、ってそれはけっこう前の話ですね。

さて、週末、中日黒のIMPOSSIBLE PROJECTに展示されている、水原希子をホンマタカシがポラロイドで撮った写真を見てきました。水原希子はモデル出身で「ノルウェイの森」に出ているらしいです。とはいってもわたしは「ノルウェイの森」も見てないし、最近はテレビもあんまりみていないのでよくわかりません。
店内には、元の写真はもちろん、かなり大きなサイズのものなども展示されていたのですが、モノクロ~セピアな色のイメージということもあり、意外ときれいに引き伸ばされていてよかった。やっぱりホンマタカシの写真はいいな、と思いつつも、「ニュードキュメンタリー」以降、どうもホンマタカシのことが信じられなかったりして‥‥。

ついでに、わたしの持っている690用のカラーフイルムをひとパック購入。春頃に690用のカラーフイルムが、IMPOSSIBLE PROJECTから発売されてから、なんとなく買うきっかけがつかめないままだったのですが、そんなに中日黒まで来ることもないだろうということで、記念ですね。(実際はマップカメラとかで買えますが‥‥)

これからもポラロイドカメラで写真を撮るかどうかで、やっぱりネックになってるのは、8枚入りで2500円という値段と撮った後すぐに遮光しなくてはいけないところ、かな。わたしはポラロイドはわりと日差し強いところで撮ることが多いのでちょっと使い勝手が悪い気がしてます。でも、今はちょっと高かったり使い勝手が悪いけれど、それでも使っていくことで、今後、フィルムが改良されていったりするんじゃないかな、という気持ちもあります。そんなにたくさんの写真をポラロイドで撮っているわけでもないし、仕事などに使っているわけでもないし、ときどき撮るくらいペースで貢献できればいいんじゃないか、と。

でもそのときどき撮るペースで、わざわざポラロイドを使って撮りたいものが何なのか、いまいち分かんないってところが問題なんだな。

「さくらんぼ」-永井龍男-

◆今週はギャラリーバウハウスで「ロバート・フランク写真展」を見たあと神保町をうろうろ。
永井龍男の長編はもともと期待していないのだけれど、それでもこれはどうなのか?という気はする。学校を舞台としているわりにはそれほど教育ということに焦点を当てているわけでもないし、男女4人の恋愛も最後の方で早急にまとめた感じになっていて中途半端。短編はあんなにいいのにね。
表紙は堀文子という画家のイラスト。ウィキペディアによると1967年から大磯に住んでいて、「花の画家」と呼ばれていた日本画家。「キンダーブック」「ふたば」などの挿画、装幀も手がけていたとのことで、ちょっと気になります。

今日から8月、東京は海の日くらいからあんまり天気がよくなくて、あんまり暑くなることもなく、夜に雨が降ったりする。日曜は夕方くらいまで雨が降っていたので珍しく一日中家にいたりした。雨が降らなければ散歩日和と言えるんだろうけど、カメラを持ってうろうろするにはなんとなく光が足りないんですよね。今日から8月、今年はこんな感じで夏が過ぎていくんでしょうかねぇ。

お茶の水のギャラリー・バウハウスでやっていた「ロバート・フランク写真展」が土曜までだったので、すぺりこみで見てきました。実を言うとギャラリーのホームページを見たら、「1950~90年代にパリ、ロンドン、デトロイト、ニューヨーク、ロサンゼルス、カナダのノヴァ・スコシア、東京などで撮影されたモノクローム作品」という説明がされていて、「いや、それってバラパラってことじゃないの?」などと思っていたのですが、ロバート・フランクのオリジナルプリントは、ワシントンのナショナル・ギャラリーに寄贈されていて、見る機会もあまりないようですし、ついでに神保町を歩くのもいいかな、と。
実際、作品のテーマと表現方法が大きく変わっているわけではないので、年代や場所の違いで違和感を感じるようなことはなかったです。
「1949~51年にかけてパリで撮影された花をテーマにした写真と、1955年の夏にヂトロイトの自動車工場リヴァー・ルージュで撮影された写真を対照的に構成」するというパート2は、9月3日から。こちらも見に行きたい。

そのまま駅まで戻って神保町へ行く前に、近江屋洋菓子店でサンドウィッチを食べる。近江屋に行くのは本当に久しぶり。調べてみたら神田のほうは2005年12月、本郷のほうは2008年2月に最後の行ってるみたいです。5年以上ぷりの神田店もお店の雰囲気も変わってないしフレッシュジュースなどのドリンクが飲み放題なのも変わってない。そしてケーキや総菜パンも相変わらず素朴な感じうれしい。今だとバイキングのメニューにかき氷もあってイチゴのシロップやあずきなどを自分でかけて食べられます。日曜にくらべれば土曜はときどき日差しが強くなったりして夏っぽかったけれど、かき氷をがんがん食べる気温でもなかったので、氷少なめ、シロップ、あずき多めして作ってみたり‥‥。

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もう少し近けれぱ、漣くん連れてきたりできるのかもしれませんが、さすがに本郷と神田じゃちょっと遠い。一緒に来たらジュース飲み放題だしめちゃくちゃ盛り上がりそう。
しかしひとり暮らしになってみると、2009年から時計が止まったものやことがたくさんあるなぁと思う。逆にそこから時計の針が進み始めたもの多んですけどね。

「男の風俗・男の酒」-山口瞳、丸谷才一-

◆写真展をはしごしてみた。植田正治、桀築&映里、安井仲治
今年の夏は、いろいろ展覧会とかをまわりながら近くを散歩する、みたいな感じで週末を過ごそうと思ってる。いまさらまとめて映画を観てもたかが知れてるし、夜遊びするような歳でもないし、いきなり山に登ったり、スポーツをしたりということもまぁできないし、特にこれをやりたいという趣味も意外とないんですよ。
で、さっそく日曜日にいくつかギャラリー巡り。ほんとは東京国立近代美術館でやってる「パウル・クレー展」とフォイル・ギャラリーの「川内倫子展」を見たかったのだけれど、前者はものすごく混んでいるみたいだったし、後者は土曜までだったの行けず。クレー展は31日までなのでまだ悩んでるけど‥‥。

一つ目は、植田正治の雲をカラーのフィルムで撮ったシリーズを中心に展示されている「雲のうつくしい日に。」。植田正治というとやはりモノクロ写真のイメージが強いし、基本的に演出されたものが多いので、たぶん何の前知識もなしにこの作品を見たら植田正治と気づかないんじゃないかと思う。
でも、晩年にカラーでしかも雲という演出できないものを撮っていたということだけでも興味深い。そして、演出できない雲の写真でも構図など植田正治っぽさを感じられるところが発見できたりするのもおもしろいところでした。まあたぶんわたしの思い込みに過ぎないんでしょうけれど‥‥。写真展は京橋にある72Galleryで今週末31日までやっています。

さて京橋から途中、戦前アパート建築と有名な奥野ピルの前を通って銀座に移動。奥野ピルは去年も何かの展覧会を京橋に見に行ったついでに寄って、その時はエレベーターに乗ったり、ギャラリーをちょっとのぞいたりしましたが、今回は玄関にちょっと入っただけで通り過ぎただけ。ピルの中はギャラリーが多いので、機会があればちゃんと調べて各階のギャラリー巡りをしてみるのもいいかも。
しかし古い建物にはたいていの場合ギャラリーかアンティークショッブが入ってる気がするのですが、なんでなんでしょうね。

銀座では資生堂ギャラリーで、「桀築&映里写真展一三生万物」を見る。築築&映里は中国人写真家の桀桀(ロソロン)と日本人写真家の映里(インリ)が夫妻で活動しているユニット、実を言うと今回いろいろ展覧会を調べているうちにはじめて知りました。
北京が開発されていく様子や二人で暮らしているときから子どもたちが生まれたり大きくなっていく様子をを6×6のフィルムで撮ったシリーズが展示されていましたが、時の流れに沿った作品ということや、そもそもの中国の風景、モノクロで正方形の写真の四隅が暗くなっている感じ、などどこか古い映画の一場面を見ているようでした。
しかし家族で同じ場所で同じような構図で定期的に写真を撮っていくというのはいいかも。わたしもやっておけぱよかったと思いました。もう遅いですけどね。

最後は、銀座から中野坂上へ。東京工芸大学の写大ギャラリーにて、安井仲治の写真展。社会的なメッセージ性の強いものから芸術的なフォトモンタージュ、そして街角のスナップまで、被写体として選ばれているものは幅広いけれど、どれも確固とした作風で貫かれていて素人には絶対近づけない作品としての重みに圧倒されてしまいます。

さて、来週はどこに行こうかな~。

「沢がに」-尾崎一雄-

◆長崎で60cmのパフェを食べてきましたっ
「昔日の客」を読んだせいで、かなり前に買ったまま本棚に置きっぱなしになってした尾崎一雄の本に手を伸ばしてみた。最近は積極的に尾畸一雄の本を探したり読んだりしなくなってしまっているので、こういう機会に読んでおかないとね。
なんて書いてみてるけど、尾崎一雄の随筆はやっぱりおもしろい。書かれていることと言えば、曽我での日々の暮らしの様子や昔の思い出話、友人についてなどいつも同じなのだが、その繰り返しさえも文章のうまさと相まって深く感じられてしまう。いや、時間を空けて読んだから、なんかゆつくりとしみ込んでくるような深みを感じられたのかもしれない、なんて。4、5冊続けて読むと、もういいかな、という気分になっちゃうのも正直なところなわけで‥‥。

ちなみに昔読んだ尾畸一雄の本のほとんどは二宮の実家に送ってしまってます。うちはわたしが小学生の時に横浜から二宮に引っ越してきたし、子どもの頃もあんまり小田原方面に遊びに行くこともなかったので、尾崎一雄が書いているような曽我の風景は、わたしにも、たぶん、親にも記憶にないと思うけれど、やはり親しみがわいて、よく読んでいるらしい。まぁうちの周りとか家は増えているけれど、風景としては子どもの頃からあんまり変わっていないような気もしますけどね。

さて、連休からミオ犬と漣くんが長崎に帰省するに合わせて、わたしも一緒に長崎に行ってきました。
二宮と違って長崎はいろいろと観光するところがあるけれど、まぁ今回は二人を長崎まで送り届けるってのが一番の目的でしたし、何よりも梅雨も明けた晴天続きで子どもを連れて歩くには暑かったです~!いや、子どもだけならいいんですけど‥‥。

それでも夕方くらいから出かけて、前々から食ぺようと思っていたオリンピックというカフェで60cmのパフェを食べました。ここはひとり一品注文しなきゃいけないというわけではなく、一つのパフェを何人で食べてもいいので、思い切って大きなパフェを頼めます。隣では6人くらいの大学生の団体が、「ひとり20cm<らいなら食べれるんじゃない」などと言いながら、100cmだか120cmだかのパフェを盛り上がりながら食べてましたが、うちなんて二人+二歳児で60cmを軽く食べられましたよ~
一応崩れないように真ん中に串が刺さっていますが、アイスとかソフトクリームがあいだに入っていたりするので、食べきれるかどうかよりもうまく崩さないで食べられるかということのほうが重要なのかもしれません。

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あとはグラバー邸に出かけたり、中華街でごはんを食べたり、港の近くを散歩したりって感じ。金曜日をお休みにしたので四連休だったのですが、最初と最後の日は移動で終わっちゃったし、そもそも旅行が目的ではないし、これだけ行けれぱ十分。たてまつるにも行きたかったけれど、それは、次回、9月後半に持ち越し。でもそのときはどんなこといなってるんでしょうねえ~観光とかしている余裕はないのかもしれませんねえ~ふふふ。

そんなわけで漣くんが生まれてから夏の終わりのころに帰省するようになっていたけれど、今年の帰省はちょっと長い。こんなに長い期間一人暮らしをするなんて10年以上ぶりなんでなんかドキドキしちゃってます。って、特に大きな予定もないんですけど、とりあえず展覧会にはいろいろ行きたいな、と思ってるんですけどね。

「昔日の客」-関口良雄-

◆古本屋と作家のやりとりと同じように中古レコード屋と音楽家のやりとりも読んでみたい、かも?
前回「正宗白鳥の本は前々から読んでみたいと思ってはいるんですが、実際どれから読んでいいのかよくわかんないんですよね」と書いた正宗白鳥の宅に競り落とした初版本20数冊を勝手に届けに行く話が一篇目に出てきて、つい引き込まれてしまった。世界はつながっているんですよ。正宗白鳥と奥さん、そして著者3人のキャラクターや著者の描写のうまさもあって、正宗白鳥宅での奥さんや本人とかわされる話の雰囲気が何ともいえずよくて、これを読んでいるとほんとに正宗白鳥の本を読まなくちゃという気にさせられてしまいます。ちなみにこれほど正宗白鳥のファンである著者でさえ、「評論的なものは面白いから殆ど目に触れるものは読んできたが、小説は相変わらず面白くなく、読んだものもあるが読まないものもある」とのことなので、まずは評論から読むことにしよう、と決めました。

このほかにも尾崎一雄、尾崎士郎、上林暁、野呂邦暢‥‥といった作家が登場し、古本を通したやり取りやエピソードがつづられている。一概に言えないけれど、青木正美さん出久根達郎さん、「月の輪書林」の高橋徹など、古本屋さんが書いた随筆、特に昔のものはおもしろい。
今でも神保町とか行けぱ古本屋と作家との交流があるんだろうか?と思うが、神保町だとちょっとつきあいの雰囲気が変わってしまいそう。普通の町の古本屋にふらりと売れない頃の作家がやってきたり、文学について語ったり、お金に困って本を売ったり‥‥というシチュエーションがよいのだと思う。
それからそもそも作家との交流が書かれているからこの本がおもしろい、というわけではなくて、関口良雄さんの本に対する情熱やその人柄、そして文章の巧みさ‥‥などがブレンドされているからこそのおもしろさ、だったりしますしね。

ふと、こんな風な随筆を中古レコード屋の店主が書いたらおもしろいかも、なんて思ったけれど、ダウンロードが主流になるつつ今となっては、それももう時代遅れなのかもしれません。80年代から90年代くらいの中古レコード屋さんのエッセイとか、なんとなく今読みたいような気もする。
本屋とかカフェとか雑貨屋、パンやケーキ屋の人が書いた本はたくさんありますが、レコード屋ってあんまりないですよね。ふと思いついたものとしてはパイド・パイパー・ハウスの店長が書いた「輸入レコード商売往来」くらいか。あとジャズ喫茶の店長とかだといろいろ出してそうなんだけど‥‥。

「世界漫遊随筆抄」-正宗白鳥-

◆「ジョセフ・クーデルカ プラハ1968」@東京都写真美術館
昭和3年、11年と二回わたるアメリカ・ヨーロッパの旅行、また昭和10年に樺太、中国などを訪れた際に書かれた随筆などをまとめた本。
全体的に行く先々の風景やそこで出会う人たち(特に現地で暮らす日本人)の様子が冷静な視線で描かれているだけれど、微妙に否定している国と持ち上げている国があって興味深い。文章が感情的でない分、それがどこから来ているのか本当の理由がわからないんですよね。いや、単にわたしの読解力が足りないとか、もしくは正宗白鳥の本を読むのは初めてという知識不足が原因なのかもしれませんけど‥‥。正宗白鳥の本は前々から読んでみたいと思ってはいるんですが、実際どれから読んでいいのかよくわかんないんですよね。と言っていては何にも進まないので、近いうちに何かしら読んでみることにしたい。

さて、話が変わりますが、5月から写真美術館で、チェコスロバキア出身の写真家、ジョセフ・クーデルカの展覧会が開かれていて、ポスターなどを見るたびにちょっと行きたいなと思っていたんですけど、週末はなかなか出かけられないし、開催時期も7月18日までだったのであきらめてました。
でも前日とりあげた「歩くキノコ」を読んでいたら、チェコに行ったところでクーデルカの話が出てきたので、やっぱり見ておきたくなってしまって、ちゃんと調べてみたところ、写真美術館は木曜、金曜は8時まで開館しているので、早めに会社を出れば見に行けそうな感じではある、ということが判明。知らなかった~うそ、知ってた。
まあそれで、ちょうど期末の余裕のあるときだし、金曜日あたりに行こうかな、行けるかな、なんてと思っていたら、友だちがチケット手に入れたんだけど行けなくなったのでくれるとのこと。いやーなんかクーデル力展に引き寄せられてますよ、運命ですよ。なんて、ひそかに盛り上がりつつ、早めに、っつうかフレックス使いまくりの早さで写真美術館ヘレツツゴー!

今回の展覧会では、1968年8月のワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻「チェコ事件」の写真を収録した写真集「lnvasion 68 Prague」からの写真が展示されています。ソ連を中心とした軍隊が街の中で市民と対立する様子が、至近距離から切り取られていて、写真の力強さや勢い、そして兵士や市民の表情などの臨場感がすごかったです。これはどこからどうやって撮ったのだろうと思うものもたくさんあって、よく軍に拘束されるんじゃないかともう40年以上前のことなのにドキドキしてしまいました。

ただ、オリジナルプリントじゃなくて、パネルに印刷した感じで、写真展としてはどうなんだろうという疑問はありました。開催されている場所が小さなギャラリーとかだったら許せるけど、写真美術館ですから。パネルとプリントではー枚の写真から発散される情報量が絶対的にちがうと思うんですけどね。写真に交じって展示されていたポスターもモノクロのコピーみたいな感じで無造作に壁に貼り付けられてたし、その辺は演出としてこういう形での展示にしたのだろうか?そうとしてもー枚のパネルに何十枚もの写真を並べたものとかはちょっと安易な気がしましたが‥‥。

報道写真や戦争写真をじつくりと見るのは、前に何を見たか思い出せないくらい久しぶりなんだけど、街角のスナップ的な写真に比べて情報量と訴えようとする力が圧倒的に違ってて、見ているとクラクラしてしまいます。好き嫌いにかかわらずこういう写真を定期的に見ておくべきだなということを実感、まあそれだけに‥‥だったらもっと‥‥(何度繰り返さないっ!)

「作家のおやつ」-コロナブックス編集部-

◆今年の夏は在宅勤務して仕事の合間に「作家のおやつ」に出てくるようなおやつを食べたい、のだ!
コロナブックスの「作家の~」シリーズは、このほかにも「作家の家」「作家の食卓」「作家の酒」「作家の犬」「作家の猫」などいろいろ出ていいますが、この本が一番ヴィジュアル的によさそうかな気がします。まあ個人的な趣味ですが‥‥。でもほかの本も欲しい。少なくとも「作家の食卓」「作家の酒」は手に入れておかなくては。

三島由紀夫のプチガトーや植田正治のフルーツケーキ、向田邦子のシュークリーム、植草甚一のお団子、小津安二郎の半生菓子、池波正太郎のホットケーキ‥‥といった作家がひいきにしたおやつが、実際にそこで食べたと思われる仕事部屋や机などと一緒に撮られた写真や、そのおやつについての作家自身の文章の引用が掲載されていたりして本全体としていい雰囲気になっています。やっぱりおやつは色合いがきれいだったり形がかわいかったりするので、基本的には落ち着いた雰囲気の作家の仕事部屋と一緒だと映えますね。この辺「作家の食卓」「作家の酒」だとどんな感じになってるんでしょう。
そういった演出もあって、どれも高級でおいしそうに見えるのだけれど、中にはABCビスケットやさーたーあんだぎー、森永のキャラメルなど庶民的なおやつもあり、実際の値段よりもやはり趣味のよさというのがにじみ出てるという感じです。仕事の合い間にこんなおやつを食べたいものだけれど、まあ会社じゃ雰囲気でないッス。

ちなみに今日の夜の作業のおやつは、St.Michelのガレット。週末に吉祥寺に行ったときにパルコのB1にできたジュピターという輸入食料品店で買ったもの。St.Michelというメーカーを初めて知ったんですけど、フランスではNo.1ビスケットとして35%以上のシェアがあるらしいです。まぁ味の方はいかにも外国のお菓子らしいバターのきいたビスケットなんで、どうということもないんですけどね。

話は逸れますが、むか~し、初めて調布のパルコに行ったときに、地下が食料品売り場になってて「パルコなのに!」とびっくりした記憶がありますが、輸入食料品とはいえ、吉祥寺のパルコのB1も1/4くらい食料品売り場になってしまって、なんだか「‥‥」という気がしてしまいました。いやわたしが知らないだけで、ほかのパルコって普通に地下は食料品が売ってたりするんでしょうか。

「歩くキノコ」-飯沢耕太郎-

◆匙屋さんの店先で食べたいちごのかき氷、夏はもうすぐ?
今日は、国立の匙屋さんの店先で開店していたたいやきやゆいさんのかき氷を食べに行ってきました。天気的にはかき氷日和!というわけではありませんでしたが、逆に先週の平日のような天気だったら、駅から匙屋さんまで歩くだけで汗だくになってしまうだろうし、匙屋さんの前にだらだらとしゃべったりすることもできないので、これはこれでよかったのかもしれません。

夏みかんが売り切れていたので、うちは苺のに練乳をかけたもの、お店の前で合流したTAIYODOの菅藤さんは抹茶を頼んでみんなで食べました。苺の果肉がちょっと残ったところ手作りの練乳の甘さが程よくて、抹茶は外には粒あんがかかっていて、氷の中にはこしあんが入っているという手間のかかったものでした。かき氷自体もキーンと冷たい~!というよりも、ふわっとしたやさしい食感で涼しい時に食べたからといって体が冷えてしまうようなこともなかったです。

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匙屋さんの前にはニチニチ日曜市に出ている古本泡山さんがいたり(いつもちゃんと話したいと思ってるのですが、なかなか話せない‥‥)、あとから「みんな丘へ!」のメンバー(って言ういい方でいいのか?)トモキくんが自転車で店の前を通ったりして、ご近所さん集まる、みたいな感じになってました。
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ちなみに、匙屋に行く前に、籠太でお昼ご飯を食べたときも、お店で赤ちゃんを連れたOさんに偶然会ったし、その後に行った黄色い鳥器店では、お店の人とお客さんが、わたしが昔勤めていた会社の同僚と思われる人の話をしていたりして、なんだか不思議な一日だったな。

さてこの本は、最近では、文学から漫画・音楽・映画と、古今東西のあらゆる「きのこ本」に言及した「きのこ文学大全」や、萩原朔太郎や夢野久作、泉鏡花、北杜夫、宮沢賢治など「きのこ文学」を16作品を集めたアンソロジー「きのこ文学名作選」、「世界のキノコ切手」「考えるキノコ摩訶不思議ワールド」など、きのこに関する本を出している飯沢耕太郎による東アフリカとトルコ・ヨーロッパを巡った6か月間の旅行記。

作家など著名人らしい快適な旅というわけではなく、かといってバックパッカー的な旅でもないある意味とらえどころのない旅なんですけど、もともと、飯沢耕太郎が1979年から1980年にかけて日本アフリカ文化交流協会スワヒリ語学院の学生としてケニアのナイロビで過ごしていることもあっての15年ぶりの東アフリカなので、単なる旅行記・紀行文にはなってないです。

「INVITATION」-マーク・ゴンザレス-

◆新しいカメラを買いました!
マーク・ゴンザレスの作品は一見すると単純な線のまるで子どもの絵のようなんだけれど、どことなくユーモアがあって暖かい感じがするところがいい、なんて言って書き始めてはみたものの、実はトーマス・キャンベル、ハーモニー・コリン、マイク・ミルズ、トミー・ゲレロ‥‥といったシーンの他のアーティストたちのイメージと重ねてしまっているところもあるような気がします。

まぁそういうシーンとしてのつながりも含めて好きなわけで、はたしてこの本に掲載されている作品をなんの前知識もなく見たらどう思ったのだろうか、ということはやはりどうでもいいのかもあしれない。むしろ他のアーティストの作品も積極的に見たり、聴いたりしていくことで、より楽しめるようになるんじゃないかと思うんだけれど、そういう楽しみは邪道なのだろうか。なので「ビューティフル・ルーザーズ」は必見ののアイテム。わたしは映画館に見に行けずいまだに見れていないけれど‥‥

さて、話は変わりますが、10年以上使っていたコニカのBig miniの液晶部分が壊れてしまって、設定がまったく見れなくなってしまったので(前回もこの部分が壊れて買いなおしたんですよね~)、これを機に新しいコンパクトカメラを買いました。いろいろ迷ったのち結局、ニコンの35Tiを購入。最初はリコーのGRにするか、コンタックスのT2もしくはT3にするかなど思っていたのですが、まっ最終的には35mmということと価格、そしてデザイン、ですかね。
デザインについては、当時は(今も?)上部にあるクルクル針に気に入って購入した人が多いみたいですが、わたしはここについてはそれほどいいとは思えなくて、四角いところやチタン合金色と黒の箇所のバランスを含めたちょっと古い感じの全体感が気に入ってます。
ネットを見てると28Tiの黒塗装のよさだったり、コンタックスT2の機能のよさだったりが書かれているけれど、カメラにかかわらず、わたしが自分が使う道具を決める要素としては、期待する性能から大きくかけ離れているような場合でなければ、この全体感が気に入るかどうかが、購入を決める大きな要因になることが多いです。

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結局のところ自分にとって必要な機能なんて使っていくうちに代わっていくものだし、使いやすさについても実際に何年も使ってみないと分からないところが多い。それよりも機能に合わせて使い方を変えていったり、使いやすさも逆に使うものに合わせて自分を変えていったほうが楽。ただそのためにはそのものが好きじゃないとだめなわけで、長く使うにはそっちのほうが大事なんですよね。

早く試しで撮ってみてどんなふうに写るのか確認したいのですが、週末まで出番はなさそう。しかも家にあったフィルムが36枚撮りを入れてしまったので、来週末、フィルム一本撮りきれるかも微妙。とりあえず次の週末に雨が降らないことを今から願ってますっ。