◆古本屋と作家のやりとりと同じように中古レコード屋と音楽家のやりとりも読んでみたい、かも?
前回「正宗白鳥の本は前々から読んでみたいと思ってはいるんですが、実際どれから読んでいいのかよくわかんないんですよね」と書いた正宗白鳥の宅に競り落とした初版本20数冊を勝手に届けに行く話が一篇目に出てきて、つい引き込まれてしまった。世界はつながっているんですよ。正宗白鳥と奥さん、そして著者3人のキャラクターや著者の描写のうまさもあって、正宗白鳥宅での奥さんや本人とかわされる話の雰囲気が何ともいえずよくて、これを読んでいるとほんとに正宗白鳥の本を読まなくちゃという気にさせられてしまいます。ちなみにこれほど正宗白鳥のファンである著者でさえ、「評論的なものは面白いから殆ど目に触れるものは読んできたが、小説は相変わらず面白くなく、読んだものもあるが読まないものもある」とのことなので、まずは評論から読むことにしよう、と決めました。
このほかにも尾崎一雄、尾崎士郎、上林暁、野呂邦暢‥‥といった作家が登場し、古本を通したやり取りやエピソードがつづられている。一概に言えないけれど、青木正美さん出久根達郎さん、「月の輪書林」の高橋徹など、古本屋さんが書いた随筆、特に昔のものはおもしろい。
今でも神保町とか行けぱ古本屋と作家との交流があるんだろうか?と思うが、神保町だとちょっとつきあいの雰囲気が変わってしまいそう。普通の町の古本屋にふらりと売れない頃の作家がやってきたり、文学について語ったり、お金に困って本を売ったり‥‥というシチュエーションがよいのだと思う。
それからそもそも作家との交流が書かれているからこの本がおもしろい、というわけではなくて、関口良雄さんの本に対する情熱やその人柄、そして文章の巧みさ‥‥などがブレンドされているからこそのおもしろさ、だったりしますしね。
ふと、こんな風な随筆を中古レコード屋の店主が書いたらおもしろいかも、なんて思ったけれど、ダウンロードが主流になるつつ今となっては、それももう時代遅れなのかもしれません。80年代から90年代くらいの中古レコード屋さんのエッセイとか、なんとなく今読みたいような気もする。
本屋とかカフェとか雑貨屋、パンやケーキ屋の人が書いた本はたくさんありますが、レコード屋ってあんまりないですよね。ふと思いついたものとしてはパイド・パイパー・ハウスの店長が書いた「輸入レコード商売往来」くらいか。あとジャズ喫茶の店長とかだといろいろ出してそうなんだけど‥‥。