「モーニング物語」-獅子文六-

-■同じシリーズの「山の手の子町ッ子」はときどき見かけるけど、こちらは見たことがなかったので、ちょっと値段が高めだったけれど、めずらしく即購入。しかし収録されているうち半分くらい読んでました。でも獅子文六の随筆は何度読んでもおもしろいので許す。話のテンポがよくて読みやすいということもあるけれど、話の持って行き方に品があるというか、慶応の野球選手だったお金持ちの旧友が、後年後楽園の入り口でモグリの客をさばいていたりする話なんて、書き方によっては下世話になってしまいそうなのに、そういう方向にはいかない。旧友なんだけれど、旧友だからと言うわけではなく、威厳を持ってその仕事をしている様が描かれており、悪意がない(まぁ実際はどうなのかは別で、獅子文六はそう感じてる)。そういう品の良さが小説にも出ていて、それをよいと思うか、軽いと思うかで獅子文六への評価って変わってしまうんだろうな、と思う。
ちなみに表題はパリの留学時代に仕立てたモーニングの50年にわたる話で、それほど着る機会もないまま戦火も逃れ、数少ない機会のために補修をし、最後には流行がひと巡りしたため現代風に感じられてしまうというオチになってます。ってわざわざ書いたのは、読むまで「モーニング物語」の“モーニング”は、“朝/午前中”だと思っていたので、読み始めて「あれ?」と思ったからw。

-■漣くんがちょっとだけ戦国武将に興味を持ってきてるので、3連休は二宮に行くついでに小田原城に行ってきました。お城の中に入るのは小学生くらい以来かな。子どもの頃は平塚に出ることが多かったし、中高生になると横浜まで行っちゃうことが多かったので、あまり小田原に行った記憶がない。でも車から外の景色を見ていたら、昔ながらの建物がまだいくつも残ってるし、川崎長太郎の小説に出てくる抹香町もあるし、今になるとゆっくり歩きたいと思うところがたくさんある。
そういえば、ニュースサイトを見ていたら、村上春樹の新しい本「騎士団長殺し」は小田原が舞台になっているって書いてあったけど、小説の中に地名とか出てくるのでしょうかね。

■ところで、子どもが小さいときは手を離せなかったので、なかなか一人で出かけることができなかったけど、ある程度成長したら、親に子どもたちの相手をお願いして、一人でちょっと出かけたり、学生時代の友だちと飲みに行ったりできるかな、とずっと思ってたんですけど、当然ながら子どもが成長するにともない、親も歳を取ってしまって、最近は男の子二人をあずけるのはちょっとためらってしまいます。あぁむずかしい。なにげに国府津とかも歩いてみたいんですよねぇ。

「浅草紅団・浅草祭」-川端康成-

-■もう3月も半ばですが、これを読んだのは年末年始にかけてで、新年ということで浅草を舞台とした小説を読んでみたんですよね。不良集団「浅草紅団」の女首領弓子とのやり取りを中心に、カジノ・フォウリイの出し物や踊子たち、浮浪者、娼婦‥‥といった登場人物が、関東大震災以降の浅草という町を案内する。ちょっと表現や言い回しが古いというか大げさな気もするけれど、これは当時のこういう小説の文体を意識しているだろうか?それとも川端康成の文体なのだろうか?川端康成の本をちゃんと読むのは初めてなんじゃないかな?というくらいなのでわかりません。
あと、そもそも浅草という町の地図が頭に入っていないうえに、地名が今では変わってしまっているため、書かれている場所や登場人物がどこからどこに移動しているかなどがわからない。なので、多分、当時の人が読んでいる時の臨場感を味わうことができないんですよね。ただ同じような時代の浅草を舞台にした高見順の「如何なる星の下に」を読んだときは、それほど地名を特定できなくても、当時の浅草の様子を楽しめた、ということはある。
ついでに、機会があれば、「日本三文オペラ」など浅草を舞台とした武田麟太郎の小説や、浅草ではないけれど、同時代に書かれた都市小説ということで、1925年に中国・上海で起きた反日民族運動を背景にしたという横光利一の「上海」も読んでみたい。

■暁くんと「ウルトラマンオーブ」を見る。映画を見るのは一年ぶり。ということは前回の「ウルトラマンエックス」以来というというわけで、なんだかなぁという気もしないでもないけれど、それはそれでいい。子どもたちと映画館でウルトラマンを見るのは3作目で、最初の時は、一番近くで昭島とかでしか上映していなかったし、内容も全然予算をかけてなくて、さみしい感じだったけど、去年からは新宿でも上映してるし、だんだん戦闘シーンも迫力が出てきていい感じになってきてます。といっても子ども向けですけどね。
で、なんとなくたまには一人で映画でも見てみたいなぁと思って、帰ってきて阿佐ヶ谷のラピュタのサイトを見てみたら、鰐淵晴子や松山善三と高峰秀子の特集をしていて思わず上映作品の紹介を見入ってしまった。昔の浅草を舞台にした映画とかやってないだろうか。「如何なる星の下に」も「浅草紅団」も映画化されてるんですよねぇ。

「もの食う本」-木村衣有子-

-■もう3月に入っちゃってますが、ここまでが2016年に読み終えた本になります。溜まっちゃってるな。本当は、本を読んだら1週間以内に雑記に書くという感じで回していきたいんですけどね。で、1週間に1冊くらいのペースで本を読めればと。

■内田百けんや吉田健一、山口瞳、森茉莉、石井好子といった常連作家から、川上弘美、高山なおみ、内澤旬子、長尾智子など最近の作家、エッセイスト、料理家まで、食に関する本40冊の感想をつづっもの。読んだことのある本も多い。読んだ本はまた読みたくなるし、読んでない本は読んでみようと思ってしまう、そんな気分にさせられます。あの本よく見かけるけど、そういえば読んだことがなかったなというのに気づいたりするのもこういう本のいいところです。
ただ、書いている内容が、引用の多さも含めて、わりと本の内容に即した部分が多いので、もう少し深堀したり、広げて欲しかったというのはあります。これだとほんとうに感想文、という感じになってしまってる気がしてしまうんですよね。

-■週末は前々から行こうと持っていた「あけぼの子どもの森公園」へ。ここはムーミンの世界をモチーフにした公園で、ムーミン屋敷や川のそばの水浴び小屋、子ども劇場、ムーミン資料館などがあります。
特にムーミンなどのキャラクターが登場したりするわけでもなく、遊具なども山の斜面にアスレチック的なものがあるだけで(しかも今は利用できない)、ムーミンの政界に登場する建物があるだけなのですが、迷路のようなムーミン屋敷を走り回ったり、川の周りで遊んでいるだけでも、まぁ子どもたちは楽しそうでした。ムーミン屋敷は曲線が多用されていたり、思わぬところに窓や通り抜けができる扉があったりして、ちょっとジブリ美術館っぽい。そしていつものことだけれど、うちの子供たちは、男の子二人なのでどこにいっても競争になってしまい、そういうところをちゃんとチェックしないで、どんどん先に行ってしまう。もう少しじっくり観察できるようにしなければ‥‥と思う。
そんな駆け足の子どもたちの後を追いかけてると、昔、フィンランドに行ったときに行ったムーミンワールド思い出したりしてちょっと懐かしい気分。ちょうどカヌー犬ブックスをオープンさせる直前だったので、もう14年くらい前になるんですね。

-■で、帰ってきて、その頃のアルバムを見ようと思ったら、奥にしまっているようで見つからず、旅先でのメモ帳が出てきました。このころは旅行に行くときはポラロイドカメラを持って行って、街並みとか食べたものとか写真を撮って、夜ホテルでノートに張り付けてコメントを書いたりしてました(ポラロイドがiPhoneになっただけで今と変わらない?)。改めて見ると、ムーミンワールドのチケットやキップなども貼ってあったりして、その時のことが思い浮かびます。ときどき抜けていて日付が飛んでいたり、そもそもノートを作ってないときがあったりするところはB型なんで仕方ない(仕方なくない)。
ところで、ムーミンワールドで一番びっくりしたのは、スナフキンとかミィが着ぐるみじゃなくて、顔に色を塗ってそれらしくしていた、ということでした。建物とかはきちんと細部まで作られてるのに、そんなところがおおざっぱにになってるのが、B型としては共感(いや、別に血液型の性格とか信じてないです)。
2019年秋には、「あけぼの子どもの森公園」から少し離れたところに、本格的なムーミンテーマパークもできるようですが、その頃はもう子どもたちもムーミンに興味を失ってしまってるんでしょうね。

「Boyhood Photos of J.-H. Lartigue the Family Album of a Gilded Age」-Jacques-Henri Lartigue-

-■去年のクリスマス近くにたまたま機会があって、自分へのプレゼントとして買った写真集。ラルティーグが生涯に渡って作り続けたとされる写真スクラップブックを模倣して作られていて、写真自体は印刷されたものですが、台紙に一枚一枚張り付けられてあり、余白にラルティーグによるコメントが記されているという凝ったつくりになっている。まぁ収録されている写真自体は特に目新しい発見はないけれど、こういう形でまとめられて眺めると、ラルティーグの写真の全体像が具体化される感じがする。これがあったらラルティーグの写真集はもういらないなという気もしないでもない。いや、といいつつ、どこかで見つけたら買ってしまうかもしれない。

■去年の9月に会社が引っ越して、通勤とかちょっと楽になったけれど、近くに本屋がないのが不便。前は昼休みに青山ブックセンターやIMA CONCEPT STOREをちょこっとのぞいて写真集をチェックできてよかった。アマゾンは買うのは便利だけど、やっぱり新しい出会いはあまりないんですよね。特に写真集の場合は、本の大きさや写真の画質、全体の質感を確かめてから買いたいと思うので、画面でレコメンドを追っているだけでは、難しい。そもそもレコメンドで出てきた本が気になったとして、それだけじゃ買うまでいかなくて、ほかのサイトで写真家についてやその本について調べることになるので、まぁまぁ時間がかかってしまう。オリオンパピルスも閉店しちゃったし、写真集を手に取って見る機会がほんとなくなってしまった。
近くに写真展を行うようなギャラリーもないし、六本木はいろいろ不便だったりしたけど、今になって思うと周りは充実していた気がする。

■小沢健二の19年ぶりのシングルが出たり、Bridgeが再結成したり、今何年なんだよと言いたくなるようなニュースが飛び交ってますね。とりあえず「流動体について」はミュージックステーションに出てるのを聴いただけなので、いったん保留。アルバムが出たら買うかなと思うけど、曲自体が90年代後半のシングル盤の曲を引き継いだものなので、アルバムは出なくて、シングルが2、3枚出て、そのままという感じになるのかもしれない。そのほうが「オザケン」らしい。CDは買わないけど、ラジオとか有線とか聴こうと思っていないところで流れたらちょっとうれしい。しかし「Eclectic」と「毎日の環境学」はなかったことになっているのねー
Bridgeのほうは先日のPenny Arcadeの再結成ライブにシークレットで出た後、一回ライブをやるだけみたい。「22年間メンバー全員が揃った事がなかったバンド」だけに新しい曲を作ったらどうなるのかすごく期待しちゃうけど、そういうことにはならないんだろうね(うん、そのほうがいい)。

「本棚の前の椅子」-福原麟太郎-

-■前回、フランス文学者の本をよく読んでると書きながら、続いて読んだのは英米文学者の福原麟太郎。読んだ本についての雑記的や学生たちの話、英語教師についてから吉田健一や芥川龍之介、そして比較的長めのチャールズ・ラム論などを英文学者の視点でつづった随筆で、翻訳者のエッセイの源流といった感じでしょうか。
この本は、どちからかというと、福原麟太郎やその内容よりも花森安治が装幀を手がけた本といてのほうが有名なんじゃないかな?花森安治関連の本でもよく見かけるし、わたし自身もこの本を知ったのは花森安治関連の本だったような気がします(福原麟太郎自体の名前はほかの所で知ったのだけれどどこだったか忘れました)。初期の「暮しの手帖」の表紙を思わせるようないい装幀です。

■土曜は一人で外出の日、ということで、例によって神保町をうろうろしたりしつつ、銀座のグミオギタギャラリーでやっていた、“漫画家の絵本の会”の作家作品を集めた「植田俊一郎コレクション展」を見てきました。“漫画家の絵本の会”は、おおば比呂司、手塚治虫、永島慎二、馬場のぼる、東君平、柳原良平、やなせたかしの7人で、展覧会では原画や版画・陶器などが展示されていました。
藤子・F・不二雄ミュージアムで見た漫画のカラー原稿もきれいでしたが、手塚治虫や永島慎二の原画もきれいだったし、「味のある旅」などカヌー犬ブックスでもときどき取り扱っているおおば比呂司のコペンハーゲンなどの駅の絵も、やはりほんとは違う味わいでよかったです。個人的には柳原良平のアンクルトリスの陶器のお皿が欲しい!(売っていたわけではないですが)。
馬場のぼる、東君平、やなせたかしなど、子どもたちが親しんでいる作家の絵もあったので、もう少し家から近ければ、そしてもう少し早く知ったなら(当日、武蔵小金井から御茶ノ水までの電車の中で調べた)、家族4人で行きたかったですね。

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■ついでにIt’s a Sony展も見ようと思ったのだけれど、Part1とPart2の入れ替え時期で開催されておらず。ザンネン。そのまま移動するのもなんなので、ギンザグラフィックギャラリーの「仲條正義 IN & OUT, あるいは飲&嘔吐」展へ。こちらは「MOTHER & OTHERS」テーマにした新作のポスター20点あまりと「花椿」のページが展示されています。展覧会のタイトルもそうですが、ユーモアのある発色のきれいなポスターに囲まれ、真ん中にはどーんと「花椿」が展示されていて不思議な空間になっていました。しかし仲條正義ってもう83歳なのね。ポスターだけを見たら83歳の感覚とは思えないなぁ。

「マビオン通りの店」-山田稔-

-■2010年に刊行された本で身辺雑記的なものと回想録とが混じり合ったエッセイ集。直接パリにいたときの話を素材にした作品は表題作のみで、ほかは著者が過去に出会った人や気になったとのかかわりをつづったものが収録されてます。どの作品も現在と過去を行き来したり、寄り道をしたりするのだけれど、散漫になることもなく話にふくらみがあって、引き込まれるように読んでしまいます。
山田稔の本はほとんど文庫になっていないし、最近は小さな出版社から出てるものが多くて、古本屋でもなかなか値段が下がらないのだけれど、もっと手軽に読めるようになってほしいな、と思う。

■ここ数年、この山田稔をはじめ、辻邦生、平岡篤頼、河盛好蔵、堀江敏幸、森有正‥‥など、フランス文学の翻訳などを行っている作家の本を読むことが多くなってます。10代~20代の頃によく読んでいた英米文学の翻訳者と違って、たいてい若いころにフランスに留学しているので、その時のことを書いたものとかから読み始めて、だんだん小説のほうに入っていく感じですね。小説のほうもヨーロッパが舞台になっていたりして、どこか日本の小説にありがちな湿っぽさや重たさもないし、かといって軽いというわけでもなく、それぞれの作家の作品が独特の雰囲気を持っているところがいい。この辺をもう少し読んでいくと、いづれフランス文学も読んでみる時が来るのだろうか?ほんとはアラン・ロブ=グリエとかアルベルト・モラヴィアとか若いころに読んどけよって気もしますが‥‥

■金曜の夜は伊千兵衛 diningでやっていたサウンドマナーに行ってきました。サウンドマナーは、Theやなぎはらさん、ゴロゴロコミックさん、天敵さんという3人のDJによる去年の12月に始まったばかりのイベントで、今回が2回目。アジアのロックから歌謡曲そしてソウルまで幅広いジャンルから個性的な選曲が楽しい。
前回は中国、台湾、インドなどのバンドによるビートルズカバーやクリスマスソングの連投があったりして、カオスな雰囲気でしたが、今回はゲストの人も入って、ギターポップなどもかかったりして聞きやすくなってました。といいつつも、わたしはやなぎはらさんに紹介してもらった人と、下北のZOOの話や渋谷系の話などをずっとしてましたが。

■ところでこのイベントの3人のDJで、Theやなぎはらさん、ゴロゴロコミックさんはもともと知り合いだったのですが、天敵さんは知らなかったんですよね。で、12月にフェイスブックでこのイベントの告知がされたときに、20年くらい前に一緒にDJイベントをやっていて今は仙台にいる友だちから「幸田くんって天敵さんの知り合い?」という連絡がきたのです。どうやら天敵さんは、東京に来る前に仙台に住んでいていてその友だちと友だちだったとのこと。世の中狭いなぁと思いつつ、フェイスブックでやり取りしていたら、わたしが9月ごろに遊びに行ったイベントでも回していたらしく、その時紹介されたという事実も出てきて(お互いに覚えてないということでちょっとホッとしました)、いろいろびっくりでした。

「音楽を聴く2」-片岡義男-

-■副題が「映画。グレンミラー。そして神保町の頃」となっているように、内容もその3つのテーマに分かれている。映画では、片岡義男が影響を受けた映画の映画音楽について、グレン・ミラーは自身の原点ということもあり、そのバイオや所有しているレコードの一枚一枚について詳細に語っている。そして神保町の頃では、若いころに神保町の喫茶店で原稿を書いていた頃の回想やその喫茶店でかかっていた音楽、そしてその頃の神保町の街について、当時の写真を元につづっている。
グレン・ミラーについては、わたし自身それほどスイングジャズを聴いているわけでもないので、ちょっと詳しすぎて飽きてしまったというのが本音ですね。今になってグレン・ミラーの音楽や20年代、30年代のスイングジャズを聴いてみようとはあまり思わない。そんなわけでやはり一番おもしろく読めたのは、昔の神保町と当時聴いた音楽を絡めてつづった「この都電はジン・ボ・チョへ行きますか」かな。
もう少し、テーマを増やして、一つ一つの文章を少なくして、テンポよく読めたほうがよかった気もするけれど、片岡義男の中ではそれでは収まりきれないくらい影響を受けたということなのでしょうね。

■2月6日は小学校が振替休日だったので、合わせてわたしもお休みを取り藤子・F・不二雄ミュージアムへ。平日だしわりと空いてるかなと思っていたら、バスを降りると入口に長い行列ができていてちょっとびっくり。よくよく見てみたら小学校前の子どもを連れている家族か外国の人が多くて納得。
子どもたちは、館内の電話で出されるクイズに夢中になってしまって、どんどん先に行ったり、戻ってきてみたりと落ち着かない感じではありましたが、ちょうど原画展がやっていて今ではあまり見ることがないカラーの原画もあって、これがかなりきれいで感動したり、手塚治虫からの手紙が展示してあったりして、子どもに関係なくおもしろかったです。こういうのを見るとやっぱり手紙っていいなと思う。まぁ自分ではまったく手紙を出したりしませんが。あと、手紙とともにこういうミュージアムではお決まりの部屋や机の展示ももちろんあって、本棚の本とかちょっと見にくい形で展示してあるんですが、じっくりと見てしまいました。子どもたちよりもミオ犬を含めておとなのほうが楽しんだという感じでした。でもみんなそうだと思うんだよねぇ~

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「その姿の消し方」-堀江敏幸-

-■フランスに留学していた時に古物市で見つけた、1938年の消印のある古い絵はがきにつづられた十行の詩を発端に20数年にわたる縁を描いた物語。
主人公はその詩に刺激され、作者は「詩人」、しかも世に知られることなくこの世を去った「詩人」ではないかと推測し、その10行の詞を分析し、この詩が書かれたシチュエーションなどを夢想する。その後、一枚また一枚と同じ作者と思われる十行の詩がつづられた絵葉書を手に入れ、ついには生前の「詩人」知る人物にたどり着く‥‥
物語を締めくくるような落ちはないのだけれど、さまざまなつてや偶然が重なりひもとかれていくさまに読んでいてわくわくするし、何かを探求していくおもしろさってこういうところにあるよなーと思う。

■久しぶりにおもちゃ美術館に行ってきました。2年ぶりくらいかな。なんとなく冬になると行ってるような気がします。わりと小さい子でも遊べるおもちゃが中心なので、年齢的にもうどうかな?と思ったけど、今まで遊べなかったボードゲームで遊んだり、意外と木のおもちゃとかでもずっと遊んでて楽しめましたね。ほんとは家で子どもたちとボードゲームとかやりたいという気もありますが、まぁすぐにズルするし、負けると大泣きするしでいろいろめんどうなんですよねぇ。
四谷三丁目に来たついでに(大人はこちらがメインの目的?)、フルーツパーラーフクナガでお昼ごはん。こちらはなかなか寄る機会がなくて4年ぶりくらいになるのかな。前に行ったときは暁くんをベビーカーに乗せてた。
1階がくだもの屋さんで2階がフルーツパーラーということもあり、食べごろのフルーツがたくさん詰まったパフェなどが人気のお店です。時期的にイチゴのメニューがたくさんあって、目移りしてしまいますが、お昼ということでいちごサンド、フルーツサンド、卵とハムのサンドを注文。フルーツサンドはフルーツ自体ももちろんおいしいんだけど、サンドイッチ用のパンに挟まれた生クリームがいい塩梅で、パンとフルーツの両方をうまく引き立ててます。「お昼ごはんなのに甘いものなの?フルーツってデザートとかおやつじゃないの?」と文句を言っていた子どもたちもパクパク食べて満足。これを食べに来るためにまたおもちゃ美術館にいってもいいなと思う。
しかし昼時で満席に近い店内を見渡したら、わたし(とうちの子ども)以外全員が女性客というね。前回ここに男3人で来たわたし勇気あったわなどと思ってしまいました。

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-■11月くらいからずっと70年代のソウルを聴いてます。Johnny BristolとかLeon Ware、Lamont Dozier、Alice Clark、Syreetaといったフリーソウル的なものや、Chi-LitesとかEugene Record、Tyrone Davis、Impressionsといったシカゴソウル、Chairman Of The BoardやBarrino Brothers、Norman Feelsといった70年代のノーザンソウルとかね。聴きはじめた時はファンクを中心に聴こうと思っていたんですけど、やっぱこの辺が好きなんだなと思う。
で、年明けくらいにミニマルミュージックの本を読み始めて、ついでにiPhoneにSteve Reich やPhilip Glass、Terry Riley、La Monte YoungのCDを入れてみたんですが、たまたま家で仕事をしているときに、片寄明人が選曲したラジオ番組を聞いてたら、シカゴソウルのシングル盤ばかりを流してて、結局、また戻ってしまいました。ソウルに関してはもうアナログ盤を集める気はないけど、CDになっていない曲を聴いたりすると、ついアナログに手を出してみようかな、なんて一瞬だけ考えてちゃいます。まぁ一瞬だけです。
会社の人でハウスとか4つ打ちのDJイベントをやっている人がいて、ときどきなぜか70年代のディスコのイベントもやってて、仕事していると「回さない?」と誘われてたりしてるんだけど、オールなので断ってるんですよね。でもこういう曲を大きな音でガンガンかけたら楽しいんでしょうねぇ。イベントに行ったことがないので、こういう曲でフロアが盛り上がるのかどうかはわかりませんけど‥‥(そこが重要なのに‥‥)

「退屈の利用法」-植草甚一-

-■亡くなる直前まで入院していた伊豆韮山温泉病院のベッドでつづられた日々の断片的な文章を中心に、70年代後半に発表された本や映画、ニューヨークでのことについてつづった単行本未収録のエッセイが収録されている。
亡くなる直前の日記ではあるけれど、カバーに「病院生活にはいってから、それが長引くだけの現在。退屈でしようがない。ぼくは『退屈でしようがない』心理状態の利用法はないだろうかと考えてみた。それから病院の事務室で買った90円のノートブックの表紙に『退屈エネルギー利用法』と大きく書いた。」とあるように、切実に死が迫ってくるような感じではなく、入院生活がただただ退屈で、いろいろ妄想してみたり昔のことを思い出したりしている。それが植草甚一らしいと言えばらしいし、逆に読んでいるとその無邪気さに寂しさがにじみ出てくるような気がします。後半のいつものエッセイも、それにつられてなんとなく寂しく感じてしまいますね。

-■植田正治の集大成的な写真集が出たとのことで、それを記念して15日まで神楽坂のla kaguというところで写真展が開催されていることを知り、神楽坂に行ってみました。
神楽坂なんてふだん行かないので、la kaguという場所も知らなかったので、駅から出たらめちゃくちゃおしゃれな空間でびっくりしました。トークショーなどのイベントをやるための会場の壁に写真が展示されていて、点数的にも見せ方としても物足りない感じ。まぁこういう場所だったらそうですよね。どちらかというと年末に行われた飯沢耕太郎と金子隆一のトークセッションがメインだったんですかね。きちんとどんなところでやっているのか調べないで行ったわたしが悪いです。でも、植田正治の写真は、ちょこっとでも機会があるごとにオリジナルプリントを見ておきたいという気持ちもあるのでこれはこれでよしとします。
写真集のほうは、大判のかなり厚い豪華なものでほしいとは思うけど、16000円は値段的に今のわたしにはちょっと手が出ないなぁ。

■いや、「今のわたし」ではないですね。というのも、その前日に中目黒のデッサンという古本屋でSWISH!のニットを見に行ったときに、お店の本を見ていたら、「青春図會 河野鷹思初期作品集」があって、発売した当時欲しかったんだよなぁ、なんて懐かしい気分になったから。たしか18000円位したんじゃないかな。表参道の青山ブックセンターに平積みしてあるのをずっと眺めていた思い出があります。写真集でもデザインの本でもやっぱり10000円くらいまでかなぁ。
中目黒では、寒かったこともあり、アラスカでごはんを食べて、カウブックスに行ってすぐに帰ってきてしまいました。もうどこにどんなお店があるかぜんぜんわからないしね。うちの夫婦とっての中目黒はオーガニックカフェがあった頃までです。
あと、どちらの古本屋さんもめずらしい高価な本がたくさん並んでいて、都会を感じました‥‥

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「ラブレーの子どもたち」-四方田犬彦-

-■澁澤龍彦の反対日の丸パンから、ロマン・バルトのてんぷら、谷崎潤一郎の柿の葉寿司、ポール・ボウルスのモロッコ料理そして明治天皇の大昼食まで、古今東西の芸術家が好み、レシピを残した料理を実際に作って食べて語った本。こういう本ってわりと写真が中心になってしまい、文章はそれを簡単に説明するだけ、みたいな形になりがちなんだけど、それらの料理と芸術家たちのエピソードはもちろん、それぞれの国や地域、そして時代に根ざした文化的な背景が詳しく記されてるところがいい。
掲載されている料理の写真も、きちんとコーディネートがされているのだけれど(料理自体も専門のレストランや料理学校の人が作っているとのこと)、過度な演出があるわけではなく、シンプルに料理そのものを紹介していて、本の内容と合っていると思う。
続編を読んでみたいけど、この本が出てからもう10年以上経っているのでもう出ないんでしょうねぇ~

■慌ただしく年末年始も過ぎて、2017年。2016年は26冊しか雑記を更新できませんでした。読んでる本はもう少し多いので30冊ちょっとというところですかね。しかも身辺雑記的な随筆や食べものについて本ばかりで、小説とかまったくなし。もうラテン文学とかメタフィクションとか読めないなぁと思うけど、気軽に読めるし今の自分には合ってる。
今さらですが、カヌー犬ブックスは、料理系の本を中心にしてて、初めて会った人とかに「どんな本を扱ってるんですか?」と聞かれて「料理や食べもの系が多いです」って答えると、わりと、特に男の人には、「ふーん(自分には関係ないかな?)」という感じになりがちなんですよね。でも、レシピとかは料理に好きかとか読み手を限定してしまいますが、食べもの関連の随筆は、別に食べものに関して詳しく解説しているわけでもないし、書いている作家もどちらかというと力を抜いて書いていて読むほうも構える必要はないし、わりとみんなに薦められると思ってるんですよ。そもそも普段料理をしなくて、別に料理が好きじゃない人も、食べものを食べない人はいないですしね。
というわけで、今年はもう少し、食べもの関連の随筆のおもしろさを伝えていけたらと思ってます。どういう風にしようかはあんまり具体的に考えてませんが‥‥
お酒についての随筆もたくさんあるので、泥酔ファンクラブの人たちも読んでほしいなぁと思っています!
そんなわけで、今年もよろしくお願いしますー!