「河岸の古本屋」-河盛好蔵-

◆ジパング・スティール・バンド@コピス吉祥寺
河盛好蔵の本を読むのは初めてかな。一年くらい前にフランス文学者のパリ滞在記をまとめて読んでみようと思って、辻邦生や山田稔、森有正、平岡篤頼などの本をいくつかピックアップしてみたのだけれど、その時にリストに河盛好蔵の「巴里好日」などもその中に入っていたはずなんだけど、リストを作っていくうちに、いろいろ広げすぎてしまって、気がついたらかなり多くなってしまったにもかかわらず、リストにあげた本を古本屋で意外と見つけられなかったこともあって、けっきょくあんまり読んでない。

そのときに思ったのは、フランス文学に関しては、戦前戦後にかかわらずフランス文学を研究するファーストステップとしてフランスに留学している研究者が多いってことですね。それに比べると、英米文学を勉強するためにイギリスやアメリカに留学する人はあまりいないような気がしますが、実際どうなんでしょうか。
単純に考えると、戦前は海外文学と言えばフランス文学が主流だったし、今と違って情報が多いわけではないので、まず現地に行く、というのが一番の方法で、その伝統が戦後も引き継がれているってことなのかな。適当ですが。逆に戦前にアメリカに留学っていうのもなさそうだし、イギリスは夏目漱石の失敗が‥‥とか?

それにしても文学者に限らず、昔も今もパリ滞在記というのはものすごく多い。パリに行くと何か書きたくなるものなんでしょうかねぇ~そしてそれを読みたいと思っている人が多いんでしょうねぇ~

この「河岸の古本屋」もタイトルから、河盛好蔵がパリに滞在したときに、セーヌ川沿いに並ぶ古本屋を見て回った話なのかな、と期待はさせますが、滞在記というわけではなく、13世紀から現代にいたるまでのセーヌ河岸の本屋の盛衰を描いたもの。
このほか、パリ、あるいはフランスについてつづったものや読書論、親しい作家の追悼文などが収録されてます。随筆集なので内容の統一感がないのはいいんですが、文章の種類というか、さらりと書いたようなものと「河岸の古本屋」のようにきちんと文献を調べて書かれているものが並んでるのが個人的にはちょっと違和感を感じました。河盛好蔵のいろんなタイプの文章を読めるという意味ではいいのかもしれませんが‥‥。

週末は、吉祥寺のコピスのウッドデッキで行われていたジパング・スティール・バンドの演奏を見てきました。ジパング・スティール・バンドは、パノラマスティールオーケストラなどにも参加している佐々木謙太朗さんがやっているバンド。何年か前、井の頭公園で一人でスティール・パンを演奏しているの聴いて、その後すぐに雑貨屋でのライブを見に行ったとき以来(一昨年の秋とか?)、時々チェックはしていたのですが、なかなか聴きに行く機会がなかったのですが、コピスとかだと気軽に見れてうれしい。しかもソロではなく、さまざまな音階?のスティール・パンによるバンド形式!野外っていうには大げさかもしれないけど、外で大きく響き渡るスティール・パンの音を聴けるのはかなりぜいたくな気分でした。

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漣くんも前に出ておかしな踊りとかして楽しそうだったし、定期的に演奏しているみたいなので、次回はウッドデッキのイスに座ってビールを飲みながら聴こうかな、とか思ってます。ちなみに、今回はムーミンスタンドで買ったミックスベリーのドリンクでしたが‥‥。

「わたしの東京」-安藤鶴夫-

◆一番、日本を感じられる季節
安藤鶴夫の本に限ったことではないけれど、昔の東京についての随筆の多くが、年末からお正月のできごとや風景などを中心に書かれているような気がします。日本には四季がありそれぞれの季節での楽しみがあるというけれど、やはり年末年始は、一年のうちで一番日本ぽさを感じられる時期なんでしょうね。
今でも一年の中で一番日本を感じることのできる時期を考えたら、昔に比べればぜんぜん様子が違っているけれど、全体的に昔からの日本の行事の大切にする気持ちが低くなっているなかで、逆に「お正月くらいは‥‥」という気持ちもあってこの時期を思い浮かべる人が多いのではないかと思いますがどうでしょ。わたしはけっこうクリスマスが終わってから、お正月までのあいだが、慌ただしいような、ちょっとのんびりしているような感じがして好きですね。

そんな風にして、どことなくお正月気分をひきづっていると、あっという間に1月が終わってしまうというのは毎年のことで、実際に気がつけばもう2月。でも、思えば特にお正月にお正月らしいことをしたわけでもないので、「お正月気分で」というのも単なる言いわけというか、紋切り型のあいさつに近いのかもしれませんが‥‥。

なんてこと書いたまま放置していたら、旧暦のお正月も過ぎてしまいましたとさ!

「ぼくの美術帖」-原田治-

◆今年初めてのニチニチ日曜市とはじめてのコショコショ市
前半では、ルネサンス期のティツィアーノから、デュフィ、小村雪岱、木村荘八、宮田重雄といった挿絵画家、アメリカのカートゥニスト、鈴木信太郎、北園克衛、そして師匠である川端実など、原田治が敬愛する画家たちについてつづったエッセイを収録。
抽象画家に師事していたという事実をはじめ、多種多様の作家を取り上げつつも美術というものへの一貫した向き合い方が伝わってくる内容など、ミスタードーナツのノベルティをはじめとしたオサムグッズのイメージしか持っていなかったわたしにとって、前半だけでも原田治のイメージを変えてくれるのですが、後半になると、縄文美術を日本民族の美術の原型として捉え、弥生時代以降、室町時代にかけて権力によって抑えられてきたその美術観が戦国時代に復活し、江戸時代の浮世絵まで花開くという独自の美術史観が熱く展開されており、もう驚きの連続でした。

イラストレーターのエッセイ集というと、今までに影響と受けた作家たちを自分の経験に結びつけつつどちらかというとサブカルチャー寄りの視点から語ったものがほとんどだし、イラストのテイストや年代から原田治のこの本も、そういう風なものだと予想していたのが大きな間違いでしたね。そしてこれが今ではなく、オサムグッズ全盛の1982年に出ていたという事実もすごいと思う。当時、この本は原田治のファンにどのように受け止められていたのでしょうか?

今では、月の半分は築地で仕事をし、残りの半分は大島に建てたアトリエで抽象画を描いたり、焼き物をしたりして悠々自適の生活をしているようです。原田治が描いた抽象画、いつか見てみたいですね。どこかで展覧会を開いたりしていないのだろうか?

今年初めてのニチニチ日曜市。春から秋にかけて皆勤賞に近い形で、ニチニチに通っていたわたしですが、11月、12月は友だちがうちに遊びに来たりしたので行けずじまいで、3か月ぶりになります。
加えて、今月は同じ旭通りにある場所でコショコショ市が開かれていたので、スタート直後の11時過ぎくらいに国立に着いたときは、両方とも人だかりで旭通りは大にぎわい。
まず会場がオープンなコショコショ市に行って、漣くんを抱っこしてお店のあいだをすり抜けながら本を眺めたりしてたんですけど、ときおり強い風が吹いたりしてかなり寒かったです。

でもそれぞれのお店が一箱ながら、テーマを設けた本をチョイスしていたりして個性的で、全体の規模はそれほど大きくないけれど見ごたえがありました。場所がらか山口瞳の本を出している人が多かったような‥‥。ちなみにわたしは、講談社文芸文庫の河盛好蔵と小島政二郎の本を買いました。ほかにも欲しい本があったのですが、国立に住んでいる友だちが偶然に前を通りかかって(所沢に行くところだったらしい)、話し込んだりしてしまったので、時間があんまりなかったのです。
お店を出している人も、本を買いに来ている人も楽しそうでよい雰囲気だったので、2回目、3回目、というか春になった頃の開催が楽しみですね。

ニチニチ日曜市のほうは、今回からdans la naturenさんが参加しなくなってしまったのが寂しい。その時によって違うけれど、TAIYODOさんのクラッカーとdans la natureさんのマフィンはだいたい買っていて、帰ってからのおやつにしていたのです。あと、カレーパンとシフォンケーキはどちらかというとその場で食べる感じ、ときどきジャムと古本を買う感じ、ですかね。まぁ今年もニチニチ日曜市には毎回のように通うことになりそうです。

「ひみつのブルボンキーホルダー」-森井ユカ-

◆原宿のおもちゃ屋にはスマーフグッズがたくさんあってびっくり
ブルボンキーホルダーとは、1960年代のフランスで企業の広告として配られていたキーホルダーで、特に質感やデザインなど凝ったものを多く作っていたブルボン社のものを示しているようです。ブルボン社以外のものは、普通にフレンチキーホルダーと言ってます。って、正式な呼び方なんてなくて誰かが勝手に呼びはじめただけだと思いますが。

そのフレンチキーホルダーを、雑貨屋などでよく見かけたのは結構前のこと。2003年に京都と神戸に遊びに行ったときに、神戸の雑貨屋にたくさん並べられていたのを覚えているので(大きなベニヤ板にたくさんの穴が開けてあってその穴にキーホルダーを引っかけるというディスプレイの方法にびっくりした)、2002年から2004年くらいかな。当時、あまりにもいろいろなところで見かけるのと、たくさん並べた感じがよかったので、集めてみようかとちょっと心が動いたのだけれど、保存状態がきれいなものや凝った仕掛けがあるもの、中に入っているイラストがかわいいものなど、欲しいと思うもの(つまりはこの本に掲載されているようなものですね)は、なかなか見つからなかったり、あっても値段がかなり高かったりして数個だけ買ってみてあきらめました。

そういう意味では、この本も「なんで今さら?」という感じがしないでもないけれど、まぁそんなものがブームになったこともあったね的な記念です。単純に眺めてると楽しいですしね。

年末年始のお休みが終わって、すぐに三連休。間隔的に働くにも休むにもどっちにしても気持ちが落ち着かない感じがします。もともと15日が成人の日だったわけだから、3週目の月曜にすればよかったのにと思ったりしますが、実際問題、お正月からすぐに気持ちが切り替わると言うことでもないし、その辺を考慮して2週になったとか!?

連休の初日、2年ぶりに表参道にあるクレヨンハウスに行って来ました。表参道に行くと言っても前と違っていろいろと歩きまわったりするということもなく、クレヨンハウスでランチを食べて、おもちゃや絵本を見て、ちょっと歩いたりしたあと、キルフェボンでタルトを買って帰って来るという感じ。
ほんとは久しぶりだし行きたいところもたくさんあるような気がするのだけれど、わざわざ今日行きたいか?と思うとそこまでして行く必要もないような気持ちになってしまうんですよね。具体的に買いたいものがあるわけではなくてちょっと見てみたいぐらいだったら、いいかな、と。
加えてお互いお店の名前とか忘れてて、「あの辺にあった何とかという何とかの店に寄ってみない?」みたいなことになっていたり、キルフェボンの喫茶コーナーがなくなってたり、PressSixが閉店していたり、当然ちはるのお店もなし‥‥とか、知らないうちにいろいろ変わっていて、なんだかおじいちゃん、おばあちゃんの老夫婦みたいなことになってましたね。都下で遊んでばかりいないで、ときには都会に出ないとね。

「電子音楽InThe(Lost)World」-田中雄二-

◆テクノポップの誘惑
電子音楽をちゃんと聴いてみようと思ったのは、ヤン富田の「フォーエバー・ヤン」を読んだのがきっかけでした。あと今は削除されてしまっているので確認できないんですけど、佐々木敦氏が電子音楽についてかなり詳しく書いたものをウェブに上げていて、一時期その2つを何度も熟読してました。
でもさすがにこれらの文章で紹介されているようなレコードを手に入れることは難しくて、もっと手軽に手にはいるような電子音楽のディスクガイドを捜しているときに知ったのがこの本でした。それから何年も経ってしまっているけれど、ようやく手に入れてちゃんと読んでみると、ここで紹介されているレコードを捜すのもけっこう難しそうですね。そもそもCD化されている絶対数が少ないですし‥‥。

それよりもこの本の後半で取り上げられている1970年代から1980年代にかけての日本のテクノポップのレコードが懐かしすぎてかなりやばい。わたしは今でも割と幅広い年代の音楽を聴いている方だと思うんですけど、1980年代の音楽(大瀧詠一や山下達郎など一部を除いて、特に日本の音楽)は、なんとなく恥ずかしくなってしまってもうずっと聴いてなかったのです。
そんなわけで中学・高校時代に聴いていたものや、当時、雑誌で読んでいたグループぐらいしか知らないので、実際のところはそんなに詳しくはないんですけど、プラスチックスとかShi-Shonen、ジューシーフルーツ、鈴木さえ子、P-MODEL、チャクラ、ポータブルロック、サロンミュージック、フィルムス‥‥など、ジャケット見ているだけで懐かしい気分になってしまい、改めてCDを買ってみようかな、という誘惑に勝てません。ついでにテクノポップじゃない1980年代の音楽も聴いてみようかな、とか考え出したりして、どうしたものかと。いやいやそういうCDを買うためにこの本を買ったわけではなんですけどね。
それでなくてもツイッターで名前が出ていたせいで10年以上ぶりに伊藤銀次なんて聴いみたりしてるというのに‥‥。

「僕は散歩と雑学が好きだった。―小西康陽のコラム1993-2008」-小西康陽-

◆明けましておめでとうございます。
今年もカヌー犬ブックスをよろしくお願いいたします。

「今年はちょっとがんばらないといけない年になるな」と12月に入った頃から考えてたのにもかかわらず、年が明けてからまったく仕事もできず、本格的な仕事始めは今日から、ということになりそうです。今年で漣くんも2歳なのでいつまでも子どものせいにして遊んでばかりいられないですよね。といっても、大きな転換となるようなことはできそうにないので、毎日コツコツとやってみて一年経ったら少し変わったな、とみなさんに思われる感じにはなりたいですね。(それじゃ今までと変わらないって意見もありますが‥‥)

結局、「電子音楽InThe(Lost)World」は最後まで読めずに年を越してしまったので、2010年の最後に読んだのはこの「僕は散歩と雑学が好きだった。」でした。読んだと言っても最初から読んだわけでもなくて、毎日の通勤時間に、読んでなさそうなところを適当に開いて読んで、なんとなく飽きたら“読んだことにする”というスタイル。1日に読む量は少ないけれど2週間くらい読んでたので、だいたいは読んだんじゃないかな、わかんないけど。植草甚一などいわゆるヴァラエティブックの読み方としては正しいのではないかと思っているのですがどうでしょう~どうでもいいでしょう~

サブタイトルに「小西康陽のコラム1993-2008」とあるように前に出た「これは恋ではない―小西康陽のコラム1984-1996」と年代的にはかぶるものの個人的には2000年代はまったくと言っていいほど小西康陽を追いかけてないので、たとえ書いていることはどの時代でもあまり変わらないとしても昔の文章が収録されているのはうれしい。
しかしあんなに好きだったピチカート・ファイヴをある時期からまったく聴かなくなっていたのはなんででしょうね?アルバムで言うと「プレイボーイ・プレイガール」までは持ってる。で、今調べてみたら、このあとに出たアルバムって「PIZZICATO FIVE」「さ・え・らジャポン」の2枚だけでした。もっと出ているのかと思っていたので意外。最後のほうはベスト盤や再発盤の発売もあったりしたのでその印象が強いのかもしれません。
それにしても、改めてアルバムのリストを見てみると1987年の「Couples」から1994年の「オーヴァードーズ」くらいまでほんとにピチカート・ファイヴはすごかったと思う。次ぎにピチカート・ファイヴがどんなアルバムを作るのか、わくわくして待ってた感じだったのはわたしだけではないはず。まっそれも昔の話ですけど。

「赤いベレー帽」-丸岡明-

◆2010年のちょっとしたまとめ
死後にまとめられた随筆集。だからというわけではないと思うけれど、随筆集としてはかなり分量もあり、内容も能についてのものから交友録、釣りの話、身辺雑記までと幅広く収録されているので、一気に読むのではなくてもう少しゆっくりと、何冊かの本と並行して読むくらいのスピードで読めばよかった。複数の本を並行して読むという習慣があまりないので読み終えるまでぜんぜん気がつかなかったです。

ところでこの本で、今年の雑記は59冊目。あと残っているのは小西康陽の「僕は散歩と雑学が好きだった」と「電子音楽InThe(Lost)World」だけなので年内に全部書けないけれど、とりあえず61冊。去年読んだ本で今年に持ち越した本が10冊くらいあったので、読んだ本としては実質51冊くらい。去年は56冊くらい読んでいて、今年は70~80冊くらいは読みたいなと年始に書いてますが、70~80冊どころか減ってるという結果に‥‥。

ただ後半、写真集とか買うようになりましたが、雑誌とかもまったく買ってないし、取り上げている本がほぼ小説ばかりと考えると、だいたい週に1冊読むか読まないかというペースなので、このくらいの分量がちょうどいいのかも、なんて思ったりもします。
来年もこのペースを保つとして小説を50冊、に加えて写真集やデザインの本などを15冊くらい、そのほか10冊くらいで合計70~80冊くらいに着地できるといいなと思いますね。どうなるのかわかりませんが。

それから今年の読書のテーマは“女性作家もしくは随筆家”としていたのですが、こちらもあまり達成できた感じではないです。一番読んだ森茉莉でさえ6冊、あと野上弥生子、萩原葉子が2冊、そのほかには室生朝子、佐多稲子、広津桃子、矢田津世子、増田れい子といったところになってます。年の初めにリストアップした読みたい作家の数に比べて消化数が少なかったのは、単に手に入らなかったから。そもそもリストアップした作家や作品が少なかったのに加えて、読んでもいないのに途中で自分の中での評価が変わってしまったりした作品もありましたしね。

これに限らず本やCDなどでなにかテーマを決めて買おうとするときは、一応、いろいろ調べてみて手帳にリストアップしておくのだけれど、たいていの場合、リストが多すぎて1/3くらいしか手に入れることができてません。

例えば正直なところモーグのCDを60枚近くリストアップしたって絶対全部手に入れることはできないし、そもそもそんなにモーグばかり聴くのか?と思うのだけれど、手に入れられる数が結果的に少なくてもピックアップだけはしておかないと、古本屋や中古レコード屋で探すときに記憶の網に残ってなくて、結局、少ないリストのそのまた半分くらいしか見つけられなかったりするものなんだな、とかなにを言いたいのかよくわからないどうでもいいことを考えたりしている年末、そうやって手に入れた本やCDの片付けがまったく進んでないうちに年が明けそうなんですけど‥‥。

「春のてまり」-福原麟太郎-

◆12月にあいそうなピアノのCD
福原麟太郎の本を読むのは初めてなのかな?前になにか読んだ気もするけど思い出せないしこの雑記でも取り上げてなさそうなので、多分なにかのアンソロジーに収録されているものを読んだだけでなんだろうと思う。三月書房の小型本の随筆集で狂言や能について、読書について、そしてシェイクスピアを中心とした演劇についての三部構成になっています。
偶然ではあるけれど、この前に読んだ安藤鶴夫やこのあと読んだ丸岡明と日本の伝統芸能に精通した人の随筆が続いているのは年末が近づいているから、ではないです。昔は年末になると池波正太郎の本を読み返していたけどね。この勢いで年末年始にかけて岡本文弥の本とかも読んでみようかしらん。

さてクリスマスまでに何枚か12月にあいそうなピアノのCDを紹介します。なんて書いておきながら、気がつけばクリスマスも過ぎてしまいました。年末はなにかと忙しいです。って、遊んでばかりで新しい年を迎える準備とかまったくしてないですけどね。

そんなわけで何枚かまとめて‥‥

-■「ラテン・サイド・オブ・ガラルディ」(ヴィンス・ガラルディ)
ガラルディの「チャーリー・ブラウン・クリスマス」はクリスマスに外せない一枚で、今年もよく聴きました。大きく盛り上がるわけではなく、ふつふつと静かに盛り上がっていく感じのサウンドが家で聴くクリスマスソングとしてぴったり。街に出れば大盛り上がりのクリスマスソングを聴かされるわけだし、家の中では静かに過ごしたいもの。
この「ラテン・サイド・オブ・ガラルディ」では「Mr. Lucky」「Corcovado」「Brasillia」といった曲を軽快なラテン・ボサノヴァタッチで演奏しているのだけれど、ガラルディらしい暖かく優しいピアノのタッチに加えて、さりげなくオーケストラがかぶさってくるところがこの季節に合っていると思わせるところ、かな。

-■「カクテル・アワー」(ポール・スミス)
リキッド・サウンドという室内楽的なサウンドで有名なピアニスト。やわらかなホーンセクションが心地よい「クール&スパークリング」もおすすめですが、ピアノアルバムといえばこちらですね。
このアルバムでは、トニー・リッジのギターがよいアクセントとなっていて、ソフトなだけじゃないメリハリのきいたスウィング感がいい。で、ギターでバーニー・ケッセルが参加している「ソフトリー、ベイビー」や「サウンド・オブ・ミュージック」というアルバムもあって、ものすごく期待して聴いてみたのですが、悪くはないんだけど、トニー・リッジほどのアクセントになっていなくて残念。

-■「80日間世界一周旅行」(ジェラルド・ウィギンス)
ポール・スミスに「サウンド・オブ・ミュージック」があるように、ジェラルド・ウィギンスには「80日間世界一周旅行」があります。って、多分、両者につながりはないと思いますが‥‥。ただジェラルド・ウィギンスもポール・スミスのように歌手の伴奏者として活躍したピアニストという意味では近いのかもしれません。両者とも、強い個性を前面に出すというよりも、明快でわかりやすいスウィング感が演奏の特徴なのも伴奏者ならでは、という気がします。

「Louis Faurer」-ルイス・フォア-

◆ルイス・フォアの写真集とロンドンで撮った写真
2002年にヒューストン美術館で開催されたルイス・フォア回顧展を機に刊行された写真集。1940年代~1950年代におけるニューヨークのストリートを撮った作品を中心に、未発表作品や雑誌出版時以来公開されてない作品など、彼のキャリア全体を振り返ることのできる内容になっています。

個人的には、ルイス・フォアの写真集といえば、「デジャヴ」のルイス・フォアの特集号とPhotoPocheシリーズの写真集だけしか持ってなくて、洋書を置いている本屋でもなかなかみつけることができずにいたのですが、いつのまにかこんな本も出てたんですね。PhotoPocheシリーズは、いろいろな写真家の作品を手軽に見れていいのですが、ポケットサイズというところが難点だったので、大判の写真集が手に入ってうれしい。
わたしの中では、アンリ・カルティエ=ブレッソンとルイス・フォアは、写真家として別格で、ギミックやわざとらしさがほとんどなく、絶対に真似のできない完成度でストレートに写真とはこうあるべきというものをのを提示してくれる写真家なんですよね。

話は変わりますが、最近、iPadを買ったせいで、iPadに入れたり、Flickrにアップしたりするために、写真をスキャンするのがすっかり楽しくなってしまってます。デジカメだったら普通のことだよって言われそうですが、いまだにフィルムのカメラを使っているわたしとしては、単純に大きなサイズで手軽に見れるのがいい。ほんとは年に一回くらいの割合で、気に入った写真を引き伸ばしてまとめておきたいんですが、引き伸ばしってけっこう料金かかるし、別に展覧会に出すわけでもないし、と考えるとなかなか難しくてできないので、まぁ当分はスキャンしてiPadで見るという形に落ち着きそう。
で、普段はそんなに写真を撮っているわけではないので、昔に撮った写真も気に入ったのをスキャンしてみようと、昔のクリスマスの時期に行ったロンドンの写真を見返してみたのですが、いやいや、なぜかガラスに映った風景や人の写真が多くてちょっと笑えました。多分、ルイス・フォアの影響をそのまま間に受けて撮ってるんでしょうけれど、ロンドンに行ったのは2003年の12月なので、ルイス・フォアの写真を見はじめたばかりというわけではないし、その前の北欧旅行のときの写真は映り込みを意識したものは少ないので、何かあったのでしょうかねぇ、まったく思い出せませんけど。
しかし、今になってみると、わざわざイギリスまで行ってガラスに映りこんでいる写真を撮るよりも、もっと素直にはっきりと被写体がわかるような写真を撮ればいいのにと思います。でもまたどこかに行ったらそんなことも忘れてひねくれた記念写真を撮っちゃうんでしょうね。

「アンビエント・ドライヴァー」-細野晴臣-

◆12月はピアノのレコードを聴く。その1:「リトルバード」(ピート・ジョリー)
細野晴臣の本を読むのはこれが初めて。これまでインタビューなどでは細野晴臣が語る活字を見てきたけれど、それとはまた違う面が見えたりして新鮮だったので、ほかの本も読んでみようと思ってます。とはいうものの、よく考えたら80年代後半以降、細野晴臣の音楽もきちんと追いかけてなかったので、これを機に今までアナログでしか持っていなかったアルバムを買い直したり、抜けているものをそろえようと思う。
今年は山下達郎のアルバムを買い続けてて、あと数枚くらいになったので、それが終わったら細野晴臣の番かな。山下達郎と違って出してるアルバムの量が多いし、アルバムを一枚だけ出したユニットなんてのたくさんあるし、手に入りにくいものもあるので、一年なんてことは言わずに気長に集めたいと思います。

さて今日のピアノアルバムは、ピート・ジョリーの「リトルバード」。
録音時期が近くてメンバーもほとんど同じの「スイート・セプテンバー」というアルバムもありますが、12月なんでこちらを。ウェストコーストのピアニストは、全体的にアクの強い個性的な演奏というよりも、スマートになんでもこなしてくタイプが多くて、このピート・ジョリーのそのタイプのピアニスト。いや、多分ここで紹介するのはそんなピアニストばかりになるかもしれません。
このアルバムでは、まだいわゆる“ジャズファンの好むジャズ的”な演奏が聴けますが、これ以後、1960年代後半コロンビアからよりJAZZ~MOR的なサウンドになり、さらにA&Mからは、ハーブ・アルパートのプロデュースの元、ロジャー・ニコルスの「ラヴ・ソー・ファイン」のカバーを収録したアルバムをA&Mから出したりしてます。ほんとはそっちのほうが好きだったりするんですけどね‥‥。
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タイトルとなった「リトル・バード」は、ピート・ジョリー作のちょっとボサノバっぽいリズムのラウンジテイストの曲。続く「スリー・フォー・ファイヴ」は、3拍子のテンポアップした曲で、唯一ギターのハワード・ロバーツが演奏に加わります。わたしとしては、買ったときは半分くらいギターが入っていることを期待していて、実際聴いてみた感じでもギターの入った編成もよいと思うのですが、CDについている解説では、「甘い」「1曲だけで良かった」などと書かれてます‥‥。あとは最後に入っている「フォーリング・イン・ラヴ・ウィズ・ラヴ」。この3曲がわたしのベストトラックかな。

もちろんエルマー・バーンスタイン作曲で映画「アラバマ物語」のテーマ?「トゥ・キル・ア・モッキンバード」や「トゥート・トゥート・トゥーツィー(グッドバイ)」などの軽快な曲が好きだし、「ネヴァー・ネヴァー・ランド」や「スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モースト」といったスローなロマンチックな演奏もよいですけどね。