「象が踏んでも 回送電車IV」-堀江敏幸-

◆「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ-写真であそぶ」@東京都写真美術館

堀江敏幸の本では、エッセイから散文調の文章、身辺雑記ともフィクションともつかない掌編、評論のようなものなど、さまざまな領域の文章が、無造作に収録されているように思えるこのシリーズが一番好きかもしれない(といっても、たぶん、収録する文章も収録順も熟考されて選ばれていると思う)。ある一つのテーマに対してそれにまつわる本や写真、映画、自身の体験をまるで連想ゲームのようにつないでいくスタイル。
ほんとは取り上げられた写真や本の表紙、映画のスチールなどが、例えばページの下が区切られていて、注釈みたいについていたら親切なのだろうけど、あえて文章の説明だけで押し通す潔さが清々しい。いや、文章のみで表現していることによって、取り上げられていることの8割は知らないことでも、なんとなく想像することで楽しめるという利点もあるかな。注釈とかついてたら具体的になりすぎて隙間がなくなってしまうものね。
そもそもここにとりあげられているものが全部、実在するものとは限らないし‥‥(かなり疑い深いタイプ)

-アツコバルーの展覧会に続いて、写真美術館でやっている「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ-写真であそぶ」展を見る。あとはステーションギャラリーでやっている展覧会を見るだけなのだが、年末までだしこちらはちょっと難しそう。
最初にこの展覧会のことを知ったときは、わたしは植田正治もラルティーグも好きなので、単純に一粒で二度おいしい展覧会だな、なんて思ったけれど、よく考えてみたら特に二人に交流などもなかったみたいだし、なんでこの二人なのかちょっと不思議。
二人とも生涯を通じてアマチュア写真家であったこと、作品が認められたのが遅かったこと、身近な人を被写体にして写真を撮っていること、などがあげられてましたが、ちょっと弱い気がしました。

植田正治って家族を撮った写真がよく知られているだけで、全体からしてみればそれほど多くの家族写真を残しているわけではないと思うのですがどうなんでしょう。事実、子どもたちが赤ちゃんの頃の写真、また10代、20代になった子どもたちの写真も作品としてはないですし。というか、植田正治の子どもの写真って、自分の子どもも含めて6、7歳から10歳くらいまでの年齢の子以外はあんまり見たことないかも?

逆にラルティーグは、赤ちゃんからおじいさんまで身近な人をまんべんなく撮っていて、今回の写真展でも2歳の子どもの写真の隣に、その子が大きくなって自分の赤ちゃんと一緒にいる写真が展示されたりしていて、まとめて見ると、被写体どうしの関係性や時間の経過がものすごく気になってきます。加えて、動きのある写真が多いので、その長い時間と関係性の一瞬を切り取ったという感じが伝わってきます。

そういった動きのあるラルティーグの写真に比べ、植田正治のほうは、構図や演出がきちんと決められていて動きはないというのは、もともとわかっていたものの、ラルティーグの写真と一緒に見ることによってその「静」がより強く強調されているようでした。

といった風に、わたしにとってこの展覧会で、二人の写真を交互に見ることで好きな写真家の作品の違いが際立ち、その違いを認識することによって、それぞれのよさを再認識したという感じです。

ちなみにどちらかというと植田正治の作風は、ドアノーに近いのかな、なんて思ったりしてます。ドアノーは、いかにも街角のスナップ写真ぽいけど、実際はかなり演出されたものだったらしいですしね。生まれも1912年で1歳違いだし。まぁドアノーにアマチュアぽさはあまりないですけどね。

そういえば堀江敏幸が翻訳したドアノー「不完全なレンズで」をまだ読んでない。

「再会 女ともだち」-山田稔-

◆command records、project3のレコード(ジャケット)

あとがきによると、1989年に新潮社から出たものに、「もうひとつの旅」を除き、1983年に福武書店から出た「詩人の魂」から「岬の輝き」を加えた7篇を収録した本。これが「決定版」とのこと。

気がつけばいつも身辺雑記的な随筆しか読んでないので、久しぶりフィクションを読んだ気がします。主人公はすべて山田稔ぽいのですが、ストーリーに関してはフィクションになるのかな。“死”や“忘却”といったことをテーマにした作品が多く、重いようでありながら軽快さも持ち合わせていて、かつその設定で私小説ぽさを出しながらも、それぞれのエピソードがきちんと絡み合い影響しつつ話が進んでいくところなど、フィクションとして計算されていたりして、なんだか不思議な味わいの作品集でした。

12月が近づくとなんとなくイージーリスニングのレコードが聞きたくなります。昔はこの時期になると、夜中にココアとか飲んだりクッキーを食べながら、フォー・フレッシュメンとかハイローズ、ミルズブラザーズ、パイドパイパーズといったコーラスグループを聴いていたものです。まだ家でお酒を飲むという習慣がなかった、20代真ん中くらいの頃。そう考えるといつから夜、家でお酒を飲みながらパソコンの作業などをするようになったんだろうか?わりと最近?

で、わたしはクリスマスアルバムというものをほとんど持ってないんですけれど、そういうコーラスものやイージーリスニングの軽快なオルガンやヴィブラフォンの音、リズミカルなテンポのストリングスのアルバムをクリスマスアルバムの代わりにしている感じですね。クリスマスアルバムって聴く期間が限られるので、なんとなく今買わなきゃ、今聴かなくちゃというせわしない気分になってしまうんですよね。逆に期間が限られてるところにクリスマスアルバムを聴く楽しさがあるんだろうな、とも思いますけど。

加えてイージーリスニングはCDで手に入れるのが難しいので、レコードで聴いてるってのものんびりした気分になっていいのかもしれない。同じ作業しながら聴くにしてもパソコンに取り込んだ音源を小さなスピーカーで流しっぱなしにするよりも、レコードを聴いてるほうが音楽をちゃんと聴いているような気がします。15分に一回レコードをひっくり返したり(昔のレコードは収録時間が短い)、レコードラックからレコードを探したりしなくちゃいけないのも、いい気分転換になってるしね。そんなわけで11月後半から久しぶりにレコードを聴きながら夜を過ごす楽しさを味わってます。ついでにたまにはビールやワインでなく、ココアとかカフェオレとか飲んでみようかな、なんて思ったりして‥‥。

そんなイージーリスニングのレコードを出しているレーベルといえば、キャピタルやUnited Artists、RCA、Dot、Decca、Dynagrooveなどが思い浮かびますが、なんといってもcommand records、project3が好きです。いや、直球で申しわけないです。モンド世代には有名な「スペースド・アウト」で有名なイノック・ライトが手がけたレーベル。パーカッションを多用しステレオを意識したギミックあふれるアレンジが特徴のアルバムが多く、今ではモンドなレコードとして取り上げられることが多いのですが、モンドというほど奇をてらったところはないような気がします。まぁしっとりとしたストリングスで聞かせるという類のものではないですけどね。ギミックとしていろいろな楽器を使用しているので、どのレコードを聴いても似たような感じで飽きてしまうということがないがいい(あくまでも個人的な感想)。

ジャケットも購買層に合わせてか、わりときちんと作ってあってダブルジャケットが多いし、厚紙もいいものが使われているような‥‥そして、ジャケットデザインもいいんですよ。基本的には色数も少なく幾何学模様を組み合わせたものや抽象的なパターンを用いたものが多いのですが、シンプルだけれどどこかモダンで、LPジャケットならでは雰囲気です。

そんなcommand recordsのジャケットデザインを多く手がけているのが、チャールズ E.マーフィー。アートディレクションということで、イラストなどが入るときは別の人に依頼しているらしいのですが、よくわかりません。command records以降の仕事もよくわからないのですが、なんかface bookもあってそちらを見ると、晩年は都会ニューヨークの街並みを油彩で描いていたらしいです。作風はまったく違いますが、こちらもなかなかいい感じで、こんな絵のイージーリスニングアルバムがあったら一枚買ってしまいそう。でもcommandとはまったく異なるサウンドなんでしょうけどね。

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「辻静雄コレクション3」-辻静雄-

◆今城純写真展「walk home in d elight」@ポーラ・ニュージアム・アネックス

「料亭『吉兆』主人・湯木貞一氏を案内してヨーロッパ最高の料理を味わってまわる美食三昧の旅の紀行『ヨーロッパ一等旅行』、フランス料理の最高水準を体現するパリの一流レストラン31店の興趣尽きないエピソードや特別料理の作り方をつづる『パリの料亭』を収録」

前回の雑記で、松浦弥太郎や岡本仁について、この人たちみたいなライフスタイルの生活はおくれないなぁ、なんてことを思わされてしまうって書きましたが、ここでつづられるのは、もう贅沢、そして優雅すぎてまったくの別世界。まったく同じ世界は味わえないけれど、ちょっと背伸びしたらの片鱗だけでも味わうことができるかも?といった可能性はまったくないし、辻静雄も「こういう料理を味わえたければここやあそこがおすすめ」みたいなことをさらっと書いているけれど、全体を通して素人にわかるかという気概が伝わってきます。その突き放した姿勢があるからこそ、40年前に書かれたもので、一応お金持ちのためのヨーロッパで美食を味わうためのガイドブックという体裁をとっているにもかかわらず、今読んでもおもしろいんだと思います。そもそも40年前にヨーロッパに旅行してここに書かれているお店に行くような人が、これをガイドブックとして利用するかというのは疑問な気がしますが。
まぁそんな内容なので、おもしろいことはおもしろいのですが、「ヨーロッパ一等旅行」と「パリの料亭」と2冊まとめられていっぺんに読んでると、正直最後のほうは食傷気味というかもういいかなという気分になりがちなのでほかの本と平行で読むのがおすすめ。あと湯木貞一にヨーロッパ最高の料理を案内するというわりには、あんまり湯木貞一の反応などについて書かれていないのがちょっと残念。

年末は忘年会の季節。めずらしく銀座で飲むことになったので、ちょっと早めに会社を出てポーラ・ニュージアム・アネックスでやっている今城純の写真展「walk home in d elight」へ。いや、ほんとうはギンザグラフィックギャラリーでやっていたヤン・チヒョルト展に行く気だったのですが、26日で終わってしまってたんで‥‥。てっきり月末までやってるかと思ってました。

今城純は、昔、青山ブックセンターで写真集をちょっと見たくらいで、それほど気にしてはなかったのですが、北欧のクリスマスをテーマにしたとういうこと、そしてちらしで使われていた横を向いているサンタのかっこうをした店員がいる小さな小屋のようなお店の前に立ってる二人の女の人の写真がよくてちょっと見に行きたくなりました。
全体的な淡い色合いのカラー写真で、夕方から夜にかけての寒そうな北欧の街を飾る暖かな電飾の光が印象的な写真が展示されています。わたしが北欧に行ったときは夏のはじめの頃で、11時くらいまで明るくて、夕方から夜になるまでの時間がゆっくりとしていてよかったのですが、クリスマス時期の北欧も楽しそう。寒さや日の短さでなんとなく沈んでしまいそうな気持ちとクリスマスが近づいてウキウキするような気持ちが、静かに混ざり合ってる。今城純はそんな街中をカメラ片手にどんな気持ちでどんな足取りで歩いたのだろうか。スキップしたい気持ちとつい方を丸めてしまいそうな気分を抱えながら、でもさ楽しみを胸に歩いて家に帰ったのだろうか(“walk home in d elight”)?

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ちなみに写真集のほうは綾瀬はるか、菅野美穂、蒼井優、市川実和子、夏菜、深田恭子、アリス、チェルシー舞花‥‥などの女優や女性ミュージシャン、モデルのポートレイトを収めた「milk tea」とロンドン近郊の土地を歩き、その風景を切り取った「earl grey」の2冊が出ているようです。

「日々の100」-松浦弥太郎-

◆石田倉庫のアートな2日間といろいろなライフスタイル

松浦弥太郎が書く文章は昔から好きだし、カウブックスも、今は行けないけど、中目黒や表参道に行ったときはたいてい寄っていたし、編集長になってからの「暮しの手帖」もいいと思うけれど、最近になって出ている自己啓発本ぽい本はどうなんだろうってちょっと思ってしまってます。前から本のことを書いていても、実は本の内容よりもどちらかというと自身の経験やライフスタイル、考えを語るということが多かったので、もしかしたら自然な流れと言えるのかもしれませんが、それを前面に出してしまうのはねぇ。あくまでも本や作家などを紹介しているという体裁の中で語られているというのがよかったと思うのです。
ましてや、これは単なる偏見だけど自己啓発本っていまを切り売りしてるイメージがあるので、そういった本を古本屋が書くってことに何となく違和感があります(読んでないのでどんな内容なのかあんまり知らないけど)。

これは、文房具や食器、衣類、食べもの‥‥など、松浦弥太郎の暮らしの宝物と呼べる「もの」についてつづった本。普通に買えるものよりもどこかの朝市で見つけたものや、出会った人にもらったり勧められたりしたものが多く取り上げられています。ということもあって、取り上げたものその自体を語るというよりも、やはり自身の体験や考えが多くつづられているのは変わらないけれど、やはり「もの」が前面になっていて、その背景として語られているのがいい。
「もの」についてつづっていて、しかも自分でその写真を撮っているという点で、つい岡本仁さんの「今日の買い物。」と比べてしまいますが、なんとなく雰囲気は似ているようで、でもちょっと違うと思ってしまうところが随所に感じられて興味深かったです。
どちらも、この人たちみたいなライフスタイルの生活はおくれないなぁ、なんてことを思わされてしまうところは同じですが(笑)

-11月24日に立川の石田倉庫で行われていた「石田倉庫のアートな2日間」に行ってきました。普段、石田倉庫をアトリエとして利用している造形家・家具工房・陶芸家・金属工芸家たちが、製作しているものやその制作方法・過程が分かるようなものの展示があったり、子供でも参加できるようなワークショップがあったり、そして食べものや飲みもののお店が出ていたりと大人の文化祭といった感じ。細い階段を登ったりしてちょっとかわった形の倉庫の中を歩き回っているだけでもワクワクします。
食べものもmarumiyaやラマパコス、お菓子工房くろねこ軒、焼き鳥 たかといったお店が出店しており、晴天の下でビールと飲みながらラマパコスのカレーを食べたり、ひと通り見た後でおやつにお菓子を食べたりと、絵に描いたような秋の休日でした。

漣くんも、壁に描かれている森に、自分の描いた葉っぱなどを貼り付けていくワークショップや、枠に毛糸を通して額のようにしたプラ版に絵を描くというワークショップなど、いろいろ参加できるようになってきて去年よりも楽しんだよう。

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石田倉庫は、前に一緒にイベントを行った金属工芸家関田くんがアトリエとして借りていて、それがきっかけでこのイベントも知ったのですが、関田くんやこの日カレーのお店を出していたラマパコスのみんなを見ているとほんとに自由で純粋に毎日の生活を楽しんでいる感じですごいなぁと思う。自分に必要なものとか欲しいものはどんどん自分で作っちゃうし、家もどんどん自分が住みやすいように自分でリフォームしてったりしちゃうしね。

しかしこれが終わった後のメンバーの打ち上げとか楽しそうだな~

「ナポリへの道」-片岡義男-

◆「植田正治の道楽カメラ」@アツコバルー

前に読んだ「洋食屋から歩いて5分」がタイトルのわりにはそれほどテーマのしばりもなくゆるい感じで食べものについて書かれたエッセイ集だったので、これもそんな感じだろうと思って買ってみたら、ナポリタンにまつわる話しか書かれてなくてちょっとびっくり。
戦後の日本でナポリタンが生まれたエピソードから、ネーミングの由来や考察、調理法、社会学的なアプローチ、ナポリタンに関する自身の思い出、軽い読み物風のエッセイなど、一冊丸ごとナポリタンづくし。そして随所に戦後の日本の世相やアメリカの影響などの考察がはさまれてるのも片岡義男らしい。ここまでたたみ掛けられるようにナポリタンについて書かれていると、なんとなく書かれていることがほんとうなのか、実は片岡義男が考えたフィクションが混ざってるのでははないか、という気もしてしまいます。特に子どもの頃の体験談やエッセイ的なものはかなりフィクションが入ってるのではないかと読みながら疑ってみたりして、単にナポリタンのことが書かれているだけではないおもしろさがあります。
加えて3月に新橋にあるポンヌフというところで昔ながらのナポリタンを食べたときに、ちょっとわたしの中でナポリタンブームが起きそうになったことも、この本がよりおもしろく感じられた原因かもしれません。
とはいうものの、わたし自身はピーマン嫌いなので、どこかに行ったときにナポリタンを頼むということはほとんどありません。もし注文したナポリタンに薄切りされたピーマンが入ってた場合、それを取り除きながらナポリタンを食べるなんて、あまりにも面倒だし味気ないですもんね。

-今年は、植田正治の生誕100周年のわりには、それほど企画展とかないなと思っていたら、秋になって東京ステーションギャラリーで「植田正治のつくりかた」、渋谷のアツコバルーで「植田正治の道楽カメラ」、東京都写真美術館「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ-写真であそぶ-」と題された展覧会が行われ、テレビとかでも取り上げられているよう。個人的にはスケジュールをばらしてほしかったという希望もありますが、この機会にできるだけ見ておきたいと思ってます。

そんなわけで、先週の水曜は渋谷に飲みに行ったので、その前に会期が延長されていたアツコバルーへ。ここはほかの2つと比べて会場は大きくないけれど、家族をモデルにした初期のモノクロ作品、時折訪れた東京渋谷の街角、ファッション誌の子供写真など未発表作品を中心に展示されているとのことだったので気になってました。あと、会場が大きくない分、気軽に見に行けるのがいいよね。
-まぁ実際にはそれほど植田正治を研究しているわけではないし、記憶力もあまりないので、未発表かどうかはあまり関係ないんですけどね。被写体として見慣れている家族の写真だけでない子どもたちの写真や写真館など建物の写真が個人的には新鮮だったかな。
ついでに、前から欲しかった切手シートも購入。別に切手を集めているわけでもないし、絶対に使わないことを考えると、それ買ってどうするんだ?という気もしないでもないですけど。

あと、アツコバルーは、ギャラリーとしてはスペースが広めでゆったりしていて、ワンドリンクがついているので、ひと通り見た後でちょっと椅子に座ってお酒を飲んで、それからまた写真を見たり、とのんびりできる感じがよかったです。わたしが行ったときはカウンター席が満席だったのですが、カウンターに座ってギャラリーの方(アツコさん?)とちょっと写真について話をしたりするものいいかもです。お酒が入ってる分、気軽に話せそうですし。好きな写真家や作家の展覧会だから、というだけでなく、機会があればたびたび立ち寄ってみたいギャラリーです。

「故郷の本箱」-上林暁-

◆わをん2013 -秋-@千葉県 横田ファーム

毎回、興味深い本をこつこつと出している夏葉社から出た上林暁の随筆集。京都で善行堂という古本屋をやっている山本善行さんが収録作品のセレクトを行っています。親しみのある読みやすい作品が多く収録されていて、初めて上林暁の作品に触れる人でも入っていきやすいような作品がピックアップされている感じなのかな。ちなみに夏葉社さんからはこの前にも同じ山本善行さんの「星を撒いた街」という本が出ているけれどこちらはまだ読んでません。夏葉社さんの本は装丁もいいし、本の作りきれいだし、一冊一冊丁寧に作られている感じがとてもいいんですが、こういっちゃなんですが、2000円以上するので実際に買う踏ん切りをつけるタイミングがなかなか難しい‥‥
故郷や幼馴染の話、古本の話、作家との思い出‥‥どれも心にしみるような穏やかな雰囲気の作品で、読んでいると心に響くフレーズがたくさん出てきて、機会があるたびになんども読み直したく本なので2000円は安いのかもしれませんが。

上林暁の本は、後期のものはわりと古本屋で手軽な値段で手に入ると思うのですが、初期の頃の作品は難しくなってしまうので、その辺の作品をオリジナルで復刊してほしいです。
アンソロジーというのはそれを読んで気に入ってさらにほかの作品を読んでみるという入口だったり、いくつか作品を読んでいる場合にあらたに組みなおした作品を読んでみることで新しい発見ができるといった変化球だと思うんですよ。だから、どちらにしてもオリジナルが読める状況になってると、こういう本の意義もまた変わってくるんじゃないでしょうか、とか。いえ、適当。
ちなみにうちの下の子の名前は上林暁から取りました(ウソ)。

日曜は、千葉県の鎌取にある横田ファームで行われた「わをん」というイベントに行ってきました。横田ファームという名前のとおり、農場が会場として使われていて、ビニールハウス内に作られたステージでライブがあったり、DJが音楽をかけたりしつつ、農業体験やトラクタークルーズといった農場ならではのイベントがあるというちょっと変わったフェスでした。
出演したのはthe chef cooks meや後藤正文、ザ・なつやすみバンド、奇妙礼太郎、TGMX‥‥などで、わたしの目当てはComeback My Daughters、Turntable Films、坂本美雨といったところ。まぁ子ども連れなのでがっつりライブを見るという感じではなく畑の周りで遊んだり、簡単なワークショップに参加したりしつつ、ちょこっとライブを見れればという気持ちで行ってみました。実際、トラクターに乗ったり、ツリーハウスやハンモックなど遊ぶところがたくさんあるし、また農場で採れた野菜を使ったという食べものはだいたいフリーということで、遊んだり食べたり(飲んだり)で、ほんとにライブをゆっくり見てるどころではなく、Turntable Filmsも坂本美雨もちゃんと聴けたのは2曲ぐらいで、最初から最後まで見れたのはComeback My Daughtersだけというね。あ、ザ・なつやすみバンドもちょっと聴いたけどけっこうよかったな。

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そのComeback My Daughtersは、最近のアルバムはぜんぜん聴いてなかったし、ライブを見るのも5年以上ぶり、最新アルバムでは曲によっては歌詞が日本語になっているということだったので、見る前はちょっと不安でしたが、サウンドの方向性もそれほど変わらず、でも演奏はダイナミックになっていて、そんな不安を吹き飛ばしてくれたパフォーマンスでした。新譜から曲のみで、かつ時間も短かったので機会があればもっと聴きたいです。最初は「うるさい」って言ってた漣くんも途中で手を上げたり叩いたりして盛り上がってたしね。でも最後にはそれまで遊んだ疲れが出たのか寝てしまいましたけど。ほんとこれを見ただけでもよかったかも!?
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と思いつつも、東京の西から鎌取までは遠かったです。横田ファームまでシャトルバスも出ていたのですが、バスで15分くらいかかったし、会場にいた時間よりも移動していた時間のほうが長かったぁ~

「良平のヨコハマ案内」-柳原良平-

◆第4回東京蚤の市に参加しました。たくさんの人に来ていただきありがとうございました!

みなとみらい地区で横浜博覧会が開催された1989年に出た本。
「みなとみらい21」プロジェクトを筆頭に大きく変わろうとしていく当時の横浜で、柳原良平が関わったプロジェクトの顛末や、当時で横浜に移り住んで25年の柳原良平の行きつけのお店や場所などがイラストと文章でつづられています。街並みが変わっていことに対する不安や怒り(?)もあると思うのですが、マイナス面に関して最小限に抑えられているところが柳原良平らしい(単にかけなかったのかもしれませんが)。ついこれを山口瞳や開高健が書いたら‥‥と思ってしまうけれど、それは野暮というもので‥‥

わたし自身のことで言えば、横浜によく遊びに行っていたのは1985年からこの時期ぐらいまでなので、この本が出てから24年、この後、いろいろと再開発が進んてかなり街の様子も変わったと思うけれど、実際どうなのかよくわかりません。そもそもわたしが横浜に遊びに行ってたのだって高校時代が中心なわけで、古本屋とか中古レコード屋とか雑貨屋とか喫茶店ぐらいしか行ってないですしね(今とほとんど同じか?)。あとはちょっと背伸びして491houseとかよいどれ伯爵、BarBarBarあたりでジャズのライブを聴いたくらいなのですよ。なので、横浜がどう変わっていこうと何にも言えないナー

それにしてもこの本が出てからの期間と柳原良平は横浜に移り住んでからこの本を書いた期間がほぼ同じなんですよね。そう考えると1964年から1989年の変化と1989年から2013年の変化ってどのくらい違うものなんだろうか。

さて、11月9日、10日は京王閣で行われた東京蚤の市に出店しました。昨年から始まって今回で4回目。開催されるごとにお店の数も増えていって今回は150店あまりのお店が京王閣に集まりました。今回は天気予報があまりよくなくて、日曜日には雨が降ったときの対策として場所を移動したりするお店がありましたが、無事開催できて、かつ雨も降らなくてよかったです。でも、なんかお店もお客さんも、そして主催している手紙社さんも、みんな天気予報に振り回されてしまったような感じだったかもしれません。
そんな中でもたくさんの人に来ていただきありがとうございました。またスタッフやボランティアの皆さまありがとうございました。

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わたし自身は今回は特に買ったものもなく、ときどきお店を離れて会場を子どもたちと歩き回ったり遊んだり、ドーナツやワッフルを食べたりしていました。今回は古本屋さんが屋内だったので、ステージや会場の様子があまり伝わってこなかったり、外の喧騒が聞こえてこなかったのが残念だったかも?でも屋内だったせいで雨の不安もなく、またそれほど寒くもなく快適に過ごせたのでなにも言えませんが‥‥。
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ミオ犬が買ったクマゴローと珍犬ハックルと塗り絵

しかし、回を追うごとに子どもたちの騒ぎっぷりが加速していて、特に前回からは幼稚園の友だちとかも遊びに来てくれるようになったので、手がつけられなくなってしまっててちょっと困った感じです(遊びに来てくれるのはいろんな意味ですごくうれしいですけどね)。ほんと両隣のお店には申しわけなかったです。もし次回も蚤の市に誘われたら、そのときにほかの古本屋さんから「カヌー犬ブックスの隣は避けてほしい」と言われたらどうしようかと思ってるくらいです。あ~あ

「スコットランドの鴎」-大岡昇平-

◆はらっぱ祭2013

前にも(いつも?)書いているけれど、三月書房の小型本だと読んだことのない作家の本もつい買ってしまいます。大岡昇平の本もこれが初めて。まぁこれだけ読んでどうのこうの言うのもなんなのでコメントはなし。でも「武蔵野夫人」が小金井、特に“はけ”を舞台にしていて、しかもその辺の風景や地形がかなり書き込んであるということを初めて知って読んでみなくては、という気持ちになりました。

三連休は、その“はけ”、野川沿いにある“はらっぱ”で行われたはらっぱ祭に去年に引き続いて2日連続で行ってきました。ここに引越してきてちょうど4年、引越してきたのが10月31日だったのではじめの年はお祭りどころではなかったけれど(漣くんもまだ0歳だったしね)、それから3年毎年来ていて、いる時間もだんだんと長くなってきています。今年は昼前から5時過ぎ、暗くなるまで遊んでいました。会場がはらっぱなので当然照明もなく夜になると真っ暗になってしまうため、来年はランタンを持っていって夜まで楽しみたいですね。
といっても、特に何をしているわけでもなくて、ステージで行われているライブをBGMに屋台のご飯を食べて、ビール飲んで、友だちと話したり、子どもたちが遊んでいるので見ていたり、というかなりゆるい感じです。今年は、幼稚園の友だちがたくさん来ていたので、漣くんは友だちと勝手に遊んでいるあいだ、お父さん同士でのんびりビールやホットワインを飲んでました(そのせいでかなり飲みすぎました)。

-ライブのほうは、途中までだったけれど、レゲレーション・インディペンダンスを聴けたのがよかった。レゲレーション・インディペンダンスは、4月に国立の大学通りで土生剛がライブをやったときにちょっとだけ聴いてちょっと気になっていたバンド。ダブっぽいテイストで、11人のメンバーによる厚いサウンドがかっこいい。4時半からスタートだったのですが、演奏が進むにつれてだんだんとまわりが暗くシチュエーションも最高でした。やっぱり野外で聴くレゲエはいいです。アルバムも出ているらしいので今度見つけたら買おう~
で、レゲレーション・インディペンダンスを聴きながら、わたしがスカやレゲエが好きなわりにはスカパラにあまりはまらない理由って、たぶんダブの要素がないからなんだろうなってことに、今さらながらに気がつきました。その辺はスカ/レゲエを始めて意識したミュートビートの影響が大きいわけで。三つ子の魂‥‥。まぁロッキンタイムやマイスティースは好きでときどき聴いてますが、それもすごい好きというわけではなくて、ダブの緊張感に疲れたときのほっと一息って感じですね。でもスカコアは別かも?あ、それも初めてスカというものを聴いたのがマッドネスやスペシャルズだったからか?三つ子の魂‥‥。

「また杏色の靴をはこう」-城夏子-

◆メキシコマーケット@松庵文庫

以前、森茉莉や萩原葉子、矢田津世子、広津桃子、芝木好子など女性の作家の本をまとめて読んでみようと思って、おもしろそうな人をピックアップしていた時に知った人(例によってその時にピックアップした本のほとんどは読んでないままというね‥‥)。
実はこの本を買ったのはその頃なんですが、いざ読んでみようとなると、帯に書いてある「誰もがかつて17歳でした。そして、誰もが17歳の心を持ち続けることができます。たとえあなたの暦の上の年齢がいくつだとしても‥‥。夏の始まりの朝のようにみずみずしい17歳のエキスがたっぷり詰まった、ときめきの小筐。」という言葉に40歳を超えた男が読んでいいものだろうかと不安になってしまい躊躇してしまいなかなか読み始められなかった次第。

実際には、67歳で老人ホームの生活を始めた後、70歳を過ぎてから書かれたもので、老人ホームでの暮らしの素晴らしさや楽しさなどがつづられています。時代のせいもあり、ホームでの生活については読んでいてちょっと違和感を感じてしまうところもあります。でも純粋で明るい文章を読んでいると、たぶんこの人は、確固とした自分の世界がありどこで暮らすようになったとしても楽しめるじゃないかと思いますね。そういう意味では森茉莉と似ていて、この本を森茉莉好きな早川茉莉が編集を担当しているのもうなずけます。とはいうものの、女の人は歳をとってもいろいろたいへんだなぁという気はしますが。さすがに少女小説を読んでみようとは思わないけれど、もう少し若い頃の随筆を読んでみたいですね。

週末は西荻の松庵文庫でやっていたメキシコマーケットに行ってきました。古い日本家屋を改装したカフェでなぜメキシコ?と思ってしまいましたが、日本家屋の落ち着いた中にカラフルなメキシコの雑貨が並んでいるのはなかなかいい感じでした。
わたしは特に買い物はしなかったのですが、骸骨をモチーフにした雑貨を子どもたちと見たり、ランチのタコライスを食べたり、縁側に座ってメキシコの黒ビールを飲んだりしていました。

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子どもたちはメキシコの伝統的な行事、ピニャータ割りに参加。これはお菓子が入った大きな丸い張りぼてをロープに吊るして、揺らしてるところを目隠しした子どもたちが棒で割るというもの。メキシコでは誕生日とかに行われるらしいです。
小さい子から順に張りぼてを叩いて行ったのですが、力もなくただ棒を降ってるだけの子から、だんだん力強く叩くようになっていって、周りの大人たちもそれに合わせて盛り上がっていくといった感じでした。張りぼてを頑丈に作ったせいで結局は子供たちでは割れず、最後は大人が登場し割るというオチもなかなかいい。
割れて飛び散ったお菓子をみんなで拾う様子も小さなお祭りぽくてよかったし、幼稚園とかでやればいいのになぁ。

ちなみにメキシコマーケットは今週末11月3日までやってます。お近くの方連休に行ってみてはいかがでしょうか。

-帰りはそれいゆでお茶。昔は西荻に行くたびに寄っていたものだけれど、子どもが生まれてからは初めてです。5年ぶりくらいかな?いや、子どもたちと一緒にそれいゆに来れるようになるなんて考えてもいませんでした。大きなサイズのケーキやスコーンもそのままで、漣くんと分けて食べるにはちょうどいいサイズでうれしい。それほど混んでなかったので、お店の真ん中にある水出しコーヒーの器具を漣くんと眺めたりしてあの頃とは違う意味でなんだか落ち着きました。

まぁとは言っても西荻は子どもが楽しめるところがあんまりないのでそうそう行けそうにない街には変わりないんですけどね。(西荻の楽しさが分かるのって何歳くらいなんでしょうね?)

「ぼくのシネマ・グラフィティ」-田中小実昌-

◆はけのおいしい朝市&カヌー犬ブックスat平林家

この本は高円寺のあずま通りにある読書と手紙にまつわるお店Amleteronで購入したもの。コミマサさんは特に意識して本を集めているというわけではないけれど、手頃な値段で見つけるとつい買ってしまいます。だいたい映画関連のエッセイは手頃な値段で手にはいるかかな。ほんとは小説の方も読みたいんですけどね。Amleteronではこのほかにイシイリョウコのポストカードも買いました。7月の夏のできごと。

あーそして気がつけば10月ももうおしまいです。
10月ははけのおいしい朝市に出店したり、出茶屋さんが定期的にお店を出している平林家で一緒にお店を出したりしました。イベントが終わってもうかなり経ってしまいましたが、どちらもたくさんの人に来ていただきありがとうございました!

-はけのおいしい朝市は、50回記念ということで小金井神社の境内に、30店舗余りのお店が集まって開催されました。わたしは幼稚園の友だちでネットでレコードを売っているハイフェディリティさん(今はあんまりやっていないみたいですが)と一緒に古本&中古レコード屋として出店させていただきました。そういうこともあってか幼稚園の友だちもたくさん遊びに来てくれて、また場所柄、神社から出なければ、誰かが見守ってくれているという感じだったので、わたしは本やレコードを見てくれている人と話したりできて楽しんでました。小金井という地域をいい意味で感じつつ、でもそこに縛られているわけでもない自由な雰囲気がしてほんといい50回記念イベントでしたね。
また来月からは、dogdecoさん、中村文具店さんでの通常開催になりますが、これからも遊びにいかせていただきます!(来月っていうかもう今週末ですが)

平林家での出店も子どもたちが家の中で遊びまわる中、大人たちはのんびりと珈琲を飲んだり、本をめくったり、おしゃべりをしたりしているというアットホームな雰囲気で、いつまでもここでのんびりしていたい気分になりました。

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11月はまた東京蚤の市に出店します!開催されるごとにお店も増え、来てくれるお客さんも増えていって賑やかさが増していっていますが、今回はどんな風になるのか楽しみです。天気がいいといいなぁ~