「七時間半」-獅子文六-

■「コーヒーと恋愛」がちくま文庫から再刊されたときはおおと思う一方でなんで今?という疑問もあったけど、その後も「てんやわんや」「娘と私」と、獅子文六の本が次々と出ているのにちょっとびっくりしている。「七時間半」は、映画化された「特急にっぽん」はラピュタで見たけれど、本の方は読んでなかったので文庫化はうれしい。内容としては、東京から大阪までの七時間半の間に繰り広げられる恋のゆくえをめぐるドタバタ喜劇。食堂車のコック、美人の添乗員、堅実な経理係、大阪商人の社長、軟弱な大学院生‥‥など、主要な登場人物をはじめ、脇役にいたるまでこれでもかというくらいわかりやすいキャラクター、並行して総理大臣が乗りあわせ爆弾騒ぎまで起きるなど、相変わらずのエンターテイメントな作品で理屈なしで楽しめます。今、食堂車がついている電車ってどのくらいにあるのかわかりませんが、食堂車でビール飲みながら車窓の景色を眺めたりしたい。

-■1月の泥酔ファンクラブでひさびさにレコードを回しました。夏にやったイン・ザ・パシフィックの100回記念以来なので半年ぶりくらい。普段、そんなにレコードを買っているわけでもないし、このくらいのペースがちょうどいい。時間もそんなに長くないし、レコードを持って行くのも楽。昔は22時から5、6時くらいまでで3人で回すというのがだいたい普通だったので、段ボールにレコード詰めて、リュックにシングル盤入れて移動したりしていたもんね~で、かける曲もイージーリスニングばかりで、あんまりお客さんのことを考えてなかったりする。聴きやすい、もしくは踊りやすいような流れはすごく考えるけどね。もうジャンルを広げていくのは無理なので、そろそろこの路線できちんと回せるようになりたい。まぁレギュラーでイベントしているわけでもないんで、なかなか詰め切れません。
泥酔ファンクラブのサイトにもプレイリストを掲載していますが、一応、コメントつけてこちらにも載せておきます。

-[1]「Something’s Coming」-Button-Down Brass-
レイ・デイヴィスというトランぺッターを中心にしたイギリスのブラスセッション。もちろんキンクスの人ではないです。ミュージカル映画「ウェストサイド・ストーリー」からの曲なんですが、低音が効いていてかっこいいアレンジになっています。

[2]「Thunder Shake」-Les & Larry Elgart-
レスとラリーの兄弟による「Elgart Au Go-Go」というアルバムからのソウルフルな1曲。小西康陽がかけていたりする定番らしい。まぁこれ見かけたら絶対買うでしょ、というくらいストレートなジャケット&サウンドです。

[3]「One Two Three」-Doc Severinsen-
個人的にレン・バリーの「One Two Three」は、はじめてイベントで一番最初にかける曲と決めてるので、本当はこの曲を1曲目にかけるつもりでいたけど、なんとなく流れを作りにくかったので、この位置に。安定のCommandレーベルからの1枚。

[4]「Bee Dee Bum Boo」-Rhythm And Beat-Kings-
ちょっとテンポを落として、ドイツのジャズ・レーベルMPSの前身SABAのコンピから。Rhythm And Beat-Kingsについてはよく知りません。こに収録されているミュージシャンの単独のアルバムが欲しいけど、まぁ見つからないね。

[5]「Dimension Futur」-Lucien Lavoute et le Travelling Orchestra-
フランスのライブラリーもの。

[6]「Sunday Ride On A Thursday Afternoon」-The Main Street Singers-
先生たちを中心とするヴォーカルグループらしいです。ジャケットのイラストはなんですが、折り重なっていく男女混声コーラスがさわやか。

[7]「That Same Old Feeling」-赤い鳥-
トニー・マコーレイのよる名曲。いろいろな人がカバーしていますがオリジナルはPickettywitchなのかな?アレンジはオリジナルとほとんど変わらないけど、前の曲に合わせてちょっと軽い感じのする赤い鳥のバージョン。あくまでも個人的な感想ですけど。

[8]「City Girl」-Jefferson-
元ロッキン・ベリーズのヴォーカリストによるソロ。伸びやかで適度にソウルフルなヴォーカルで高揚感のあるポップな曲なのでついかけてしまう曲です。スパイラル・ステアケースの「More Today Than Yesterday」とかね。

[9]「Lovin’ Thing」-The Big Band Syndrome-
「Lovin’ Thing」は60年代の曲で10位以内に入るくらい大好きな曲。サックス/フルート奏者のBob Jung率いるこのThe Big Band Syndromeのバージョンは、高速といってもいいくらいテンポが速くてかっこいいです。Commandレーベル。

[10]「Go Ahead」-Samantha Jones-
マーク・ワーツが手掛けたフォード車のプロモーション用の曲。

「幻のイマージュ」-エルヴェ・ギベール-

■何年か前に、評論家ではなく作家や写真家自身が、写真について書いた本を読んでいたときに思い出して再読しようと思ってた本。このシリーズは、ジャン・フィリップ・トゥーサンとかの本も出てて1990年代半ばころにかなり話題になったけれど、あまのじゃくなんでその時には読んでいなくて、実際に読んだのは少しあとくらい。「幻のイマージュ」というタイトルに惹かれて手に取った記憶があります。多分、堀江敏幸の文章を読んだのはこの本が1番最初になると思うんだけど、もちろんその時は翻訳者として意識していないし、その何年後かに堀江敏幸の本に夢中になるなんて思いもしていませんでした。

■ほかの作家が書いた写真をめぐるエッセイと同様に、ときには自身の物語となり、ときに普遍的な写真についての物語となり、ときに抽象的なイメージの記述が混ざりこみ‥‥といった具合に輪郭がぼんやりとしてはっきりしない。そしてそこにこれらの本のおもしろさがあります。この手の本を読んだ後にいつも書いているような気がするけれど、また気が向いたときに読み返すために手元に置いておいておきたいですね。
そういう意味では、ロジェ・グルニエ、ロラン・バルト、スーザン・ソンタグ‥‥など、写真についての本をシャッフルして、記載されている写真を載せたり、写真家についての注釈を入れたりして、アンソロジーというか、バラエティブックみたいな形にまとめたらおもしろいんじゃないかな、なんて適当に思ったりもします。どれもそれぞれの章はそれほど長いわけではないし、最初から読まなくちゃいけないというわけでもないですしね。

■なんとなく書く気にもなれないままで放置していたら、3か月も経ってしまいました。いつのまにか年も明け、一年の振り返りもなし。こんなに期間が空いてしまったのは、一時期、わけあってサイトを更新することを自粛していた時以来ですね。特に何をしているというわけでもないけれど、簡単にでも毎日の出来事とかを書いておくのもいいかな、と思うんですけどね。まぁめったに読み直すことはないですけど。

-■年末年始は、お休みのギャラリーも多いので、写真展などに行けてませんが、年が明けてから、平林秀夫挿絵展 「コトバと言葉の間」と渡邉知樹展「花、花、ギガンテス、花」を見てきました。平林さんの挿絵展は、小金井でリアカーにコーヒーを淹れる用具一式を積んで、公園やお店の前などでコーヒーを淹れている出茶屋さんのエッセイ「今日も珈琲日和」の挿絵などを展示したもの。場所もいつも出茶屋さんが出ている平林さんの平屋で、絵を壁に展示するだけでなく、一つ一つ本を開くように絵を見れる形のものがあったりして、出茶屋さんのコーヒーや平林さんの作ったカレーを飲みながら、何度も見返してしまいました。鉛筆で細かいところまで丁寧に描かれているので、本を見た時とは印象が違って見えたり、一見すると、ちょっと怖い感じの絵もじっと見ているとユーモアが隠されていたりするのが興味深かったです。

-■渡邉知樹くんの個展は、前回のにじ画廊以来かな。ピンクを基調とした抽象画で、ギャラリー自体がピンクに染まっているようでした。タイトルに「花」がついているように春らしい、ポジティブな雰囲気の絵が多く、ピンクの色自体もさまざまなピンクの色が使われていて、立体的というか浮き立ってくる感じでした。
片隅には鳥のオブジェも置いてあり、今回も一つ購入。個展に行くたびに一つ一つ買っているこのオブジェも結構増えてきて、うちの鳥オブジェコーナーもにぎやかになってきました。漣くんと暁くんの好みが違うので、なかなか一つに選べないのが難点ですが‥‥。ちなみに今回は漣くんが選択したものを買ったのですが、いまだに「あっくんは足が角ばったのがよかったのに」と、ことあるごとに言っている始末。逆にもう少し成長したら、興味がなくなって、「どれでもいいよ」とか言うんでしょうか。

「花川戸へ」-樋口修吉-

■樋口修吉は高校の頃よく読んでいた作家で、文献や多くの人の話を元にして時代背景を実在の人物や出来事を交えつつ、架空の主人公の話をのせるという作風が好きでした。神戸や横浜、そしてギャンブルに明け暮れたという銀座を舞台にしているというのも読んでいて楽しかった。
この本は、浅草生まれの高橋伸寿という実在のジャス歌手の生涯を描いた作品。フィクションと現実の境が曖昧になるような、不思議な瞬間はないけれど、戦前から戦後のジャズブームの頃、そして平成になるまでの長い期間を、関係者の話も交えていねいに語っていて興味深く読んだ。題材としても戦後から1960年くらいまでのエピソードがおもしろく、共演者としていろいろ有名な人も出てくる。高橋伸寿は、映画に主演したりしているけれど、基本的にはクラブなどで歌うことを主眼に置いていて、レコードとして残っているものはなさそうなのが残念です。YouTubeで調べてみたら、さすがにある程度歳を取ったあとの映像しかなかったけれど、クルーナー流を名乗るだけあってきれいな声で歌もうまかったし、英語の発音もきれいでした。わたしにとっては端正すぎるという面もある気がしましたが。

-■11/1は東小金井にあるアトリエテンポの1周年記念で行われた「家族の文化祭」に参加しました。子どもを連れた人が多く来るということで、これだけ絵本に絞ってお店を出すのは初めてじゃないかな、というくらい絵本を中心に本を持って行ったのですが、始まる前から道を通る人たちが絵本を眺めたりして、終了までたくさんの人に来ていただき、お店の前に人がいなくなる時間がまったくないという感じでした。お店の場所もライブのステージに近いところで、ちょっとしたスペースがあるところだったので、周りで子どもたちが遊んだり、駆け回ったりしてにぎやかな雰囲気になっていたのもよかったですね。まぁその中で1番うるさい声を出していたのは、うちの子とその友だちでしたけどね。
わたし自身も、時間を見つけて、子どもたちとスタンプラリーをしたり、パンなどの食べものを買ってライブを見ながら食べたりして楽しませていただきました。
来ていただいた皆さま、家族の文化祭のスタッフの皆さま、ありがとうございました!こういう場所が、武蔵小金井ではなくて東小金井にあるのがちょっと悔しいですね。

■そして今週末は東京蚤の市です!気がつけばもう8回目!回を重ねるごとにお店も増えて、たくさんのお客さまでにぎやかになっていってますが、今回はどんな雰囲気になるのでしょうか?前回は20年ぶりくらいにカジヒデキのライブを見ましたが、今回も見れたら15年以上ぶりとなるかせきさいだぁのライブもあってちょっと楽しみ。カジくんはぜんぜん変わっていなかったけど、今ではミスターシティポップを自ら宣言しているせきさいだぁは、変わってるのか、変わってないなのかなのか?あと今回も、暇を見て会場を回りつつ、ちょっとした小物とか買えるといいな(だいたいノベルティグラスかカヌー犬ブックス出店用の箱や本立てくらいですけどね)
毎回いろいろ準備しなくちゃと思いつつ、ほとんどできないまま当日をむかえてしまってますが、あと一週間いろいろがんばります!

 第8回東京蚤の市概要

 日程:2015年11月14日(土)、15日(日)
 時間:14日(土)10:00~17:00/15日(日) 9:00~16:00
 開催場所:東京オーヴァル京王閣
 東京都調布市多摩川4-31-1
 入場料:500円(小学生までは無料)
 http://tokyonominoichi.com/2015_autumn/

-■そんなわけで、9月から自分が出るイベントもいくつかありつつ、幼稚園のお山のおまつりや遠足があったり、立川ルミネのあおぞらガーデンでショピンを見たり、三鷹にある国立天文台の星と宇宙の日、そしてとなりの星と森と絵本の家の秋まつりに行ったり、ICUや農工大など近くの大学の学祭があったり、はらっぱ祭りでマッコリを飲みすぎてハロウィンでふらふらしたり、府中刑務所の文化祭で、刑務所の中を見学したり、石田倉庫のアートな2日間があったり、と近くのイベントが盛りだくさんで、秋のお休みの日はなんだか慌ただしい。
といっても、だいたい毎年、同じイベントに遊びに行っていて、それが少しずつ遊びに行く増えていく感じ。そしてこの慌ただしさがひと段落すると、幼稚園のクリスマスページェントがあって、あぁ今年も終わりだなぁという気分になってしまいますね。

「赤い罌粟の花」-平岡篤頼-

■平岡篤頼はデュラスやパトリック・モディアノ、アラン・ロブ=グリエの翻訳で知られる仏文学者で、作家としても何冊か出していてこの「赤い罌粟の花」などで2回芥川賞候補にもなっている。また早稲田大学の教授でもあり、栗本薫、重松清、堀江敏幸、小川洋子、角田光代といった作家が教え子とのこと。そういえばなかなか出会えてないけど、堀江敏幸が長い解説を書いたという本もありました。
パリでの日々をつづった「パリその日その日」や「パリふたたび」が好きで、いつか小説のほうも読んでみたいと思っていたのだけれど、夢日記をつづった作品や戦時中を舞台に子どもを主人公にした作品、「ジッドに日記」について書いた(創作ではない)作品など、いろいろな手法がとられた短篇が統一感なく収録されていてちょっと捉えきれない。ただ表題の「赤い罌粟の花」はおもしろかったので、こういうのが7篇収録されていれば、と思う。

-■日曜は立川ルミネの屋上でやっているあおぞらガーデンで、ショピンのライブを見た。あおぞらガーデンは近いし駅から出なくていいし、屋外なのでライブ中に子どもたちが騒いでもすぐに離れることができるので、ちょっと気になる人がいると見に行ってみようかという気分になる。反面、あぁJRの思うつぼだなとも思う。個人的にはBERGの件もあったりしてルミネに対してはあまりよく思っていないんですけどね。
ショピンは6月にロバハウスで見た以来。手づくりのモノも含めたおもちゃの楽器を効果的に使ったり、振り付けがあったり、普段、ライブに行ってもまったくのらないうちの子どもたちもまぁまぁ聴いてて、自分たちもゆっくりライブを見れました。しかしこの辺に住んでて子どもがいると、ショピンとCOINNのライブは定番になりますね。
ちなみにあおぞらガーデンに行こうと言ったら「どうせルミネの屋上に行ったらお父さん、ビール飲んだりするつもりなんでしょ」と漣くんに言われてしまいましたが、今回はビールを売ってるお店はありませんでした。ザンネン

-■11月1日に東小金井のアトリエテンポで行われる【家族の文化祭~こどももおとなもいっしょにたのしむ。まなび、あそび、かさねる、わ。~】に参加します。アトリエテンポは、あたらしい日常料理 ふじわら(食堂)、dogdeco HOME(ペットグッズ)、ヤマコヤ(絵とデザイン)safuji(革小物)、coupe(革靴)という5組の作り手のアトリエが併設されたストアで、去年の11月に東小金井の駅の高架下にオープンしました。今回のイベントはオープン1周年を記念して食べものや手しごとのお店やライブ、ワークショップなど子供も大人も一緒に楽しめるイベントです。西東京の子どもがいる家庭の定番、COINNのライブもあります。カヌー犬ブックスは、いつもの料理関係の本は少なめで絵本などを中心に本を持って行きます。
当日は小金井でははらっぱ祭りも行われているので、ちょっと遠いですが、はしごしても楽しそうですよ。

【家族の文化祭~こどももおとなもいっしょにたのしむ。まなび、あそび、かさねる、わ。~】
 開催日時:2015年11月1日(日) 11:00~16:00
 会場:コミュニティステーション東小金井・モビリティステーション東小金井(JR中央線東小金井駅高架下近辺)
 →https://www.facebook.com/kazokunobunkasai

「アンソロジー そば」

■テーマに合わせて食べ物についてのエッセイを収録したアンソロジー。今回のテーマは“そば”。大まかには自分の好きなそば屋の思い出とそば屋で飲む話が多いかな。あとはうどんとそばの比較とか。意外と自分でそばを打つ話がみなみらんぽうくらいしか書いてないのは、素人がそばを打つという趣味が最近のものだからか?ただ全編そばのわりに飽きずに楽しく読めるのは、そばそのものよりも、そのそば屋に行くまでのシチュエーションをつづっているものが多いからかもしれません。
こういう文章を読み続けていると昼間からそば屋でお酒を飲んだりしたくなるけど、昼間からのんびりお酒を飲むなんて、今のわたしには贅沢すぎる。そもそも年に数回しか一人で昼間に出歩くことがないので、行きたいところ詰めすぎちゃって、とてものんびり飲むなんて感じではないです。子どもたちがもう少し大きくなったらそういう環境になるんでしょうかねぇ~

■とはいいつつも、最近はお酒ばかり飲んでる。幼稚園の園長が中心になって、楽器を弾けるお父さんたちで組んでいるオヤジバンドに参加してるのですが、10月10日にお山のおまつりがあったのでその練習で、土曜日になると夜幼稚園に行って、ビールとか飲みながら練習して、そのまま飲みに行くパターンが3週続いてしまった。わたし自身は楽器はできないので、歌というかコーラスなんで、かなり気楽に行ってることもあって、もう練習と言うより飲みがメインという感じです。幼稚園のお父さんたちと飲むと、みんな近所に住んでいるので、誰も「終電だから帰る」という人がいなくて、気がつくと1時くらいになっていたりするのがこわい。

-■あと、10月3日にClub Heavenの20周年記念パーティに行ってきた。Club Heavenは六本木時代は知らなくて、吉祥寺に移ってきた時に友だちに誘われて行ったのが初めてなので1997年かな。2年くらいは毎月遊びに行って、朝まで遊んで、そのあとのデニーズまで行っていたものだけれど、2000年代はあまり行ってない。まぁ結婚もしたし、年齢的に朝まで遊んでるのがきつくなってきたってこともあるし、単にUKロックを聴かなくなったということもある。ちゃんと聴いてないので、実際、今回もこの曲聴いたことあるけど、まったくタイトル思い出せないって曲が多くてびっくりした。いや、だからこそ楽しいってこともある。Club Heavenのいいところは3人ともすごく音楽を知ってるのに、イベント自体はマニアックではないってところだなぁとあらためて思いました。
しかし、20周年ということで、盛り上がる曲が多かったということを鑑みても、この盛り上がり方で朝まで踊り続けて、その後も話し込んでいたという20代の体力ってすごい。そんな遊び方もうできない年齢になってしまいました。
今は不定期にしか開催してないけど、年に数回くらいはやって欲しい。

「言葉を生きる」-片岡義男-

■英語を話すハワイ生まれの日系二世を父と、日本語を話す近江八幡生まれの母とのあいだに生まれた少年が、2つの言語のあいだで揺れながら、どのように言語を、そしてそれにともなう思考の方法を獲得していったのかが、子どもの頃にペーパーバッグを集めていた話から大学時代に初めて翻訳の原稿を書いた話、そして小説を書き始めた頃などの経験をもとにつづられている。
わたしは片岡義男の本はエッセイしか読んでいないけれど、一見、論理的だけど、でも実際は論理的な文章というわけでもなく、かといって感情に訴えかけてくるわけでもないという不思議な語り口が好きで、今でも新刊をチェックしている数少ない作家でもある。日本語してはちょっと微妙だなぁと思うところもありつつ、なんか微妙なラインをすれすれに歩いているような感じなのは、2つの文化を行き来しているからなのだと思う。

■小説のほうは、ちょうど小学校高学年から中学の頃に、角川映画などで小説が次々と映画化されるブームがあって、そのときの印象からほとんど読んでいない。ほとんどと書いたのは、90年代初めの頃、村上春樹とか読むのだったら、片岡義男の本を読んだほうがいいんじゃないかという気分で、何冊か読んでみたことがあるのだけれど、続かなかったし、今では何を読んだのかも忘れてしまったから。
その後、90年半ばにちくま文庫から出た「ぼくはプレスリーが大好き」を読んだのがきっかけで、晶文社から出ている初期の本や太田出版からでたアンソロジーなどを読んではまってしまった。今小説のほうを読んだら印象が変わるのだろうか?と思いつつエッセイを読み続けているけれど、多分、これからも読まないような気がする。

■どこかのエッセイで、その頃の小説は漫画を小説化することをテーマにしていたといったことがかかれていた記憶があるけど、そういう意味ではライトノベルのはしりと言えるのかもしれない。ただライトノベルとしては、設定が非日常的なので、これから評価されるということはなさそう。
ついでにいうと堀江敏幸は「片岡義男の小説は小説についての評論であり、評論こそが小説である」と語っていたようだけど、小説の中にその評論の部分を感じられるようになるとまた印象が変わるのかもしれない。

■そういう意味では、今、70年代から80年代にかけての歌謡曲を聴くということは、歌謡曲の中に日本の音楽への評論が見え隠れする部分が感じられるからなのかも?なんてこじつけで思ったりもします。歌謡曲がJポップと呼ばれるようになってから評論というピースが抜け落ちてしまった気がするのね。

-■さて、連休もあっという間におしまい。どこに行く我が家はどこに行くというわけでもなく、はじめのほうにセプチマでやっていたCOINNのライブを見て、途中で、自転車で深大寺になる鬼太郎茶屋に行った程度でした。といってもTHE GOLDEN COINN SHOWでは、あいかわらず子どもたちは、ライブが始まって2曲目で「外で遊んでくる!」と飛び出し、ライブよりもセプチマの庭で遊ぶことに夢中でしたけど。
よく考えたら漣くんなんてセプチマに初めて行ったのは1歳くらいの頃なわけで、年に数回しか遊びに行かないにしろ、勝手知った遊び場ですよね。当日はラマパコスやアグネスパーラーなど顔見知りのお店が出店してましたし。いつかセプチマでゆっくりとライブを見れる日が来るんでしょうかねぇ。

■秋は子どものイベントから自分が出るイベント(本屋さんのほうです)、遊びに行くイベントなど、毎週末なにかしらあってそれこそあっという間に寒くなってしまう感じですね。まぁ毎週、楽しみではあるのですが。

「BOSSA NOVA」-ジャイルス・ピーターソン-

■8月にミオ犬と子どもたちが長崎に帰ってときに、CDの整理をしたのですが、その際に収納用具を買うためにCDを売ったお金で買った本。なんかCD売ったお金でCDの収納用具だけを買うのは負けた気がしてので‥‥。何に負けるのかは不明ですが。
説明するまでもないですが、これはボサノヴァ・ムーヴメント中期に元オデオンのプロデューサー、アロイージオ・ヂ・オリヴェイラが主宰していたエレンコ・レーベルのレコードジャケットを集めたものになります。エレンコはボサノヴァの名盤をだくさん出していることで知られるけど、コスト削減のためという理由で赤・黒・白のポイントのみで構成されたジャケットも素晴らしいです。こうやってジャケットを眺めてるとアナログレコードを欲しくなるけど、値段的に無理。まぁそういう理由で、この本を買っているわけですけどね。ちゃんとレコード買えるんだったらこんな本買いませんってば。ということで、同じようにジャイルス・ピーターソンが監修したMPSのジャケット本も欲しいと思っているんですけど、なかなか見かけない。

-■今年の夏はウワノソラ’67ばかり聴いていたけれど、その次に聴いていたのがYogee New Wavesの「PARAISO」。今年の初めくらいかな、新しいバンドの音楽を聴いてみようと思っていろいろ調べていた時に知ったバンド。シティポップとか言われているけれど、同じように言われているバンドと違って、影響された音楽がストレートに出てないところがいい。こういうの聴いてると、今のシティポップってなんだろうなと思う。
どこか冷めた雰囲気のメロディとヴォーカルのバランスとバンドのメンバーのシンプルだけどどこかひねくれたのアレンジが、なんとなく昔にカーネーションやグランドファーザーズを初めて聴いたときの感じを思い出してしまう。でも全体としては今っぽい音になっている。そして別にレゲエの影響を受けた曲でもないのだけれど、どこなくダブの要素を感じてしまうのでは、ベースのせいだろうか。
あと、そこにのる歌詞もいい。わたしは普段、音楽を聴くときにあんまり歌詞を気にしていなくて、むしろなくてもいいと思っているんだけど、「少しだけそばにいさせてもらえるかい、数分経ったらうせるから」とか歌われるとすごくひっかっかってしまう。

■そういえば今シティポップって呼ばれている80年代の日本の音楽は、当時の洋楽、主にAORの影響を受けたものと60年代のポップスを80年代的に再構築したものと、大きく分けて二つあって、わたしが好きなのは後者なんじゃないかなと気がついた。7月のインザパシフィックでアイドルの曲をかけようと思っていろいろ聴いていたのですが、AORとかメロウグルーブとか言われているものはなんとなく夢中になれなくて、やっぱり過去の洋楽(特に60年代)をベースにした曲のほうがぐっときてしまいます。まぁAORも(当時の今)の洋楽をベースにしているわけで、手法としては変わんないんですけどね。
というわけで、ここはザ・グッバイを聴いてみなくては、と思っているのですが、なかなか手が出ない状況だったりします。
というわけでザ・グッバイ聴きたいって書きたいための前振りでした。

「随筆 酒」

■獅子文六や佐野繁次郎、小林勇、中里恒子、村井米子、大久保恒次などによる酒について文章を収録したアンソロジー。酒にまつわる個人的な随筆だけではなく、産地別のワインの紹介や世界の酒の紹介などお酒に関する解説なども載っていていいバランスになっている。
題字は幸田露伴。カバーを外すとその酒という文字が箔押しされている。カバーがよれよれになっていたので(なんたって1957年の本ですから)、持ち歩く時にカバーを外していたのですが、しばらく経って本の表紙を見たら、3分の1くらい箔押しがはがれ落ちてしまっていたという‥‥古い本を持ち歩くのは注意が必要ですね。
ちなみに奥付に甘辛社の小紙が貼ってあるので「あまから」に掲載されたものなのかな。それぞれの文章の出典もかいてないし、あとがきといったものもないので確かなことはわかりません。

-■9月5日はごちゃごちゃフェスティバル@セプチマへ。セプチマに行くのも久しぶりかもしれない。前回はなんのイベントに行ったんだっけね?
ごちゃごちゃフェスティバルは、今はmomo-seiというユニットを組んでいる山本聖さんとよしのももこさんが主催のイベント。ライブのほうは、ロッキン・エノッキー&山本聖、よしのももこ、酒井己詳というラインナップ。ただしほとんどどのセッションでもロッキン・エノッキー、山本聖、よしのももこの3人がいたので、誰が歌うか、どの曲をやるかの違いくらいしかないのですが。
そしてギャラリーの片隅では、珍屋(CD、レコード販売)、Sugar Moon(アメリカン・ヴィンテージ雑貨販売)、空石(天然酵母パン販売)、Sinary ecru (アロマ&ヘッドマッサージ)マドモアゼル・ピョンスキー(いろいろな占いと心理療法)といったお店が並ぶという名前の通りごちゃごちゃした「個」が参加している感じでした。

-■開演時間が2時から6時ということもあり、子どもたちがたくさん来るのかなと思っていたのですが、それほどでもなく、なんかうちの子が飽きてちょっと騒ぎ出してくると、よしのももこさんが「それではここで『エノッキー&聖くんのギターに合わせて、リズムを鳴らそう!』をやりましょう」などと子ども参加型にしてくれたりして、我が家はかなり盛り上がりました。
最初は、小さな打楽器を持って叩いているだけだったのに、だんだん前に行き、叩く打楽器も両手になり床に置いたりと増えていき、しまいには真ん中に立ってスネアを叩ところまでエスカレート。適当に叩いているだけのスネアに、エノッキーさん、山本聖さんがギターを弾き、よしのももこさんがピアノを弾くという恐れ知らず。ありがとうございました!
エノッキーさんは4年くらい前に友だちに誘われて高円寺のバーというか飲み屋でで見たことがあって、どんな曲でも合わせてしますものすごいテクニックと、でもどこかそこはかとなくユーモアが漂っているところが良くてまた見たいと思っていたのです。しかし立川で、しかも山本聖さんと共演で見られるとは!

「松前の風」-稲垣達郎-

■早稲田の教授で日本の近代文学の研究をしていた人。「角鹿の蟹」に続く随筆集として生前出す予定だったらしい。収録されている多くは、窪田空穂、森鴎外、夏目漱石、正宗白鳥といった作家について書かれたもので、同じく早稲田の教授といって思い出す岩本素白の随筆と違い文学に沿った随筆が中心になっている。しかも読んだことのない、もしくは初めて知る作家も多くて難しい‥‥素白先生も私が読んでないだけで学術的なものもありますけどね。

■子どもたちが長崎に帰っている間に、ブライアン・ウィルソンの「ラブ&マーシー」を観てきました。達郎のライブ映画と友だちの波多野くんが撮った「TRAIL」に続き、この6年で3本目。2年に一本くらいのペースですねw。ブライアンがツアーに参加しなくなってから「ペットサウンズ」~「スマイル」を製作する60年代と、ユージン・ランディの治療下にあった80年代後半は交互に描写される。
-基本的には知ってるエピソードが描かれているので、ある程度、ブライアン・ウィルソンを知っている人であれば違和感はないだろうけど、知らない人がどう感じるのかちょっと知りたい感じ。やっぱり60年代の描写が良くて、特にレコーディング風景は鳥肌が立つくらいでした。ブライアン・ウィルソンが一人一人演奏者に口で説明しているのが、いっせいに演奏された時に、一つのサウンドになる快感がすごい。一方で今のブライアン・ウィルソンの活動の充実ぶりを見ていると、「ペットサウンズ」~「スマイル」を振り返るのは、もうこれで終わりにしたいと思う。そして80年代は今のブライアン・ウィルソンに続くためのエピローグという気もしないでもないです。わたしとしては高校の時に1stソロを聴いて、それだけで感動した頃を思い出しました。

-■8月の終わりは調布の京王多摩川アンジェにてイン・ザ・パシフィック恒例のバーベキュー。とわたしが思っているだけで、今年はインパシのメンバーはタクミくんだけでしたが。バーベキューと言うよりも野外の焼き肉パーティといった感じですが、普段、夜にしか会わない人たちでのバーベキューはこのくらいがちょうどいい。飲み放題だしだいたい飲んでばかりだしね。で、いつものようにバーベキューが終わったあと、4時くらいから調布で飲み始めて、解散したのは9時。子どもたちを連れての飲みで飲み過ぎました。帰ってからシャワー浴びさせて寝かしつけをしたのはなんとなく覚えているのですが、目が覚めたら明け方でした。
で、当然飲みながら音楽の話になるわけですが、ブライアン・ウィルソンの話になったとたん、「じゃ君たちはスマイルを何枚持ってるのか?」みたいな話になって、これだからマニアってねぇ‥‥

「僕たちの七十年代」-高平哲郎-

■大学時代に企画したイベントのエピソードから晶文社の本に関わるようになったきっかけ、雑誌「ワンダーランド」の発刊から「宝島」になるまで、そして「宝島」の編集長を辞めたあとの、赤塚不二夫やタモリ、山下洋輔らとの仕事まで、高平哲郎の70年代を振り返った本。
高平哲郎の名前を知ったのは晶文社関連だったか?「笑っていいとも」のクレジットだったか?随分前のことだけどなんとなく著作を読むのを避けてきたのだけどようやく読んでみた。すごいなぁと思うし読んでいておもしろいけれど、なんとなくひっかかるものがないのは、わたしが歳を取ったせいなのか。こういう話ってどの時代でもたくさんあるんだよなーとか思ってしまう。そこから一歩抜けてない気がするのは何が足りないのか、わたしにはうまく言えませんが‥‥ただやっぱり読むんだったらまずは「スタンダップ・コメディの勉強」や「みんな不良少年だった―ディープ・インタヴュー」にすればよかったという気はしてる。

-■この本を読んでしばらく経った頃、「月刊宝島」と「キューティ」休刊のニュースが出ててちょっとびっくり。もちろん最近の「宝島」がどんな雑誌になっているのか、なんてまったく知らない。逆にまだ出ていたのか?と言う気もする。「宝島」ほど時代によって内容をがらりと変えることで生き続けてきた雑誌はないんじゃないかと思う。それほどまでに「宝島」という名前を残したいという執念はなんだったのだろう?高平哲郎の怨念か(笑)ぜったい無理だろうけど、「ワンダーランド」から休刊にいたるまでの「宝島」通史というのを読んでみたい気がする。

■ぜんぜん話は変わるけど、前に会社の人が新しく入ってきた人に「子どもの頃、『ジャンプ』に連載されてた漫画で何が好きだった?」という質問をすると世代が分かるって言ってたけど、「『宝島』ってどんな雑誌のイメージ?」って聞いても世代によってぜんぜん違いそう。というか、若い人は「宝島」を知らないか。

-■暑い時は涼しい美術館だよな、なんて思って、現代美術館のオスカー・ニーマイヤーの展覧会「ブラジルの世界遺産をつくった男」を見た。しかし美術館は涼しいけど、現代美術館にしろ、8月のはじめに行った原美術館にしろ、逗子の近代美術館 葉山にしろ駅から遠いので、美術館に行くまでがつらいというね。

■オスカー・ニーマイヤーはブラジルの建築家。ル・コルビュジエに師事し、国民会議議事堂や外務省、大聖堂など首都ブラジリアの主要な建物の設計を手がけている。オスカー・ニーマイヤーが設計した建物の写真・映像・ジオラマが展示されている。大胆な曲線とモダニズムの幾何学模様、そしてはっきりとした色使いが特長なのですが、ジオラマではそれがあんまり伝え切れてなくて、やはり写真や映像に目が行って行ってしまう。建築を学んでいる人にとってはわかりやすいのかもしれませんが、わたしは建築に詳しいわけではないので、建物そのものよりも回りの地形や風景も含めた調和によりひかれるということもあるかもしれない。あと首都ブラジリアをはじめとした建築途中の映像ね。これは特にブラジリアという都市が、何もないところから建設されたということもあって、単純におもしろい、というかすごい。
おそらく今後の人生でもブラジルに行くことはないような気がするけど、建築を学んでいるわけではない自分でも、いつか、これらの建築を見に行くためだけでも、ブラジルに行ってみたいと思わせるような展覧会でした。