「つやつや、ごはん」

■食べものに関するアンソロジーは、少し食傷気味なんて言いつつ、続けて「ごはん」の本を読む。「ごはん」と言ってももちろん食事のことではなく「お米」のこと。こちらも内田百けんや魯山人から田中小実昌、池波正太郎、そして堀井和子や枝元なほみまで、新旧取り混ぜた文章が収録されている。テーマがごはん(お米)なんでバリエーションがあまりなくなってしまうのを、新旧取り混ぜたセレクションで補っているといった感じでしょうか。
そしてこうやって並べてみると、どの時代の人でも「お米」に対してそれぞれにこだわりもっているのが、日本人たる所以だなぁと思う。これがパンだったら趣が変わるような気がしますしね(そもそもパンはいろんな種類があるので、バリエーションは増えるんでしょうけど)。

■先週は中野にあるブライト・ブラウンというお店に、Bloodest Saxophoneの甲田伸太郎のサックスを聴きに行ってきました。ブライト・ブラウンはブルースのバンドのライブをやっているbarで、もちろん行くのは初めてだし、ブルースなんてほとんど聴いてないので、場違いな感じだったらどうしよう、などと思っていたけれど、サックスとギター2本という編成でスタンダードからジャイヴまでを交えた選曲、サックス抜きのギター2本のみの演奏もあったりして、ドラムがない分、落ち着いて聴けて、アットホームな雰囲気で楽しかった。ジャズでギター2本の編成ってあんまりない気がするけどいいですね(単にジャズギターが好きなだけです)。甲田伸太郎の丁寧な曲紹介のMCもいい感じでした。

-■こういうところに一人で来てライブを見ながらお酒を飲むなんて、久しぶりのことなので、20歳過ぎの頃、大学帰りに横浜の491ハウスやよいどれ伯爵に一人で行ってたのを、ぼんやりと思い出しました。あの頃は、お金もなかったし、今ほどお酒にも強くなかったし、ほんとビール1、2杯のみで、何時間も粘っていたものです。
そんなことを思い出したのは、甲田伸太郎と中学の頃の話やその頃の友だちの話をしたりしたせいもあるかもしれない。前にも書いたような気がするけど、中学1年の時同じクラスで、同じ名前なので最初の席が前後だったのです。高校は違うし、数年前までバンドをやっていることさえも知らなかったけれど、こうやって年十年ぶりかにあって、昔の話だけじゃなく、音楽の話をできたりすると、自分は楽器の演奏なんてまったくできないけど、音楽が好きで、ずっと聴き続けてきてよかったな、と思う。

■Bloodest Saxophoneは、ジャイブや古いジャズ、リズム&ブルースを演っているバンドで、最近では、ルイ・アームストロング楽団で活躍したシンガー、ジュウェル・ブラウンの共演カヴァー・アルバムを出したり、3月にはエルヴィスのトリビュートアルバムに参加したりしてます。夏にはフジロックやクアトロでジュウェル・ブラウンとのライブもあるそう。本格的なライブにはなかなか行けないけれど、またこういうところでやっているときに遊びに行こうと思ってます。
そういえば、わたしが本を置かせてもらっているシャトー2Fの前の店長がやっているバンドとBloodest Saxophone対バンしててびっくりしたこともありましたね。世の中狭いなー

「ぐつぐつお鍋」

■池波正太郎、獅子文六、久保田万太郎から江國香織、阿川佐和子といった最近の作家までの鍋について書いた作品を集めたアンソロジー。鍋の季節ももうおしまいだな、などと思いつつ慌てて読んだのが3月、そして今は5月という‥‥。
最近、食べものに関するアンソロジーがすごく出版されていてちょっと食傷気味という気もしないでもないです。収録されている人も同じような人が多い気がするしね。でもまぁ一人の作家での食べものに関する随筆を読んでると、正直、途中で飽きてくるときがあるけど、こういうアンソロジーだと、いろいろな視点で書かれているので飽きずに、そして気楽に読めるのがいいですね。しかし、こういう本がたくさん出ているわりにはそのわりにうちの売上のびてないのがちょっと哀しかったりもしますが。

-■週末は東京蚤の市でした。1日目はちょっと雨が降ったりしましたが、だいたいいい天気で、古本街もいつもよりたくさんの本が並べられ、子どもたちが絵本を読んだり、手に取った本をじっと読んでいる人がいたり、たくさんの人で大にぎわいでした。カヌー犬ブックスにもたくさんの人に来ていただき、ありがとうございました!今回はちょっとだけ音楽についての本や安藤鶴夫や池田弥三郎、吉田健一などの函入りの本を持っていったせいか、いつもより男性が多く、ちょっとめずらしい感じになっていました。
ちなみに今回のわたし自身の蚤の市の収穫は森永の木の箱のみ。これは普段は家で自分のおもちゃとか入れつつ、次回からイベント出店の時に使おうと思っています。始まる前などにちょっとまわったときにノベルティのグラスを売っているお店があって気になっていたのですが、買いにに行く暇がなく断念しました。
手紙社の皆さまを含めスタッフの皆さま、これだけ多くのお客さま、そして多くのお店が集まる中で、大きな混乱や事故もなく、ていねいに対応していただきありがとうございました。

「サ・ヴァ、サ・ヴィアン」-ピエール・バルー-

■ピエール・バルーの人生のポイントになった出会いや出来事と、過去に書いた詞の解説がつづられている。
これを読み始めてから頭の中で「サ・ヴァ、サ・ヴィアン」が常になっている状態になってしまい、サラヴァを中心にジャズやボサノヴァテイストのフレンチポップスを聴いてみようかと、ブリジット・フォンテーヌやアンリ・サルバトール、ゲンズブールの初期の作品などをiPhoneに入れてみたけど、気がつけば全然聴いてない。ちゃんと聴こうとすると、この辺のCDは意外とユニオンとかにあるようでないんですよね。秋口あたりになったら、ちゃんと欲しいアルバムのリストでも作ってもう一回聴いてみようかと思ってます。

-■で、最近はといえば、70年代のシンガーソングライターものを聴いてます。ジェームス・テイラー、キャロル・キングから始まって、ケニー・ランキン、ジェシ・コリン・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ローラ・ニーロとか、もうクラッシックと呼べるものばかり。自分のCDの買い方が、その時の気分でかなり変わるし、ほとんどの場合、中古屋でしか買わないから、持ってるCDのラインナップに網羅性が全然ないのです。
なので、70年代のシンガーソングライターだけではなく、気に入ってるミュージシャンでさえ、ディスコグラフィがきちんと揃ってないので、ちゃんと揃えていきたいな、と思う。レアなものとか全然知らないミュージシャンのアルバムで一曲いい曲があればOK!という買い方はもういいや、という感じかも。いや、逆にレコードはよりニッチなところに足を突っ込んでいる気もしないでもないですが。
この辺のミュージシャンはアルバムによっていい悪いの差がそれほどなくて安心して聴けるのがいい。基本的には、ギターやピアノの弾き語りのみで成立するような曲に隠し味程度に大きくその時の流行のサウンドが取り入れられていて、アルバムごとでぜんぜん違うサウンドになっちゃったりすることもあまりないですしね。
春の暖かなお休みの日に、ちょっと遅く起きて、朝ごはんを食べたりしながら聴いていると、幸せな気分になれます(歌詞は置いといてね)。実際は、子どもたちに無理やり起こされて、大騒ぎされている中であわてて朝ごはんを食べてるという日々ですが‥‥

-■4月は、府中公園でちょっと花見をして、2週連続で武蔵野公園のはけのおいしい朝市に出て、小金井公園の子どもフェスティバルに行って、ゴールデンウィーク前には井の頭公園に行ってボートに乗るという公園三昧でした。ようやく暖かくなってきたし公園で遊ぶのにちょうどいい季節。
そういえば3年前のゴールデンウィーク前くらいにもミオ犬の健康診断のため会社を休んだことがあって、そのときも井の頭動物園にいってから、そのあとボートに乗って、お昼ごはんはいせやで、おやつにドナテロウズでアイスを食べたという思い出があります。3年前とわかるのは、いせやの座敷で暁くんにミルクを飲ませていたのとから。自分は歳を取って3年前も4年前もそう変わらなくて違いが分からなくなってますが、子どもがどうだったかで、なんとなく違いが分かるという。いいんだか、悪いんだか‥‥
その頃は、いせやはまだ改修前だったしドナテロウズもまだあったんですよねぇ~ほんとここ数年で吉祥寺はどんどん変わっていくな、と。そしてさすがに今のいせやに0歳児と3歳児をつれて入って、上の子はシュウマイとごはん、自分は焼き鳥、ビール、下の子にミルクあげるというのは躊躇しちゃいますよね~。

-■ちなみにお昼ごはんは、ペパーミントカフェでガイガバオと焼きそばのランチを3人で食べました。ちょうど奥の座敷の席も空いていて、まぁまぁゆっくりできました。子どもたちは辛いものがダメなので、あとから調味料で辛さを調整できるのはいいです。
ペパーミントカフェに来るのは、友だちが結婚した時にここでプチ・サプライズ・パーティをやった時以来かな、と思って、ちょっと「カヌー犬ブックス ペパーミントカフェ」で検索したら、2009年3月3日の雑記が出てきた。長年、雑記を書き続けてると便利というかなんというか。
ということは、漣くんが生まれる1か月前、そういえば、そのあと喫茶店に寄ってみんなでケーキ食べて、何枚もコーヒーチケットみたいのもらったのだけど、子どもが生まれたらこんな喫茶店には当分これないからって、吉祥寺に一番近くに住んでいる人にみんなあげたことなど、いろいろ思い出してくるから不思議。子どもたちが中学生くらいになるまでそうやって記憶を結び付けていくんだろうなぁ。

「大滝詠一 Talks About Niagara」

■ナイアガラ・レーベルの各CDが再発されたタイミングなどで、「レコード・コレクター」誌で行われたインタヴューと、70年代にビーチ・ボーイズやフォー・シーズンズ、フィル・スペクターなどについて執筆した文章を収録した本。3月には、同じく「レコード・コレクター」に掲載された、インタビュー以外の記事をまとめた「大滝詠一 スクラップ・ブック」も出てます。個人的には、白夜書房から出た「大瀧詠一Writing & Talking」が読みたいけれど、5000円近くするんですよね~。今年の3月は「NIAGARA CD BOOK II」も出たし、ナイアガラ関連のものをコンプリートしようとしたら破産しそう~(もちろんしませんが)ちなみにこの本も、出てから4年くらい経ち、ようやく買ってみたら、去年、コンプリートエディションが出てたことに気づくという‥‥。
しかし大滝詠一ほど自ら自分の作品について語ったミュージシャンは、海外を含めてもいないんじゃないだろうか?そういう裏話や影響を受けた音楽も含めて、ナイアガラなのだなぁとつくづく思う。そしてナイアガラというのは、すべての作品を線でつなげた一人のミュージシャンのドキュメンタリーだなぁ、とも。いや、線だけではなく、時に面となり、時に立体となるので、より複雑になるわけなんですが‥‥

■2週にわたって行われたはけのおいしい朝市も無事終了しました。先週は途中雨が降ってきてしまい、どうなるかと思いましたが、小雨ですみ最後まで開催できてよかったです。2日ともたくさんの人に来ていただきありがとうございました。雨が降ったせいでちょっと余裕もできて、ほかのお店をのぞいたり、近くでバーベキューをしていた幼稚園のお父さんの所に行ってみたり、少しだけですが、お客さんとして楽しめたのもよかったです。
しかし子ども連れの人が多かったせいか絵本がかなり売れて、もう絵本屋さんになっちゃおうかと思ったくらいでした。あとやっぱりネットで本を売ってる時と実際にイベントで売る時の違いを改めて感じたりして、イベント出店用の在庫をある程度、キープしておく必要があるなぁとか、毎回反省を繰り返しています。なかなか思うように改善できないのが悔しいのですが、少しずつでも改善できたらいいなと思っています。
それにしても1日目は土曜まで雨が降っていてどうなることかと思っていたのに、日曜はまぁまぁいい天気で、2日目は木曜くらいからいい天気が続き、天気予報も日曜まで晴れだったのに、当日になったら崩れてしまうという‥‥ほんとに今年の春は天気が読めないですねぇ~

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-■そしてゴールデンウィークが終わる5月9日と10日には、東京蚤の市に出店させていただきます。気がつけばもう7回目。毎回、出店するお店もお客さんも増えて大きなイベントになっていっていますが、今回はどうなるのでしょうか。前回に引き続き東京北欧市も開催されますし、Water Water Camelやカジヒデキ、ザッハトルテなどのライブもあるし今から楽しみです。今回の反省を活かすにはちょっと準備期間が短いですけど、がんばりますので、よろしくお願いしますー!

 第7回東京蚤の市概要
 日程:2015年5月9日(土)、10日(日)
 時間:9日(土)10:00~19:00/10日(日) 9:00~16:00
 開催場所:東京オーヴァル京王閣
 東京都調布市多摩川4-31-1
 入場料:500円(小学生までは無料)

「僕らのヒットパレード」-片岡義男、小西康陽-

■「芸術新潮」に連載されていたというリレー連載を中心に、二人による対談などを収録した本。発売されることを知った時から読まなくちゃと思いつつも、なかなか買えないでいた一冊。いや、世の中はなかなか買えないものばかりなのです。ちなみに「11のとても悲しい歌」の買えてないまま、4年が過ぎてしまった。発売した時にジャケットの雰囲気から冬になったら買おうと思っていたのだけれど、気がつくと冬が過ぎて、毎年、春くらいになると思いだし、今年の冬こそはと思って、そのまま過ぎてしまう。聴いたら今まで聴かなかったことを後悔するのかもしれないし、このまま聴けないままに時間ばかりが過ぎてしまうのかもしれない。

■この二人のレコードに関する本がおもしろくないわけがないのだけれど、どこか遠慮がちな雰囲気がただよっているような気がします。同じレコード好きといっても生まれた年や育った環境の違いから、二人の間で音楽のとらえ方が違うところがあったりするのがおもしろい。まぁあたりまえと言えばあたりまえですが。で、当然ながらその辺はあまり深堀されてないので、もっと親しくなってもらって続編が出たらなぁと思う。あと、もう少しジャケット写真のページが欲しいかも。

■さて、はけのおいしい朝市の一日目が終了しました。たくさんの人に遊びに来ていただき、またカヌー犬ブックスのブースにも寄っていただきありがとうございました!
今回は、武蔵野公園という屋根のまったくないロケーションということもあり、前日まで雨が降っていたので、かなり天気と地面の状態を心配していましたが、当日は晴れ、地面も水はけがよいらしく、ぬかるみになることもなく、無事開催されてよかったです。

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わたしはずっとお店に立っていたのですが、本越しにくじら山方面を見ていると、近所の人が多いせいか、くじら山周辺の様子がわかっているようで、皆さん、レジャーシートや小さなテント、遊び道具などをたくさん持ってきて、のんびりしたり家族で遊んでいたりして楽しそうでした。来週はちょっと時間を作って歩き回ったりしたいですね。
ちなみに来週は、持っていく本のほとんどを入れ替えて、先週とはちょっと違う雰囲気のお店にするつもりです。って、すみません、うそです。本を入れ替えても雰囲気はほとんど変わらないかと思います。天気予報では、日曜は天気もよく、気温も20度を超えるようです。予報通り晴れたら、先週は地面の状態があまりよくなかったせいであきらめた絵本や児童書をゆっくり読めるスペースを作りたいと思ってます。

「泡/裸木」-川崎長太郎-

■前回の川本三郎の本で抹香町が出てきたのでなんとなく川崎長太郎の本を読んでみる。といっても、舞台となっているのは本に出てきた抹香町とはまた違う宮小路。私小説なので生家の海岸に近い物置小屋に住み、ちょっとお金が入ると宮小路に行き、そこでの芸妓とのやり取りが描写される。
ただこの作品が、ほかの川崎長太郎の作品と少し異なるのは、一人の芸妓を挟んで、小津安二郎をモデルとした映画監督との三角関係(?)の様子が川崎長太郎の目を通じて語られているところ。まぁ三角関係というか、小津安二郎が芸妓の気持ちを受け止めないことをいいことに、川崎長太郎が勝手に思いを寄せているだけのような気もしないでもない。小津安二郎をどことなく冷たい男として描いているのもフィルターがかかっているかなとも思うので、解説にあるように「川崎長太郎の一連の『小津もの』は、研究者にとって第一級の研究資料」と言ってしまうのはどうなのだろうか?

-■3月になって余裕ができたこともあって、乃木坂にあるTOTOギャラリー・間でやっていた「TANGE BY TANGE 1949-1959/丹下健三が見た丹下健三」を見てきました。この展覧会では、1952年の「広島平和会館原爆記念陳列館」のプロジェクト開始から1958年の「香川県庁舎」完成までの10年間に手がけた建築について、それらの建物を丹下健三自らが撮影したコンタクトシートが展示されていました。わたしはあまり建築について詳しくはないので、建物をこういう構図で撮るのか、といった視点ぐらいでしか見れませんでしたが、詳しい人にとっては建築途中のものがあったり、赤線でトリミングの指示が引かれていたりしてもっと興味深く見れたのではと思います。
しかも70点以上のコンタクトシートが展示され、ギャラリー自体も2つのフロアに分かれていて、コンタクトシートの写真を一つ一つ見ていたら、かなり時間がかかってしまって、昼休みにちょっと見るという感じではなかったです。

-■続けて、タカイシイギャラリーで5月2日までやっているやっているエルスケン写真展の「セーヌ左岸の恋」へ。タカイシイギャラリーはしょっちゅういている気がしますね。この展覧会では、、1956年に発表された写真集「セーヌ左岸の恋」からの作品15点が展示されています。正直に言って、写真集などでも見ているものが多いし、おっ!という驚きなどはないけれど、ちゃんとしたプリントで見るとコントラストがより際立って見えたり、いろいろ発見することがありますね。

■ところで、このエルスケンをはじめ、アジェ、ロベール・ドアノー、ブラッサイ、イジスなど、パリの街並みやそこで暮らす人びとを被写体にした写真家は多いけれど、ロンドンを同じような形で撮った写真家があまりいないのはなんででなんだろう、なんてことを、この写真展を見ながら思ってしまいました。パリに比べれば、ロンドンの街の被写体としての魅力は低いのかもしれないけれど、それでももっと撮っていてもいいのではないかと思う。
そもそもイギリス出身で有名な写真家もあまりいないですね。写真自体は60年代のファッション写真とか思い浮かぶけれど、写真家としてはあまりフォーカスされてないのが不思議。まぁ写真家だけでなく、画家とか映画監督も多くないような気がするので、お国柄なのだろうか、とかなんとか。

「我もまた渚を枕」-川本三郎-

■神奈川、千葉、埼玉など首都近郊のなんでもない町のなんでもない道を歩いて、古い町並みを楽しみ、地元の人が通う居酒屋でビールを飲むという一人旅をつづった本。小説や映画の一片と結びつけられ、広がって行くところがおもしろい。町歩きと言ってもその前の普段のインドアでの知識の蓄えと記憶力などが重要で、自分の中の引き出しに何も入っていなければ、風景から引き出せるものも限られてしまうのだなと思う。翻訳者による外国の紀行文がおもしろいのはそんなところにあるんだろう。
いつか実家に帰ったついでに、川本三郎でさえ場所がわかりにくかったと書いてあった抹香町や初音新地に行ってみたい。この本が出たのが2004年なので、それから10年以上達った今ではもっとわかりにくく、町の様子も変わってしまっているのだろうけど。単に小田原は隣の市なんだけど、子どものころから映画を見る時など平塚に出ることが多くて、あまり行ったことがないので、歩いてみたいという気持ちもあります。

-■気かつけば3月もおしまいで。3月は二宮や勝浦、そして札幌と遠出が続いていたので、なかなか新着本や雑記の更新もできないまま、4月に入ってしまいました。札幌は出張だったのですが、空いた時間などで、狸小路とかちょこちょこ歩き回ったりしましたが、事前知識もほとんどないので川本三郎さんのような街歩きにはならず。
しかも最初にアダノンキという古本屋さんの入っているビルのレコード屋さんに入ったら、300円くらいのシングル盤がたくさんあったので、そのままネットで調べつつレコード屋めぐりをしてしままうというあり様。カフェに入ってコーヒーを飲みながらスマートフォンで調べたら8軒くらい見つかったのですが、閉店しているぽかったり、場所が分からなかったりで、結局、催事に出ていたタケチャスレコーズも含めて4軒だけですけどね。どこも歌謡曲のシングル盤の量が多すぎて、時間的にあきらめたのがちょっともったいなかったかも。60年代のポップスやジャズのコーラスもの、イージーリスニングといった感じのものを15枚くらい買ったかな。楽しかったけれど、久しぶりにアナログ盤を買おうとすると、もうなに買っていいのかわからなくなります。特にアナログコレクターというわけではないので、基本的にはヒットした曲もしていない曲も含めて、60年代のポップスで絞ろうとは思ってるんですけど、なかなか。定期的にDJをやるわけではないのでネタ的なものは必要ないし‥‥

■ちなみにアダノンキはお店の中でビールが飲める古本屋さん。ちゃんとカウンターや席もあっていい雰囲気のお店でした。料理本などもたくさんあってちょっと買っちゃおうかと思っちゃったけど、旅先で本を買いだすとかなりかさばるんですよね。ビルの中にはほかにもカフェやギャラリー、雑貨屋などいろいろ入っていて、階段をぐるぐる回りながら上に行ったり下に行ったりしてしまいました。

■いい感じのビルといえば、ミンガスコーヒーの入っているビルも、ミンガスコーヒーのほかにワールドブックカフェやスープカレーのお店、北欧雑貨のピッコリーナ、and ordinaryなどオシャレなお店が入っていて、よかったです。ビル自体はそれほど大きくはないので、いちいち階段で上がったりしつつ、踊り場とか廊下とかを歩くという感じではないんですけどね。ミンガスコーヒーはレコードや雑誌がたくさん置いてあって、スピーカーからジャズっぽいボーカル曲が流れていて、カウンターの席も大きめでゆっくりできました。テラス席もあるみたいなので、晴れた日の朝に朝食を食べに行ったらいいかもしれません。

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-■さて、春になって暖かくなってきたということもあり、4月~5月はイベントに出ます。4月は12日、19日に小金井のクジラ山周辺で行われるはけのおいしい朝市。こちらはいつものはけ市のメンバーに加え、ホットベーグルやアジアンミール、たいやきや ゆい、七曜日‥‥など、たくさんのお店が出るので、桜の花は散ってしまっていると思いますが、クジラ山周辺は大賑わいになりそう。近くの武蔵野公園ではバーベキューもできるので、バーベキューやピクニックのついでにお店を歩き回ってもいいかもしれません。武蔵小金井の駅からちょっと遠いけれど、一日たっぷり遊べると思いますので、春の一日をクジラ山でのんびり過ごしてみてはいかがでしょうか?カヌー犬ブックスでは、今回ちょっと広く場所を使えそうなので、絵本などをゆっくり読めるスペースなども作りたいなと思っています。

 「はけのおいしい朝市 in 武蔵野公園」
 日時:2015年4月12日(日)・19日(日) 両日ともに10:30 – 16:00 雨天中止
 会場:武蔵野公園 くじら山付近 (府中市多磨町2-24-1)
 出店者など詳細はこちらから

「茶の木」-木山捷平-

■担当する編集者(女性)が庭に植えてある茶の木について話したにも関わらず、その近くのツゲの木について、どうやって手に入れたかなどからとくとくと語り出すという「茶の木」や指の怪我を治療するという名目のひとりでの温泉旅行、太宰治の思い出などをつづった随筆集。
特に大きな出来事やオチがあるわけでもない題材だし、なんとなく前にも読んだようなエピソードもあったりするけれど、おもしろくてつい夢中で読んでしまう。講談社文芸文庫でも多く出ているけれど、ちくま文庫あたりで全集を出して欲しい。(昔に出た全集は日本の古本屋で検索したら全8巻で8万くらいでした‥‥)

-■土曜は、小雨の降る中、高円寺から神保町、初台、荻窪、吉祥寺をぶらぶらと歩く。漣くんを幼稚園に送ってそのまま出かけたので、高円寺の古書展に着いたのが10時過ぎ、今までそんなに早く行ったことがなかったので、のんびり見れるかな、なんて甘いこと考えていたのだけれど、いつもより人でいっぱいでした。しかも年齢層がかなり高い。最近は古書展も若い人や女の人なども増えてきてると思っていたのですが、やはり主となる利用者の年齢層は変わっていないのだなぁと実感。本を見る側としてはどちらでも構わないんですけどね。しかし、ここ以外、中央線の週末の朝は遅いので、ほかに行く場所もなく移動するしかないという。やっぱりゆっくり出かけるのがいいね。
でも時間的に、漣くんを幼稚園に送って、そのまま高円寺に行って、戻ってきて幼稚園のお迎えに行くということができるんじゃないかと思った次第。4月になったら試してみようかしらん。

-■神保町ではさぼうるでナポリタンを食べる。さぼうるに入るのも何年振りか。昼時なので当然相席で、窓の外を見たら待っている人が見えたりして、のんびりはできなかったけれど、山盛りのスパゲティに満足。神保町は個人店が多いイメージだったけど、いつのまにか、チェーン店が増えてるし、行くたびに古本屋も1、2店閉店しているような気がします。ディスクユニオンの移転元がはなまるうどんになっていたし‥‥。ちなみにディスクユニオン自体は、道のの向かいに移転してきれいになってます。Jazz TOKYOといい、なんだかディスクユニオンはどんどんきれいに、おしゃれなイメージになっていくな。アナログレコードも流行ってるらしいしね。
あと、新しい古本屋で料理関連の本が充実しているところが増えてますね。お店の中で「こんな本もあるんだなぁ」なんで思いながら、棚の本を見てると、カヌー犬ブックスをこれからどうしていくべきなのか、悩みます。

-■その後、都営新宿線に乗って初台へ。東京オペラシティーギャラリーで3月29日まで開催されている「スイスデザイン」展を見る。江戸時代の後期、スイスとの国交開始の時期に作られた版画や資料から、「観光立国」を進めるにあたってのデザインを重視し推し進めた時代のポスター、そして近年のプロダクトの紹介など、スイスのデザインを俯瞰できる内容となっていました。
個人的には20世紀半ばのスイスのグラフィックデザインの黄金時代のものをもっと見たかったような気がしますが、それはそれでまとめられたものもあるし、見る機会もあると思うので、まぁいいかな、と。
州ごとにデザインされたものや何かの記念で作られたものなどたくさんの万能ナイフが展示してあってちょっと欲しくなってみたり‥‥帰ってきて久しぶりに「構成的ポ スターの研究―バウハウスからスイス派の巨匠へ」をめくってみたり‥‥。最近、デザイン関連の本を買わなくなってしまったので、たまにはリブロとかに行ってデザイン書をいろいろ見てみたよう、などと思っていたら、池袋のリブロが移転とか。う~ん。

「明日の友を数えれば」-常盤新平-

■70歳を超え、ささやかな楽しみとして町を歩き、海外文学だけでなく時代小説など幅広いジャンルの本に親しみ、喫茶店でコーヒーを飲む、そんな日々や、昔に知り合った友だちについての回想がつづられたエッセイ。2012年12月に出た本。亡くなったのが2013年1月22日なので、生前最後の本なのだろうか?古本屋で手に入れた本には亡くなった時の新聞記事が挟まれてました。そういう本をなんで売っちゃったのかな、とも思うけれど、そういうものが本に挟まれていたりするのも古本の楽しみの一つ。
ちなみにわたしが買った本で一番「お!」と思ったのは、ある有名ミュージシャンのカープのクレジットカードの申込書類のコピーが挟まれていた時ですね。住所などはもちろん、クレジットカードなんで年収とかも記載されてました。あれはカード会社の社員とかが勝手にコピーしたんでしょうかねぇ。って、そのコピー捨てた記憶がないけど、どの本だったのか忘れてしまっているので、自分の蔵書を売った際にその本が混ざってたら、またどこかの古本屋で挟まったままで売られてしまうことに‥‥

-■今年は、3月に入ってもまだ寒い。自分の中では、2月の真ん中くらいから暖かい日が時々ありつつ、3月になると、ダッフルとかPコートとかもおしまいという感覚なのだけれど、当分はこの寒さが続きそうで、Pコートが手放せない。早く暖かくなってほしい。気分的にはもう春の気持ちで、先日、泥酔ファンクラブでギターポップ/パワーポップを聴いたせいもあって、頭の中では、Groovy Little Numbersの「Happy Like Yesterday」がリピートされたりしてて、今年はギターポップでも聴いてみようか、なんて思ってる。どうなるか分からないけれど、とりあえずマイスティースとかデタミネーションなどiTunesに入っているスカ~ロックスディ、ダブのアルバムをiPhoneに入れてみた。春になってこの辺の音楽を聴くのも、定番になりつつある。

-■会社の帰りにツイッターを見ていたら、2000年代は1998年から始まったというツイートがあってなんとなく実感。コーネリアスの「ファンタズマ」と小沢健二の「ある光」でおしまい。で、2000年の始まりとしてくるりもやクラムボン、ナンバーガール、スーパーカー、椎名林檎、ドラゴンアッシュなどが出てくる。個人的にはスーパーカーをちょっと聴いたくらいでどれもあまり聴いたことがないので、2000年代の音楽として実感がないけど、なんとなくわかる。
じゃ、何を聴いてたのかと言えば、スカ~スカコア~ダブとエレクトロニカがわたしにとっての2000年代の邦楽、になるのかな、と思う。あと、セカンドロイヤルとかか‥‥。
スカ~スカコア~ダブは、まぁ90年代もスカパラやスカフレイムスもいたし、クラブでのイベントも定期的に開催されていたけれど、1990年代終わりから2000年代にかけてたくさんバンドが出てきたのはなんだったのだろう?エイベックスが、スカパラをはじめこの辺のバンドと契約しまくって、あっさりと手放していったのを思い出したりする。この辺のバンドも気がつけば次々と解散してしまった。しばらくはメンバーのソロを追いかけていたけれど、最近はどんな活動しているのかわからない。新しいバンドが出てきてるのかも不明。毎年、同じバンドの買いそびれたアルバムを買い足していってるという感じなので、もう少し広げていきたい気もする。riddimとかチェックすればいいのだろうか?

■現像に出していた、修理後に撮ったイコンタのフィルムをようやく取りに行けた。心配はしてなかったけれど、実際にちゃんと撮れているのを確認できてうれしい。これから暖かくなって外に出る機会が増えたら、またいろいろ撮りたいと思う。色合いも買ったばかりの頃に近くなっていて、露出やシャッター速度も調整されているよう。基本的にイコンタで撮る写真は露出をかなりオーバーにして、シャッタースピードも遅めにしてるので、全体的に薄い感じの色合いになる。当然、動いているものを撮るとたいていボケてる、もしくはぶれてるのだが‥‥最近は、ちゃんと設定どおりに動いていなかったせいか、思うような色合いにならなくて、だんだんと設定が極端になっていっていたので、ちょっと気をつけつつベースとなる設定を決めなくちぇ。
しかし、吉祥寺のヨドバシカメラは行くたびにフィルムカメラのコーナーが縮小されていって、今では、カウンターとちょっとフィルムが置いてあるくらい。周りはカメラですらなくなってて時計売り場になってるというね。あ~あ

「テクノイズ・マテリアリズム」-佐々木敦-

■佐々木敦はツイッターをフォローしたり、Webでのインタビュー、そしてHeadzのサイトなどはよく見ているけれど、著作を読むのは初めてだったりする。
電子音楽を聴き始めたころ、何から聴いていいのかも、どういう系譜があるのかもぜんぜん分からなくて、Headzのサイトに掲載されていた佐々木敦の電子音楽の歴史についての文章を繰り返し読んでいたのだけれど、いつのまにかページが削除されてしまっていて、ダウンロードしておかなかったことを後悔している。
それほどたくさんの電子音楽を聴いているわけではないけれど、今読んだらその時は分からなかったことがわかるかもしれないし、また違う感想を持つかもしれないと思う。そうやって少しずつ音楽を聴いて、文章などで隙間を補完したり、ちょっと先のことを学んだりしながら、聴き進めていくという過程が好きなのだ。思うように聴き進められないジレンマも含めて。

■この本を本屋さんでちょっとページをめくってたら、それっぽい章があったので、それが掲載されてるのかなと思って購入してみました。でも、記憶ではもっと詳しかったような気がするので、もしかしたらほかの本に掲載されているのかもしれない。全体としては、初期の電子音楽については一部でしかなく、大友良英の変遷やデレク・ベイリーのフリー・インプロヴィゼーション、ジョン・ケージの「4分33秒」などを通じて「音響」について語っていてそれはそれで勉強になったのですが。

■個人的には、何人かで1分とか2分とか時間を決めてそのときに聞こえるものをすべて書き出してみて、お互いに読み上げてみるというサウンドエデュケーションがおもしろそうで、自分でもやってみたいと思った。自分と人とがどんな風に音を聞いているのかという差がどんな感じなるのかドキドキする。それだけでなく定期的に自分一人でもやってみて意識的に音を聞くということをやることによって、音楽の聴き方が変わるかもしれないと思う。
昔、友だちとリード楽器が複数あるインストの曲のメロディを、口ずさんだら、人によって認識しているメロディが違っていたということがあったのを思い出しました。まぁよく言われるベーシストは曲のほかの人よりもベースの音をはっきり聴いている、みたいなことなのでしょうけどね。

■そういえば、佐々木敦といえば、先日大学入試センター試験に著作の文章が引用されたって話題になってましたね。これがきっかけで古本屋で、佐々木敦の本を見かけるようになったら、もっと本を読む機会が増えるんじゃないかと期待してるんだけど、どうかな?。基本的に古本屋でしか本を買わない人間なんで‥‥。