「城・ある告別―辻邦生初期短篇集」-辻邦生-

冬になると花屋の店先に多肉植物が並べられるのは、寒い時期で華やかな花や植木が少なくなってしまうためなのだろうか。
引越しの際に処分してしまったものがあったり、ベランダが広くなったりしてこともあって、そんな冬の間にいくつか多肉植物を買っておきたいと思っていたら、先月、駅からうちまで歩いてくる途中にある花屋に、ただ茎を切っただけで根も生えていない多肉植物が、穴のあけられたダンボールにささって売られているのを見つけた。ちゃんと根が出るかどうか不安だったけれど、ひとつ80円だったこともあって2つばかり購入。念のため「普通に土に刺して水を上げればいいんですよね」と店員に聞いてみたら、「いえ、刺したから当分の間は水をあげないでください。水分があると逆に根が出にくくなりますから」とのこと。そういうものなのねぇ、なんて思いながら、あいていた容器に植えてみて、2週間くらいほおっておいたら、気のせいかもしれないけれど、ちょっとずつ大きくなってきているようで、うれしい。

昨日は久しぶりに天気がよくて、でも午後からうちの親が家に来る予定だったので、午前中、子どもをベビーカーに乗せて近くのケーキ屋さんにケーキを買いに行ったついでに、ちょっと遠回りして帰ってきたら、近所の花屋さんに小さな容器に3つくらいずつ寄せ植えされた多肉植物が置かれていて、つい2つばかり(6つ)買ってしまいました。これもひとつ150円で、安かったのですが、家に帰って植え替えてたら、やはり茎を切って刺しただけで、根が出ていなかったので、ちゃんと育つかどうかドキドキしながら、毎日眺めちゃうんだろうなぁと思う。
まだちょっと寒いのでベランダには出さずに、家の中に置いているのだけれど、思いがけず、多肉植物が増えたので早く暖かくなってベランダに並べたい、と思ってる。花が咲くわけではないので地味ですけどね。
ほんとうに春がきたら、ミオ犬が、花が咲いたり実がなったり鉢植えを買ってくるだろうから、そしたら少しはうちのベランダもにぎやかになるのかもしれません。

「随筆集 志賀さんの生活など」-瀧井孝作-

志賀直哉の本は、恥ずかしながら中学生くらいのときに「小僧の神様」が収録された短編集しか読んだことがない。10代の頃、日本文学を読んでおけばよかったという気もしないでもないけれど、その頃、読んだとしても分かったかどうかは不明。まぁ分かろうが分からなかろうが、日本語を学ぶという意味でも読んでおくというのが大切なことなのかもしれません。昔の人が意味も分からず漢詩を素読いたみたいにね。ちょっと違うか?

志賀直哉については、いつか友人、師弟関係などをまとめてみて、そこに出てくる人たちの本を端から読んでみたいという気はします。ちょっと思い浮かべるだけで、里見トン、者小路実篤、尾崎一雄、広津和郎、網野菊、藤枝静男‥‥などつぎつぎに出てくるし、かなり広範囲でおもしろい交友関係図ができると思うんですけどねぇ~。と思ったら、「志賀直哉交友録」なんて本が、講談社文芸文庫から出てることを発見。交友録好きとしては手に入れなければ‥‥。

「森有正エッセー集成I」-森有正-

先日は、国立のニチニチ日曜市に行ってきたことを書きましたが、2月はその前に、武蔵小金井でやっている「はけのおいしい朝市」にも行ってたりします。
「はけのおいしい朝市」のほうは、日曜の8時からというまさに朝市という時間にやっていて、出店しているのは、Wa Gaya(おにぎり屋さん)、出茶屋(珈琲屋台、クッキーなどもあり)、Petal.(花屋さん)、オーブン・ミトン(ケーキ・焼き菓子)、アチパン(天然酵母のパン・お菓子)、dogdeco HOME(犬具、陶磁器など)といった武蔵小金井近辺のお店。開催場所は毎回それぞれのお店を巡回しているようです。
うちから駅に行く途中にあるPetal.で、多肉植物を買ったときにもらったちらしに、2月は、Petal.で開かれると書いてあったので、ちょうどよいと思って、朝ごはんも食べずに行ってきました。でも外でコーヒーを飲んだり、パンを食べたりするには寒すぎ、おまけに風も強くて、子どもを抱っこした途端、ベビーカーが風で倒れるという‥‥。3月の日程は決まってないみたいですが、場所はdogdeco HOMEとのこと。次回は暖かいといいな、と思ってます。いや、願ってます。まだ6回目ということなので、これからもっと盛りあげていって欲しいです。
なんだか春になったら朝市とフリーマーケットだけで、週末の予定がうまってしまいそうな予感‥‥。

「村のエトランジェ」-小沼丹-

小沼丹の作品は、何年か前に出た全集を持っているのですが、本が大きくて持ち歩けないので、老後の楽しみとして取っておいている。でもそれはそれとして、文庫本が出るのはうれしい。
この「村のエトランジェ」は、のちの“大寺さんモノ”などのように身辺のできごともとにした作品ではなく、完全なフィクション。現実離れというほど離れていないけれど、どこか世間から浮いているような人たちのできごとが、ユーモアのある描写で描かれていのだけれど、その裏に影みたいなものが張り付いているのがアクセントとなっていてよかった。最近読んでいないけれど、永井龍男の短編にどこか雰囲気が似ているような気がするのは、単に自分の好きな作家を何かの共通点で括りたいという気持ちがあるから、かもしれません、

2月に入ってから天気が悪かったり、寒かったりして、週末もどこかに出かけるということがほとんどなかったのですが、今日は、ちょっと寒かったけれど、ともかく、天気はまぁよかったので、久しぶりに国立のニチニチ日曜市に行って来ました。
ニチニチ日曜市は、毎月第3日曜日、11時から15時半に、国立にあるニチニチというお店でやっている日曜市で、それほど広くはない店内に、エバジャム(ジャム)、ダン ラ ナチュール(マフィン)、タイヨウドウ(クラッカー)、ひなたパン(食パン)、ゆるひ(シフォンケーキ)、クエブー(パウンドケーキ)、泡山(古本)、クマガイノゾミ(陶器)、トサカンムリフーズ(カレーパン)といったお店が出店しています。この雑記を見ると、前回行ったのが2007年の8月みたいなので約2年半ぶり。けっこう続いているんだなぁと思って調べてみたら、去年の5月で4周年ということでした。すごい‥‥。
このニチニチ日曜市がきっかけとなったのかどうかは知りませんけど、吉祥寺のQUEEN’s HOTELの「お早よう市」や阿佐ヶ谷のオトノハの「オトノハ朝市」など、いろいろなところで朝市が開かれるようになって、朝は無理なので「夕市」をどこかでやりたいなぁ、なんて一時期、思ったりしてましたね。今となってはイベントなんてとうてい無理ですけれど‥‥(自分ではできないという意味で、誘われれば出張・出店しますので、よろしくお願いしますー)。
今日は、子どもの昼ご飯の時間などの関係であまり長居できなくて、マフィンとクラッカーを買って、家に帰ってきて食べるという感じでしたが、今の家からなら国立はそれほど遠くないので、また来月も行こうと思ってます。

「暮しの眼鏡」-花森安治-

リビングに大きめのテーブルを買ったので何脚か椅子が欲しいなとずっと思っていて、いま、使っている椅子は、木のスクールチェアで、結婚した時に吉祥寺のジュビリーマーケットで買ったものなので、これと合うものがあるのではと、ジュビリーマーケットなどを見たりしていたのですが、いまいち手頃なものがなかったので、週末、思い切って福生まで行って来ました。一時期は毎年8月の終わりに行われる友好祭に行っていましたが、ここ2年くらい行けなかったので、福生に行くのは久しぶり、かつ友好際の時以外で福生に行くのは初めてなのでちょっとワクワク。
といっても、そんなに歩きまわってもいられないので、まずは福生フレンドシップパークでやっているらしいフリマを眺めて、DECO DEMODEとフジヤマファニチャーで椅子を見て、帰りにズコットでランチ、以上。って感じでしたが‥‥。まぁ友好祭のときと比べるのもなんですが、普段の日の福生はあんまり人もいなくてかなり静かでした。子供連れでも平気で店の中には入れるし、お店もわりと広いし、大きめの音で音楽がかかっていたりするので、あまり回りを気にせずにごはんも食べられるし‥‥。電車を選べば30分ちょっとで行けるみたいなので、暖かくなってきた頃にまた行きたいですね。

「料理のお手本」-辻嘉一-

この本を読んでいたのは11月ですね。ちょうど引っ越してから少し経ったくらいの頃で、これから読もうと思っていた本はまだ段ボールに入れっぱなし、仕事も割と忙しくて古本屋にも行けず‥‥というわけで、カヌー犬ブックスの本の山から取り出して読んだんですよね。
なんかカヌー犬ブックスを始めたばかりの頃は、もともと自分が読んだ本をサイトにあげてたり、新しい本でも更新する本の量も少なかったので、自分で読んでからサイトにアップしていたものですが、最近はなかなか難しいです。逆に読んじゃうと売るのがもったいなくなって、自分の本にしてしまったりしちゃいますしね。ほかの古本屋さんってどうしてるんでしょうかねぇ?

といはいうものの、きちんと読まないにしろ、当然、料理関係の本を見ている機会が多いので、ときどき、定期的に料理でも作って、趣味のひとつにしようかなぁ、なんて気持ちになったりします。“ときどき”というか、なぜか冬になるとそう思う。単に寒くて外に出るのが億劫だからか?わかりませんが。そう思っているだけで、気がつくと春になっていたりします。いや、春になったからって料理ができなくなるわけではないので、なんの理由にもなってないんですけどね。

うちは母親よりも父親のほうが料理がうまくて、週末になると父親がごはんを作っていたけれど、結婚するまで実家にいた父親はどこで料理を憶えたのか、今でも不思議。本とか見て作ってるのを見たことないし‥‥。前に聞いたときは「山で憶えた」って行っていたけど、山で天ぷら作らないでしょ、山で魚を三枚におろさないでしょ、山でクレープ焼かないでしょ‥‥って思うんですけど。
お正月に実家に帰って、昔の写真見てた時も、子供の頃よく座っていた大きな椅子を見て、「またこの椅子作ってみようかと思ってるんだよね」って言ってて、ちょっとびっくりした。確かに今見ると装飾がまったくない感じの椅子だけれど、手づくりだったとは‥‥!
そう考えると、その辺の器用さをわたしはちゃんと受け継いでないですね。残念ながら‥‥。

「嵐といふらむ」-獅子文六-

あけましておめでとうございます。今年もカヌー犬ブックスをよろしくお願いいたします。

昨年、読んだ本は昨年のうちにここに書いておこうと思っていたのですが、結局、10冊くらい残して年を越してしまいました。結果、昨年雑記で取り上げた本は46冊。前に比べるとかなり減ってしまっていますが、持ち越した本が10冊あるので読んだ本としては56冊。まぁ仕事で必要に迫られて本を読むといったこともなく、単なる趣味なので1年にどのくらい本を読もうがどうでもいいと言えばいいんですけど、今年は70~80冊くらいは読みたい。いや、そのくらい読まないと趣味とも言えない気がするのですがどうなんでしょう?ピンチョンとかジョイス、マルケス‥‥みたいな本ばかり読んでるわけじゃないんだからさ、と思います。
ちなみに今年の読書のテーマは“女性作家もしくは随筆家”。どんな本を読むかは、ちゃんと決めてないんですけど、あれも読もうかなとかこれもいいかも?とかいろいろ考えているときがけっこう楽しい。でもそうやってリストだけ作って、けっきょく興味の対象が変わってしまって、まったく読まないでおしまいになってしまう場合も多いんですけどね。

「江分利満氏の優雅なサヨナラ」-山口瞳-

まだ何冊か残っているけど、とりあえず山口瞳の文庫本もひと区切りにしようと思って、最後に読もうと前々から買ってあったこの本を読んでみました。
思えば、山口瞳の本もかなり読みましたね。この雑記で取り上げている本だけでも、59冊。ちょうどカヌー犬ブックスをはじめるちょっと前くらいから読み始めたような記憶があるので、全部で65冊くらいですかね。今まで海外文学ばかり読んでいたせいもあるけれど、一人の作家の本をこんなに読むのは初めてですね(内田百けん集成の24巻に何冊分の本が収録されていたのか分かりませんが‥‥)。
といっても、読み始めてから今までだいたい7年かかっているので、1年で約10冊、月に1冊と考えるとそれほど多くもない。一時期は山口瞳と永井龍男ばかり読んでいたような気もしますが‥‥(最近、永井龍男も本が見つからずあまり読んでない)。
次回のステップとしては、単行本の「男性自身シリーズ」を“揃え”で買って発表された順番に読むこと、ですかね。まぁ“揃え”で買えれば、ですけどね。山口瞳はあんまり主張にブレがないので、年代によってどうこうというのはあまりないのですが、連載の期間が長いだけにやはりきちんと年代順に読んでみたい、というのはありますね。

「酒食生活」-山口瞳-

買うときに所収一覧を見たら、「酒飲みの自己弁護」や「江分利満氏大いに怒る」「木槿の花」「迷惑旅行」「行きつけの店」‥‥など、読んだことのある文庫本からの再録が多かったので、買うかどうか迷いつつも、とりあえず読んでみることに。
で、やっぱりわざわざ買わなくてもよかったかなという感想です。再録でもいいんだけれど、もう少しなにか工夫が必要じゃないのかな、と思いますね。同じシリーズの「美酒礼賛」も同じようなものなのかな。あんまり期待はしてないですけど、どこかで見つけたら買っちゃうかもしれません。

うちのマンションは、もともと大学の敷地だったらしく、すぐ横にはマンションのほかに同じ頃に建てられたと思われる一戸建ての家が並んでます。会社の行き帰りや近くのドラッグストアに行くときなどに、その一画を通るのですが、意外とクリスマスの飾り付けをしている家が多くなくて、なんとなくほっとするような、物足りない気分のような、感じですね。
前に住んでいた久我山は、競うように家の周りを飾り付けていたけれど、あれは一軒がやりだすと隣の家もつられてやってしまう、みたいな連鎖的なものなのだろうか?なんてちょっと思ったりします。クリスマスに限らず飾り付けって、ちょっと隙間があると埋めたくなってしまって、最終的には過剰なものになりがちで、第三者としてはその過剰な部分が面白かったりするところもあります。飾り付けの基本としては隙間をどう活かすか、ってことが重要だと思うんですけどね。
といいつつも、うちでも11月の終わりの週末にクリスマスツリーを出しました。去年、今まで使っていた小さなツリーを買い換えて大きめなものにして、自分たちの中では、かなり大きなツリーがあると思っていたのですが、引っ越してリヴィングが広くなったのと、ものを置かなくなったせいで、出してみたらそんなに大きくなくて、肩透かしな気分。
しかも大きくなった分、飾り付けるものが少なくて、見ていると、もっといろいろぶら下げられるな、なんて思ったりして、ほっておくと過剰になりそうで怖い。でも会社から帰ってきて、クリスマスツリーの電飾がピカピカしているのを見ると、なんとなくクリスマスっぽい気分になります。そもそもクリスマスっぽい気分というのもいまいちどんな気分なのか、クリスチャンでもない日本人のわたしには、よくわかってませんけどね‥‥。
ところで、クリスマスツリーっていつ出すのが正しいんでしょうね。いまいち分かりません。街のライトアップは年々早くなってるし‥‥。何日後にしまうとか決まりがあったりするのでしょうかねぇ~??

「彼女のいる背表紙」-堀江敏幸-

過去に読んだ本に出てくる女性についてつづった随筆集。もちろん本に出てくる女性の主人公が作者と近い存在だったりすることもあるわけで、かつ、それを初めて読んだときの状況などを交えたタペストリーのような構成や言葉づかいはあいかわらずです。ただ「クロワッサン」に連載されただけあって堀江敏幸の本としてはかなり読みやすい。
基本的にこの人は翻訳家の文体なので、けっして読みやすい平易な日本語ではないし、内容についても難しい部分や偏狭な部分が多々あるので、好みがわかれるのではないか、と思う。だから、「クロワッサン」の読者が、この本を入り口に堀江敏幸に興味を持って、ほかの本を読んだりするのかどうかは、わかりません。
わたしも昔だったら巻末の取り上げた本のリストを見ながら、全部読むくらいの気合いがあったものですが、いまはそういう気持ちもあまりないですねぇ。カヌー犬ブックスで「彼女のいる背表紙」特集とかを組んでみたいな、という気持ちはちょっとありますが、集める気力もないし、そもそもそれが売れるのかという疑問もあったりします。

さて、今年もあと1か月。
去年の後半、半年間休んでいたこの雑記を1月に再開して一年ですが、今年はなんか慌ただしくて、あんまり本も読んでないし、前に比べて、あまり出歩くこともなくなってしまったので、なんとなくだらだらと続けているような気がします。というわけで、12月の雑記は2009年を振り返りつつ、来年に向けてどうするか、考えていこうと思います。まぁ、なんにも考えてないっていえば考えてないんですけど‥‥。