◆作家の食卓がおいしそうなのは文章の力なのかもしれない
永井荷風、壇一雄、色川武大、澁澤龍彦、立原正秋、内田百けん、谷崎潤一郎、池波正太郎、開高健、山口瞳‥‥といった作家たちの日常の食卓の再現したり、行きつけのお店や好んだおやつを紹介した本。それぞれのメニューなどに対して、その作家の作品から関連する箇所が引用されていたり、近親者のエッセイが収録されるなど、「作家の酒」「作家のおやつ」‥‥とその後に続くシリーズに引き継がれる構成になっています。
ただシリーズで最初に出た本ということもあり、取り上げられている内容に焦点が絞られていないような、いろいろ詰め込んでしまっていて、全体的に緩慢になってしまってるような気がしますね。
元々コロナブックスは、大型サイズでも厚い本でもないので、内容を盛りだくさんにするよりは、いかにテーマに沿った内容をいかにコンパクトにまとめられるかが重要だと思うので、こういう広げようと思えばいくらでも広げられるテーマだと難しいのかもしれません。そういう意味でその後、「酒」「おやつ」とテーマを絞っていった正解。実際、その二冊のほうがおもしろかったですしね。
あと、こう言ってはなんですが、再現された食卓にいまいち華がないような気もしないでもない、かな。もちろん、全部ではないけれど。豪華と言っても日常の食卓なので、そもそも「みせる」ためのものではないですし当然なんですけどね。逆にこういう日常の食卓を、いかにおいしそうに表現するかが、作家としての文章の力なのかもしれません。
そんなことを言ってみたりもしますが、有名な作家がひと通りおさえられているので、前に読もうと思っていてすっかり忘れていた人を思い出したり、以前に読んだ本をもう一度読み返したくなったりします。料理関係の本は定期的に読み返したり、新しい本を読んだりしておかないといけないなと思っているので、そのためにもこういう本を読むことは大切。
まぁ現実は、月に読む本が少なすぎて、読みたい本のリストが増える一方なんですけどね。多分、月に10~15冊くらい本を読めたら、いろいろな分野の本を読めて、さらに新しい本との出会いも増えて楽しくなるんじゃないかと思うんですよ。今は月に4冊くらいか本を読めていないので、ちょっと古本屋に行って、読もうと思っていた本を買って読むだけで終わってしまいます。
同じように月に20枚くらいCD買ったらもっといろいろなジャンルの音楽が聞けるようになるんじゃないかと思ってる。
しかも歳をとればとるに従って読みたい本も、聴きたい音楽もどんどん増えていくんですよ。若い頃も「あれも読みたい、これも読みたい、あれも聴きたい、これも聴きたい‥‥」って感じだったけれど、今になるとそれも狭い世界だったんだなーと思ってしまいます。
いつまで本を読んだり、音楽を聴いたりし続けるのか分からないけれど(できればまた映画も観に行きたい)、そうやって広がって行く一方で、これからは読まない本や聴かない音楽を決めて、読むべき本、聴くべき音楽を絞るということがより大切になっていくのかもしれません。まあそれが大人の節度ってことなんですよ。‥‥多分
なんてことを、小西康陽の「これからの人生」を聴きながら書いていたら、昔のアジアや日本の歌謡曲が流れてきて、ジャンルで聴く音楽を絞るなんて無意味なことなんじゃないかと思ったりして、節度を失いかけてます。