「新編 日本の旅あちこち」-木山捷平-

■北は北海道から南は鹿児島までの旅の様子をつづった晩年の随筆集。昭和30年代後半から40年代初めに書かれたものを中心にまとめられている。晩年にこうした本が出たのは昭和37年に「大陸の細道」が芸術選奨文部大臣賞を受賞したあと、さまざまな雑誌や新聞からの原稿依頼が多くなり、その一つとして紀行文が書かれたようだ。
中国(満州)での話や交通事故に遭い指を怪我し、その療養に温泉にいった話、ふるさとでの話などが印象的なため、いろいろなところに行っている気がしていたが、これらのものは雑誌社の依頼によるもので実際はそうでもなかったらしい。そう言われてみると、確かに作品のほとんどが阿佐ヶ谷や西荻~吉祥寺あたりの近所での出来事ばかりではある。と言っても、依頼されての旅行でも飄々とした趣はそれまでの木山捷平の随筆と変わりない。が、わりと律儀に好きな作家の碑など観光したり、土地の人に会ってインタビューしたりしていて、それはそれできちんとした紀行文になっているとも言えるかもしれない。

-■週末(っていつの週末だ?)70年代バイブレーションを見に行こうと思って、横浜に向かっている電車の中で、ごはんを食べるところとか調べていたら、「上菅田町は横浜のチベット自治区」というタイトルで笹山団地を紹介しているブログを見つけ気になってしまい、そのまま笹山団地に行ってみた。
笹山団地はわたしが生まれてから小学生まで住んでいたところ。もう40年前のこと。横浜の保土ヶ谷区のすみっこにあり、横浜から相鉄線に乗って、西谷で降りて20分くらい歩いたところにある。隣には竹山団地もあって、全体でいうとどのくらいの棟があるのか分からないくらい多くの団地が集まっている。
さすがに西谷から歩いていくのは暑いので、横浜からバスに乗って行ってのだけれど、団地内だけでバス停が3つもあって、まずどこで降りたら、自分が住んでいた棟に一番近いのかわからない。とりあえず終点まで行き、案内板を見ていると、団地内は大きく変わっていないせいもあって、記憶通りに歩いたらだいたい自分の行きたい場所に行けるようになった。小学校の時の記憶ってちゃんと残ってるものですね。
団地自体は40年もたっているのでかなり老朽化しているが、荒れた感じはなくて、昭和40年代に作られた団地なので一つ一つの棟が小さくてコンパクトにまとまっているといった感じ。前述したとおり棟の数が多いので、全部解体して新しいマンションにするのは難しそう。住んでいる人もお年寄りが多そうだしね。

-■ついでに近くを散歩。記憶では小さな商店街というか、小さいお店が数軒集まっているところが2箇所あったと思うのですが、1箇所は普通のドラッグストアになってました。もうひとつは残っていたけれど、お店のほうは開いているのか、閉店しているのかよく分からない状態。週末だからといって賑わっている感じでもなし。団地にはまだ人が住んでいるのだから、もっと人が居てもいいのにと思う。

■なんだか昭和40年代を象徴しているような雰囲気で、いろいろ考えることはあるけれど、それは懐かしい気分とはちょっと違っていて、自分の中でうまくまとまらない。なんとなくこの団地の存在そのものが終戦から経済成長~バブル期の境目にあるような気がする。で、境目にあるからこそ、終わったものとしてなくなるわけでもなく、そのまま存在し続けてしまっているように思えた。
多分、もう行くことはなだろうけど、これからあの場所はどう存在し続けるのか、それともあたらしく生まれ変わるのか、自分が生まれた場所ということとは関係なく気になります。

「木山さん、捷平さん」-岩阪恵子-

■久しぶりの一人暮らしというわけで、週末になると、暑い中歩き回っている。

■銀座のgggでやっている「ラース・ミュラー 本 アナログリアリティー」展。チューリッヒに拠点を置くラース・ミュラーデザインスタジオ・出版社の本を集めた展覧会。1階では壁際に表紙が見れるように本が並べられ、B1では、椅子に座って本を見れるようになっている。そのためどちらかというとB1に展示されている本は、変わった素材が使われているものが多いよう。なかにはコンクリートを表紙に使ったものもあるし、フライターグの本では、背表紙がフライターグのバッグで使われているトラックの幌だったりする。
ラース・ミュラーの本といえば、Helveticaのフォントについての本が有名だけれど、ヨゼフ・ミューラー=ブルックマンのスイスのデザインについての本など昔にチェックしていた本や持っている本が何冊もあって、普段ちゃんと出版社とか確認していないわたしは「これも同じところから出ていたのか?」などと思ってしまいます。本棚がいっぱいになってしまっていて、なかなか買えないけど、たまにはデザインや写真集のチェックしなければ。

-■2015年は電子音楽の夏、というわけではないけれど、先週の蓮沼執太のイベントに続き、宮内優里のライブを見てきました。ライブといっても会場は青山のFound MUJIで、それほど広くはない店内にたくさんの人が集まって、本人はほとんど見れず。今回のイベントでは、Found MUJIにある商品を使って即興でレコーディングしていくというものでした。事前に作ってきたリズムトラックに合わせて、缶や瓶、フライパンなどをたたく音をかぶせていき、最後にギターとキーボードでメロディ(?)を加えるという感じだったのですが、小気味のいいリズムとだんだんと曲が厚くなっていく様子に引き込まれていく感じでした。
江戸たてもの園やミッドタウン、谷保のギャラリーcircleといろいろなところで、宮内優里のライブを見ているけれど、どこで演ってもその場の雰囲気と宮内優里の音が絶妙にブレンドされていい空気に変わっていくところがすごい。ライブハウスとかちゃんと音楽を演奏する場で見たことがないので、そういう場だったらどんな感じになるのだろうか。
-店内のライブにもかかわらず、アンコールにまで答えてくれて、最後は、お客さんのリクエストに答えて、まったく予定していなかった「読書」を弾き語りで歌ったりかなり得した気分。

■で、青山から下北へ始動して、前々から誘われていたもののなかなか行く機会がなかったshuffle!というイベントへ。ここも飲み物を買いにカウンターに行くのも大変なくらいたくさんの人で溢れていて、盛り上がっていました。DJの皆さん、みんなものすごいマニアックで、音楽の知識もレコードのコレクションもすごいのに、きちんと盛り上がる曲を混ぜつつ、かつ自分たちも本気で楽しんでいる様子が、全体に伝わってくるイベントで楽しかった。でも、最近、友だちのイベントいくと、なんだかみんなのレコードへの熱さにときどきついていけてない自分に気づいたりするなぁ。

「秋の朝 光のなかで」-辻邦生-

■19歳の時に書いた「遠い園生」も収録されているが基本は70年代初めに書かれた短編をまとめたもの。悲劇の要素が強い「秋の朝 光のなかで」「サラマンカの手帖から」「風越峠にて」の3篇がよかった。久しぶりにフィクションを読んだ気がする。

■暑い日が続いているのでこういう日は涼しい美術館に行こう、と思って、週末は、神奈川県立近代美術館 葉山と原美術館に行ってみたのですが、2つとも最寄駅から離れているのでそこまで行く間がめちゃくちゃ暑かったという‥‥

■神奈川県立近代美術館 葉山では、展示ではなく蓮沼執太が主催の葉山アンビエントというイベントを見ました。葉山アンビエントは、展覧会と展覧会の間のなにも展示されていない美術館で、5つある展示室で蓮沼執太、イトケン、比嘉了、千葉広樹、和田永という5人のミュージシャンがそれぞれ電子音楽を奏でるというもの。
-アンビエントという言葉から静か目の音で音楽がなるがらんとした展示室を歩き回る感じをイメージしていましたが、かなり大きな音で音楽がなっており、BGMという感じはなく、5つのライブを同時に見ているようでした。それぞれの演奏(?)の手法も、テープを使うものやコントラバスを弾いたりするもの、Mac単体を操作しているものなど異なっていて興味深かったです。隣の展示室で奏でられている音に合わせて、演奏を変えたり、微妙に影響しあいつつ、それぞれの展示室だけでなく、美術館全体でも一つのライブを見ているみたいな雰囲気もありました。
そして、観客は展示室を歩き回ったり、床に座ったり、中には寝転んだりして、演奏を聴いているという自由な雰囲気も近代美術館にあっていてよかったです。美術館の床に寝転ぶなんて最初で最後の経験になるかもね。

-■原美術館でやっていた「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」展は、前に日曜美術館で紹介されていたのを見て、機会があれば言ってみようと思った展覧会。サイ・トゥオンブリーを見たいというのが半分、カフェで中庭を眺めながらビールでも飲みたいというのが半分ってところか、と思っていたのだけれど、カフェのほうは満席でした。ザンネン。まぁこれだけ暑いとゆっくり休みたくなりますよね。
サイ トゥオンブリーは、アメリカ抽象表現主義を代表するアーティスト。この展覧会では、ドローイングやモノタイプ、紙を切りあわせたものなど、紙に描かれた作品にフォーカスし、1953年から2002年までの約50年間で制作された作品が展示されています。時代によって作風や表現の手法も変わっているけれど、どれも一目見ると落書きのような絵なんですが、使われている手法もその絵にぴったりと合っているし、作品全体として調和がとれていて、ちょっといろいろ考えてしまった(何を考えたかは書かないけど)。

「山本さんのいいつけ」-山口瞳-

■タイトルとなっている「山本さんのいいつけ」の山本さんとは一度だけ会って話をしたという山本周五郎のこと。その時に「出版社を限定して書け」「その出版社からジャンジャン前借りしろ」「メモをとれ日記をつけよ」と言われたけれど、ほとんど実行しなかったということがつづられている。ほかに江分利満について若いサラリーマンと伊豆にいった話、将棋について、向田邦子のことなど、1963年から1990年までに発表されたものが収録されているが、テーマや流れなどはない。作家の死後に編さんされたこういう本は、音楽で言ったらシングルのB面やデモを集めたものと思ってるので、その辺はもうあまり気にしていないし、内容も大きな発見などがあるわけではない。だったらなんで読むかというとただ時々山口瞳の文章を読みたくなるというだけ。そしてなんとなく気持ちだけでも背筋を伸ばしたいという気持ちがあるからなんだと思う。

■ミッドタウンの富士フイルムスクエアで、塩谷定好の作品展をやっていて、朝、会社に行く途中でポスターを見るたびに行かなくちゃと思っていたのですが、気がつけば来週終了ということで、慌てて見てきました。塩谷定好は、大正から昭和初期に活躍した鳥取出身の写真家。同じ鳥取出身の写真家、植田正治も「塩谷さんといえば、私たちにとって、それは神様に近い存在であった」と生前語っていたらしい。
それほど多くの写真が展示されているわけではないけれど、山陰地方の風景をソフトフォーカスで撮った写真は、戦前の写真と言った雰囲気ではあるけれど、どの写真にも共通する独特な雰囲気があっておもしろかったです。
富士フイルムは、化粧品が主の商品になってもこういうとことで写真を紹介し続けているところがいい。ただ近所のカメラ屋さんは気がついたら写真関連の商品の棚が少なくなって、化粧品ばかりになってしまったけどね。

■ついでに、行けるかどうかわからないけれど気になっている展覧会を。まずは現代美術館でやっている「オスカー・ニーマイヤー展」。オスカー・ニューマイヤーは、ブラジリア建設時に、国民会議議事堂や外務省、大聖堂などの主要な建物設計を行っているブラジルの建築家。大胆な曲線が特徴なんですけど、実際に実物を見たら迫力あるんだろうな、と思う。展覧会はもちろん展示されているのは代表的な建築物の模型や写真、そして映像資料なんだろうけど、いつか実物を見に行きたい。いや、その前に現代美術館が微妙に遠いんですよね~

■毎月チェックしているわりにはなかなかいく機会がないギンザ・グラフィック・ギャラリーの8月の展覧会は、スイスを拠点に建築、デザイン、タイポグラフィー、アート、写真などの本を出版するバーデンの設立者であり、デザイナーでもあるラース・ミュラー。彼が手掛けた本が100冊展示されるというもので、印象的なタイプグラフィや幾何学的な線を効果的に配置したスイスのグラフィックデザインの伝統を受け継いだブックデザインはもちろん、その素材などにも凝っているいるらしいので、実物を見て確認したい。
ちなみにフォントのHelveticaはスイスのデザイナー、エドゥアルト・ホフマンとマクス・ミーディンガーによるものです。

■そのほか、5月から原美術館でやっている「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」展は8月30日まで。ここは久しぶりに併設のカフェでのんびりしたり、品川の周辺を散歩したりしたい。散歩と言えば、時間があれば根津にある弥生美術館で「森本美由紀展」もやってますね。あとはちょっと遠いけど千葉美術館の「ルーシー・リー展」やうらわ美術館の「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」も気になる‥‥
というわけで、多分、ほとんど見に行けないと思うけれど、今年の夏に気になる展覧会でした。

「倫敦巴里」-和田誠-

■「暮しの手帖」のパロディ「殺しの手帖」や、横山泰三、長新太、小島功風の画風で007を描いたり、「兎と亀」をヒッチコックやゴダール、ベイルマンなどの有名な監督が脚本を書いたらどうなるか、川端康成の「雪国」を書き出しを野坂昭如や植草甚一、星新一といった作家の作風で書いたものなど、「話の特集」に掲載されたものを中心に収録したヴァラエティブック。
作風を的確に真似ていておもしろいのだけれど、一つのテーマが長いのでもう少しいろいろなコーナーがあってもよいかなと思う一方、一つのネタでこれだけかき分けられるというところがすごいとも思う。もちろんパロディなイラストもたくさん収録されてます。

■先日のIn The Pacificでも大きな音で聴きたくて最後に強引にかけたけれど、7月に入ってウワノソラ’67の「Portrait in Rock’n’Roll」ばかり聴いている。ばかりというか、一日に4、5回は聴いているんじゃないかと思う。「一昨年亡くなってしまった敬愛なるミュージシャンの一人に追悼の意を込めたものにもなっております」と説明されているように、「A LONG VACATION」以後に確立された大滝詠一、ナイアガラサウンドへのオマージュにあふれた作品。
-1曲目の「シェリーに首ったけ」などは、まさに「君は天然色」を2015年に再現したサウンドで、わくわくしてしまいます。YouTubeにあがっているPVを見るとドラムはツインだし、ほかの楽器もかなりオーバーダビングもしているしているようで、その凝り方が半端ない。歌詞の最後に月に吠えたりするところもGood!続く「年上ボーイフレンド」は「恋するカレン」や「Tシャツに口紅」を思い浮かべるし、「1969年のドラッグレース」的なセカンドラインのリズムと歌詞が楽しい「Hey×3・Blue×3」など、書き始めるときりがなくなってしまう。でもそれだけでなく、どこか「カップルズ」の頃のピチカートファイヴっぽい「傑作映画の後で」や、山下達郎の曲を思い起こさせる「レモンビーチへようこそ」、80年代のアイドルっぽい「Station No.2」など60年代のポップス全体、そして80年代の日本のポップス全体を視野に入れているところが、このアルバムが単なる真似に終わらず、普遍的なポップスの輝きを放っている所以なのではないだろうか。とかね。
あと、やっぱりいえもとめぐみのヴォーカルも大きいと思う。感情をこめて歌うわけではないんだけど、声に表情があるので、聴いてて飽きない。誰とはいわないけれど女性ヴォーカルでこの手の60年代ポップスをやってる人たちって90年代からわりといるけれど、だいたいヴォーカルの女の子が声はかわいいけど平坦すぎて繰り返し聴くって感じにならないんですよね。
しかしこんなアルバムを20代前半の人が、インディーで作ったというのがすごい。逆に若い人だからこそ作れたサウンドなのかもしれませんが‥‥
いまだに「A LONG VACATION」を聴き続けているとはいえ、自分はほんとのこの手の音楽が好きなんだなぁと今さらながら思い知りました。このアルバムもこれから30年聴き続けるんでしょうか?って、あ、あと30年も生きられないか。

-■さて、話変わって連休の後半は、奥多摩にある百軒茶屋というキャンプ場に、漣くんの幼稚園の友だち3家族で行ってきました。キャンプ用品とか持ってないのでバンガローですけどね。百軒茶屋は大学の頃によく行ってバーベキューをしていたところ。最近はずっと行ってなくて15年ぶりくらいだったのですが、川の様子も変わってなくて、ちょっと懐かしかった。
前日まで雨が降っていたせいで川の水かさが増えていて、子どもたちが泳いだりすることはできませんでしたが、スイカ割りをしたり話をしたり、いろいろ食べたりして楽しかったよう。ほんとになんにも用意していかなかったので、着火剤などもなく最初から炭に火をつけるのも久しぶり。なかなか火がつかなくてあたふたしたりしてしまったこともなんとなく懐かしい経験でした(最近は着火剤とバーナーで火をつけちゃうものね)。
夜は子どもたちとお母さんが早々に寝てしまったので、お父さん3人でコーヒー焼酎を飲みながらだらだらと話したりしてました。こういうところに来ると用具をそろえたくなりますねー次回に向けていろいろキャンプ用具をチェックしておこうー!

「わが交遊記」-戸板康二-

■戸板康二というと歌舞伎や新劇・新派の批評家として知られていますが、慶応の先生や友人から明治製菓のPR誌「スイート」の編集に携わった際に出会った作家、後年、推理作家としてデビューした作家仲間など、幅広い交友関係の中から「わが先人」25人、「わが交友」17人のエピソードが収録されている。

■7月12日は府中競馬場の花火大会へ。いつもは3連休あたりでやっていたのですが、今年はちょっと早い。日程を聞いたときはまだ梅雨が明けない時期だし、どうなんだろうと思ったけれど、30度を超える晴れになり、逆に外に出るのがつらいくらい。冬から春もそうだけど、気温がグラデーションで変わっていくということがだんだんなくなりつつあるのね。
-一緒に行く予定だった幼稚園の友だちが来られなくなったので、結局、いつもの男子会3人。3時半くらいに会場に着いて、場所をとって遊戯で遊んだり、水遊びをしたりしつつ花火を見るが、7時半スタートなのでスタートまでが長い。で、始まってみると場所取りを間違えて、打ち上げられた花火が半分木に隠れてしまうという状況という‥‥。近くで打ち上げられているので、花火も大きいし音も大きいので子どもたちもだんだん盛り上がり、最後は前に出て全部が見れるところに移動して盛り上がりました。いろんなところに行くたびにどんどん楽しめる年齢になっていくな、と思う。お父さんは、家から持ってきた500mlのビール缶を一人で4本も飲んでしまい、自分でもちょっとあきれる。

■で、台風のせいで雨降りが続いた平日が過ぎ三連休。初日は、In The Pacificの100回記念ということでいつもの第三水曜ではなく、土曜18時からの拡大版。わたしもゲストでDJさせていただきました。
-セットリストは以下の通り。今回はビーチボーイズに影響を受けたコーラスグループ~ガールグループを挟んで、ナイアガラぽい歌謡曲、そして最後はウワノソラ’67という流れ。曲数はちょっと少なめです。いつも2分台、時には1分台のイージリスニングばかりかけているので、普通の曲をかけると、余裕があって楽しいですねー。(それでも12曲かけてるので平均にすると3分切るのかー)

[1]「Here Today」(The Robb Storme Group)
[2]「Papa Oom Mow Mow」(The Freshmen)
[3]「Melt All Your Troubles Away」(Magic Lantern)[4]「Move It A Little Closer Baby」(Harmony Grass)
[5]「It’s Happening World」(Lesley Gore)
[6]「One Fine Day」(The Chiffons)
[7]「Society Girl」(Rag Dolls)
-[8]「悲しきウェザーガール」(レインボーシスターズ)
[9]「ファンレター」(岡本舞子)
[10]「悲しきカレッジボーイ」(北原佐和子)
[11]「薔薇と毒薬」(高岡早紀)
[12]「シェリーに首ったけ」(ウワノソラ’67)

個人的にハプニングがあって、自分が回し終えた8時に、来てくれた人にあいさつもほとんどできず、帰ってしまったのだけど、FBとかインスタをあとから見たらなつかしい人とかもたくさん来てて、ちょっとザンネン。まぁ仕方ない事情だったので、あきらめて次回会える日を楽しみにしてます。
来月からはまた第三水曜。これからもいい音楽聴いて、みんなと会って話して、お酒飲んで、楽しませていただきますので、よろしくお願いしますー

「日本の写真家〈7〉中山岩太」

■中山岩太は、なんとなく昔から写真集を買おうと思いつつも手に入れる機会がなかった写真家。といってもよく知っているわけでもなく有名な「上海からきた女」くらいしか知らない。この写真は高校くらいの時、ジャズを聴き始めたころに、ピート・ハミルが選曲した(してるのかな?わからない)、古いジャズのコンピレーションのジャケットに使われていたのをきっかけに知りました。もともと写真に興味があったわけではないので、レコードジャケットに使われた写真から知った写真家って多い。エリオット・アーウィット(フェアグランド・アトラクション)とか、ロバート・フランク(ローリング・ストーンズの「メイン・ストリートのならず者」)とか、ラルティーグ(誰か忘れた。フランスの)とか‥‥って思い浮かべてみたけど、あんまり思い浮かびませんでした。まぁわたしの写真家知識なんて、ほとんど「スタジオヴォイス」から得たものですよ。

■作品のほうは、ポートレイトや街角で撮影されたスナップ、そして小物などを配置した実験的なものなどが掲載されているのですが、シリーズの中の一冊なのでそれほど掲載点数は多くないし、物足りない。ひと回りしたせいもあるかもしれないけど、実験的な写真にその当時の雰囲気というのかな、最先端の表現を取り入れていく気概みたいなものがあっておもしろいと思う。植田正治の初期の写真にもそういうのありますね。スナップも構図が大胆で余計なものがほとんど入ってこないところなど、ロシアアヴァンジャルド的なものを感じてしまったりします。

-■そういえば6月に銀座で社員大会があって、4時前に解散、だったので、ついでにライカギャラリー東京でやっていたエリオット・アーウィットの写真展「NIPPON」を見てきました。
タイトルにもなっているように、日本の宮島や京都といったいわゆる観光地や東京で撮影されたスナップに近い写真14点が展示されていたのですが、個人的には子どもたちを撮ったスナップに近い写真のほうがエリオット・アーウィットらしくてよかった。1970年代に撮られたものなので、写っている子どもたちはわたしと同じ世代と思われるし、なんとなく自分が子どものころに見た風景に通じるものがあったりしましたね。
外国の写真家が日本を題材に撮った作品はいくつかあるけれど、その作家の作風とちょっと変わってしまった写真が多いような気がしてして、いいと思えるのはあまりないかも。それは単に自分の知っている風景だからなんでしょうかねぇ。その点、マイケル・ケンナは、どこに行っても作風が変わらないので、日本の風景でもあまり気にせずに素直に見れます。

■写真と言えば、先日、朝、漣くんに自分のおもちゃのデジカメを片手に「これって写真撮ったらすぐに見れるし、大きくしたり小さくしたりできるし、カメラっていうよりスマホじゃない?」と力説されました。いや、お父さんのカメラはフィルムだけど、大抵のお父さんの持ってるカメラはすぐに見れますよ、と思うが、説明するのは難しい。「じゃ、お父さんのはカメラじゃないの?」とか言われそう。

「汽車旅の酒」-吉田健一-

■文庫本オリジナルの鉄道紀行エッセイ集。待ち合わせの東京駅で飲み、電車の中で持ち込んだお酒を飲み、飲みきったら駅で買い、金沢をはじめいつも行く土地でおいしいもの食べ、飲むという旅がつづられている。
時には飲みすぎて旅行する間に持っていた、出版社からもらったお金を使い果たし、近くにいる友だちのところまで行ってお金を借りるという事態まで起こる始末。そして、その文章の締めで、やはり旅はお金がないとつまらないとまで言い切ってしまう。読んでいると、いつかそんな旅をしてみたいという気になってしまうけど、もちろんそんなに飲み続けることはできないし、食べ続けることもできません。

-■さて、すでに7月ですが、6月は幼稚園の行事で追われた感じでした。川遊びと幼稚園でやるおまつりという大きなイベントが2つありつつ。おまつりではおとうさんのバンド演奏があって、5月の終わりからその練習のために毎週土曜日に夜の幼稚園に行ったり‥‥まぁバンドの練習は、私は演奏はしないので、自分で何本かビールを持っていって半分飲みに行く感じなんですけどね。
しかし普段子どもの送り迎えの時は、それほど話したりしないお父さんたちと話してみると、共通の友だちがいたりするし、中には同じ小学校を卒業したお父さんもいたり、なんだか不思議な縁を感じます。

-■6月6日は、幼稚園の行事の隙間を縫って、Club Heavenのススキさんの50歳のバースデーパーティに行ってきました(もう1か月も前のことですね‥‥)。今でも時々あってる人から、久しぶりに会う人、そして顔は見たことあったけれど話したことのなかった人までたくさんの人が集まって、ソウマさん、メキシコさんのDJや、ライブで盛り上がりました。
Club Heavenは六本木から吉祥寺に場所を変えたときから、2年くらいは毎月のように行っていたけれど、実はそれ以降は、数えるくらいしか遊びに行っていない。でもなんとなく特別なイメージを持ってしまうのはなぜだろう。当時20代後半だったわたしがそんな感じなのだから、20代なりたてで通った人たちはもっと特別な思いがあるような気がする。そこで知り合ってイベントを始めた人もいっぱいいるしね。そんな人たちが集まった感じで暖かいパーティでした。そしてスズキさんは初めて会った時からもう20年くらいたつのに、あまり変わらない‥‥
そんなわけで、2次会まで出てしまってめずらしく終電で帰りました。

■そんなHeavenで知り合ったトヨシマくんがやっているIn The Pacificが7月で100回目を迎えます。とってもソフトロックナイト~カンフーナイト~クレアハミルなどとイベント名とメンバーを少しずつ変えているので、それらを合わせると200回近くなるんじゃないでしょうか。
100回記念はいつもの第三水曜ではなく、7月18日の土曜日に行われます。わたしもゲストでちょこっと回させていただきます。ほかのゲストはアンダーフラワーレーベルの田中さん、音楽ライターの油納さん、あぁそんな人たちにゲストで交ざっていいんでしょうかねぇ~スズキさんのバースデーパーティでもライブをしたLinustateのライブもあります。三連休の初日なので思いっきり騒いで飲みたいですね。わたしもいつもはイージーリスニングとかコーラスものとかライブラリなどをかけていますが、今回はちょっとだけ盛り上がる曲をかける予定です。いや、そんなに盛り上がる曲持ってないんで、当社比でほんのちょっと、って感じですが‥‥DJはマニアックな人ばかりですが、かける曲もイベントの雰囲気もわりと敷居が低いというか、のんびりした雰囲気なのでよかったら遊びに来てくださいねー

 『In The Pacific 100回記念』
  2015. 7. 18[sat]at DJ Bar Edge End(http://www.edgeend.com/)
  18:00~23:00 1000yen w/1drink

 LIVE:
  Linustate
 Guest DJ:
  田中謙次(Under Flower Label)
  油納将志
  Canoe-ken(Canoe-Ken Books)
 DJs:
  toyopee(fabulous parade)
  如月タクミ(Erica)
  Bucchi(sloppy joe)
  ERIK(Radio High!)
  Axelson

「BE A GOOD NEIGHBOR ぼくの鹿児島案内」-岡本仁-

■2008年の夏から2年で10回を数えるという鹿児島滞在で出会ったものなどについてつづった本。基本的には東京出会ったものについてポラロイドの写真とともにつづられるという「今日の買い物。」と変わらない。取り上げられているものやお店の雰囲気というか傾向もそんなに変わらないのではないかと思ったりするけれど、鹿児島に行ったこともないしそれはわからない。
そして「今日の買い物。」を読んでその中で紹介されているものを、東京で探すわけではないわたしは、もし鹿児島に行ったとしても、ここに載っているようなお店には行かないんだろうな、と思う。もしかしたら本を片手に嬉々としてまわっちゃうのかもしれないけど‥‥いや、車で遠くまで移動してるみたいなので、現実的に短期間の旅行で回るのはむずかしそう。

-■ところでもう何年もブログを見ていないけれど、岡本仁はいつまでポラロイドを使っていたのかな。ポラロイドの替わりに6×6のカメラを買おうと恵比寿の中古カメラ屋さんに行ったりしていた記憶もありつつ、最終的にはiPhoneのカメラでいいや、ってことになったような気がする。そういえばそれに影響されてikontaを買ったので、2010年くらいまではポラロイドだったということか。

■前回のおニャン子&1985年特集に続いて、その翌週はレアグルーヴの新世界、というアニソンのイベント、そして昭和サイケ歌謡大全と歌謡曲のイベントに続けて行ったせいで、なんとなく自分の中でも歌謡曲ブームになっています。といっても、CD買うついでにちょっとシングルを買うくらいでですけど。あとは前から持っていたシングルを聴きかえしたりしてる程度。歌謡曲のシングル盤をそんなに持っているわけではないので、100~300円くらいのセールの箱をチェックするだけでもけっこう楽しめます。ハードオフとかに行ってがっつりレコードをチェックしたい気もするけれど、歩いて3分のところにあるハードオフさえも行ける暇はなし、ですね。まぁものすごく行きたいわけでもないんですけどね。

-■また歌謡曲を聴きかえして思うのは、結局のところ自分は60年代のポップスやオールディーズをベースにした歌謡曲が好きたのだなということですね。端的に言っちゃうと、大滝詠一的なもの、ってことになっちゃうんですけどね。あと、杉真理とか。恥ずかしいので具体的に歌手の名前や曲名を出しませんけど。そう考えると、今までなんとなく聴かないままでいたザ・グッバイも聴いてみるべきなのかなと思ったりもする。
ただ歌謡曲を聴き続けると自分の中の線引きがずれる、ってのがありますね。自分の中では歌謡曲ってフェイクのおもしろさなんですよ。なので、直接的な引用あるなしに限らず洋楽がベースになっているものが好きだし、その解釈の仕方におもしろみを感じているので、聴き続けるとフェイクのフェイク、フェイクのフェイクのフェイク‥‥とエスカレーションしてしまって、「これってほんとにいいの?」と自問自答してしまう瞬間が訪れてしまうのです。そこを思いっきりエスカレーションすると、新しい価値観が生まれたりするんでしょうか。まぁ自分は性格的にそこまで行く前に気が変わって、ほかの音楽聴いてるんでしょうけど。

「文士の風貌」-井伏鱒二-

■1991年没後すぐに刊行された全集の月報や追悼文などをまとめた本。ほかの随筆でよく登場するする親しかった作家もいるし、会ったことのない、もしくは1回だけパーティ会場などで見た、というような作家も出てくる。前者はもちろん、後者に対しても、わずかな接点をたどりよせるように律儀に書いていて、それはそれで興味深かったりすのは、井伏鱒二の観察眼の鋭さと、それを伝える文章の巧みさなんだと思う。もっとも、時折、もっと適任がいるはずなのに、編集者はなんでこの原稿を井伏鱒二に頼んでいるのだろう?という疑問も浮かんでしまう事実だけど。まぁ1980年代後半にもなると、井伏鱒二しか当時を知らないということがあったのかもしれない。

■週末は泥酔ファンクラブへ。ファブリカが閉店してしまうようで、ファブリカで行われるのは今回が最後、そしてなぜかファブリカでの泥酔ファンクラブ最後のテーマは、「1985年&おニャン子クラブ結成30周年記念ナイト」。どういうイベントなんだっていう‥‥。しかもゲストDJは「FABULOUS PARADE」や「Mods Mayday」など、60’sのイベントでクールにレア盤をスピンしているmorrieさん!いや、初めてmorrieさんDJを聞いたのがいつだったかもう思い出せないけど、多分、もう15年くらい経つと思うんだけど、おニャン子クラブの曲(実際は河合その子)をかけるmorrieさんを見ることがあるとは!しかも胸には当時の河合その子のメンバーズカードをつけて、終始笑顔でレコードをかけるmorrieさん。いやー泥酔ファンクラブすごいわ。泥酔ファンクラブでしか見れないですよー

-■個人的には、「夕焼けニャンニャン」が始まった1985年は、すでに高校生だったし、最初の頃は部活もしていたので、当然、まっすぐ家に帰って見れるわけもなく、一回も見たことがない。思い返してみると、高校一年の夏休みに学校でキャンプに行ったときに、女子が「セーラ-服を脱がさないで」を出し物でやって、その時初めて「夕焼けニャンニャン」という番組を知ったくらい。おニャン子クラブも含めて各ユニット、ソロの曲もほとんど知らないです。渡辺満理奈でさえちゃんと聴いたのが外間隆がプロデュースした「虹の少年」だったりする。なので、たくさんの人でごったがえすファブリカの店内で、イントロが流れただけで盛り上がるメンバーにはまったくついていけず。しばらく聴いてサビ入ったところで、なんとなくわかる曲がちょっと、という感じでしたが、なんとなくつられて気分が盛り上がってしまう。ほかのアイドルの曲も含めて当時から後藤次利のアレンジがいまいち好きになれなかったのだけれど、今聴くとまぁまぁ聴けるような気もするし、単に盛り上がって、冷静に判断できなくなってるだけ、という気もするという状況でした。

■でもよく考えたら、おニャン子クラブが活動してたのって3年くらいなわけで、共有できる人ってほんと限られていて、今でいうとわたしくらいが上限でその下の世代5年、6年くらいですよね。で、まぁ来ていたお客さんもそのくらいの歳で、だから盛り上がるんだろうけど、その下の世代の人も巻き込んで盛り上げられるというのは、やはり選曲がうまいんだろうな、と思う。もちろんヒット曲が中心なのですが、そのあいだに今でも聴けるような音の曲をうまくまぜてて、知らない人でも聴きどころ、盛り上げどころをうまく作ってる。いや、何度も言ってますが、おニャン子クラブ関連の曲をちゃんと聴くのは初めてなんで、全部ヒット曲だったのかもしれませんが‥‥
そんな盛り上がりを見せていたファブリカ最後の泥酔ファンクラブでしたが、漣くんの体調があまりよくないこともあって、早めに帰らせていただきました。皆さまお疲れさまでした。

■って、この話題でこんなに書くつもりはなかったのだった‥‥