◆ムンカッチ展とデパートの美術館についての雑感
「写真術」のインタビューで、ブレッソンをはじめとした何人かの写真家が、ムンカッチのファッション写真に衝撃を受けたと話しているのを読んで、あらためてムンカッチの写真集が欲しくなった次第。いつかちゃんとした写真集を買おうと思いつつも手に入れるきっかけがなくて、1994年に小田急美術館でやっていた「マーティン・ムンカッチ展」の図録だけしか持ってなかったのです。
そういえば、デパートの美術館って一時期たくさんあったけれど、今はほとんどなくなってしまって、今、東京で残ってるのってパルコミュージアムとラフォーレミュージアム、Bunkamuraザ・ミュージアム、サントリー美術館くらいになってしまってるみたい。昔はデパート美術館でいろいろな企画展をやっていて、あまり美術などに詳しくないわたしみたいな人にとってはいい入り口だったんですけどね。
今、普通の美術館でもいい企画展をやっているのは、ある意味、昔デパート美術館がやっていた企画展の役割と引き継いでより深く・より拡大したものなんだと思ったりします。まぁデパート美術館の役割を普通の美術館が引き継ぐという言い方ものどうかと思いますが。でも、先日まで府中市美術館でやっていた石子順造の展覧会や、金沢21世紀美術館で始まった雑誌「オリーブ」の展覧会などは20年前ならデパート美術館でやっていたような企画だと思うんですよ。
そして、きちんとした確証もないし調べてもいないのですが、その辺の分岐点ってなんとなく2001年、グルーヴィジョンズがディレクションを担当した東京都美術館での「イームズ・デザイン展」だったのではないでしょうか。イームズ展は、当時の東京都美術館としては企画自体も展示方法も宣伝の仕方もかなりポップな感じでしたし、見に来る人も多くて入場制限ができるほどでしたよね。で、一方でデパート美術館のほうは、その前後、1999年に西武・セゾン美術館、新宿・三越美術館、2001年に小田急美術館、2002年に伊勢丹美術館が相次いで閉館してるという‥‥。
あと、デパート美術館についてちょっと調べていて驚いたのは、横浜のそごう美術館がまだやっていたこと。今年に入って八王子店が閉店したりしてるそごうだけれど、横浜の別格ぶりはすごい。ちなみにそごう美術館では、3月20日まで「京都細見美術館展Part1・都の遊び・王朝の美」、3月29日からは「宮沢賢治・詩と絵の宇宙・雨ニモマケズの心」という展覧会をやってます。
さて、話を戻してマーティン・ムンカッチについて一応書いておくと、ムンカッチは、1896年、ハンガリー(現在はルーマニア領だそう)生まれで、1930年代~1940年代にかけて雑誌「八一パース・バザー」の専属カメラマンとして活躍した写真家です。
一時期はアメリカで最も高額のギャラを得る写真家といわれるくらいだったのですが、戦後は、体を壊して療養したり、ファッション写真のトレンドやモノクロからカラーという写真技術の変化に対応した写真を撮ることができす、晩年はその財産を使い果たし、失意のまま亡くなったようです。
もともとヨーロッパにいた頃に撮っていたスポーツ写真や報道写真の手法を取り入れ、それまでスタジオ撮影が主だったファッション写真を野外で撮影したり、単にポーズをとるのではなく、動きのある躍動感あふれる写真が特徴。ただ今見ると、スタジオでありがちなモデルを引き立たせるための過剰な演出があるわけではないし、動きと言ってもモデル(と服)という素材を最大に活かすために動きを加えているだけで、ある意味シンプルと言えるかもしれません。モノクロですしね。