「写真術―21人の巨匠」-ポール・ヒル、トーマス・クーパー-

◆昔は写真家の情報言えば「スタジオヴォイス」の“写真集の現在”特集でした。
今年に入って写真に関する本しか読んでないです‥‥。基本的には写真の評論家の本じゃなくて、写真家、もしくは本業が写真とは関係ない人の本を選んでてて、カメラの紹介や、写真の撮り方といった本もなし。いつまで続くかわからないけれど、リストアップした本がなんとなく途切れずに古本で買えているあいだは写真の本ばかり読む感じになりそうです。
しかし、荒木経惟と森山大道は写真集以外の本もたくさん出てますねぇ。

さて、この本は、マン・レイ、ジャック=アンリ・ラルティーグ、アンドレ・ケルテス、プラッサイ、口ベール・ドアノー、アンリ・カルティエ=プレッソン、セシル・ビートン、ジョージ・ロジャー、ヘルベルト・バイヤー、ヘンリー・ホームズ・スミス、ポール・ストランド、ヘルムート・ゲルンシャイム、ユージン・スミス、エリオット・ポーター、イモジェン・カニンガム、ローラー・ギルビン、マヌエル・アルバレス・プラボ、ブレット・ウェストン、ウィン・バロック、マイナー・ホワイト、ボーモント・ニューホールという21人の写真家へのインタビュー集。
サブタイトルが「21人の巨匠」となっているようにインタビューされているのは20世紀を代表する写真の大家ばかり。インタビュー自体は1975年前後に行われているのですが、その数年後に亡くなっている写真家も多いです。もちろんわたしは全員の名前と作品が一致するわけもないので、読みながらネットで作品を調べたりしてました。写真家の名前を検索するだけで簡単に略歴がわかったり、作品の画像が見られたり、気に入ったらついでにアマゾンで買えちゃうなんて便利な世の中なんだ、などと思ったりもするけれど、そんな世の中になって10年以上経ってるわけで‥‥いやはや。昔だったら、この本を読みすすめるためにもう一冊、写真史みたいな本を副読本として併読する必要があったと思うし、買うんだったらリプロとか青山ブックセンター、嶋田洋書、あとは専門店といった感じで限られてたもんなあ。しかも本の値段も高かった‥‥。

インタビューの内容としては、写真との出会いから経歴、影響を受けた人、自分の作品についてや手法、写真に対しての考え方、同時代の写真家や芸術家たちとのかかわり‥‥など、かなりオーソドックスにその写真家の経歴や考え方を聞いているので、資料性はかなり高いんじゃないでしょうか。今、写真家と作品が結びついてなくても、いつかその写真家の写真集を買ったときなどに読み返せばいいかなという気持ちもちょっとあり。逆にこれを読んで、プレッソンやラルティーグ、ブラッサイなど自分が今持っている写真集をまた見返したりね。まぁ、あまり作品にこだわる必要もなくて、各人の写真や芸術に関する考え方を読んでいるだけでもいろいろ考えさせられます。

それから20世紀の写真が、現像やプリントといった技術の習得という職人的な側面を持ちつつ、その上でいかに写真を芸術として高めるかということをどの写真家も考えていることに、あらためて感銘を受けました。最近は、写真を見る場合でも、写真を撮ることが手軽になったせいもあり、その作品を「いいな」程度にしか考えていなくて、芸術という観点で見ることが少なくなってるような気がするし、そんな気持ちにさせるような作品にもあんまり出会ってないかも。まぁ写真だけではなく芸術と呼ばれていたすべての分野において、作る方も見る方もカジュアルになってるのかもしれませんけどね。