「更紗の絵」-小沼丹-

◆12月2日ははけのおいしい朝市に出店させていただきます!
戦後間もない時期、義父によって郊外に再建された学校の主事を引き受け、校舎の一部を住居として暮らす若い教師の復興の日々を描いた作品。
学校での生徒や教師のいざこざや、同時に週に数日働いている旧軍需工場でのトラブルに巻き込まれたり、体を壊して入院したりとさまざまな事件がおきていくものの全体としてはのどかな雰囲気で主人公の日々がつづられていきます。そんな中で戦争の傷あとのエピソードが、何の前ぶれもなくふっと淡々した筆致で挟まれるという小沼丹らしい作品になっています。
ドラマ化したらおもしろくなるんじゃないかと思いますが、ストーリー的に演出家を選びそうな気もします。

ストーリーの軸は小沼丹の経験をもとにしており、地名などは書かれていないのですが、主人公が勤める中学校、旧軍需工場、そして飲み屋などはモデルとなっているものが、小沼丹が住んでいた荻窪周辺にそれぞれあるようです。当然、今ではすでにない場所ばかりなのが残念。建物とかはなくてもその名残と思われるものが何年くらい前まで残っていたのだろうか。

-いよいよ、今週末は東京蚤の市。今のところ天気はよさそうですが、今日あたりからいきなり寒くなってしまい、当日の予想最高気温も13度!来場の際は暖かいかっこうで来てくださいね。わたしも防寒をしっかりして風邪をひかないようにします~(ついにヒートテックを買うべきか、なんて思ってます)
今週はサイトで本の更新はしないで蚤の市に向けていろいろ準備をしようと思っているのですが、気がつけば12時近くなっていたりしてあまり進まなそうな予感(今の話ね)。それでも週末は蚤の市に持って行く用の本を入れるボックスを作りました。ほんと西荻とか福生とかのアンティークショップをまわってイベント用の本棚を買いたかったのですが、そんな時間も作れず。前回も言ってましたが、もう当日、どこかの古道具屋さんでいい本棚があったら買ってそのままディスプレイに使っちゃおうかと‥‥。

続いて次の週、12月2日は、はけのおいしい朝市に出店させていただきます。
はけのおいしい朝市は、武蔵小金井にあるdogdeco HOME、中村文具店を会場に、はけ(国分寺崖の周りのお店が毎月第一日曜日に行っている朝市。カヌー犬ブックスは前回と同じく、第二会場の中村具店での出店となります。通常はdogdeco HOMEのほうにお店を出している出茶屋やachipan designも今回は中村文具店に降りてきてくれますので、おいしいコーヒーやパンを食べながら、本をめくっていただけれぱと思ってます。

開催の概要および出店されるお店などはこちらになります~

第40回 はけのおいしい朝市
●【第一会場】dogdecoHOME
開催時間:9:00~13:00
出店:
dogdeco HOME、PETAL.、YUZURIHA、SPOONFUL、foodmood【ゲスト】、kopi panas(コピパナス)【ゲスト】、地域雑誌『き・まま』【ゲスト】
●【第二会場】中村文具店
開催時間:9:00~13:00
出店:
中村文具店、出茶屋、achipan design、カヌー犬ブックス【ゲスト】

 →詳細ははけのおいしい朝市ブログで!

「洋食屋から歩いて5分」-片岡義男-

◆今年ははらっぱ祭に2日とも行ってしまいました
本のタイトルを見て単純に食べものエッセイかと思って購入してしまった本。三人連れで洋食屋に入りまずはビールそして揚げものばかりの食事、そしてコーヒーを飲んだ後、近くの古本屋に行くという内容でタイトルにもなっている「洋食屋から歩いて5分で古本屋」をはじめ、「トゥナ・サンドイッチにコーヒー、そしてエルヴィスの歌」「彼女と別れて銭湯のあと餃子」「栗きんとんと蒲鉾のあいだ」「かき氷は食べましたか」など、食べものについて書かれたものが多く収録されていて、一応、食べものがテーマになっているようです。ただほかの作家の食べもの随筆のように、食べものに対する直接的な言及で終わるものは少なく、統一された感じではないかな。そんな感じも片岡義男っぽいといえるのかも。なぜか妙齢の女性と喫茶店で打ち合わせをしたり議論(?)したりするシーンが何度も描かれていたりしてその様子がちょっとおかしい。

これを読んだほとんどの人の心に残るだろうと思われるのは、「コーヒーに向かってまっ逆さま」。昼くらいに新宿に行ったら偶然田中小実昌に会い、そこから用事があるという船橋の劇場に一緒に行きストリップショーをの舞台裏から見た後、船橋の寿司屋で一杯。夜になってまた新宿に戻ってきて、一晩中、歌舞伎町やゴールデン街の飲み屋をはしごして、始発の電車で家に帰るまでが描かれています。-次から次へを場所や酒場をはしごしていくコミマサさんのテンポと、コミマサさんと片岡義男のユーモアたっぷりのやり取りがよくてこれを読むだけでもこの本を買ってよかったと思えるほどです(なんていうとちょっとおおげさか?)。

11月10日、11日ははらっぱ祭。今年は、去年も一緒に行った友だちをはじめ、はけのおいしい朝市に参加している人や、漣くんが来年から行く幼稚園で面接の時などに会ったという人などたくさんの人たちと会場で会って話したりして、子どもがいるといろいろ近所のサークルも広がっていくものだなぁと実感しました。これから子どもたちが幼稚園、小学校と成長していくとまた広がっていくんでしょうね。あーいい意味でも悪い意味でもね‥‥今はけっこういい広がり方をしてるような気がしてます。

-それからこれまではいろんなバンドの演奏をBGMにしながら、ごはんを食べたりビールを飲んだりおやつを食べたりしつつ、友だちと話して、ちょっとくじら山に登って遊ぶ、くらいだったのですが、漣くんもちょっと大きくなってきて、子どもためのイベントにちょっと参加したり、原っぱで遊ぶにしてもただ走り回るだけじゃなくなってきて、よりはらっぱ祭を楽しめるようになってきたのかな、なんて思ってます。
この流れで漣くんや暁くんがヒッピーみたいになったりして‥‥

残念だったのは楽しみにしていた東小金井のインド富士の出店が今年はなかったことかな。子連れでお店に行けないので、はらっぱ祭でインド富士のカレーを食べるのをいつもたのしみにしてたんですけどね~。

「わが交遊録」-戸板康ニ-

◆11月は4連休でスタート。暁くんが熱出したり、「石田倉庫のアートな2日間」へ行ってみたり。
ツイッターをチェックしたらこの本を読み終えたのは9月14日でした‥‥。本を読み終わってから一週間以内に雑記を書くというサイクルをちゃんと確立しなくては。いや、ほんと2か月とか経っちゃうと内容忘れちゃいいますよ。ということで、ツイッターでつぶやいたことをコピペ。

「柳田國男から内田百けん、久保田万太郎、志賀直哉といった先人と池田弥三郎、串田孫一、小田島雄志、黒柳徹子などの友人との二つに分けて作者の交遊が書かれている。江戸川乱歩のところで坂本一亀が出てきて「あっ」と思ったりした。」

ということでした。ちなみに坂本一亀は坂本龍一のお父さんです。大まかに分けると、慶応大学関係、演劇関係、映画・テレビ関係の3つに分けられるのかなと思う。個人的にはやはり演劇関係はよくわかんないですね。ほかにも意外なところで花森安治や山口瞳、黒柳徹子なども登場します。

交友録は、逆に取り上げられている人を支点としたアンソロジィ、例えば久保田万太郎について書いている随筆を集めたものなど、があってもおもしろいと思うのだけれど、いろいろと難しそう~あと書いている人と書かれている人の随筆が交互に並んでたりとか。そういうのは電子書籍になったら自分で勝手に作品の順番を組み直したりして楽しめるのかな。まぁ無理か。

話かわって、10月から祭日が土曜になったときは、その前日の金曜を会社のお休みをする、ということになったので(わたし個人のローカルルールではないですよ)、ついでに5日を有休にして11月は4連休でスタート。
有休もまだかなり残ってるので地道に消化しつつ、まだそれほど寒くなってないこの時期にいろいろでかけたいなぁと思っていたら、暁くんが熱を出したりして、けっきょく家ににいることが多くなってしまいました。
しかし、暁くんは1歳1か月にして今回はじめて病気で病院に行くというくらい丈夫な子で、親はかなり楽させてもらってるので文句は言えません(別に言う気もないですけどね)。

で、わりとミオ犬と漣くんが出かけたりしたので、暁くんとうちで留守番してることが多かったのですが、よく考えてみたら、漣くんの時にくらべて暁くんと一緒に遊んだり面倒みたりってあんまりしてないな一と。役割分担として休日とかも漣くんをわたしが、暁くんをミオ犬が、という感じになってしまうのは仕方ないのですが、そんなんでいいのだろうか?あと漣くんの時は1歳になる前くらいから赤ちゃん用の絵本とか読んで聞かせてた気ががするけど、それもあんまりないかも‥‥などなど。ちょっと反省したりしてました。

4日は、暁くんの熱が下がったこともあって、「石田倉庫のアートな2日間」へ。石田倉庫は、立川と西立川の間にある石田産業という会社の倉庫で、そのいくつかを家具工房・陶芸家・金属工芸家などの作家がアトリエとして使っています。「石田倉庫のアートな2日間」は、石田倉庫のメンバーのアトリエ公開・作品展示をはじめ、ワークショッブなどの企画や飲食店などの模擬店が出たり(倉庫のオーナーの石田さんも焼鳥屋さんを出してました)と美大の学園祭のようなイベントでした。

前に「みんな丘へ!」というイベントを一緒にやったことがある関田くんが、ここをアトリエとして使っていて、イベントでも展示やアトリエツアーの案内をしていたのですが、ほかにも「みんな丘へ!」のメンバーが、友だちとか家族と総動員でカレー屋さん(ラマパコス)を出していて、わたしとしてはなんとなく規模が大きくなった「みんあな丘へ!」の雰囲気もあったりして楽しかったです。
しかし「みんな丘へ!」をセプチマでやってからもう2年ですもんね。あのときはまだ漣くんが今の暁くんぐらいだったんですよね~

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「石田倉庫のアートな2日間」


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marumiyaの厚揚げ麻婆丼とラマパコスのタンドリーチキン


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服や靴をペンキだらけにしながらライブペイントに夢中の漣くん

「花森安治のデザイン」-暮しの手帖社、花森安治一

◆11/24、25に行われる「第二回東京蚤の市」に出店します。
去年、花森安治生誕100年記念として出た「暮しの手帖」の表紙原画などを掲載したイラスト集。「の手帖」や花森安治の関連の本は、暮しの手帖社からの復刊も含めて、あいかわらず定期的に出版さいて、人気が高いんだろうなと思う。
ただ割と廉価版(というとなんですが)が多いなという気はちょっとしちゃってますね。同時期に出た「花森安治の仕事」も元は函入りの本だったし、大村しげや沢村貞子の本はソフトカバーだし、「すてきなあなたに」や「エプロンメモ」はよりぬき集だし‥‥。この本も、花森安治の仕事をまとめるという意味でもう少し大きな版でハードカバーとかにして値段を上げても買う人は多いんじゃないかと思うんだけどどうなんだだろか?前に「暮しの手帖」の別冊で「保存版III 花森安治」も出てるわけですし。なんてことを書いているわたしはこれを古本で買ってますけどね(まあ2冊目なんで)。戯文集も3巻出てて読みたいと思ってるんですが、そっちは逆に単行本で1冊2600もするんですよねえ~(身勝手な苦笑い)

さて、11月は、今年5月に引き続いて手紙社さんが主宰する「東京蚤の市」に出店します。
開催日は11月24日、25日。場所は一回目と同じく調布にある京王閣です。先日から東京蚤の市のサイトで出店するお店の紹介が始まっていて、今回も素敵なお店ばかりでいろんな意味でドキドキしてます。今回は少しはゆっくりお店をまわったりできる予定なのでほんとに楽しみ!時期的にちょっと寒い感じになっちゃうかもしれませんが、また天候に恵まれて一日のんびり楽しめるイベントになればいいなあと思ってます。
カヌー犬ブックスはあいかわらず料理本や食べもの随筆などを前回以上たくさん持っていきますのでよろしくお願いします。

 第2回東京蚤の市概要
 日程:11月24日(土)、25日(日)
 時間:10:00~16:00
 開催場所:東京オーヴァル京王閣(東京都調布市多摩川4-31-1)
 入場料:300円(ただし小学生までは無料)
 東京蚤の市のサイト:http://tokyonominoichi.com/

「わが師、わが友」-山口瞳-

◆山下達郎のシアターライブを見てきました
山口瞳のエッセイは必勝テーマというぺき、これについて書いたらほぽ100%おもしろいというテーマがいくつか存在していて、これもその必勝テーマの一つ。その延長として追悼文があるんじゃないか。

高橋義孝、吉野秀雄といった先生や梶山季之、開高健といった仲間、戸板康二や高見順、池波正太郎といった先輩、そして国立でどの人も個性的でうちに何かをもっていてスパラシイ。そうしたことを何気ないエピソードを紹介ながらわかりやすい短い文章で断定してしていくので、読んでいるとものすごく納得させられてしまいます。

ただふと冷静になって考えてみると、その紹介されているエピソードと山口瞳の結論が微妙にかみ合ってないような気がしたり、そもそももしかして何の根拠もなく言ってません?みたいなところもある。それを感じさせずにスムーズに読ませてかつ納得させられてしまうところが、山口瞳の真骨頂なのだろう。なので、取り上げられている人がほんとうに山口瞳の言うような人だったのか、100%信じられないところもあるのだけれど、そういったことを含めて山口瞳の“芸”を堪能できます。

前回、映画もぜんぜん見なくなってしまって久しい、なんて書きましたが、すっかり諦めていた「山下達郎 シアターライブ」が、連休中に立川で上映されるというので、4年ぶりくらいに映画館で映画を見てきました(あ、このあいだ調布でやってたキンダー・フィルム・フェスティバルで「機関車トーマス」とか見たか)。

前の方かつ隅という決してよくはない席だったのですが、1時間半どっぷりと達郎のライブを堪能。山下達郎の音楽を初めて聞いて30年ちょっと、もっとがんぱってチケットとってライブに行っておけばよかったと激しく後悔してます。1984年から2012年までのライブがつなぎ合わせれているのですが、基本的な演奏スタイルは変わらないし、今でも声が出てるし、髪型以外の達郎の容貌もあまり変わってないし(長さは変わってるけど薄くなっているという感じはない!)、ステージセットのコンセプトも同じだし、まったく違和感がないのがすごい。

ステージ上を走り回ったり、派手な演出とかライティングがあるわけでもなく、ただただ歌と演奏を聴かせるだけのライブ。山下達郎も含めてメンバーも楽しそうに楽器を演奏しているけれど、目は決して笑ってないというね。ミュージシャンがわりと狭い範囲で固まっているので、じつくり演奏する様子を見ることができるのがいい。山下達郎一人を目で追いかけても演奏中の細かいところを見落としたりしちゃうのに、そこに入ってくるパックのミュージシャンも演奏も見なくちゃいけないし、一回見ただけでは味わえないものがたくさんあります。実際ツイッターとかを見ていると何度も観に行っている人もいて、その気持ちがよくわかりますね。

基本的にはレコードのものを踏襲したアレンジになっていて、ライブ用に大きく変えてないところもこのライブの演奏のすごさを際立たせていると思います。そしてときおりユーモアあふれる音楽的な演出になんとなくソウルミュージックからの影響を感じたりしました(といってもソウルのミュージシャンのライブとか見たことないけど)。

しかしこれ見ちゃったらぜったい次は生でライブを見たくなるはず。次回のツアーはまたチケットが取りにくくなっちゃうんだろうなあ。ちょっとがんばってみようかな。

「銀色の鈴」-小沼丹-

◆連休中に行った展覧会をいくつか
前回に続いて小沼丹も出たらとりあえず買っておく系。今年に入ってもう一冊「更紗の絵」という本も出てるのでそちらも買っておかねば‥‥。講談社文芸文庫がそういう位置づけになりつつある今日この頃です。でも小沼丹は、老後の楽しみにしている全集はまだまだ読めないし、昔の単行本も高くて買えないので(昔よりも若干安くなってきてるような気も‥‥)、講談社文芸文庫から新しい本(?)が出るのはありがたい。意外と文芸文庫から小沼丹の本出てるんですよね。しかもあまり絶版になってない。(しかし7冊全部買うと9167円!)

■講談社文芸文庫から出ている小沼丹の本
 「銀色の鈴」
 「更紗の絵」
 「村のエトランジェ」
 「懐中時計」
 「小さな手袋」
 「埴輪の馬」
 「椋鳥日記」
 あと創元推理文庫から「黒いハンカチ」という探偵小説も出ています。

さて、この本は、戦中に疎開先での教員体験をユーモラスに描いた大寺さんものの「古い編上靴」、信州に別荘を持った友人を訪ねる「山のある風景」、戦前の良き時代の交友を語る「昔の仲間」、こどもの頃に定期的に訪ねた逗子の伯母の別荘でのできごとを語りつつ、伯母の家の凋落に時代の変遷を重ねる「小径」など7篇が収録されています。

どれも淡々とした文体でつづられた穏やかないい作品なのですが、なんといっても表題になっている「銀色の鈴」がいい。前妻の突然の死から再婚するまでを描いていて、自身の経験をもとにしているのにもかかわらず心情の告白するわけでもなく、娘たちとの葛藤があるわけでもなく、あくまでも普通の生活としての娘さんや飲み屋のおかみさん、作家仲間たちとのやりとりがあって、その間にあっさりとした表現で主人公の気持ちがつづられてます。そんな日々の表層の部分だけを切り取って巧みにっないでるだけなのに、行間から深い感情がじわあっと浮き上がってきます。この大寺さんという視点の人物を作ったことで、「いろんな感情が底に沈殿した後の上澄みのようなところが書」けたと小沼丹自身も言っていたようです。

ちなみに大寺さんものは以下の12篇。全部収録した文庫をどこかで出してくれないものかな。文芸文庫が難しいならちくま文庫でお願いします!(ちくま文庫のほうがあってる気がしますね)

■大寺さんもの
 「黒と白の猫」
 「タロオ」
 「蝉の脱殻」
 「揺り椅子」
 「古い編上靴」
 「銀色の鈴」
 「藁屋根」
 「眼鏡」
 「沈丁花」
 「鳥打帽」
 「入院」
 「ゴムの木」

さて、先週からミオ犬と子どもたちが長崎に帰っていたので、連休はなんとなく美術館巡り。去年もそうだったけれど、映画もぜんぜん見なくなってしまって久しいし、行きたくなるようなライブとかイベントがタイミングよく帰省中にあるということもそんなにないし、ついでに古本屋とかCDショップをまわりつつ行くとことと言えばまぁ美術館ぐらいしかないんですよね。
そんなわけで見に行った展覧会についてちょっとずつ。

■「操上和美写真展:時のポートレイト」
展覧会といえばまず東京都写真美術館を調べてしまう。でも操上和美についてはまったく知らなくて、説明によると「70年代から、日産『フェアレディZ』、サントリー『オールド』、ブリヂストン『レグノ』等のCMや、ロバート・フランク、笠智衆、キース・リチャーズ等のポートレイト」を手掛けているとのことで、最初はあんまり興味もなかったのですが、調べていくうちに初期の頃から「Switch」の表紙を手掛けていることを知り、興味がわいてきた次第。
実際にはコマーシャルフォトが展示されているわけではなく、おもちゃのカメラで撮影されたモノクロ写真や、故郷である北海道への旅をまとめたシリーズ、日常的に撮りためたスナップショットと、3つのシリーズの写真作品が展示されています。
特におもちゃカメラで撮られた「陽と骨」シリーズの作品は、元々が粗いにもかかわらず、それをさらに引き伸ばしていて、ざらざらとした質感や傷が生々しくてよかったですね。結局、モノクロでもカラーでも作品の中に詰め込まれた情報量が削られたものが好きなんだなあ~

■「大正・昭和のグラフィックデザイン小村雪岱展」
小村雪岱は原田治の「ぼくの美術帖」で知った画家。この展覧会では、泉鏡花などの本の装幀や舞台装置の原画などが展示されてます。描かれている内容は、女性の雰囲気も含めて江戸情緒にあふれているのですが、全体から受ける印象は洗練されていてその折衷がすばらしい。少女趣味っぽいところや色気にはしることもなく描いている対象を冷静に眺めてるところがいいな、と。実際は気に入った女子をモデルにして描いてるらしいので単にイメージなのかもしれないですけどね。
それにしても100年近く前に刊行された本も展示されているのですが、どれも状態がよくてびっくりです。個人蔵となっていたけれど、どんなコレクターが所有しているのだろうか。かなり気になります。あと今出ている本が100年後にこんな風に展示されるようなことがあるのかなぁ?ともちょっと思いましたね。電子書籍だから劣化せず100年後も今と同じ状態で見れるのか?しかし少なくとも紙の本は個人でもちゃんとすれば、100年保存できるかもしれないけど、100年後でもちゃんと起動するかたちでiPadを保存しておくのは無理だからねえ~

■「清方の美人画」
小村雪岱が鏡花の本の装幀を手掛ける前に、装幀を行っていたのが鏑木清方。芝木好子や戸板康二など最近読んだ本で続けてその名前が出てきていたりして気になってました。鎌倉に行ったときにちょっと時間が空いたので、いい機会と思い鏑木清方記念美術館に寄ってみることに。
ちょうど展示されていたのが、清方が鏡花をはじめとした挿絵画家として人気を得たあと、自由な画題で描きたいという思いから、日本画家に転身した後の時代の作品だったので、初心者としてはもう少しいろいろな面からこの画家の作品を見てみたいです。また機会があったらどこかの美術館に足を運んでみます。

■「芹沢銈介の作品と収集II 身にまとうよろこび」
去年から芹沢銈介の展覧会を見るのは3回目。今回は展覧会を見るというよりは、芹沢銈介美術館に行ってみたかっただけですね。実際、展示としては芹沢銈介の作品が半分、芹沢銈介が収集したアジアを中心とした着物や布が半分という感じでした。日本のものでは、影響を受けたと言われる沖縄のものがなかった気がしたけどなぜかな?
建物は建築家の白井晟一が設計したもので、建物の外の噴水と池、椿の緑、そしてそれを囲むような石の壁のコントラストとバランスがいい。そして建物の中は太い木の柱が多く使われていて、展示されている芹沢銈介の作品にマッチしていて、大胆に素材を使い分けている感じでした。

■「フィンランドのくらしとデザインームーミンが住む森の生活」展
こちらはついでに。見る前からわかっていましたが、ムーミンをはじめカイ・フランクの量産型食器、マリメッコのファブリック、アアルトの椅子や照明器具などについては、まとめた形で見るおもしろさはあったけれど、新鮮さはそれほどなかったです。それよりもフィンランドの自然を描いた絵画や彫刻、民族叙事詩「カレワラ」の挿絵原画など、前述のプロダクトデザインの土壌となった作品のほうがおもしろかったので、この辺の展示がもう少しあったらと思いました。(それだとキャッチーじゃなくなってしまい人が来なくなっちゃうのかもしれないけれど‥‥)

「聖ヨハネ病院にて・大懺悔」-上林暁-

◆9月29日は暁くん1歳の誕生日でした
収録されている作品がすでに読んだものばかり、というのは分かっていたけれど、とりあえず買っておく。しかし前に文芸文庫から出ていた「白い屋形船・ブロンズの首」と収録されている作品が10編中3編かぶっちゃってるってのはちょっとひどい(新潮社から出ている文庫とのかぶりも3編)。上林暁の本なんて全部で30冊くらいしかないのだから、全部、文庫化してくれればいいのに、って思ったりもしますが無理ですかね。
前回書いた山下達郎のベスト盤じゃないけれど、紙の本もあと数年くらいしか出すことができないかもしれないので、“出すなら今のうち”という気持ちで、編集者が出したいものをどんどん出版して欲しい(笑)。なんてことを古本屋がのんきに書いてていいのだろうか?

話がそれましたが、上林暁は夏葉社からもアンソロジーが出ているので、近いうちにそれも読むつもりです。文庫とはかぶっていないようだし、独自の切り口で選ばれた作品が収録されているみたいなので、楽しみ。でも、なんとなく選者の思い入れが、表紙の裏とかページの隙間とかからはみ出してきてちょっとつらいんじゃないかと思ったりもしてます。まぁ結局のところ本の値段が高いのでなかなか手が出ないだけなんですけどね。
あと、上林暁のアンソロジーと言えばちくま文庫から出てた「禁酒宣言」がよかった。ときどき読み返したいと思うけれど、本棚の奥のほうにあってなかなかとりだせないままになってます。

ちなみうちの子に暁とつけたのは、上林暁から、というわけではないです。まったくの偶然というわけではないですけど。

その暁くんも29日で1歳。去年、「生まれた~」という連絡を受けて、新幹線で長崎まで行ったときから1年。今ではもう歩き始めて、毎日少しずつ歩ける距離も長くなってるし、離乳食もだんだん普通の食べものに近付いてるし、赤ちゃんの一年は大きい。そして確実に前に進んでいく。

とは言っても、1歳の誕生日なんて、本人は何も分かってないし、おいしいものを食べられるわけでもないので、大人たちが単に「大きくなったねえ~」みたいな感じで盛り上がるのと、お母さん一年間お疲れさまでした、って感じになっちゃうんですけどね。ほかの人はどうしてるんでしょう?漣くんの時は長崎から義母が来ていたので、長崎のしきたりで大きなお餅を踏ませたりしてたけど、東京・神奈川はそういうのない気がしますね。あるのかな?
しかし先週はうちの親や妹が来てケーキを食べたり、当日は立川に出てキ八チでちょっとぜいたくなランチにしたりと、暁くんにまったく恩恵がなしの状態だったので、家族で食べるケーキくらいは暁くんも食べられるものにしようと、1歳から食べられるスポンジケーキのセットを購入。

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漣くん飾り付け中~!

甘いしふわふわしてるしおいしいかったのか、ろうそくを消して切り分けた瞬間から二人ともすごい勢いで食べ始め、ほぼ全部、二人で食べてしまうという結果に。こんなに食べさせていいのか?という気持ちもありつつ、誕生日だからということで‥‥。

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そして次の日、3人は羽田から長崎に旅立って行きました~長崎でも誕生日を祝ってもらうんでしょうねえ~

「パリの女」-アンドレ・モーロア、ニコ・ジェス-

◆明日は山下達郎の「サウンドクリエイターズファイル」の最終回
8月の終わりは、大滝詠一のポップス伝を聞いたり、小西康陽のこれからの人生を聞いたりしていた。ここ何十年もラジオなんてサンデーソングブックをたまに聞くくらいだったのに、iPhoneを使うようになってからよく聞くようになったのは、まあ不思議な感じ。録音できるアプリも入れちゃったので、単純作業な仕事をしながら何度もポップス伝聞いてしまいました。

9月は山下達郎がマンスリーで出ているクリエイターズファイルを録音して、通勤やカヌー犬ブックスの作業中に聞いてます。ベスト盤の発売に合わせて、35年のキャリアを振り返る内容で、初めて聞くエピソードも多く、おもしろい。エピソードとしては初期のほうがやっぱりおもしろいんだけど、けっこう知ってる話も多い。で、中期になると知らない内容が多くなってくるのは自分の思い入れの強さなのか、そもそもあまり語られていないのか、どっちなんだろう。そういう意味ではあまり期待していなかった今週末の後期も楽しみになってきてます。ちなみに第三回目のゲストは東山紀之です。

しかし山下達郎だけじゃなく、桑田佳祐とか松任谷由美とか、パッケージがなくなる前にあからさまにベスト盤で稼いでおこうというリリースが続いていてなんだかなあと思ってしまうね。ほんとはベスト盤で時間をつぶしてしまうのなら、ライブ盤とか企画ものを出してほしい。「オン・ザ・ストリートコーナー」はもう無理なのだろうか?

-このアンドレ・モーロアとニコ・ジェスの「パリの女」は、シュガーベイブの「songs」に描かれたイラストの元ネタの写真が収録されていることで有名な(?)本。元ネタというかまあそのままです。いや、よく考えたらバンドのデビューアルバムのジャケットでなんでこの写真をイラストにして使おうと思ったのかがなぞ。音を何度も聴いてるとジャケットと合っていると思ってくるんだけど、デビューアルバムぽいフレッシュなインパクトはないですよねぇ~
ちなみにこのイラストを描いたのは「ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY」と同じ金子辰也という人らしい。てっきりWORKSHOP MU!かと思ってました。というか、調べてみたらこの金子辰也って人、今ミリタリー系のプロモデラーで、TVチャンピオンでモデラー選手権でチャンピオンになったりしてるんですね。う~ん。

本の内容は、女学生、市場のご婦人、お針子、バレリーナ、女優・…など、1950年代のパリに生きた女の人を写したニコ・ジェスの写真に、アンドレ・モーロアのパリの女性に関する文章が添えられている。なぜ今になってこの本が再版されたのかわからない。まさか訳者が芥川賞を受賞した朝吹真理子のお母さんである朝吹登水子だから、というわけでもないだろう。

なんだかいろいろ不思議な本だ。

「暮しの手帖第4世紀59号」

◆月一ドライブ9月はこどもの国まで
辰己芳子や飛田和緒、野崎洋光、上田淳子、堀井和子、大川雅子、ホルトハウス房子、岡尾美代子‥‥といった料理研究家や料理上手な著名人39人の座右の料理本を紹介した「私の好きな料理本」というページにひかれて購入。ページ数はそれほど多くないけれど、みなさん素敵な本を紹介していて、いろいろな意味で見入ってしまいます。

料理本はヴィジュアルもきれいだし、昔の本はイラストなどもかわいいものが多いし、いろいろな人がおすすめの料理本を紹介する本があったらおもしろいと思うのですがどうなんでしょう。そんなに多くの本を載せなくてもいいし、本の厚さも薄くていいのでオールカラーで、できればハードカバーだとちょっとうれしい。和書と洋書の2部構成になっていて、それぞれ数ページずつちょっとしたテーマにあった本を紹介して、そのあいだに料理家を紹介するコラムや本を作ったときのエピソードが掲載されているとか‥‥などなど、と妄想。

さて、話が変わりますが、ここ10年間くらい車の運転をしない生活をしてきたのですが、子どもが二人いると車で移動できるほうが便利かなと思い、去年の9月にペーパードライバー講習を受けて車生活を復活させました。でも今のところは別に車を買う気(余裕?)もないので、また運転しない期間が長くならないように、月一くらいで車を借りて、練習がてらどこかに行くようにしています。

先月は逗子まで行ってbeach mufrinでごはんを食べたり、わかなぱんでパンを買ったりしました。ほんとは泳がなくても海に降りて砂浜でちょっと遊べたら、と思っていたのですが、beach muffinを出たらどしゃぶりになっていて、外に出られずちょっと残念な結果に。

-今月は、こどもの国へ行ってきました。特に理由もないんですが、車を借りた時に行こうと思っていたところがダメになったので、適当にはなれた場所で漣くんが遊べそうなところという感じですね。
こどもの国はわたしはまだ横浜に住んでいた頃に何回か行った記憶があるのですが、なんせ小学校上がる前のことなので、ポニーに乗ったというくらいでほかに何をしたという記憶はないです。あとはうちの親が留守の間に近所の友だちの親につれてもらって行って帰ってきたら大騒ぎになってたってことかな。もう40年近くのことなので記憶があったとしても今でも同じようなものがあるかどうかはわかんないすけどね。

そんな記憶があやふやなこどもの国ですが、改めて行ってみるとけっこう広い。9月とはいえ、30度を超えている中、歩きまわるのはちょっと辛かったです。そんなわけで、今回は牧場を中心に遊具で遊んだり蒸気機関車の形をした園内バスに乗ったりするだけでなんとなく親が疲れてしまった次第。
-でも動物園はそれほど広くはないのですが、実際に柵の中に入って触れるのがよかったです。こわがりな漣くんも動物に関してはあまりこわがらずに、うさぎや鹿の赤ちゃんとかを触ったりしてましたしね。

ちょっとした乗り物や水遊び、バーベキュー、ボート、冬ならスケート場など、園内でできることがたくさんあるので目的を絞って遊びに行くか、レンタサイクルもあるので、自転車に乗れるようになってから行くといろいろなところに移動できて楽しいのかもしれません。

帰りは、こどもの国を出たすぐ近くにあるコメダ珈琲でお茶。シロノワールとクリームソーダで初コメダ!って別に元の会社の本社が名古屋になったからといってコメダに思い入れがあるわけではないですけど。でもまたこどもの国に行くことがあったら、コメダでお昼ごはん食べるかも?

「d design travel TOKYO」

◆ナガオカケンメイ×嶋浩一郎@B&B
もう先週の話になってしまいますが、ナガオカケンメイと嶋浩一郎のトークショーを聞きに下北のB&Bに行ってきました。B&Bはビール片手に本が楽しめて、夜になると毎日さまざまなイベントが行わるという7月に開店したばかりの本屋さん。もちろん行くのは初めてなんですが、ちょっと古めのシンプルな本棚やテーブル、イスなどが置かれた落ち着いた店内で、棚ごとにテーマに合わせた本や文房具などが並べてれているという素敵なお店でした。まぁイベントの時間なので人もいっぱいしたし、トークショー用のイスが並べられていたりして実際はゆっくり本を見るという感じではなかったんですけどね。

B&Bに関しては、トークショーで嶋浩一郎が、「本屋でビールを飲みたかった」ってことと、「街の本屋さん」ということをすごい強調していたけれど、こういう本屋さんが街の本屋さんとして機能するのって下北ならではなのかなって思います。街の雰囲気や集まってくる人の性質もそうですけど、大型の本屋さんも三省堂くらいしかないということも大きいのでは‥‥適当。

-さて、対談のほうは最近刊行された「d design travel TOKYO」で紹介されているお店や人に関する取材時のエピソードや、これまでに出た「d design travel」を含めた雑誌の作り方、取材方法などについての話、そしてこれからの予定などをナガオカケンメイが話す横で、その話題に関する小ネタや豆知識を、嶋浩一郎がちょこちょこと披露するという内容でなかなか楽しかったです。
ほんと、二人ともほんとうにいろいろなところに行っていて、かつ、たくさんの知り合いと交流し、豊富な知識を持っていて、ただ感服するのみです。なんかひさしぶりにパワーを持っている人の話を直接聞いた気がします。

実を言うと、行く前は本屋さんのイベントなんで2時間じゃなくて1時間くらいのカジュアルなものにして、チケットも1500円だとちょっと高いので800円くらいにしてもらえると会社帰りに気軽に行けていいんだけどなぁ、チケットが800円だったらビール3杯飲みますって、などと思っていたんですよ。
でもけっきょく、1時間じゃちょっと物足りない気分になるんじゃないというくらい2時間たっぷり話が聞いて楽しんだうえに、入り口でトークショーのテーマになっている「d design travel TOKYO」や資生堂パーラーから出ているソーダ水をもらい、料金的にもものすごく得した割には1杯しかビールを飲まなかったっていう‥‥。あぁぁ、次回行く時はもっと飲んで本も買って帰ります!