■堀江敏幸による初写真集。堀江敏幸は自分の本の装丁をしたりしているので、雰囲気としてはそれらと大きく変わらなくて、街の片隅の風景を中心に、家の窓や街角の広告、そして雑誌の1ページや切手といったものがモノクロのフィルムで撮られている。いや、フィルムかどうかわかりません。でもフィルムであってほしいです。勝手なイメージですけど、デジカメで撮ってモノクロに変換しました、なんて言われたらちょっと困惑しちゃいますね。
特に主張したり目を見張るような風景があったりするわけではなく、でも一見なんてことのない地味な風景からあれこれとイメージがわいてくるように感じるのは、堀江敏幸の小説や随筆と同じ。むしろ、小説や随筆を読んでいるからこそ、そういったイメージがわいてくるのかもしれませんが。そういった意味では、写真集ではあるけれど、いつもの堀江敏幸の本と変わらなくて、表現方法が変わっても表現している方向性は一貫しているなと思う。
■最近、通勤の行きはガールポップ、帰りは蓮沼執太の「メロディーズ」を聴くという毎日が続いている。去年のウワノソラ’67くらい聴きこみそうな勢いです。そんな勢いにのって渋谷のタワーレコードでやっているインストアライブに行ってきました。
整理券がなかったので後ろのほうで立って見るという状態でしたが、キーボードを弾く蓮沼執太とギターの石塚周太を360度囲むようになっていたせいもあって、後ろでも観客で見えないこともなく、楽しめました。1曲目に「RAW TOWN」を演奏した後は、事前に練習したのでアルバムの曲を2人で練習し全曲演奏できるということで、お客さんのリクエストに答える形でした。最初は遠慮がちに曲名を言っていたお客さんたちも、最後のほうになると、曲が終わる直後に曲名を叫ぶようになったりして、会場に合ったいい雰囲気のライブでした。キーボードとギター、そしてリズムボックスという編成で、アルバムのアレンジをシンプルに演奏するというところも会場に合っていたかもしれない。30分くらいで終わるのかなと思っていたら、アンコールまで答えてくれて50分くらいやったかな。
アルバムでは、細部にいろいろな音がつまっているので、バンド編成の時にどういう風に演奏されるのか楽しみたけれど、4月のライブはイベントとかぶってるので行けないんですよねーというわけで、蓮沼執太のライブは、いつも無料ライブしか行ってないわたしですが、前回、葉山で見た時はノイズ交じりの電子音楽を奏でていたのを思うと、今とのギャップにほんとびっくりする。
投稿者: canoe_ken
「今日も珈琲日和」-鶴巻麻由子-
■小金井で曜日ごとお店の軒先や小金井公園などに移動して屋台で営業している珈琲屋さん、出茶屋さんの本。Webサイト「かもめの本棚online」に連載されていたエッセイをまとめたもの。
高校を卒業してから出茶屋を始めるまでのことや、個性的な常連さんたちのエピソード、そして屋台で珈琲を淹れることについてのこだわりや思いがつづられています。いろいろなエピソードが、珈琲そして出茶屋というお店につながっていくかのよう。その時その時に出会った人たちも暖かく鶴巻さんを出茶屋さんに導いていて、そういった積み重ねやたくさんの集まりが出茶屋さんなのだなぁと思う。
■わたしは、わざわざ出茶屋さんに行ってコーヒーを飲むというよりは、はけ市や小金井のイベント、公園などで見かけたときに立ち寄る(?)という感じなのだけれど、なんか子どもたちを連れてイベントとかに遊びに行くと、たいてい会場のどこかに出茶屋さんがいるという気がします。
昼間に一人もしくは夫婦二人で出歩かなくなったこともあって、普段、カフェや喫茶店に入ってのんびりするということがほとんどなくなってしまった今、わたしにとっては外で珈琲を飲む数少ない場所になってます(会社帰りだとどうしてもコーヒーというよりビールって感じになってしまうので‥‥)。外なので子どもたちと遊びに行っても放っておけますしね。
■週末は、アトリエテンポのお米農家やまざき チャリティキャラバン東小金井へ。
2015年の秋に起きた鬼怒川決壊により、2メートルの泥水に冠水してしまったというお米農家やまざきさんのチャリティ・イベントで、アトリエテンポ以外でもいくつかの場所で行われています。
アトリエテンポでもチャリティグッズ販売やマルシェ、持ち寄り交流会、トークイベント、日替わりワークショップなどたくさんのイベントが行われていたのですが、わたしが行った28日は、アジアンミールや松庵文庫、seto、つむぎや、copse、金菜屋、お菓子屋ボタン、オタマヂャクシ工房といったお店が出ていたり、2月のはけのおいしい朝市でもやっていた「ひなたの粒シェイカー」づくりや木のスプーンづくり、元おむずび研究所のおむすびワークショップなどが行われていました。
まぁうちは米粉のパンケーキを食べたり、ちょっと買い物をしたりしただけで、相変わらず、子どもたちがお店の外を走り回ったり、散歩中の犬にさわってみたりと、どこにいっても同じだなという感じでしたけどね。
毎回言ってますが、このスペースが東小金井ではなくて武蔵小金井にあったらねぇ~
「市井暦日」-安住敦-
■安住敦は久保田万太郎と俳句の雑誌「春燈」を発行していた俳人、随筆家。その「春燈」の編集後記などに掲載された勤めを退職してからの日々をつづった身辺雑記が収録されてる。続けて読んでいると途中でちょっと飽きちゃったので、こういう本は2冊くらい平行して読むべきかも?
■4月から漣くんが小学校に入学するということで、去年の後半から物置部屋となって使っていなかった部屋を片付けて、机と2段ベッドを設置。机のほうは特に考えていなかったのですが、父親が甥っ子に作ったものと同じものを作ってくれた。
昔から日曜大工や庭いじりが趣味で、わたしの机やテレビやステレオの台などを作ったり、外に置いてある物置も父親の手作りだったりする。漣くんの机を一緒に組み立てながら、子どもの頃に週末になると、日曜大工の手伝いをさせられていたことを思い出したりしました。
あの頃は友だちと遊びに行きたくて、嫌々手伝っていたけれど、今になってみるともっと手伝っておけばよかったと思う。庭の通路を作るためにコンクリートをかきまぜたりしてたなぁ~
■今回の机は、どこかの製品化されている机を元に作ったらしく、高さも変えられるようになっている。「わりと広めにしたし、合板じゃないから高校生まで使えるよ」というけど、甥っ子が一人っ子に対してうちは2人なので部屋に2つ並べられない感じなのでちょっと困ってる。本人もうちに来て組み立てたら大きかったというのが分かり、どうしようかといういう感じでした。きちんと伝えなかったわたしが悪いですね。
ちなみに製品版にはなかった本棚もついているところがなんだか日本人らしいと思う。製品のほうは、シンプルというところが売りになっていると思うんですよね。特にデザインの邪魔になっているわけではないのでいいのですが‥‥
■椅子のほうは、背もたれとか曲線にしなくてはいけないので、さすがに作るのは難しいということで、国分寺の古道具屋さん、kasugaiで購入。ネットで調べていて見つけたお店で、昨年に開店したばかりの新しいお店らしい。今はお店はないらしいのですが、もともとは店主の父親も古道具屋をやっていたらしく2代目ということ。国分寺の駅からも遠くないし、置いてあるものも落ち着いた感じのいいものが多かったし、どれもきれいに手入れされていたので、国分寺に行ったときはできるだけ寄るようにしたい。
レジの横に小さ目のローライの2眼レフが置いてあって、持ち歩くには手ごろな大きさだったので、ちょっと欲しくなってしまったけど、話を聞いてみたら普通の6×6のブローニーではなくてローライオリジナルのフィルムを使うということだったので断念。ザンネン。お風呂場とかで赤い光をつけて、6×6のフィルムを切ったら使えるかな?と一瞬思いましたが、それをやるとお店で現像してくれなそうなので、現像も自分でやらなくちゃいけなくなるんですよね。
「在所言葉」-井伏鱒二-
■永井龍男が、横光賞を受賞した時のことや柳田国男のこと、早稲田界隈のこと、広島旅行のことなど特にテーマもない随筆集。タイトルとなっている「在所言葉」は、生まれ故郷の福山市の方言についてつづったもので、しゃべることばをそのまま文章にすることで、方言のコミカルな部分やリズミカルな部分をうまく引き出している。
また将棋の観戦記「将棋早指王位決定戦」では棋譜が記載されおり、あとがきでは「かねがね採譜の図を入れた随筆集を出したいと思っていた」と書かれているのだけど、採譜を収録した随筆というのは、わりと多いんでしょうか?単純なわたしは山口瞳の「血涙十番勝負」を思い出したりしました。まぁ山口瞳のほうは観戦記じゃないですけど。
というわけで、テーマもない随筆集と書いたけれど、内容的にはいろいろな趣向が施されていて読んでいて飽きない。
■最近はあんまり新譜も買ってなくて、欲しいと思っているCDが何枚もたまっている状態なのだけれど、年明けにタワーレコードのポイントが失効するということで、METAFIVEの「META」と蓮沼執太の「メロディーズ」を買って、通勤時間はそればかり聴いている。
METAFIVEは、高橋幸宏を中心に小山田圭吾、砂原良徳、テイ・トウワ、ゴンドウトモヒコ、LEO今井の6人で結成されたバンド。CDを買う前にYouTubeで「Don’t Move」を聴いたのですが、この6人から想像できるサウンドではぜんぜんなくて、びっくりした。
砂原良徳、テイ・トウワというメンバーがいるだけに、基本はテクノ(ポップ)なのだけれど、全体的にはファンク。こういっちゃなんですけど、細野晴臣の「S.F.X」やFriends of Earthを2016年版にパワーアップした感じもありつつ、密室的なところはなくより開放的にバンドのサウンドとして消化している。
一応、一人2曲ずつ作曲しているのだけれど、誰が作ったのかほとんどわからないところもいい。「Luv You Tokio」なんててっきり幸宏の曲かと思っちゃいました。そんなわけで、たぶんこれは各メンバーが好きな人が聴くとちょっとがっかりするのかもしれないとも思ったりします。逆にソロではできないことをこのバンドでやっているとも言えるわけで、そこを引き出す高橋幸宏の手腕は、前のバンド(?)Pupaよりも徹底していてスリリングです。
この後、各メンバーがソロを出した後くらいに、またアルバムを作ってくれないかなと思う。いや、そんなこと言っていたらいつになるのやらわからないですね(特に小山田圭吾、砂原良徳)。
■蓮沼執太の「メロディーズ」は、全曲蓮沼執太のヴォーカルを前面に出したアルバム。わたしは、「POP OOGA」で蓮沼執太を知って、「HOORAY」「OK Bamboo」「Shuta Hasunuma」と遡っていったクチなのですが、その後、バンド編成の蓮沼執太チーム、それを拡大した蓮沼執太フィルを経て、こんなさわやかなヴォーカルアルバムにたどり着くなんて思ってもいなかったです。
いや、子どもの頃にピアノとか習っていたんだろうけど、大学では環境学を専攻したことで、環境音をレコーディングするようになり、それがきっかけでフィールド・レコーディングやプログラミングを始めた到達点の1つがこのアルバムだと思うとほんとすごい。
個性の強いわけではないさりげない雰囲気のヴォーカルを引き立てるアレンジが心地よいのですが、ところどころで初期の電子音楽~エレクトニカを想起させる音があったり、チームやフィルのときの音を思わせたり、今までの実験的な部分をうまく歌を中心にしたポップスに昇華させているところは、なんとなくこれは蓮沼執太にとっての大瀧詠一の「ロング・バケーション」か?とか思ったり。なんて書くとおじさんの戯れ言みたいになってしまいますね。
「七時間半」-獅子文六-
■「コーヒーと恋愛」がちくま文庫から再刊されたときはおおと思う一方でなんで今?という疑問もあったけど、その後も「てんやわんや」「娘と私」と、獅子文六の本が次々と出ているのにちょっとびっくりしている。「七時間半」は、映画化された「特急にっぽん」はラピュタで見たけれど、本の方は読んでなかったので文庫化はうれしい。内容としては、東京から大阪までの七時間半の間に繰り広げられる恋のゆくえをめぐるドタバタ喜劇。食堂車のコック、美人の添乗員、堅実な経理係、大阪商人の社長、軟弱な大学院生‥‥など、主要な登場人物をはじめ、脇役にいたるまでこれでもかというくらいわかりやすいキャラクター、並行して総理大臣が乗りあわせ爆弾騒ぎまで起きるなど、相変わらずのエンターテイメントな作品で理屈なしで楽しめます。今、食堂車がついている電車ってどのくらいにあるのかわかりませんが、食堂車でビール飲みながら車窓の景色を眺めたりしたい。
■1月の泥酔ファンクラブでひさびさにレコードを回しました。夏にやったイン・ザ・パシフィックの100回記念以来なので半年ぶりくらい。普段、そんなにレコードを買っているわけでもないし、このくらいのペースがちょうどいい。時間もそんなに長くないし、レコードを持って行くのも楽。昔は22時から5、6時くらいまでで3人で回すというのがだいたい普通だったので、段ボールにレコード詰めて、リュックにシングル盤入れて移動したりしていたもんね~で、かける曲もイージーリスニングばかりで、あんまりお客さんのことを考えてなかったりする。聴きやすい、もしくは踊りやすいような流れはすごく考えるけどね。もうジャンルを広げていくのは無理なので、そろそろこの路線できちんと回せるようになりたい。まぁレギュラーでイベントしているわけでもないんで、なかなか詰め切れません。
泥酔ファンクラブのサイトにもプレイリストを掲載していますが、一応、コメントつけてこちらにも載せておきます。
[1]「Something’s Coming」-Button-Down Brass-
レイ・デイヴィスというトランぺッターを中心にしたイギリスのブラスセッション。もちろんキンクスの人ではないです。ミュージカル映画「ウェストサイド・ストーリー」からの曲なんですが、低音が効いていてかっこいいアレンジになっています。
[2]「Thunder Shake」-Les & Larry Elgart-
レスとラリーの兄弟による「Elgart Au Go-Go」というアルバムからのソウルフルな1曲。小西康陽がかけていたりする定番らしい。まぁこれ見かけたら絶対買うでしょ、というくらいストレートなジャケット&サウンドです。
[3]「One Two Three」-Doc Severinsen-
個人的にレン・バリーの「One Two Three」は、はじめてイベントで一番最初にかける曲と決めてるので、本当はこの曲を1曲目にかけるつもりでいたけど、なんとなく流れを作りにくかったので、この位置に。安定のCommandレーベルからの1枚。
[4]「Bee Dee Bum Boo」-Rhythm And Beat-Kings-
ちょっとテンポを落として、ドイツのジャズ・レーベルMPSの前身SABAのコンピから。Rhythm And Beat-Kingsについてはよく知りません。こに収録されているミュージシャンの単独のアルバムが欲しいけど、まぁ見つからないね。
[5]「Dimension Futur」-Lucien Lavoute et le Travelling Orchestra-
フランスのライブラリーもの。
[6]「Sunday Ride On A Thursday Afternoon」-The Main Street Singers-
先生たちを中心とするヴォーカルグループらしいです。ジャケットのイラストはなんですが、折り重なっていく男女混声コーラスがさわやか。
[7]「That Same Old Feeling」-赤い鳥-
トニー・マコーレイのよる名曲。いろいろな人がカバーしていますがオリジナルはPickettywitchなのかな?アレンジはオリジナルとほとんど変わらないけど、前の曲に合わせてちょっと軽い感じのする赤い鳥のバージョン。あくまでも個人的な感想ですけど。
[8]「City Girl」-Jefferson-
元ロッキン・ベリーズのヴォーカリストによるソロ。伸びやかで適度にソウルフルなヴォーカルで高揚感のあるポップな曲なのでついかけてしまう曲です。スパイラル・ステアケースの「More Today Than Yesterday」とかね。
[9]「Lovin’ Thing」-The Big Band Syndrome-
「Lovin’ Thing」は60年代の曲で10位以内に入るくらい大好きな曲。サックス/フルート奏者のBob Jung率いるこのThe Big Band Syndromeのバージョンは、高速といってもいいくらいテンポが速くてかっこいいです。Commandレーベル。
[10]「Go Ahead」-Samantha Jones-
マーク・ワーツが手掛けたフォード車のプロモーション用の曲。
「幻のイマージュ」-エルヴェ・ギベール-
■何年か前に、評論家ではなく作家や写真家自身が、写真について書いた本を読んでいたときに思い出して再読しようと思ってた本。このシリーズは、ジャン・フィリップ・トゥーサンとかの本も出てて1990年代半ばころにかなり話題になったけれど、あまのじゃくなんでその時には読んでいなくて、実際に読んだのは少しあとくらい。「幻のイマージュ」というタイトルに惹かれて手に取った記憶があります。多分、堀江敏幸の文章を読んだのはこの本が1番最初になると思うんだけど、もちろんその時は翻訳者として意識していないし、その何年後かに堀江敏幸の本に夢中になるなんて思いもしていませんでした。
■ほかの作家が書いた写真をめぐるエッセイと同様に、ときには自身の物語となり、ときに普遍的な写真についての物語となり、ときに抽象的なイメージの記述が混ざりこみ‥‥といった具合に輪郭がぼんやりとしてはっきりしない。そしてそこにこれらの本のおもしろさがあります。この手の本を読んだ後にいつも書いているような気がするけれど、また気が向いたときに読み返すために手元に置いておいておきたいですね。
そういう意味では、ロジェ・グルニエ、ロラン・バルト、スーザン・ソンタグ‥‥など、写真についての本をシャッフルして、記載されている写真を載せたり、写真家についての注釈を入れたりして、アンソロジーというか、バラエティブックみたいな形にまとめたらおもしろいんじゃないかな、なんて適当に思ったりもします。どれもそれぞれの章はそれほど長いわけではないし、最初から読まなくちゃいけないというわけでもないですしね。
■なんとなく書く気にもなれないままで放置していたら、3か月も経ってしまいました。いつのまにか年も明け、一年の振り返りもなし。こんなに期間が空いてしまったのは、一時期、わけあってサイトを更新することを自粛していた時以来ですね。特に何をしているというわけでもないけれど、簡単にでも毎日の出来事とかを書いておくのもいいかな、と思うんですけどね。まぁめったに読み直すことはないですけど。
■年末年始は、お休みのギャラリーも多いので、写真展などに行けてませんが、年が明けてから、平林秀夫挿絵展 「コトバと言葉の間」と渡邉知樹展「花、花、ギガンテス、花」を見てきました。平林さんの挿絵展は、小金井でリアカーにコーヒーを淹れる用具一式を積んで、公園やお店の前などでコーヒーを淹れている出茶屋さんのエッセイ「今日も珈琲日和」の挿絵などを展示したもの。場所もいつも出茶屋さんが出ている平林さんの平屋で、絵を壁に展示するだけでなく、一つ一つ本を開くように絵を見れる形のものがあったりして、出茶屋さんのコーヒーや平林さんの作ったカレーを飲みながら、何度も見返してしまいました。鉛筆で細かいところまで丁寧に描かれているので、本を見た時とは印象が違って見えたり、一見すると、ちょっと怖い感じの絵もじっと見ているとユーモアが隠されていたりするのが興味深かったです。
■渡邉知樹くんの個展は、前回のにじ画廊以来かな。ピンクを基調とした抽象画で、ギャラリー自体がピンクに染まっているようでした。タイトルに「花」がついているように春らしい、ポジティブな雰囲気の絵が多く、ピンクの色自体もさまざまなピンクの色が使われていて、立体的というか浮き立ってくる感じでした。
片隅には鳥のオブジェも置いてあり、今回も一つ購入。個展に行くたびに一つ一つ買っているこのオブジェも結構増えてきて、うちの鳥オブジェコーナーもにぎやかになってきました。漣くんと暁くんの好みが違うので、なかなか一つに選べないのが難点ですが‥‥。ちなみに今回は漣くんが選択したものを買ったのですが、いまだに「あっくんは足が角ばったのがよかったのに」と、ことあるごとに言っている始末。逆にもう少し成長したら、興味がなくなって、「どれでもいいよ」とか言うんでしょうか。
「花川戸へ」-樋口修吉-
■樋口修吉は高校の頃よく読んでいた作家で、文献や多くの人の話を元にして時代背景を実在の人物や出来事を交えつつ、架空の主人公の話をのせるという作風が好きでした。神戸や横浜、そしてギャンブルに明け暮れたという銀座を舞台にしているというのも読んでいて楽しかった。
この本は、浅草生まれの高橋伸寿という実在のジャス歌手の生涯を描いた作品。フィクションと現実の境が曖昧になるような、不思議な瞬間はないけれど、戦前から戦後のジャズブームの頃、そして平成になるまでの長い期間を、関係者の話も交えていねいに語っていて興味深く読んだ。題材としても戦後から1960年くらいまでのエピソードがおもしろく、共演者としていろいろ有名な人も出てくる。高橋伸寿は、映画に主演したりしているけれど、基本的にはクラブなどで歌うことを主眼に置いていて、レコードとして残っているものはなさそうなのが残念です。YouTubeで調べてみたら、さすがにある程度歳を取ったあとの映像しかなかったけれど、クルーナー流を名乗るだけあってきれいな声で歌もうまかったし、英語の発音もきれいでした。わたしにとっては端正すぎるという面もある気がしましたが。
■11/1は東小金井にあるアトリエテンポの1周年記念で行われた「家族の文化祭」に参加しました。子どもを連れた人が多く来るということで、これだけ絵本に絞ってお店を出すのは初めてじゃないかな、というくらい絵本を中心に本を持って行ったのですが、始まる前から道を通る人たちが絵本を眺めたりして、終了までたくさんの人に来ていただき、お店の前に人がいなくなる時間がまったくないという感じでした。お店の場所もライブのステージに近いところで、ちょっとしたスペースがあるところだったので、周りで子どもたちが遊んだり、駆け回ったりしてにぎやかな雰囲気になっていたのもよかったですね。まぁその中で1番うるさい声を出していたのは、うちの子とその友だちでしたけどね。
わたし自身も、時間を見つけて、子どもたちとスタンプラリーをしたり、パンなどの食べものを買ってライブを見ながら食べたりして楽しませていただきました。
来ていただいた皆さま、家族の文化祭のスタッフの皆さま、ありがとうございました!こういう場所が、武蔵小金井ではなくて東小金井にあるのがちょっと悔しいですね。
■そして今週末は東京蚤の市です!気がつけばもう8回目!回を重ねるごとにお店も増えて、たくさんのお客さまでにぎやかになっていってますが、今回はどんな雰囲気になるのでしょうか?前回は20年ぶりくらいにカジヒデキのライブを見ましたが、今回も見れたら15年以上ぶりとなるかせきさいだぁのライブもあってちょっと楽しみ。カジくんはぜんぜん変わっていなかったけど、今ではミスターシティポップを自ら宣言しているせきさいだぁは、変わってるのか、変わってないなのかなのか?あと今回も、暇を見て会場を回りつつ、ちょっとした小物とか買えるといいな(だいたいノベルティグラスかカヌー犬ブックス出店用の箱や本立てくらいですけどね)
毎回いろいろ準備しなくちゃと思いつつ、ほとんどできないまま当日をむかえてしまってますが、あと一週間いろいろがんばります!
第8回東京蚤の市概要
日程:2015年11月14日(土)、15日(日)
時間:14日(土)10:00~17:00/15日(日) 9:00~16:00
開催場所:東京オーヴァル京王閣
東京都調布市多摩川4-31-1
入場料:500円(小学生までは無料)
http://tokyonominoichi.com/2015_autumn/
■そんなわけで、9月から自分が出るイベントもいくつかありつつ、幼稚園のお山のおまつりや遠足があったり、立川ルミネのあおぞらガーデンでショピンを見たり、三鷹にある国立天文台の星と宇宙の日、そしてとなりの星と森と絵本の家の秋まつりに行ったり、ICUや農工大など近くの大学の学祭があったり、はらっぱ祭りでマッコリを飲みすぎてハロウィンでふらふらしたり、府中刑務所の文化祭で、刑務所の中を見学したり、石田倉庫のアートな2日間があったり、と近くのイベントが盛りだくさんで、秋のお休みの日はなんだか慌ただしい。
といっても、だいたい毎年、同じイベントに遊びに行っていて、それが少しずつ遊びに行く増えていく感じ。そしてこの慌ただしさがひと段落すると、幼稚園のクリスマスページェントがあって、あぁ今年も終わりだなぁという気分になってしまいますね。
「赤い罌粟の花」-平岡篤頼-
■平岡篤頼はデュラスやパトリック・モディアノ、アラン・ロブ=グリエの翻訳で知られる仏文学者で、作家としても何冊か出していてこの「赤い罌粟の花」などで2回芥川賞候補にもなっている。また早稲田大学の教授でもあり、栗本薫、重松清、堀江敏幸、小川洋子、角田光代といった作家が教え子とのこと。そういえばなかなか出会えてないけど、堀江敏幸が長い解説を書いたという本もありました。
パリでの日々をつづった「パリその日その日」や「パリふたたび」が好きで、いつか小説のほうも読んでみたいと思っていたのだけれど、夢日記をつづった作品や戦時中を舞台に子どもを主人公にした作品、「ジッドに日記」について書いた(創作ではない)作品など、いろいろな手法がとられた短篇が統一感なく収録されていてちょっと捉えきれない。ただ表題の「赤い罌粟の花」はおもしろかったので、こういうのが7篇収録されていれば、と思う。
■日曜は立川ルミネの屋上でやっているあおぞらガーデンで、ショピンのライブを見た。あおぞらガーデンは近いし駅から出なくていいし、屋外なのでライブ中に子どもたちが騒いでもすぐに離れることができるので、ちょっと気になる人がいると見に行ってみようかという気分になる。反面、あぁJRの思うつぼだなとも思う。個人的にはBERGの件もあったりしてルミネに対してはあまりよく思っていないんですけどね。
ショピンは6月にロバハウスで見た以来。手づくりのモノも含めたおもちゃの楽器を効果的に使ったり、振り付けがあったり、普段、ライブに行ってもまったくのらないうちの子どもたちもまぁまぁ聴いてて、自分たちもゆっくりライブを見れました。しかしこの辺に住んでて子どもがいると、ショピンとCOINNのライブは定番になりますね。
ちなみにあおぞらガーデンに行こうと言ったら「どうせルミネの屋上に行ったらお父さん、ビール飲んだりするつもりなんでしょ」と漣くんに言われてしまいましたが、今回はビールを売ってるお店はありませんでした。ザンネン
■11月1日に東小金井のアトリエテンポで行われる【家族の文化祭~こどももおとなもいっしょにたのしむ。まなび、あそび、かさねる、わ。~】に参加します。アトリエテンポは、あたらしい日常料理 ふじわら(食堂)、dogdeco HOME(ペットグッズ)、ヤマコヤ(絵とデザイン)safuji(革小物)、coupe(革靴)という5組の作り手のアトリエが併設されたストアで、去年の11月に東小金井の駅の高架下にオープンしました。今回のイベントはオープン1周年を記念して食べものや手しごとのお店やライブ、ワークショップなど子供も大人も一緒に楽しめるイベントです。西東京の子どもがいる家庭の定番、COINNのライブもあります。カヌー犬ブックスは、いつもの料理関係の本は少なめで絵本などを中心に本を持って行きます。
当日は小金井でははらっぱ祭りも行われているので、ちょっと遠いですが、はしごしても楽しそうですよ。
【家族の文化祭~こどももおとなもいっしょにたのしむ。まなび、あそび、かさねる、わ。~】
開催日時:2015年11月1日(日) 11:00~16:00
会場:コミュニティステーション東小金井・モビリティステーション東小金井(JR中央線東小金井駅高架下近辺)
→https://www.facebook.com/kazokunobunkasai
「アンソロジー そば」
■テーマに合わせて食べ物についてのエッセイを収録したアンソロジー。今回のテーマは“そば”。大まかには自分の好きなそば屋の思い出とそば屋で飲む話が多いかな。あとはうどんとそばの比較とか。意外と自分でそばを打つ話がみなみらんぽうくらいしか書いてないのは、素人がそばを打つという趣味が最近のものだからか?ただ全編そばのわりに飽きずに楽しく読めるのは、そばそのものよりも、そのそば屋に行くまでのシチュエーションをつづっているものが多いからかもしれません。
こういう文章を読み続けていると昼間からそば屋でお酒を飲んだりしたくなるけど、昼間からのんびりお酒を飲むなんて、今のわたしには贅沢すぎる。そもそも年に数回しか一人で昼間に出歩くことがないので、行きたいところ詰めすぎちゃって、とてものんびり飲むなんて感じではないです。子どもたちがもう少し大きくなったらそういう環境になるんでしょうかねぇ~
■とはいいつつも、最近はお酒ばかり飲んでる。幼稚園の園長が中心になって、楽器を弾けるお父さんたちで組んでいるオヤジバンドに参加してるのですが、10月10日にお山のおまつりがあったのでその練習で、土曜日になると夜幼稚園に行って、ビールとか飲みながら練習して、そのまま飲みに行くパターンが3週続いてしまった。わたし自身は楽器はできないので、歌というかコーラスなんで、かなり気楽に行ってることもあって、もう練習と言うより飲みがメインという感じです。幼稚園のお父さんたちと飲むと、みんな近所に住んでいるので、誰も「終電だから帰る」という人がいなくて、気がつくと1時くらいになっていたりするのがこわい。
■あと、10月3日にClub Heavenの20周年記念パーティに行ってきた。Club Heavenは六本木時代は知らなくて、吉祥寺に移ってきた時に友だちに誘われて行ったのが初めてなので1997年かな。2年くらいは毎月遊びに行って、朝まで遊んで、そのあとのデニーズまで行っていたものだけれど、2000年代はあまり行ってない。まぁ結婚もしたし、年齢的に朝まで遊んでるのがきつくなってきたってこともあるし、単にUKロックを聴かなくなったということもある。ちゃんと聴いてないので、実際、今回もこの曲聴いたことあるけど、まったくタイトル思い出せないって曲が多くてびっくりした。いや、だからこそ楽しいってこともある。Club Heavenのいいところは3人ともすごく音楽を知ってるのに、イベント自体はマニアックではないってところだなぁとあらためて思いました。
しかし、20周年ということで、盛り上がる曲が多かったということを鑑みても、この盛り上がり方で朝まで踊り続けて、その後も話し込んでいたという20代の体力ってすごい。そんな遊び方もうできない年齢になってしまいました。
今は不定期にしか開催してないけど、年に数回くらいはやって欲しい。
「言葉を生きる」-片岡義男-
■英語を話すハワイ生まれの日系二世を父と、日本語を話す近江八幡生まれの母とのあいだに生まれた少年が、2つの言語のあいだで揺れながら、どのように言語を、そしてそれにともなう思考の方法を獲得していったのかが、子どもの頃にペーパーバッグを集めていた話から大学時代に初めて翻訳の原稿を書いた話、そして小説を書き始めた頃などの経験をもとにつづられている。
わたしは片岡義男の本はエッセイしか読んでいないけれど、一見、論理的だけど、でも実際は論理的な文章というわけでもなく、かといって感情に訴えかけてくるわけでもないという不思議な語り口が好きで、今でも新刊をチェックしている数少ない作家でもある。日本語してはちょっと微妙だなぁと思うところもありつつ、なんか微妙なラインをすれすれに歩いているような感じなのは、2つの文化を行き来しているからなのだと思う。
■小説のほうは、ちょうど小学校高学年から中学の頃に、角川映画などで小説が次々と映画化されるブームがあって、そのときの印象からほとんど読んでいない。ほとんどと書いたのは、90年代初めの頃、村上春樹とか読むのだったら、片岡義男の本を読んだほうがいいんじゃないかという気分で、何冊か読んでみたことがあるのだけれど、続かなかったし、今では何を読んだのかも忘れてしまったから。
その後、90年半ばにちくま文庫から出た「ぼくはプレスリーが大好き」を読んだのがきっかけで、晶文社から出ている初期の本や太田出版からでたアンソロジーなどを読んではまってしまった。今小説のほうを読んだら印象が変わるのだろうか?と思いつつエッセイを読み続けているけれど、多分、これからも読まないような気がする。
■どこかのエッセイで、その頃の小説は漫画を小説化することをテーマにしていたといったことがかかれていた記憶があるけど、そういう意味ではライトノベルのはしりと言えるのかもしれない。ただライトノベルとしては、設定が非日常的なので、これから評価されるということはなさそう。
ついでにいうと堀江敏幸は「片岡義男の小説は小説についての評論であり、評論こそが小説である」と語っていたようだけど、小説の中にその評論の部分を感じられるようになるとまた印象が変わるのかもしれない。
■そういう意味では、今、70年代から80年代にかけての歌謡曲を聴くということは、歌謡曲の中に日本の音楽への評論が見え隠れする部分が感じられるからなのかも?なんてこじつけで思ったりもします。歌謡曲がJポップと呼ばれるようになってから評論というピースが抜け落ちてしまった気がするのね。
■さて、連休もあっという間におしまい。どこに行く我が家はどこに行くというわけでもなく、はじめのほうにセプチマでやっていたCOINNのライブを見て、途中で、自転車で深大寺になる鬼太郎茶屋に行った程度でした。といってもTHE GOLDEN COINN SHOWでは、あいかわらず子どもたちは、ライブが始まって2曲目で「外で遊んでくる!」と飛び出し、ライブよりもセプチマの庭で遊ぶことに夢中でしたけど。
よく考えたら漣くんなんてセプチマに初めて行ったのは1歳くらいの頃なわけで、年に数回しか遊びに行かないにしろ、勝手知った遊び場ですよね。当日はラマパコスやアグネスパーラーなど顔見知りのお店が出店してましたし。いつかセプチマでゆっくりとライブを見れる日が来るんでしょうかねぇ。
■秋は子どものイベントから自分が出るイベント(本屋さんのほうです)、遊びに行くイベントなど、毎週末なにかしらあってそれこそあっという間に寒くなってしまう感じですね。まぁ毎週、楽しみではあるのですが。