「石垣の花」-木山捷平-

-■作家仲間のこと、来日したビートルズのこと、戦争のこと、中国の友だちのこと‥‥など、身辺雑記をまとめたもので特にテーマはない。が、飲みの席で指を怪我させられた時の話が執拗に書かれてるのがおかしい。後日の飲み会の席で怪我させた人にそれを言ったらすっかり忘れてて、随筆を書くネタができてよかったじゃん、みたいなことを言われたことに対する腹いせなのかもしれない。まぁこの指の怪我以外にも交通事故にあった時のことなど、自分の怪我や体調のことをわりとしつこく書いてるんですけどね。でもどれも語り口が深刻にならず、そこはかとなくユーモアがただよっているところが木山捷平らしい。

■4月の家族の文化祭、そして東京蚤の市が終わってすっかり気が抜けてしまってて、部屋の片づけもあんまりできず、いまだに本を入れたままの段ボールがいくつか残ってしまっている状態です。蚤の市は、天気にも恵まれ入場者数も過去最大の3万人を超えたようで、カヌー犬ブックスのブームも常に人がいる状態でした。皆さまありがとうございました。次回は10回目ということで、もっと盛り上げていきたいと思ってます。って何を考えているわけでもありませんが、まずは取り扱う本の種類をもう少し増やして、もっといろいろな人に興味を持ってもらえるようにしたいです(特に男性)。

-左が今回の蚤の市、右が第1回目の蚤の市のカヌー犬ブース

■本の出し入れのついでに7インチを移動させていたりしていたら、レゲエのシングル盤が何枚か出てきたので、夜時間があった時になんとなく聴き始めてしまって、今年の夏はレゲエのシングル盤を中心にレコードを買ってみようかと思っています。レゲエといってもボブ・マーリーみたいなルーツロックレゲエでもなく、スカでもなく、もちろんダンスホールレゲエでもなく、ロックステディ後期から70年代のソウルぽいもの~ダブが好きで、できればインストがいいなぁとか思っているので微妙にどのジャンルを見ればいいのかいまいち分かんないんですよね。
基本的には昔から好きなMoodiscやRandys Records、Dynamic、Joe Gibbs、IMPACT、Rockers、Trojan、Wackiesといったレーベルを確認しつつ、試聴してみるという感じで集めてるので思ったようにすすみませんが、まぁ興味が向いているうちは気長にいきます。つぎにどなたかにDJを誘っていただいたときは、多分レゲエのレコードばかりになるかもね?

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「辻邦生全短篇 I」-辻邦生-

-■パリに留学中に執筆され、帰国後の1961年に発表されたデビュー作「城」から、この単行本が出た1978年までに書かれた短篇を制作順に編集したもの。この「I」では1967年の「洪水の終わり」までが収録されています(なので、発表順では一部入れ替わっている作品もあり)。
死や狂気、戦争などといった暗い影がべとりと貼りついた作品がほとんどなのですが、読んでてつらくなるほど重くならないのは、舞台となっているのがおもに外国だったり、主人公が留学中の大学教授や記者といったちょっと現実から離れた設定で、かつ物語の中で狂気に陥るのが主人公ではなく、主人公はその様子を語る人物として登場することが多いせいなのかもしれません。

■あっという間にゴールデンウィークもおしまい。
前半は長野の小諸にある茶房 読書の森というところに行ってきました。茶房 読書の森は、オーナーが建てた小屋やゲルがいくつかありそこに泊まる形のゲストハウスで(というのかよくわかりませんが)、うちは、絵本作家の田島征三が壁の絵を描いた征三ハウスに宿泊しました。キャンプ場ではないけれどバンガローに泊まるイメージですかね。
周りには、下から空気が出ていて上に竹でできた上がついており、そのあいだにある穴を抑えると音が出るどうらくオルガンやピンホールカメラの原理を利用して、真っ暗な中にスクリーンが設置されていて壁の穴を通して外の風景が上下さかさまに投影される小屋などがあり、茶房のほうにも絵本の部屋があったりします。でも基本的には、池があって、その周りを林や田んぼ、畑が広がっているという風景が広がっていて、子どもたちもそちらのほうで遊びまわっていました。子どもたちの後ろから道を作りながら林の奥へと進んでいくと自分が子どもの頃を思い出したりします。

夜には、山菜を中心にした食事が出て、お酒を飲みながらオーナーやほかの宿泊者たちと遅くまで話したりして大人だけで泊まるのも楽しいと思いますよ。

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■後半は、子どもたちと二宮に帰ったり、府中競馬場や井の頭動物園、昭和記念公園など相変わらず近場で遊び倒すという感じでなんだか疲れました‥‥。出かける場所を決める時は、例えば井の頭動物園に行きつつ、Young Soul Rebelsでやっていた原子高志さんと宮里卓さんの2人展「London Is Far Away」を見に行ったり、昭和記念公園の帰りには立川ルミネのあおぞらガーデンでQuinka,with a Yawnのライブを見るとか、自分の行きたいところを紛れ込ませているのですが、そこまで行く間に子どもたちが疲れてしまったり、途中で「そんなところに行きたくない!」と騒がれたり、なかなか難しい。そしてたいていは一人でビール飲んでます。

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■そんな中、井の頭動物園に行った際に見た(ついでと言うには遠かった)、原子高志さんと宮里卓さんの2人展「London Is Far Away」はよかったなぁ。原子さんのイラストは、デコレーションしたベスパなど相変わらずいい感じだったし、宮里卓さんは、直接面識はないので、(イベントで会ったことはあるかも?)、どんな写真を撮る人なのか知らなかったのですが、シャープな構図のモノクロ写真で、Young Soul Rebelsのお店の雰囲気にぴったりでした。もう少したくさんの点数の写真をゆっくり見たかったなぁ~
ついでに店内の洋服をちらりと見たら欲しい服もあったけど、入り口で水木しげるの妖怪図鑑を見ている子どもたちをそのままにして試着するわけに行かず、断念。ほんとはカフェスペースでコーヒーとか飲みたかったんですけどねぇ。
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「映画を書く」-片岡義男-

-■今まで日本映画を観たことがなかったという片岡義男が、昭和10年から30年までに公開された映画をそれぞれ1本ずつ見て、その感想を書くという趣向の本。昔の日本映画と片岡義男というのはイメージが結びつかなかったけど、原節子について書いた本が出た流れで企画された本らしい。
取り上げられているのはほぼ知らない映画ばかり。でも基本的な流れとしてはまず取り上げた映画のストーリーを説明されるので、特に問題はないです。むしろ片岡義男による再構築されたストーリーを読んでいるだけでもおもしろい。その後、その映画が当時のどういう価値観を元に作られ、どういうメッセージを観客に伝えていたか、そして40年後の今から見るとその価値観はどういう風にとらえられるのか、といったことがつづられている。ご都合主義で流れる箇所を徹底的に指摘し、現代的、かつアメリカ的合理性のある片岡義男の独自の視点や論理が、戦後の日本映画のある意味のんびりした雰囲気に化学反応を起こしている感じです。

■かなり時間がたってしまいましたが、家族の文化祭、無事終了しました。天気もよかったこともあっていろいろなものを食べたり、ワークショップに参加したり、ライブを見たりして一日中楽しんでくれた方が多かったようです。笛をデコレーションするワークショップが盛況だったみたいであちらこちらから子どもたちの吹く笛の音が高架下に響いていました。
カヌー犬ブックスは今回、絵本以外の本も多めに持って行きました。見てくれるかどうかちょっと不安もあったのですが、食べもの関連の本に興味を持ってくれる人も多くいて、いろいろ本について話したりして楽しかったですね。お子さんを連れた親子でも子どもとお父さん(あるいはおばあさん)が絵本を見つつ、お母さんがレシピ本などを見てるみたいな風景もよく見かけたので、いろいろな本を持って行ってよかったと思ってます。
来てくれた皆さま、スタッフの皆さまありがとうございました。家族の文化祭はこれからも定期的に行われるようですので、今後もよろしくお願いします。

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■次は5月14日、15日に行われる東京蚤の市に出店します。東京蚤の市も気がつけば9回目。毎回どんな本を持って行くか迷いつつ、でもうちの場合、そんなにバリエーションもないので、少しずつマイナーチェンジしてみてるという感じです。今回はどうしようかまだきちんと決めてませんが、ゴールデンウィーク中にいろいろ考えたいと思ってます。

 第9回東京蚤の市
  日程:2016年5月14日(土)、15日(日)
  時間:14日(土)10:00~18:00/15日(日)9:00~17:00
  開催場所:東京オーヴァル京王閣
  東京都調布市多摩川4-31-1
  入場料:500円(小学生までは無料)
  ホームページ:http://tokyonominoichi.com/2016_spring/

「黄昏のムービーパレス」-村松友視-

-■テレビの一般化、ビデオの発売と映画業界が斜陽になった80年代後半、全国のローカル映画館を訪ね経営者に話を聞くというノンフィクション。取り上げられている映画館は、大正から昭和の初期に建てられてものが大半で、場所も県の中心部から離れた場所が多い。ほとんどの経営者は、戦後のヒット映画を観に映画館に人が集まってきた頃のことを懐かしく話している。一方でただ懐かしむだけでなく、興行師としてもうひと山当てたいという野心もかすかに見え隠れするところが、映画館の現実をあらわにしている。まぁ著者がそういう方向に持って行こうとしている感もあるけど。

■わたし自身も、大学生の頃、1990年代の初め、浅草の東京倶楽部が閉館したのがきっかけで、全国を巡って映画館の写真を撮ってみようと思ったことがあるのですが、結局、実現するまでいたらなかった。一番の理由としては、地方も含めて各地の映画館を回るという行動力がなかったわけでけれど、その頃でもすでに映画館が閉館していて今からやっても遅いかも?という気持ちがありました。でも今から思うと、ぎりぎ間に合ったのではないかとも思う。今でもちょっと後悔していることの一つ。
ちなみに東京倶楽部の最後の上映は「赤い河」でした。「ラストショー」が好きだったからそれだけで感無量でしたね。

■4月になると公園など外でのイベントが増えて楽しい。4月2日、3日の花見から始まり、4月9日、10日とはけのおいしい朝市に通い、16日は、狭山の稲荷山公園でやっていたみどりのクラフトに行くという具合で毎週のようにレジャーシートを持って出かけている。まぁどこに行っても子どもたちは走り回り、お父さんはビールを飲みながら、その場で買ったものを食べたりしているだけなんですけどね。
近場のイベントだと誘い合わなくても、元幼稚園の友だちが遊びに来ていてレジャーシートの面積も人数も多くなる感じ。こういう風にのんびりと一日を過ごすということができるのは、あと何年ぐらいなんだろう?なんて思ってしまうのは、漣くんが小学校に入学したせいかも。自分自身の経験でいうと、同級生が多い世代だったこともあって、小学校に入ってから週末親と遊んだ記憶ってほとんどなくて、たいてい友だち同士で遊んでいたけど、これからどう変わっていくんでしょうね。

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■そんなイベント続きの4月ですが、今週末、23日は東小金井駅の高架下で行われる「家族の文化祭」に参加します。前回11月の時は、わりと絵本を中心に本を持って行きましたが、今回は、絵本に加え、カヌー犬ブックスらしい食べものに関するエッセイやレシピなども持って行く予定です。あまり構えずにちょっと時間が空いたときに読めるようなものを中心に持って行こうと思っています。お母さん、お父さんも、これならちょっと時間を作りつつ、毎日少しずつ読めるかも?という本を探していただければと思います。よろしくお願いしますー!

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「柳原良平の仕事」

-■年末くらいに出た柳原良平の作品集。最近も定期的に新しい絵本が出ていたので、亡くなったときはびっくりしました。サントリー宣伝部で一緒だった開高健、山口瞳かなり前に亡くなっているので、絵本が出る度にすごい長生きしてるような気がしてました。
柳原良平の作品をまとめたものというと、2000年代に、「Ryohei Yanagihara」と「柳原良平の装丁」という本が出ていて、こちらはわりと、装幀やイラスト、絵本の原画などが中心でした。こちらはグッズの写真なども掲載されているのがいい。見ていると欲しくなっちゃうけど。

■ところで、この本で原子高志さんが追悼文を載せていて、2001年に行われた「柳原良平vs原子高志 二人展」の話を書いていて懐かしい。展覧会を知ったので、終わってから2か月くらい経ったときで、展覧会に行けなくてくやしい思いをしたことを思い出しました。しかも当時、中目黒から歩いて10分くらいのところで働いてたんですよね。
この展覧会の告知で初めて知った原子さんとは、その後、パレードでのDJを見に行ったり、原子さん自身がやっているイベントに遊びに行ったり、そのイベントでゲストで回させてもらったりすることになるのですが。
その原子さんのイベント「ONE plus ONE」が、4月16日に吉祥寺の伊千兵衛で行われます。行きたいけど、次の週イベント出店があるので、その準備で追われていそうなんですよね。どうなるのか‥‥

-■そう、4月23日は、東小金井の高架下、アトリエテンポで行われる「家族の文化祭」に出店します。アトリエテンポのサイトで、まだ告知されていないので、言っていいのか分かりませんが、もう今週末は4月ですしいいですよネ。
昨年の11月に1周年を迎えた際に行われたイベントの第2回になるのかな。前回はフードやクラフトのお店が出たり、ワークショップやライブが行われたりして盛りだくさんな楽しいイベントになっていたので、今回もいい雰囲気の楽しいイベントになると思います。と言っても、どんな方が出るのかはわかりませんっ!
カヌー犬ブックスは、前回と同じように絵本や児童書を中心にしつつ、今回は、大人でも楽しめるよう、食べ物や旅のエッセイなども少し多めに持っていこうと思っています。座ってゆっくりできる場所もたくさんあるので、ごはんやおやつを食べながら、音楽を聴きながら、ゆっくり本をめくっていただければと思います。

 ■開催日/2016年4月23日(土)
 ■時 間/11:00~16:00 雨天決行・荒天中止
 ■場 所/コミュニティステーション東小金井・モビリティステーション東小金井
 ※JR中央線東小金井駅高架下近辺(東京都小金井市梶野町5丁目)
 ■URL(Facebook ページ):http://www.facebook.com/kazokunobunkasai

「ほろよい味の旅」-田中小実昌-

-■新宿や浅草などの近いところから故郷の広島、北海道、名古屋、鹿児島などの日本各地、そしてサンディエゴやダブリンまで、さまざまな場所での飲み歩き記。一応3部に分かれており「味な話」では、各地のおいしい食べ物が取り上げられており、「酔虎伝」ではビール、ワインを中心とした話と旅先で飲んだお酒のこと、3部の「ほろ酔い旅日記」は、旅の話を中心につづられている。食べ物から旅へのグラデーションになってるとも言えるか?適当。
といっても、前にも書いたような気がするけど、コミマサさんのこの手のエッセイは、基本的にはどれも同じような話だし、まったく同じ話も出てくるわけですが、飲み屋のカウンターでいろいろ昔話を聞いてる感じでいい。でもやっぱりおもしろいのは、新宿、浅草、そして子どもの頃に過ごした広島や若い頃に帰るお金がなく1年間くらい過ごしたという北陸、ヌード劇場に出てたという神戸など、長期で滞在した(あるいは住んだ)場所の話なんですよねぇ。
そういえばテレビで、ローカル路線のバスを乗り継いで目的地に行くって番組やってるみたいですけど、バス乗り継いでいくのに目的地とか期間を決めちゃダメですって。

-■3月は人生初のインフルエンザにかかってしまい、何もできず、という感じでした。しかも家族4人‥‥。1回38度以上の熱が出て、次の日には37度後半くらいまで下がって、3日ぐらい続いたのですが、普通の風邪でも39度のとかの熱が2、3日続くタイプなので、症状としてはそんなにつらくはなかったかな、と。ただインフルが治ってからも、なぜか1週間くらい夜になると熱が出続けたので、パソコンを立ち上げる気力もなく、ぼぉっとテレビとか見て、10時前に寝る生活をしていました。夜、テレビのニュースとかを見つつ、だらだら過ごすなんて何年ぶりでしょうかね。ほんと本の入力や表紙のスキャン、サイトの更新などをまったくしないと楽ですネ。
と、そんなことを言っても、4月、5月はイベント出店が続くので、いつまでもだらだらしていないで、そろそろ本腰を入れて準備をしなくては‥‥。
それにしてもインフルエンザのせいで漣くんの卒園式に出られなかったのは痛かった‥‥

-■ところで、今、子どもたちの中で深海生物ブームが来ていて、ことあるごとに図書館で図鑑を借りたり、自分でも買ってみたり、ダイオウグソクムシやダイオウイカ、メンダコなどを折り紙で作ってみたりしてるので、思い切って3連休に江の島の水族館へ行ってきました。江ノ島水族館は、しんかい2000という潜水調査船の展示や深海生物のコーナーが充実してるんですよね。
しかし春休みの3連休ということでめちゃくちゃ混んでて、ゆっくり見る雰囲気ではなく、子どもたちもじっくり楽しめたのかどうか微妙でした。それでもメンダコやフトツノザメ、タカアシガニを見たり、ダイオウグソクムシにさわったりできるコーナーでは何度も行ったり来たりしていましたけどね。しばらく深海生物ブームが続くようだったら、また行ってみようかな、なんて思ってます。
10代後半くらいの女の子がメンダコを見て「かわいい」といか言いながら、写真を撮っていたのにはびっくりしました。ちょっと前にダイオウイカが注目されてましたけど、深海生物って流行ってるんですかねぇ。

「目ざめて腕時計をみると」-堀江敏幸-

■堀江敏幸による初写真集。堀江敏幸は自分の本の装丁をしたりしているので、雰囲気としてはそれらと大きく変わらなくて、街の片隅の風景を中心に、家の窓や街角の広告、そして雑誌の1ページや切手といったものがモノクロのフィルムで撮られている。いや、フィルムかどうかわかりません。でもフィルムであってほしいです。勝手なイメージですけど、デジカメで撮ってモノクロに変換しました、なんて言われたらちょっと困惑しちゃいますね。
特に主張したり目を見張るような風景があったりするわけではなく、でも一見なんてことのない地味な風景からあれこれとイメージがわいてくるように感じるのは、堀江敏幸の小説や随筆と同じ。むしろ、小説や随筆を読んでいるからこそ、そういったイメージがわいてくるのかもしれませんが。そういった意味では、写真集ではあるけれど、いつもの堀江敏幸の本と変わらなくて、表現方法が変わっても表現している方向性は一貫しているなと思う。

-■最近、通勤の行きはガールポップ、帰りは蓮沼執太の「メロディーズ」を聴くという毎日が続いている。去年のウワノソラ’67くらい聴きこみそうな勢いです。そんな勢いにのって渋谷のタワーレコードでやっているインストアライブに行ってきました。
整理券がなかったので後ろのほうで立って見るという状態でしたが、キーボードを弾く蓮沼執太とギターの石塚周太を360度囲むようになっていたせいもあって、後ろでも観客で見えないこともなく、楽しめました。1曲目に「RAW TOWN」を演奏した後は、事前に練習したのでアルバムの曲を2人で練習し全曲演奏できるということで、お客さんのリクエストに答える形でした。最初は遠慮がちに曲名を言っていたお客さんたちも、最後のほうになると、曲が終わる直後に曲名を叫ぶようになったりして、会場に合ったいい雰囲気のライブでした。キーボードとギター、そしてリズムボックスという編成で、アルバムのアレンジをシンプルに演奏するというところも会場に合っていたかもしれない。30分くらいで終わるのかなと思っていたら、アンコールまで答えてくれて50分くらいやったかな。
アルバムでは、細部にいろいろな音がつまっているので、バンド編成の時にどういう風に演奏されるのか楽しみたけれど、4月のライブはイベントとかぶってるので行けないんですよねーというわけで、蓮沼執太のライブは、いつも無料ライブしか行ってないわたしですが、前回、葉山で見た時はノイズ交じりの電子音楽を奏でていたのを思うと、今とのギャップにほんとびっくりする。

「今日も珈琲日和」-鶴巻麻由子-

■小金井で曜日ごとお店の軒先や小金井公園などに移動して屋台で営業している珈琲屋さん、出茶屋さんの本。Webサイト「かもめの本棚online」に連載されていたエッセイをまとめたもの。
高校を卒業してから出茶屋を始めるまでのことや、個性的な常連さんたちのエピソード、そして屋台で珈琲を淹れることについてのこだわりや思いがつづられています。いろいろなエピソードが、珈琲そして出茶屋というお店につながっていくかのよう。その時その時に出会った人たちも暖かく鶴巻さんを出茶屋さんに導いていて、そういった積み重ねやたくさんの集まりが出茶屋さんなのだなぁと思う。

■わたしは、わざわざ出茶屋さんに行ってコーヒーを飲むというよりは、はけ市や小金井のイベント、公園などで見かけたときに立ち寄る(?)という感じなのだけれど、なんか子どもたちを連れてイベントとかに遊びに行くと、たいてい会場のどこかに出茶屋さんがいるという気がします。
昼間に一人もしくは夫婦二人で出歩かなくなったこともあって、普段、カフェや喫茶店に入ってのんびりするということがほとんどなくなってしまった今、わたしにとっては外で珈琲を飲む数少ない場所になってます(会社帰りだとどうしてもコーヒーというよりビールって感じになってしまうので‥‥)。外なので子どもたちと遊びに行っても放っておけますしね。

-■週末は、アトリエテンポのお米農家やまざき チャリティキャラバン東小金井へ。
2015年の秋に起きた鬼怒川決壊により、2メートルの泥水に冠水してしまったというお米農家やまざきさんのチャリティ・イベントで、アトリエテンポ以外でもいくつかの場所で行われています。
アトリエテンポでもチャリティグッズ販売やマルシェ、持ち寄り交流会、トークイベント、日替わりワークショップなどたくさんのイベントが行われていたのですが、わたしが行った28日は、アジアンミールや松庵文庫、seto、つむぎや、copse、金菜屋、お菓子屋ボタン、オタマヂャクシ工房といったお店が出ていたり、2月のはけのおいしい朝市でもやっていた「ひなたの粒シェイカー」づくりや木のスプーンづくり、元おむずび研究所のおむすびワークショップなどが行われていました。
まぁうちは米粉のパンケーキを食べたり、ちょっと買い物をしたりしただけで、相変わらず、子どもたちがお店の外を走り回ったり、散歩中の犬にさわってみたりと、どこにいっても同じだなという感じでしたけどね。
毎回言ってますが、このスペースが東小金井ではなくて武蔵小金井にあったらねぇ~

「市井暦日」-安住敦-

■安住敦は久保田万太郎と俳句の雑誌「春燈」を発行していた俳人、随筆家。その「春燈」の編集後記などに掲載された勤めを退職してからの日々をつづった身辺雑記が収録されてる。続けて読んでいると途中でちょっと飽きちゃったので、こういう本は2冊くらい平行して読むべきかも?

■4月から漣くんが小学校に入学するということで、去年の後半から物置部屋となって使っていなかった部屋を片付けて、机と2段ベッドを設置。机のほうは特に考えていなかったのですが、父親が甥っ子に作ったものと同じものを作ってくれた。
昔から日曜大工や庭いじりが趣味で、わたしの机やテレビやステレオの台などを作ったり、外に置いてある物置も父親の手作りだったりする。漣くんの机を一緒に組み立てながら、子どもの頃に週末になると、日曜大工の手伝いをさせられていたことを思い出したりしました。
あの頃は友だちと遊びに行きたくて、嫌々手伝っていたけれど、今になってみるともっと手伝っておけばよかったと思う。庭の通路を作るためにコンクリートをかきまぜたりしてたなぁ~

-■今回の机は、どこかの製品化されている机を元に作ったらしく、高さも変えられるようになっている。「わりと広めにしたし、合板じゃないから高校生まで使えるよ」というけど、甥っ子が一人っ子に対してうちは2人なので部屋に2つ並べられない感じなのでちょっと困ってる。本人もうちに来て組み立てたら大きかったというのが分かり、どうしようかといういう感じでした。きちんと伝えなかったわたしが悪いですね。
ちなみに製品版にはなかった本棚もついているところがなんだか日本人らしいと思う。製品のほうは、シンプルというところが売りになっていると思うんですよね。特にデザインの邪魔になっているわけではないのでいいのですが‥‥

-■椅子のほうは、背もたれとか曲線にしなくてはいけないので、さすがに作るのは難しいということで、国分寺の古道具屋さん、kasugaiで購入。ネットで調べていて見つけたお店で、昨年に開店したばかりの新しいお店らしい。今はお店はないらしいのですが、もともとは店主の父親も古道具屋をやっていたらしく2代目ということ。国分寺の駅からも遠くないし、置いてあるものも落ち着いた感じのいいものが多かったし、どれもきれいに手入れされていたので、国分寺に行ったときはできるだけ寄るようにしたい。
レジの横に小さ目のローライの2眼レフが置いてあって、持ち歩くには手ごろな大きさだったので、ちょっと欲しくなってしまったけど、話を聞いてみたら普通の6×6のブローニーではなくてローライオリジナルのフィルムを使うということだったので断念。ザンネン。お風呂場とかで赤い光をつけて、6×6のフィルムを切ったら使えるかな?と一瞬思いましたが、それをやるとお店で現像してくれなそうなので、現像も自分でやらなくちゃいけなくなるんですよね。

「在所言葉」-井伏鱒二-

■永井龍男が、横光賞を受賞した時のことや柳田国男のこと、早稲田界隈のこと、広島旅行のことなど特にテーマもない随筆集。タイトルとなっている「在所言葉」は、生まれ故郷の福山市の方言についてつづったもので、しゃべることばをそのまま文章にすることで、方言のコミカルな部分やリズミカルな部分をうまく引き出している。
また将棋の観戦記「将棋早指王位決定戦」では棋譜が記載されおり、あとがきでは「かねがね採譜の図を入れた随筆集を出したいと思っていた」と書かれているのだけど、採譜を収録した随筆というのは、わりと多いんでしょうか?単純なわたしは山口瞳の「血涙十番勝負」を思い出したりしました。まぁ山口瞳のほうは観戦記じゃないですけど。
というわけで、テーマもない随筆集と書いたけれど、内容的にはいろいろな趣向が施されていて読んでいて飽きない。

-■最近はあんまり新譜も買ってなくて、欲しいと思っているCDが何枚もたまっている状態なのだけれど、年明けにタワーレコードのポイントが失効するということで、METAFIVEの「META」と蓮沼執太の「メロディーズ」を買って、通勤時間はそればかり聴いている。
METAFIVEは、高橋幸宏を中心に小山田圭吾、砂原良徳、テイ・トウワ、ゴンドウトモヒコ、LEO今井の6人で結成されたバンド。CDを買う前にYouTubeで「Don’t Move」を聴いたのですが、この6人から想像できるサウンドではぜんぜんなくて、びっくりした。
砂原良徳、テイ・トウワというメンバーがいるだけに、基本はテクノ(ポップ)なのだけれど、全体的にはファンク。こういっちゃなんですけど、細野晴臣の「S.F.X」やFriends of Earthを2016年版にパワーアップした感じもありつつ、密室的なところはなくより開放的にバンドのサウンドとして消化している。
一応、一人2曲ずつ作曲しているのだけれど、誰が作ったのかほとんどわからないところもいい。「Luv You Tokio」なんててっきり幸宏の曲かと思っちゃいました。そんなわけで、たぶんこれは各メンバーが好きな人が聴くとちょっとがっかりするのかもしれないとも思ったりします。逆にソロではできないことをこのバンドでやっているとも言えるわけで、そこを引き出す高橋幸宏の手腕は、前のバンド(?)Pupaよりも徹底していてスリリングです。
この後、各メンバーがソロを出した後くらいに、またアルバムを作ってくれないかなと思う。いや、そんなこと言っていたらいつになるのやらわからないですね(特に小山田圭吾、砂原良徳)。

-■蓮沼執太の「メロディーズ」は、全曲蓮沼執太のヴォーカルを前面に出したアルバム。わたしは、「POP OOGA」で蓮沼執太を知って、「HOORAY」「OK Bamboo」「Shuta Hasunuma」と遡っていったクチなのですが、その後、バンド編成の蓮沼執太チーム、それを拡大した蓮沼執太フィルを経て、こんなさわやかなヴォーカルアルバムにたどり着くなんて思ってもいなかったです。
いや、子どもの頃にピアノとか習っていたんだろうけど、大学では環境学を専攻したことで、環境音をレコーディングするようになり、それがきっかけでフィールド・レコーディングやプログラミングを始めた到達点の1つがこのアルバムだと思うとほんとすごい。
個性の強いわけではないさりげない雰囲気のヴォーカルを引き立てるアレンジが心地よいのですが、ところどころで初期の電子音楽~エレクトニカを想起させる音があったり、チームやフィルのときの音を思わせたり、今までの実験的な部分をうまく歌を中心にしたポップスに昇華させているところは、なんとなくこれは蓮沼執太にとっての大瀧詠一の「ロング・バケーション」か?とか思ったり。なんて書くとおじさんの戯れ言みたいになってしまいますね。