「ku:nel」(Vol.17/2006.1.1)

「ku:nel」は、会社員の私にとって田舎暮らしの現実離れした内容が多くなってしまっているような気がするし、広告とのタイアップ記事ばかりのような気もするし、前回の「本と料理」の特集でがっかりしたこともあって、もう買うのはやめよう、と思っていたのだけれど、本屋に新しい号が平積みされているのを横見で見てみたら、「パリのすみっこ案内」という特集で、表紙・イラストは堀内誠一・・・・。これって反則でわ?と思いながらも、ダブルポイントをねらってタワーブックスで購入(せこい)。パリに行く予定も“あて”さえもない割には、なんだか今年はパリについての本をよく買ったり、読んでいるような気がするのは、単に山田稔と堀江敏幸の本をよく読んだせいか。

会社が終わってから友達が主催しているグループ展のクリスマス・オープニング・パーティに行く。場所は、去年その友達が写真展を開いた白金台のProspect Hair Designという美容室。グループ展が1日から始まっているうえにクリスマスにはちょっと遠い6日にパーティが開かれたのは、美容室がお休みだから、らしい。しかもその友達が展示に参加しているわけではなくて、9月にadd Cafeで行われたグループ展の時と同じように会場の構成などを含めた企画ということらしい。せっかくなんだからいくつか作品を出せばいいのにとも思ったりすもするけれど、それはよけいなお世話か。まぁどちらにせよ、パーティにはかなりの大勢の人が集まっていたので、ゆっくり作品を見るという感じではなかったけれど。
会社を出るのが遅くなってしまったせいで、会場に着いたのは9時前くらいだったので、ボサノヴァのライブもヘアカット・ショーも見れずじまいでしたが、いろいろな人とおしゃべりしつつ、ワインを飲み続けたおかげで、ふらふらとしながら帰ってきました。やっぱりこういうパーティは次の日を気にしないで済む週末にやって欲しいな。

「巣立ちの歌」-永井龍男-

週末に雨が降ると一日のうちのほとんどをスペースシャワーTVとかカートゥーンネットワークとかをつけっぱなしにして、家の中でダラダラと過ごしてしまいます。一日のあいだにアジカンとaikoとレミオロメンとエルレガーデンとテリヤキボーイズと・・・・のPVを何回見てしまったことだろう。もう見飽きました。そんなわけで芸能情報にはすっかり疎くなってしまった反面、日本の売れてる音楽には妙に詳しくなっていっているような気がする、ような気のせいのような・・・・。
そんなPVを見ていると、どのバンドも一応、サウンドはUKロックだったり、パンクだったり、あるいはソウルだったり、レゲエだったりするのだけれど、メロディ自体はなんだか湿っぽくて、悪く言うと貧乏くさいなぁ、なんてことを思ったりする。極論と分かっていていってしまうと、2000年以降のロックバンドにおけるくるりの影響の大きさって、くるり自体の評価は別として意外と大きかったのではないか、と。適当。
そうかといって、じゃ、いいメロディってなんなんだろうと考えてみても、コード進行や楽典・・・・といった理論的なことがまったく分からない私には、それをうまく言い表すこともできないのがもどかしい。具体的に“いいメロディ”というテーマですぐに思い浮ぶ曲は、と言えば、「98.6」(Keith)だったり、「Let’s Ride」(Roger Nichols)、「Loving Thing」(Tony Hatch、Jackie Trent)、「Foolin’ Around」(Chiris Montez)、「There is Nothing More to Say」(Millenium)、「Down When It’s UP-UP When It’s Down」(Lou Christie)・・・・といった感じになってしまう。一番はじめに「98.6」が思い浮かんでしまったばっかりに古い曲&定番ナンバーばかりになってしまいましけど。
調子に乗って100曲くらいリストアップしていったらいろいろなジャンルが混ざったり、70番目とか80番目くらいにその人の本音が出たりしておもしろいかもしれない、なんて、思ったりもします。ついでに「私の人生を変えた100曲」とかタイトルつけてミュージックバトンみたいにいろんな人に聞いてみたい。でもめんどくさがって誰も書いてくれないだろうなぁ。逆にすらすらとあげられる人がいたら怖い。音楽で人生変わりすぎですよ。話がそれましたが、これらの曲のメロディにどのような共通項があるのはもちろん分かりません。というか、誰かに教えてもらいたいです。

「Hot Drinks around the World 世界のホットドリンク」-プチグラパブリッシング-

12月に入って本格的に寒くなってくると、ストーブを少し強めにつけて、温かいココアなんかをすすりながらレス・バクスターの「Ricordate Marcellino」をテーマに、フォーフレッシュメン、ミルズ・ブラザーズ、ハイローズ、ブルースターズ、パイド・パイパーズ、ヘンリー・マンシーニ、そしてジョー・スタッフォード・・・・など、昔のコーラスグループのレコードを聴いてみたくなる・・・・。
なんて文章を今までに何度か書いてきたことだろうか。そう考えるともう10年くらい自分の趣味が変わっていないことに気づいたりして、愕然とします。そしてそんなことを夢想して、毎年のようにココアのパウダーを買ってみるのだけれど、たいてい買ってきたばかりの12月に2、3ど飲むだけでそのままになり、春が過ぎた頃、残ったココアの粉を捨てることになるわけです。

メキシコの「ショコアテベック」、北欧の「ノルマンディ・コーヒー」、アメリカの「エッグ・ノッグ」、チベットの「バター茶」、イギリスの「グラスホッパー・コーヒー」、ベラルーシの「ゴゴリッ・モゴリッ」・・・・など世界各地のホットドリンクを85種類集めたこの本を眺めていると、基本的に、特にヨーロッパ方面は、濃いめのコーヒーにアルコールかホイップクリームを加え、シナモンなどの香辛料を振りかける、というパターンが多いことに気がつきます。なんだかんだといっても、「寒いときにはアルコールが一番なのだが、ウォッカをあおり続けるわけにもいかねぇしな」ということなのだろうか。「これらの飲みもの作る」とか「作りたい」なんて書いてしまうとどこからかプレッシャーがかかったりするので、実際に作るときがあるのかどうかはわかりませんが、今年の冬は1つか2つくらいは作るかもしれない、ということで。

前回の続き・・・・
スノードーム教室の後、渋谷に戻ってPIZZA OF DEATHが主催する「PIZZA OF DEATH」を見た。出演はNine Days Wonder、Comeback My Daughters、Your Song Is Goodの三組。Comeback My Daughtersのライブは、今年3回目。ニューアルバムが出ているわけではないので、演奏する曲が毎回それほど違うわけでもないのに、つい見に行ってしまっています。そして見るたびに、風貌もぜんぜん違うし、性格も年齢も違うと思われるメンバーたちが、どうゆう経緯でバンドを組むことになったのか不思議に思ってしまいます。私の中では、ヴォーカルの人が店長をやっているサーフショップに集まる人たちで結成されたバンド、という勝手な妄想が定着しているのだけれどね。でも、曲がいいのはもちろんのこととして、突飛なギミックはまったくないけれど、バンドとしての一体感がすばらしい。
はじめて見たYour Song Is Goodも、オルガンのサイトウジュンがはしゃぎまくりの予想通りの楽しいライブ。やっぱりこういうバンドはCDよりもライブの方がいいですね。いつかワンマンでみたいです。ひとつ気になったのは、途中でサイトウジュンが、PIZZAの話をしているときに「健くん」といっていたことですね。サイトウジュン、いったい何歳なんだ。今どき横山健のことを「健くん」という人はそういないと思うが・・・・(横山剣のことを「剣くん」と呼ぶ人はもっといないが・・・・)。Studio Grownでビークルのビダカトオル(1968年生まれ)に対しては「トオルくん」と言っている記憶がないので、1969年生まれ、同じ歳なのかな?それにしても「娘よ、帰ってきてくれ」「あんたの歌は最高だよ」というバンド名はどうなんでしょう。Nine Days Wonderについてはなにも語るまい・・・・。

「青春放浪」-檀一雄-

いままで「美味放浪記」や「檀流クッキング」といった料理に関する本以外、檀一雄の本を読んだことはなかったのだけれど、古本屋の100円均一の棚に積み重ねられたなかから、なにげなく取り出してみて最初ページをめくってみたら、次のような文章が目に入ってしまい、読んでみる気に。

「尾崎一雄さんに『なめぐじ横町』という作品がある。この小説は主として、尾崎さんと私が、不思議な同居生活(?)をしていた時期を中心に書かれたもので、忘れていたことで思い出したところもあり、どうにも記憶にかえって来ないようなところもあった。」

この後、何十年ぶりかに曽我にある尾崎一雄の家を訪ね、電車の中でちょうど乗り合わせた尾崎一雄の娘さんと話をする。家に着くと入り口まで迎えに来た尾崎一雄に20歳になった彼女のことを、「僕の恋人と言ってもいいくらいの歳になった」なんてことを言って苦笑される。そのやりとりがなんとなく檀一雄らしく、尾崎一雄らしくていい。
しかし話の内容は、戦前、檀一雄が大学の頃、学校にも行かず友人たちと長屋で共同生活をしていたり、軍隊から出て満州に渡ったりと、まだ作家として作品を書き始める前の時代のことが中心。酒まみれ、行き当たりばったりの生活が、どこか当時の世相と歩調を合わせているような、浮いているような、不安定な雰囲気を醸し出している。

週末、出張みづゑ教室の「キラキラスノードーム」に参加して実際にスノードームを作ってみました。スノードームを集め始めて5年くらい経つけれど、実際に作るのははじめて。というか、自分でスノードームを作ることなんてこれまで考えたこともない。
2時間という短い時間ということもあって、ガラスの瓶を使った簡単なものなのだけれど、久しぶりに粘土をこねたりすると、できはともかくとしてなんだか楽しい。久しぶり、というか小学生以来になるんじゃないだろうか?そもそも私は絵とか粘土とか大の苦手で、これからの人生もう二度と絵なんて描かないと決めているほどなのだ。実際、「ガキの使い~」を見てて浜ちゃんの絵を笑えないしくらいだし・・・・。そういうわけなので、できあがったものは小学生が作ったようなものなのだけれど、まぁ自分で作ったものなのでちょっとだけ愛着がわいたりするし、身の丈を考えればこれ以上は望むまい、という感じですかね。

「私の人物案内」-今日出海-

予定ではこの本を取り上げるときに、鎌倉のイワタコーヒーなどについて書こうと思っていたのだけれど、なかなか読み終わらなかったり、書くことがなかったりしたせいで先走ってしまいました。
そんな鎌倉に、昭和7年頃移り住んだという今日出海の交友録である本書では、永井龍男や小林秀雄、林房雄、大佛次郎、久米正雄・・・・など、鎌倉にゆかりのある作家たちが数多く登場して、私にとって興味深い内容となっているのですが、それは知っている作家が登場するから、というだけでなく、その作家の本質をつくような意見をさりげなく書きつつ、それを裏付けるようなエピソードを巧みに紹介するといった書き方や、対象(人物)に対する今日出海の見つめ方のおもしろさという部分が大きいような気がします。井伏鱒二の軽やかな交友録・ポルトレ(肖像)にはかなわないけれど、もっとこの人の書いたものを読んでみたいと思わせるポルトレです。
ついでに書いておくと、今、鎌倉文学館では「文学都市かまくら100人展」が12月18日まで行われています。先日、鎌倉に行ったときに知ったので、私は行けそうにないけれど、川端康成や夏目漱石、芥川龍之介から井上ひさし、なだいなだ、高橋源一郎といった最近の作家までリストアップされたちらしをみていると、ちょっと無理をしても行ってみるべきかなと思う。遊吟舎というブックカフェもできているみたいだし、近いうちにまた行こうと思ってます。冬の鎌倉は寒そうですだけどね。

実を言うと、私は中学受験と高校受験で鎌倉の学校を受験しているので、どうも冬の鎌倉というとそのときのことが思い浮かんでしまう。中学はちょっと受けてみようという感じで落ちたし、高校は滑り止めだったので、第一志望の公立高校に入学したので、けっきょく鎌倉まで通うことはなかったけれど、もしどちらかの学校に通うことになっていたらどういう学生時代を過ごしていたのだろうか。感化されて今ごろでもサザン・オールスターズとか普通に聴いていたり、サーフィンなんかしてみたり(笑)するのだろうか。もしくは学校の雰囲気に反発して実際の私と同じように、スミスとかニックヘイワードなんかを聴いて、週末になると横浜のタワーレコードや、ユニオンに通うという学生生活を送ったのだろうか。どうでもいいことだけれど、想像してみるとちょっと楽しい。

「回想の本棚」-河盛好蔵-

河盛好蔵は、阿佐ヶ谷会のメンバーとしていつか読んでみたいと思っていた人。阿佐ヶ谷会でフランス文学者といえば、青柳瑞穂の名前がすぐに思い浮かんだりするけれど、この本ではその辺の交友録についてはあまりふれてなくて、ちょっと肩すかしだったりします。

ところで会社の引越しがあって、先週から新しいオフィスに通い始めたのだけれど、読書時間がかなり減ってしまったような気がします。時間的には今までよりもちょっとだけ通勤時間が短くなっただけなのだけれど、乗り換えが細かい。会社の場所がどこだかあえて書かないけれど、渋谷に出るまではこれまでと同じとして、その後、渋谷で乗り換えてひと駅、そこでまた乗り換えてふた駅で降りる、いう感じなのです。、それでは電車に乗って鞄から本を出して読み始めたとしても1ページか2ページで駅に着いてしまう。なのでこの雑記のペースも少し落ちるかもしれません。と、書くと単なるいいわけのような気が・・・・。
そういうこともあって、思い切ってiPodなんて買ってしまうのもいいかもしれないなんて思始めてますす。CSが見られるようになってからは、特に好きなミュージシャンが出ているわけでもなく、ヒット曲のPVが流れているだけでも、ついスペースシャワーとかMTVとかつけっぱなしにしてしまうので、CD買ってもあんまり家で聞いてないしね。といっても、困ってるわけでもないし、今すぐ欲しいというわけではないので、気長に考えることにしよう。ゲームという選択もあるわけだしね・・・・。そもそもゲームなんて今までほとんどやったことないですけど。

「BREATH TAKING」-金澤アリアードナ-

Fire-Kingをはじめとして、McKee、Jeannette・・・・といったメーカーの1920年代から1970年代にかけて作られた製造されたアメリカン・ヴィンテージ・グラスウエアを集めた本。本のサイズが大きいため、写っている食器の質感まで伝わってくるようで、ページをめくるたびに息をのんでしまいます。マグカップのカラフルなポップな感じもいいけれど、やはりジェダイをベースとした食器類に、こうしたグラスウェアの本当の魅力があるような気がしてきたりして、我が家のファイヤーキング熱が再燃してしまいそうです。もっとも簡単に手を出せるものでもないですけれど。灰皿なんて実際に手に入れたら、もったいなくて使えってしまうと思うけれど、フォルムとか質感がものすごくよいのですよ。

先週末は急に思い立って鎌倉に行って来ました。ほんとうはもう少し暖かな秋の季節に行きたかったのですが、今年は気持ちの良い秋晴れの休日があまりなかったような気がしますが、どうでしょう。いつもなら「こんな日はお弁当持って牟礼の里公園(三鷹台)に行こうか」という気分になったりするのだけれど、そういうときがないままに寒い季節になってしまいました。
午後から家を出たので、江ノ電に乗ってあちらこちらに行ったり、歩き回ったりすることはできなくて、いつものようにディモンシュでご飯を食べて、小町通りの周辺をちょっと歩いただけで暗くなってきてしまうという状態。でもあまり移動しなかったせいで、前々から食べてみたかったイワタコーヒーに入ってホットケーキをはじめて食べることができました。お店の中は外から見るよりもずっと広くて、奥の方には庭があって昼間、晴れている時に来たらいい感じなのだろう。テーブルや椅子も(昭和23年創業ということなので、開店当時からということはないだろうけれど)昔からあるような少し懐かしく、落ち着いてゆったりとできます。肝心のホットケーキは、厚さが3から5cmもあるようなもので、表面はカリカリしていて中はふんわりふっくらとした食感がとてもおいしい。次回から、鎌倉に来たときは最後にここでお茶して帰るようにしよう。

「春 その他」-吉田健一-

気が付けば週末が終わってしまいますね。金曜日の夜は古今亭駿菊独演会を見に行って来ました。独演会と言っても曲芸師の翁家和助や五街道佐助、昭和のいるこいるも出演。もっとも私は会社を出るのが遅くなってしまったので、途中からになってしまったのですが、のいるこいるを見ることができたので満足です。そもそも金曜といえども平日に5時半会場、6時半開演はというのは、ちょっと早い。
ちなみに古今亭駿菊さんは、ミオ犬の友達の旦那さん。そういうつながりもあって、前回、落語を見たのは古今亭駿菊さんの真打昇進記念独演会の時で、その次の年のお正月に浅草に行って初詣をした後、半日くらい演芸ホールで落語を聞いて以来、そういう機会もなかなかなくなってしまってました。ついでに調べてみたら、真打昇進記念独演会があったのは平成14年、もう3年前のことでした。まさに光陰矢のごとし。

「春 その他」は、吉田健一の遺作集で、「余暇」「東京の町」「犬」「ロンドンの飲み屋」「文庫と私」といったタイトルが並んでいて、思いつく事柄を気ままに書いてみた、という印象の本だけれど、ある意味、吉田健一のエッセンスとなるものがピックアップされているので、さらりと読むには、もしくははじめて吉田健一の本を読む人にはいいかもしれない。
とはいっても吉田健一の文章をさらりと読むのは難しいですけどね。しばらくぶりに読むとやはり読みにくい文章だな、とつくづく思ってしまいました。しかし、だんだんと読み進めていくうちにリズムがつかめてきて、いい感じになってきたところで読み終わってしまい、なんだか欲求不満な気分が残ってしまった。もう一冊くらい続けて吉田健一の本を読みたい気分になっているのだけど、手元に未読の本はないし、そうそう吉田健一の本を手頃な値段で手に入れられるわけでもなく・・・・。いや、この本をもう一度繰り返して読んでもいいかもね。

「けむりよ煙」-永井龍男-

西南戦争で家を焼かれたために、鹿児島から東京に出てきて、銀座でたばこ屋を開業、自ら「広告の親玉」、「安売りの隊長」と称して、誇大広告的なキャッチフレーズを看板やポスターに使った宣伝でのし上がっていった岩谷松平と、輸入葉たばこを原料に、たばこそのものはもとより、箱の印刷にいたるまですべてにこだわり、欧米の最新技術を次々と導入、ハイカラというイメージでたばこを売り出していった京都の村井吉兵衛による、たばこの売り上げ合戦を描いた作品。最終的には、アメリカのたばこトラストと手を組んだ村井が勝利するのだけれど、時代は日露戦争になだれ込む直前、政府の戦費を調達する必要にも迫られ、たばこは政府の製造専売となっていく。
まぁけっきょくは、今も昔もアメリカと手を組んだ方が勝つということなのだろうか?“国益”を唱えトラストとの合併を頑固として拒否する岩谷側から考えるとそんなことも思ったりもする。永井龍男自身は、どちらといえば、破れた岩谷松平に比重を置いているが、きちんと村井吉兵衛側からの見方も描いていて、読み進めていくとそのギャップがあらわになっていくという構成になっている。ただ、神田生まれの江戸っ子である永井龍男としては、九州から出てきた岩谷と京都の村井が、銀座という東京で繰り広げる戦いをどう思っていたのだろうか。少なくとも山口瞳だったら「この成金の田舎者」と一刀両断しそうな気はする。

映画をあまり見なくなってもう3、4年になる。たまに映画館に行っても、見たくなるような予告やちらしほとんどなかったりする。私が映画に対して鈍感になってしまったせいなのか、映画自体がおもしろくなくなってしまったのか、おもしろい映画を映画館が上映しなくなってしまったのか、よくわからない。けれど、なんだかDVDが出てきてから、どうも映画というものが映画館で上映されるものではなくて、DVDを買ったり、レンタルしたりして家で見るものになってしまい、映画館で上映されるのは単にDVDを売るためのプロモーション上映という感じに思えて仕方がない。というのは、単なる個人的な考えで、実際は映画館の観客動員数は増えているらしいから、映画を見なくなった私の勝手な言い訳ですね。
とはいうものの、かなり前から昔の日本映画をちゃんと見てみたい、と思っていて、阿佐ヶ谷のラピュタやフィルムセンターのスケジュールをチェックしている。でもはっきりいってなにから見ていいのやら、どこがおもしろいのかぜんぜん分からない。そのくせ見たいと思っている獅子文六原作の作品に気が付かず見逃したりする。先日もCSでやっていた永井龍男の「風ふたたび」を見逃したばかり。ほんとはそうやってえり好みせずに、どこかで上映されているものを端から見ていって、その結果、原作が永井龍男だったり、獅子文六だったり、小島政二郎だったり、井伏鱒二だったりと、好きな作家だった・・・・というのがいいのだろうなぁ、と思う。とりあえずは今月CSで「珍品堂主人」をやるみたいなので見逃さないようにしなければ・・・・。

「沙羅乙女」-獅子文六-

週明けに名古屋に行ったから、というわけではないけど、昨日から体の調子がどうも悪い。早く寝たせいで、――しかも今日の朝寝坊した――直ってきたものの、昨日はのどが痛くてたばこを吸うたびに、何かを食べるたびに、吐き気がした。といっても、実際には“気”がするだけで、吐いたりするわけではないのですっきりしない。で、小さな声で「HI!CHINA!」のメロディを口ずさんで見たりする。36歳、空中ブランコに乗る中年男。適当。

ところで、名古屋に行ったと言っても日帰りなので、どこに寄るということもあまりできない。空いている時間といえば、説明会が始まる前の1時間と終わった後の30分くらいか?しかも前回は最寄り駅が栄だったのだけれど、今回は池下。池下ってどこ?なにがあるの?という感じです。けっきょく、始まる前に池下にあるキンダーブックでお茶して、帰りは駅前にあったブックオフに寄って帰ってきました。
キンダーブックは、壁一面に本棚が作ってあり、絵本や写真集、雑誌などが並べられていて、――お店の名前にするほど絵本は多くなくて、どちらかというと店主の読んだ本をどんどん店に置いているという感じのセレクションではあったけれど――なかなかいい感じのカフェでした。おすすめらしい期間限定のショコラショーというチョコレートドリンクも、それほど甘くなくて、でもこってりしていておいしかったしね。
ただ、私が行ったときは、20代半ばくらいの女の子6人くらいの団体と、40過ぎの女の人3人くらいの団体がずっとおしゃべりしてて、私としてはなんだか居心地が・・・・。知らない土地で、ここしか目当てがなかったので入ってみたものの、普段だったら絶対に入らないかもしれない。単にタイミングが悪かっただけなのかもしれないけれど。

帰りに松坂屋で大口屋の餡麩三喜羅を買って、家に着くなり食べる。ふわふわした食感と、こし餡の甘さ、包んでいる山帰来の葉のちょっとした塩味が口の中で混ざり合って、なんとも言えない不思議なおいしさで、いくつでも食べられそうな気が・・・・。