上林暁の作品は、基本的には身辺雑記を中心にして、フィクションを交えてまとめたような作風なので、厳密には私小説とは言えないのかもしれないけれど、その分、作品としてカチッとまとまっていて、だらけるところがないので、読んでいても、一つ一つを一気に読んでしまいたくなります。尾崎一雄とか庄野潤三とか、身辺雑記を小説の題材にした作品を読んでいると、なんとなく途中で「もういいかな」と思ってしまう瞬間があるんですよね。単に私の集中力の問題かもしれないけれど‥‥。
さて今日のおやつは、ミッドタウンのB1にあるネインのドーナツ。ヨーロッパ風の手作りドーナツということらしいのですが、“ヨーロッパ風のドーナツ”というのが、そもそもわたしには分からなかったりしますが、見た目はドーナツと言うよりケーキっぽくてかわいいですね。ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」に小道具として出てきても違和感ないかも、なんてちょっと思ったりもします。
わたしが食べたのは、今年の春限定の「スプリング」。ケーキ系のドーナツにホワイトチョコレートをコーティングして、キャラメルをかけた上に、カシューナッツとドライいちごをおいたもの。いやなんか書いているだけで、すごいですね。なにがすごいのか分からないけど‥‥。
で、夜、こんなドーナツを食べながら、ホテル・ニュー・トーキョーの「2009 spring / summer」を聴いるんだけど(ギャング・オブ・フォーじゃないのかというつっこみはなしで)、もちろん赤ちゃんの泣き声が響いたりして、そんなお洒落な雰囲気にはなってません。そんな雰囲気を演出しようとしているわけではないんですけどね。
「2009 spring / summer」は、ゆったりとしたリズムの中を軽やかにすり抜けるようなエレピや、決して熱く鳴り響かないホーンセクション、そして主張しないコーラス‥‥など、ある意味、まとまりすぎて没個性となりそうなギリギリのラインを狙っている感じがすごい。そして彼らの音楽を「おしゃれ」のひとことで片づけられてもぜんぜん気にしないくらいの潔さがいいと思う。
まぁその辺は、聴く人の趣味の分かれるところかもしれません。正直これ聴くんだったら、●とか●を聴いた方がいいのでは、という●をいくつもあげられると思うし、●をあげていくことの無意味さもあるわけで‥‥。
ひとつ言えるのは、そんなことは、ドーナツを食べながら考えることではないってことですね。