今年の夏は、品川にある原美術館と谷中のギャラリーSCAI BATHHOUSEで、ウィリアム・エグルストンの展覧会が行われていたので、タイミングが合えば見に行きたいな、と思っていたのですが、予想していたとおりそんな機会もなくて、夏はおしまいになってしまいました。
そのかわりと言ってはなんですが、秋になって涼しくなってきたので、昼休みに六本木のツタヤまで歩いていって、初期の作品をまとめた「2 1/4」を購入。なんでツタヤか、というと、単にTポイントが5000円分貯まったので、それを使いたかっただけなんですけどね。おかげでかなり安く買えたので、今月はもう一冊くらい写真集を買おうかな、なんて思ってます。
ウィリアム・エグルストンは、1939年アメリカ南部のテネシー・メンフィス生まれの写真家で、最初期の頃はモノクロで撮っていたようですが、1960年代半ばからカラーに転向し、1970年代以降はカラー写真の表現に新たな可能性を切りひらいた写真家として評価されています。被写体としては、生まれ育ったアメリカの南部の風景が多いのですが、今回の展覧会の中心になった京都やパリのほか、ドイツやロシアなどのヨーロッパ各地やアフリカなどの作品も残しています。
ちなみに、プライマル・スクリームは、アメリカ南部のサウンドに傾倒したアルバム「ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ」をはじめとして、いくつかのシングルでジャケットの写真にエグルストンのの写真が使われています。あとビッグ・スターや亜レックス・チルトンのレコードジャケットでも使われているらしいのですが、実際にレコードがないので未確認。いつかそれらのオリジナルプリントも見てみたいと思っているのですが、今回の展覧会では展示されたのでしょうか?
さて、この「2 1/4」は、エグルストンがモノクロからカラーに転向して間もない1966年から1971年にかけて制作された作品集で、アメリカ南部の日常風景を、やわらかい独特の色合いで表現しています。色彩については、プリントの工程によるところが大きいみたいで、1970年代までは、ダイトランスファープリントという、処理過程が複雑で、高度な技術を必要とする特殊な手法でプリントしていたようです。
しかしそんな特殊なプリント工程を経て、作りあげられた色彩も、デジタルの時代では、それっぽいものが簡単に作れてしまうんですよねぇ。いくら写真が複製の芸術といってもオリジナルのプリントはあるわけだし、それとまったく同じものを印画紙に焼き付けることは多分できない(できるのかな?)。
それを考えると、元のデータがあれば、明るさや色調、コントラストなどを変更したり、さらにフィルターなどで効果を加えたり‥‥といったことが簡単にできてしまい、かつ本当に同じものが何枚も制作できるという状況のなかで、今の写真家たちはどのような方法で写真を撮り、それを作品として仕上げていくのか、知りたくなってきます。
というのも、先日、自分で撮った写真をスキャンしてFlickrにアップしていることを書きましたが、スキャナーの性能が悪いせいもあるのですが、フィルムではなくて紙の写真を普通にスキャンすると、やはり、紙とは違う色合いになってしまう。なので、そのあと元の写真に近いと思われるくらいにフォトショップで補正をしているんですが、それを何枚か行っていると、だんだんどれが基準なのかわからなくなって、だんだんエスカレートしてしまって、“撮れた”写真の内容に近づけるつもりだったのが、“撮りたかった”写真に近いように修正してしまうのですよ。でももうそれがいいのか悪いのかさえわかんないです。だいたいデジカメの場合、シャッター押した時点で補正されちゃうでしょ。なんかね、今さらですが、デジタルによっていろんなもの概念が壊れていく今日のこの頃。