「今日も珈琲日和」-鶴巻麻由子-

■小金井で曜日ごとお店の軒先や小金井公園などに移動して屋台で営業している珈琲屋さん、出茶屋さんの本。Webサイト「かもめの本棚online」に連載されていたエッセイをまとめたもの。
高校を卒業してから出茶屋を始めるまでのことや、個性的な常連さんたちのエピソード、そして屋台で珈琲を淹れることについてのこだわりや思いがつづられています。いろいろなエピソードが、珈琲そして出茶屋というお店につながっていくかのよう。その時その時に出会った人たちも暖かく鶴巻さんを出茶屋さんに導いていて、そういった積み重ねやたくさんの集まりが出茶屋さんなのだなぁと思う。

■わたしは、わざわざ出茶屋さんに行ってコーヒーを飲むというよりは、はけ市や小金井のイベント、公園などで見かけたときに立ち寄る(?)という感じなのだけれど、なんか子どもたちを連れてイベントとかに遊びに行くと、たいてい会場のどこかに出茶屋さんがいるという気がします。
昼間に一人もしくは夫婦二人で出歩かなくなったこともあって、普段、カフェや喫茶店に入ってのんびりするということがほとんどなくなってしまった今、わたしにとっては外で珈琲を飲む数少ない場所になってます(会社帰りだとどうしてもコーヒーというよりビールって感じになってしまうので‥‥)。外なので子どもたちと遊びに行っても放っておけますしね。

-■週末は、アトリエテンポのお米農家やまざき チャリティキャラバン東小金井へ。
2015年の秋に起きた鬼怒川決壊により、2メートルの泥水に冠水してしまったというお米農家やまざきさんのチャリティ・イベントで、アトリエテンポ以外でもいくつかの場所で行われています。
アトリエテンポでもチャリティグッズ販売やマルシェ、持ち寄り交流会、トークイベント、日替わりワークショップなどたくさんのイベントが行われていたのですが、わたしが行った28日は、アジアンミールや松庵文庫、seto、つむぎや、copse、金菜屋、お菓子屋ボタン、オタマヂャクシ工房といったお店が出ていたり、2月のはけのおいしい朝市でもやっていた「ひなたの粒シェイカー」づくりや木のスプーンづくり、元おむずび研究所のおむすびワークショップなどが行われていました。
まぁうちは米粉のパンケーキを食べたり、ちょっと買い物をしたりしただけで、相変わらず、子どもたちがお店の外を走り回ったり、散歩中の犬にさわってみたりと、どこにいっても同じだなという感じでしたけどね。
毎回言ってますが、このスペースが東小金井ではなくて武蔵小金井にあったらねぇ~

「市井暦日」-安住敦-

■安住敦は久保田万太郎と俳句の雑誌「春燈」を発行していた俳人、随筆家。その「春燈」の編集後記などに掲載された勤めを退職してからの日々をつづった身辺雑記が収録されてる。続けて読んでいると途中でちょっと飽きちゃったので、こういう本は2冊くらい平行して読むべきかも?

■4月から漣くんが小学校に入学するということで、去年の後半から物置部屋となって使っていなかった部屋を片付けて、机と2段ベッドを設置。机のほうは特に考えていなかったのですが、父親が甥っ子に作ったものと同じものを作ってくれた。
昔から日曜大工や庭いじりが趣味で、わたしの机やテレビやステレオの台などを作ったり、外に置いてある物置も父親の手作りだったりする。漣くんの机を一緒に組み立てながら、子どもの頃に週末になると、日曜大工の手伝いをさせられていたことを思い出したりしました。
あの頃は友だちと遊びに行きたくて、嫌々手伝っていたけれど、今になってみるともっと手伝っておけばよかったと思う。庭の通路を作るためにコンクリートをかきまぜたりしてたなぁ~

-■今回の机は、どこかの製品化されている机を元に作ったらしく、高さも変えられるようになっている。「わりと広めにしたし、合板じゃないから高校生まで使えるよ」というけど、甥っ子が一人っ子に対してうちは2人なので部屋に2つ並べられない感じなのでちょっと困ってる。本人もうちに来て組み立てたら大きかったというのが分かり、どうしようかといういう感じでした。きちんと伝えなかったわたしが悪いですね。
ちなみに製品版にはなかった本棚もついているところがなんだか日本人らしいと思う。製品のほうは、シンプルというところが売りになっていると思うんですよね。特にデザインの邪魔になっているわけではないのでいいのですが‥‥

-■椅子のほうは、背もたれとか曲線にしなくてはいけないので、さすがに作るのは難しいということで、国分寺の古道具屋さん、kasugaiで購入。ネットで調べていて見つけたお店で、昨年に開店したばかりの新しいお店らしい。今はお店はないらしいのですが、もともとは店主の父親も古道具屋をやっていたらしく2代目ということ。国分寺の駅からも遠くないし、置いてあるものも落ち着いた感じのいいものが多かったし、どれもきれいに手入れされていたので、国分寺に行ったときはできるだけ寄るようにしたい。
レジの横に小さ目のローライの2眼レフが置いてあって、持ち歩くには手ごろな大きさだったので、ちょっと欲しくなってしまったけど、話を聞いてみたら普通の6×6のブローニーではなくてローライオリジナルのフィルムを使うということだったので断念。ザンネン。お風呂場とかで赤い光をつけて、6×6のフィルムを切ったら使えるかな?と一瞬思いましたが、それをやるとお店で現像してくれなそうなので、現像も自分でやらなくちゃいけなくなるんですよね。

「在所言葉」-井伏鱒二-

■永井龍男が、横光賞を受賞した時のことや柳田国男のこと、早稲田界隈のこと、広島旅行のことなど特にテーマもない随筆集。タイトルとなっている「在所言葉」は、生まれ故郷の福山市の方言についてつづったもので、しゃべることばをそのまま文章にすることで、方言のコミカルな部分やリズミカルな部分をうまく引き出している。
また将棋の観戦記「将棋早指王位決定戦」では棋譜が記載されおり、あとがきでは「かねがね採譜の図を入れた随筆集を出したいと思っていた」と書かれているのだけど、採譜を収録した随筆というのは、わりと多いんでしょうか?単純なわたしは山口瞳の「血涙十番勝負」を思い出したりしました。まぁ山口瞳のほうは観戦記じゃないですけど。
というわけで、テーマもない随筆集と書いたけれど、内容的にはいろいろな趣向が施されていて読んでいて飽きない。

-■最近はあんまり新譜も買ってなくて、欲しいと思っているCDが何枚もたまっている状態なのだけれど、年明けにタワーレコードのポイントが失効するということで、METAFIVEの「META」と蓮沼執太の「メロディーズ」を買って、通勤時間はそればかり聴いている。
METAFIVEは、高橋幸宏を中心に小山田圭吾、砂原良徳、テイ・トウワ、ゴンドウトモヒコ、LEO今井の6人で結成されたバンド。CDを買う前にYouTubeで「Don’t Move」を聴いたのですが、この6人から想像できるサウンドではぜんぜんなくて、びっくりした。
砂原良徳、テイ・トウワというメンバーがいるだけに、基本はテクノ(ポップ)なのだけれど、全体的にはファンク。こういっちゃなんですけど、細野晴臣の「S.F.X」やFriends of Earthを2016年版にパワーアップした感じもありつつ、密室的なところはなくより開放的にバンドのサウンドとして消化している。
一応、一人2曲ずつ作曲しているのだけれど、誰が作ったのかほとんどわからないところもいい。「Luv You Tokio」なんててっきり幸宏の曲かと思っちゃいました。そんなわけで、たぶんこれは各メンバーが好きな人が聴くとちょっとがっかりするのかもしれないとも思ったりします。逆にソロではできないことをこのバンドでやっているとも言えるわけで、そこを引き出す高橋幸宏の手腕は、前のバンド(?)Pupaよりも徹底していてスリリングです。
この後、各メンバーがソロを出した後くらいに、またアルバムを作ってくれないかなと思う。いや、そんなこと言っていたらいつになるのやらわからないですね(特に小山田圭吾、砂原良徳)。

-■蓮沼執太の「メロディーズ」は、全曲蓮沼執太のヴォーカルを前面に出したアルバム。わたしは、「POP OOGA」で蓮沼執太を知って、「HOORAY」「OK Bamboo」「Shuta Hasunuma」と遡っていったクチなのですが、その後、バンド編成の蓮沼執太チーム、それを拡大した蓮沼執太フィルを経て、こんなさわやかなヴォーカルアルバムにたどり着くなんて思ってもいなかったです。
いや、子どもの頃にピアノとか習っていたんだろうけど、大学では環境学を専攻したことで、環境音をレコーディングするようになり、それがきっかけでフィールド・レコーディングやプログラミングを始めた到達点の1つがこのアルバムだと思うとほんとすごい。
個性の強いわけではないさりげない雰囲気のヴォーカルを引き立てるアレンジが心地よいのですが、ところどころで初期の電子音楽~エレクトニカを想起させる音があったり、チームやフィルのときの音を思わせたり、今までの実験的な部分をうまく歌を中心にしたポップスに昇華させているところは、なんとなくこれは蓮沼執太にとっての大瀧詠一の「ロング・バケーション」か?とか思ったり。なんて書くとおじさんの戯れ言みたいになってしまいますね。

「七時間半」-獅子文六-

■「コーヒーと恋愛」がちくま文庫から再刊されたときはおおと思う一方でなんで今?という疑問もあったけど、その後も「てんやわんや」「娘と私」と、獅子文六の本が次々と出ているのにちょっとびっくりしている。「七時間半」は、映画化された「特急にっぽん」はラピュタで見たけれど、本の方は読んでなかったので文庫化はうれしい。内容としては、東京から大阪までの七時間半の間に繰り広げられる恋のゆくえをめぐるドタバタ喜劇。食堂車のコック、美人の添乗員、堅実な経理係、大阪商人の社長、軟弱な大学院生‥‥など、主要な登場人物をはじめ、脇役にいたるまでこれでもかというくらいわかりやすいキャラクター、並行して総理大臣が乗りあわせ爆弾騒ぎまで起きるなど、相変わらずのエンターテイメントな作品で理屈なしで楽しめます。今、食堂車がついている電車ってどのくらいにあるのかわかりませんが、食堂車でビール飲みながら車窓の景色を眺めたりしたい。

-■1月の泥酔ファンクラブでひさびさにレコードを回しました。夏にやったイン・ザ・パシフィックの100回記念以来なので半年ぶりくらい。普段、そんなにレコードを買っているわけでもないし、このくらいのペースがちょうどいい。時間もそんなに長くないし、レコードを持って行くのも楽。昔は22時から5、6時くらいまでで3人で回すというのがだいたい普通だったので、段ボールにレコード詰めて、リュックにシングル盤入れて移動したりしていたもんね~で、かける曲もイージーリスニングばかりで、あんまりお客さんのことを考えてなかったりする。聴きやすい、もしくは踊りやすいような流れはすごく考えるけどね。もうジャンルを広げていくのは無理なので、そろそろこの路線できちんと回せるようになりたい。まぁレギュラーでイベントしているわけでもないんで、なかなか詰め切れません。
泥酔ファンクラブのサイトにもプレイリストを掲載していますが、一応、コメントつけてこちらにも載せておきます。

-[1]「Something’s Coming」-Button-Down Brass-
レイ・デイヴィスというトランぺッターを中心にしたイギリスのブラスセッション。もちろんキンクスの人ではないです。ミュージカル映画「ウェストサイド・ストーリー」からの曲なんですが、低音が効いていてかっこいいアレンジになっています。

[2]「Thunder Shake」-Les & Larry Elgart-
レスとラリーの兄弟による「Elgart Au Go-Go」というアルバムからのソウルフルな1曲。小西康陽がかけていたりする定番らしい。まぁこれ見かけたら絶対買うでしょ、というくらいストレートなジャケット&サウンドです。

[3]「One Two Three」-Doc Severinsen-
個人的にレン・バリーの「One Two Three」は、はじめてイベントで一番最初にかける曲と決めてるので、本当はこの曲を1曲目にかけるつもりでいたけど、なんとなく流れを作りにくかったので、この位置に。安定のCommandレーベルからの1枚。

[4]「Bee Dee Bum Boo」-Rhythm And Beat-Kings-
ちょっとテンポを落として、ドイツのジャズ・レーベルMPSの前身SABAのコンピから。Rhythm And Beat-Kingsについてはよく知りません。こに収録されているミュージシャンの単独のアルバムが欲しいけど、まぁ見つからないね。

[5]「Dimension Futur」-Lucien Lavoute et le Travelling Orchestra-
フランスのライブラリーもの。

[6]「Sunday Ride On A Thursday Afternoon」-The Main Street Singers-
先生たちを中心とするヴォーカルグループらしいです。ジャケットのイラストはなんですが、折り重なっていく男女混声コーラスがさわやか。

[7]「That Same Old Feeling」-赤い鳥-
トニー・マコーレイのよる名曲。いろいろな人がカバーしていますがオリジナルはPickettywitchなのかな?アレンジはオリジナルとほとんど変わらないけど、前の曲に合わせてちょっと軽い感じのする赤い鳥のバージョン。あくまでも個人的な感想ですけど。

[8]「City Girl」-Jefferson-
元ロッキン・ベリーズのヴォーカリストによるソロ。伸びやかで適度にソウルフルなヴォーカルで高揚感のあるポップな曲なのでついかけてしまう曲です。スパイラル・ステアケースの「More Today Than Yesterday」とかね。

[9]「Lovin’ Thing」-The Big Band Syndrome-
「Lovin’ Thing」は60年代の曲で10位以内に入るくらい大好きな曲。サックス/フルート奏者のBob Jung率いるこのThe Big Band Syndromeのバージョンは、高速といってもいいくらいテンポが速くてかっこいいです。Commandレーベル。

[10]「Go Ahead」-Samantha Jones-
マーク・ワーツが手掛けたフォード車のプロモーション用の曲。

「幻のイマージュ」-エルヴェ・ギベール-

■何年か前に、評論家ではなく作家や写真家自身が、写真について書いた本を読んでいたときに思い出して再読しようと思ってた本。このシリーズは、ジャン・フィリップ・トゥーサンとかの本も出てて1990年代半ばころにかなり話題になったけれど、あまのじゃくなんでその時には読んでいなくて、実際に読んだのは少しあとくらい。「幻のイマージュ」というタイトルに惹かれて手に取った記憶があります。多分、堀江敏幸の文章を読んだのはこの本が1番最初になると思うんだけど、もちろんその時は翻訳者として意識していないし、その何年後かに堀江敏幸の本に夢中になるなんて思いもしていませんでした。

■ほかの作家が書いた写真をめぐるエッセイと同様に、ときには自身の物語となり、ときに普遍的な写真についての物語となり、ときに抽象的なイメージの記述が混ざりこみ‥‥といった具合に輪郭がぼんやりとしてはっきりしない。そしてそこにこれらの本のおもしろさがあります。この手の本を読んだ後にいつも書いているような気がするけれど、また気が向いたときに読み返すために手元に置いておいておきたいですね。
そういう意味では、ロジェ・グルニエ、ロラン・バルト、スーザン・ソンタグ‥‥など、写真についての本をシャッフルして、記載されている写真を載せたり、写真家についての注釈を入れたりして、アンソロジーというか、バラエティブックみたいな形にまとめたらおもしろいんじゃないかな、なんて適当に思ったりもします。どれもそれぞれの章はそれほど長いわけではないし、最初から読まなくちゃいけないというわけでもないですしね。

■なんとなく書く気にもなれないままで放置していたら、3か月も経ってしまいました。いつのまにか年も明け、一年の振り返りもなし。こんなに期間が空いてしまったのは、一時期、わけあってサイトを更新することを自粛していた時以来ですね。特に何をしているというわけでもないけれど、簡単にでも毎日の出来事とかを書いておくのもいいかな、と思うんですけどね。まぁめったに読み直すことはないですけど。

-■年末年始は、お休みのギャラリーも多いので、写真展などに行けてませんが、年が明けてから、平林秀夫挿絵展 「コトバと言葉の間」と渡邉知樹展「花、花、ギガンテス、花」を見てきました。平林さんの挿絵展は、小金井でリアカーにコーヒーを淹れる用具一式を積んで、公園やお店の前などでコーヒーを淹れている出茶屋さんのエッセイ「今日も珈琲日和」の挿絵などを展示したもの。場所もいつも出茶屋さんが出ている平林さんの平屋で、絵を壁に展示するだけでなく、一つ一つ本を開くように絵を見れる形のものがあったりして、出茶屋さんのコーヒーや平林さんの作ったカレーを飲みながら、何度も見返してしまいました。鉛筆で細かいところまで丁寧に描かれているので、本を見た時とは印象が違って見えたり、一見すると、ちょっと怖い感じの絵もじっと見ているとユーモアが隠されていたりするのが興味深かったです。

-■渡邉知樹くんの個展は、前回のにじ画廊以来かな。ピンクを基調とした抽象画で、ギャラリー自体がピンクに染まっているようでした。タイトルに「花」がついているように春らしい、ポジティブな雰囲気の絵が多く、ピンクの色自体もさまざまなピンクの色が使われていて、立体的というか浮き立ってくる感じでした。
片隅には鳥のオブジェも置いてあり、今回も一つ購入。個展に行くたびに一つ一つ買っているこのオブジェも結構増えてきて、うちの鳥オブジェコーナーもにぎやかになってきました。漣くんと暁くんの好みが違うので、なかなか一つに選べないのが難点ですが‥‥。ちなみに今回は漣くんが選択したものを買ったのですが、いまだに「あっくんは足が角ばったのがよかったのに」と、ことあるごとに言っている始末。逆にもう少し成長したら、興味がなくなって、「どれでもいいよ」とか言うんでしょうか。