「阿蘭陀まんざい」-鈴木信太郎-

◆画家の鈴木信太郎とは知らずに買った本
実を言うと、この本は、フランス文学者のほうの鈴木信太郎の「記憶の蜃気楼」と並べられ置いてあったのを内容もろくに見ずに値段だけで見て両方買ったので(両方とも500円!)、読み始める直前までフランス文学者の鈴木信太郎の本だと思ってました。

それで、前に読んでいた本が読み終わって次に何を読もうかと本を函から出してみたら、なんだか可愛い装丁で、ちょっと意外だなぁと思い、さらにページを開いてみたら、あの特徴的なイラストとそれに添えられた「す」の署名が目に入って、そこで洋画家のほうだと気がついた次第。
いやや、作品集だってなかなか手に入らないのに、まさか洋画家の鈴木信太郎の本を“読める”なんてね、ほんと本は出会いだなーとかなんとか‥‥文章の内容としては、医学博士である永井隆博士の「花咲く丘」の挿絵を担当したことがきっかけとなった長崎旅行の様子を中心に日々の出来事などがイラストとともにつづられています。

中には住んでいた荻窪の様子や挿絵を担当した井伏鱒二の家を訪問した様子なども書かれていたり、荻窪~吉祥寺~三鷹台~久我山といったエリアに暮らしている(た)人たちの家の地図が描かれてあって、それに合わせるようにそれぞれの人についての思い出などがつづられていたりして、阿佐ヶ谷文士のつながりと重なる部分もありつつ、また違った杉並に住んでいた人々の相関図が分かって興味深い。

鈴木信太郎自身は、荻窪から三鷹台に引っ越すことになるのですが、昔の三鷹台の駅のイラストを見ると、何年か前まで三鷹台、久我山に住んでいた私としては、もちろんイラストに描かれている駅とはぜんぜん違いますが、それもまたうれしい気分になってしまいました。

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なんていうことをツイッターでつぶやいたら、三鷹台に住んでいる友だちが、鈴木信太郎の家のすぐ近くに住んでいて、孫と歳が近いこともあって子どもの頃、よく遊びに行っていたことが判明。なんだかすごい。鈴木信太郎家はなぜか庭によく小銭が落ちていたらしいです。次に一緒に飲みに行く機会があったら詳しい話をいろいろ聞きたいな。

ちなみに鈴木信太郎が引っ越していったあとの荻窪の家には、棟方志功が引っ越してきたそう。となれば、6月5日まで荻窪の「6次元」でやっている「デザイナーとしての棟方志功展」を見に行くしかない!あんまり時間もないけどタイミングを見て会社帰りに絶対に寄らなくては。

「リーズンズ・トゥ・ビー・チアフル」-バーニー・バブルズ-

◆バーニー・バブルズの本と国立のバラ園
バーニー・バブルズは、エルビス・コステロやニック・ロウ、イアン・デューリー、ダムドといったスティッフレーベル、またスクィーズやビリー・ブラックなどのミュージシャンのレコードジャケットや「NME」のロゴなどを手掛けてたグラフィックデザイナー。1983年に亡くなっている。何かを調べていたときに偶然知って、さらに検索してみたら、小西康陽の「200枚のCDを聴く。」という連載にこの本のことが書かれていたのを見つけたのだった。もっともそこで小西康陽はこの本を褒めている、というわけではない。
ずっと絶版になっていたのだが、最近2ndエディションが出て、アマゾンで買えるようになったので、すぐに買えなくなってしまいそうで慌てて購入。

わたしはあんまりレコードジャケットの本を持っているわけではないのだが、これとジャイルス・ピーターンンが監修したボサ・ノヴァのレコードジャケットを集めた本は買おうかなと思っている。あぁそうだ小西康陽と常盤響の「いつもレコードのことばかり考えている人のために。」も買っておくべき?正直“いつもレコードのことばかり考えている”わけでもないですけどね。

さて今日は、TAIYODOがフジカワエハガキでお店を出していたので、散歩ついでに国立へ。
駅近くの中華料理店でお昼ご飯を食べてから、珍しくお休みの匙屋の前を通り、やっているのを見たことがないフードムードで半開きのシャッターの中をのぞいてみたり、お休みのお店が多い中いつものようにやっているレットエムインの店内を見たりしながら、フジカワ工八ガキに行ってみると、お店の前ではアグネスさんが菅藤さんとしゃべってて「おお!偶然!いいタイミングだね」なんて話していたら、通りの向こうからともきくんが自転車でやってきて、なぜか「みんな丘へ!」の仲間が続々と集合。

お店の前でお茶を飲みながら話しているうちに盛り上がってきて、これまた「みんな丘へ!」のメンバーであるハタノくんが勤めているひかりフラワーというバラ園にみんなでいく。

ひかりフラワーは、国立の北口の通りをずうっと行ったところにあるバラを中心した園芸店なんですけど、敷地がかなり広くて、さまざまな種類のバラが、鉢植えになっていたり、地面に植えてあったり、アーチに這わせてあったりして、買わなくても見ているだけでかなり楽しい場所でした。パラを見ながら紅茶やケーキなどを食べることのできるカフェもあります。
加えて、わたしたちは仕事中のハタノくんに園内を案内、一つ一つのバラを解説してもらって、かなり賛沢な時間を過ごさせていただきました。

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バラ園の入り口

漣くんも花を見てはいちいち「これかわいいね~」とか「これきれいだね~」と大声をあげながら園内を走り回ってました。すぐに花に触ろうとするので、親としてはけっこうドキドキ。あと、園内をまわっている途中で、折れていたバラをハタノくんが切ってくれたのですが、それを振り回しながら走り回る漣くんを見てると、あきらかに子どもが勝手に枝を折って振り回しちゃってる図で、それはそれでまたちょっとドキドキしちゃったりして‥‥。

国立の駅から遠いんですけど、花の咲いている時期にもう一回くらい行きたいですね。

「春の坂」-上林暁-

◆本の五月祭@高円寺あずま通り
増田れい子の「春の予感」、木山捷平の「耳学問・尋三の春他」に続いて、春になったら読もうと思って本棚に積んであった本。気がついたらもう5月も半分過ぎてしまってますけどね。

日曜は、漣くんとお出かけ。ミオ犬には、吉祥に行ってくるって言って家を出たんだけれど、パスの中で、ツイッターを見ていたら、あまりにもいい天気だったこともあって、高円寺の本の五月祭に行き先を変更~!
本の五月祭は、高円寺の駅から古書会館まで行くときに通るあづま通りを会場とした縁台ふるほん市を中心に、古書会館で行われているちいさな古本博覧会やライブ、卜一クショーなど本に関するさまざまなイベントが行われるお祭?なんですけど、遊びに行く側として今の気持ちとしては、子ども連れということもあり、“本”だけのイベントだとちょっと物足りないんですよね。じゃ何がいいのかと言われると分かんないけど‥‥。

あづま通りは、たいていBGMに童謡のインストがかかっていて、「亀は意外と速く泳ぐ」でふせえりがやっているようなアナウンスが入ったりするような通りで、地味な感じがわりと好き。なかなか行く機会ないですけど、最近はいい感じの飲み屋や古本屋などが増えてきてるみたいです。

さて、本の五月祭。
いやね、子どもの生活に合わせてると、普通に起きて、ご飯食ぺて、洗濯とか掃除とかして、そのまま出かける用意をして出かけると、武蔵小金井から出たとしても、普通に11時半くらいには、高円寺についてしまうんですよね。まして、今回は、途中で行き先を変更したので、開催時間が12時~18時なんてチェックしてなかったので、みんなまだ準備をしているという状態。通りを歩いていて半分くらい来た時に「もしかしてまだちゃんと始まってない?」って気がつきました。

それでも、三月書房の小型本など何冊か購入。こういう狭い通りでまわりにお店みたいなところがあると漣くんもけっこう歩いてくれるし、天気もいいし、これで、ちょっとした食べものや飲みものを売っているお店が出ていたり、入りやすそうな喫茶店があったりしたらいいのにな、って思いました。
あとで考えたら出店はあったのだけれど単に時間が早かったのでお店の準備ができてなかった、喫茶店は時間が早いので当然あいてない、ってことだったのかもしれません。次回は行く機会があったらもう少し時間を見ていきたいと思います。

ちなみにお昼は、4丁目カフェでピザを食べました。先週の福生に続いて2週連続ピザ、そして、ゴールデンウィークに立川のmarumi-yaに行ったときに知った「電車から見える建物は、建物からも電車が見える(可能性がある)」という法則(?)どおり、4丁目カフェからも中央線・総武線がよく見え、漣くんも大ほしゃぎ。お店自体もざわざわしてるし、子ども連れにおすすめ、というほどでもないです。子ども連れでも可、くらいか。

「ニュードキュメンタリー図録」-ホンマタカシ-

◆「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」@東京オペラシティ アートギャラリー
土曜日に初台のオペラシティでやっているホンマタカシの「ニュードキュメンタリー」を見に行ってきました。会社帰りにギャラリーに寄ったりしたことはあっても、ちゃんとした美術館なんて行くのはほんとうに久しぶりな気がします。漣くんも連れて家族3人で行ったので、片方が展覧会を見ているあいだ、もう一人は外で漣くんと遊んでいる、というちょっと面倒なやり方だったけれど、思ったよりもゆっくり見ることができました。

周りを見てみたら、赤ちゃんを抱っこしていたり、小さな子どもをベビーカーで連れた夫婦が何組かいたし、意外と見に来ている人が少なかったから、静かにしていたら子どもと一緒でも大丈夫だったかも?なんて思ったりしましたが、うちの子は声が大きいし、最近は、勝手にベビーカーから降りて自分の気になるほうに歩いて行ったりするので、まあ無理ですね。

それとは別に、金沢でやっていたときにもけっこう話題になってたし、子どもがいるいないに関係なく、混んでてゆっくり見れないんじゃないかと思っていたので、あんまり人がいなかったのは意外でした。やっぱり単純に「かわいい!」って思えるような川島小鳥の「未来ちゃん」とかのほうが人気なのだろうか?

というのは、同じ女の子を撮った写真でも、ホンマタカシの場合、素直に「かわいい!」って気持ちで見れないのね。「Tokyo and My Daughter」ってタイトルがついてるにもかかわらず、ホンマタカシの娘じゃない(みたいだ)し、ホンマタカシが撮ったもの以外の写真も混ざっちゃってる(みたいだ)し、しかもこの女の子の日常とはまったく関係ない(みたいな)広範囲の東京の風景が挟まったりして、いちいち立ち止まって考えちゃうんですよ。
ほかの写真も同じような感じで、作品を見て進めば進むほど、疑問が浮かぶような仕掛けがしてあって、大げさに言うと疑心暗鬼になってしまう。
それで「ニュードキュメンタリー」というタイトルがついているんだと思うだけど、金沢21世紀美術館にしろ東京オペラシティアートギャラリーにしろ、こんな大きな会場でそんなことするなんて、なんだかおおげさだなぁという気もちょっとします。なんとなくそれぞれのシリーズが、一つのギャラリーで行われている展覧会というイメージかな。

もちろんこの写真展で提示されている「写真とは何か」とか「ドキュメンタリーとは何か」、さらに言うと「真実とは何か」みたいな問いかけについての答えはないです。だいたいこの展覧会だけでそれを提示することは不可能なわけで、そのあとは個々にホンマタカシの作品を見たりや著作を読んだり、またホンマタカシ以外の写真家の作品を見たりや著作を読んだりして、自分なりの答えを見つけていくのかもしれない。

ただ私が思うのは、ここ10年のデジタル化によって、写真が真実を写すという幻想はまったくなくなってしまったのではないかなということ。こういう問いかけをするための世界観の構築ってデジタルを使用することで簡単にできるようになってしまった気がしますし‥‥。

それと、今、写真を見たりしている人にとっては、そこに写っているものやことが、真実だろうか真実でなかろうが関係なくて、写真の中のものを真実として受け取れるような世界を構築したり、そのために個性を前面に押し出してくるような、写真(家)のほうが、求められているのかも、なんてことも思ったりします。いや適当。

わたしはホンマタカシみたいな“考える写真家”好きですけどね。というか、ホンマタカシは、個性とかじゃなくて、その問いかけをするための世界を構築するテクニックや感性、それを裏付けるための知識の使い方がすごいんですよ。

それで実はこの写真展のポスターにもなっている「Tokyo and My Daughter」からの女の子の写真さえもホンマタカシが撮ったものじゃなかったりして‥‥。

「いつも夢中になったり飽きてしまったり」-植草甚一-

◆立川のmarumi-ya
たいていの植草甚一の本はタイトルがよいのだけれど、これはその中でも1、2を争うんじゃないでしょうか。
インパクトのある植草甚一の写真をうまく使った筒の函も凝ってるし、こういう本を手に取ると「スクラップブック」とか「●●誌」のようなアンソロジーもいいけれど、きちんと単行本を集めておきたいな、と思いますね。

内容はといえば、ジャズやロックや外国小説、映画、雑貨などについて、植草甚一のあのいつものような文体で書かれていて、この本だからという特徴はあまりないです。ただ個人的には、テーマを決めて組まれたものよりも、この本や「ワンダー植草・甚一ランド」「ぽくは散歩と雑学がすき」みたいにバラバラの内容を寄せ集めたもののほうが好き。というよりも、テーマが決まってると途中で飽きてきちゃうんですよね。昔はそんなことはなかったので、単に歳をとって、植草甚一の好奇心について行くだけの体力がなくなってるだけなのかもしれませんが‥‥。

さてさて、今年のゴールデンウィークは、あっという間に過ぎてしまったような気がします。去年、一昨年は、漣くんもまだまだ小さくて、ほとんど出かけるということもなくて、ときどき親戚や友だちが遊びに来るほかは、近くの公園とかに出かける程度だったので、4日くらい休むと、なんかずいぶんゆっくりしてる気がするけどまだまだ休みなんだなぁ~なんて思ったものでしたが‥‥
とはいうものの、今年も一泊二日で伊豆に行った以外は、吉祥寺や立川、国立など近場に出かけただけだったし、それもたいていは4時か5時くらいには帰ってきてしまうという感じだったのですが、やはりちょっとでも出かけると気分的に違うものですね。

それにしても、毎日のように13キロ近くある漣くんを抱っこして出かけてると、4日日くらいから肩が痛くなってきて、これからもっと子どもがアクティブになっていったらどうなっちゃうのか、なんてちょっと心配。などと思っていたのですが、連休中、一日自由時間ができて、ひとりで高円寺の古書会館を中心に中央線の古本屋レコード屋巡りをした次の日の朝の筋肉痛のほうがひどかった、という‥‥。どんだけ本買って歩き回ってるんだか‥‥。
漣くんはすぐに抱っこをせがみながらも、時々は歩いてくれるけれど、本は絶対に歩いてくれませんもんね。

植草甚一が古本屋巡りをしていたせいで、歳をとっても足腰がしっかりしていたという話は有名ですが、それを実感したゴールデンウィークでした。

って、中身もないうえに、そんなオチもうどうかと思うので、連休中に行った立川のmarumi-yaを紹介します。

marumi-yaは、去年の9月に国立でやっていたワイワイ祭りに行ったときに知った、玄米ご飯をメインにしたメニューが食べられるお店です。ワイワイ祭りの時は、確か玄米が売れ切れたとかで食べられなかったのですが、そのあと場所をウェブで確認したら、立川に行くときに電車から見えるビルにあることが分かり、立川に行くたびに行ってみたいと思っていました。

今回初めて行ってみたそのピンクのビルには、marumi-yaのほかにもカフェや食器を売っているお店などが入っていて、外から見たちょっと古いピンクのビルの印象に似合わず、なかなかいい雰囲気。marumi-yaも窓が多くあり日当たりや風通しのよい部屋で、木製の古いテーブルやイスが置いてあって、カウンターの横には絵本が売られていたりして素敵なお店でした。

わたしが食べたのは鶏肉団子の甘酢あんかけ(もしかしたらちょっと名前は違うかもしれません)。漣くんが食べそうなものと思って頼んだのですが、それよりもミオ犬が頼んだはるさめにがっついてました。いまいち漣くんの好きなものが把握できてないお父さん。いや、甘酢あんかけも最後のほうは団子だけでなく“あん”までも飲んだりしてましたが‥‥。

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鶏肉団子の甘酢あんかけ定食

それから、前述したようにここは電車から見えるビルの一室なのですが、逆に、この部屋から立川に入って来たり出ていく電車が一望できるので、電車好きの漣くんとしては興奮しどうし。何か食べては「おいしい!」を連発し、電車が通るたびに「がたんがたん」を繰り返して、周りのお客さんが温かい人たちでよかったものの、静かなお店の雰囲気をかなり壊してました。すみませんっ。

ちなみにお店の人は、先日国立のヒラヤギャラリーで行った「みんな丘へ!」に来てくれたそう。わたし自身、イベントの時に話したりしたわけではなかったので、絵本を見ていたら声をかけられてびっくりでした。

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店内の様子