「たらちおの記」-内田百けん-

父親や母親、祖母のことや故郷の岡山について、幼年時代の思い出‥‥などをつづった随筆を集めた本。前に読んだ本に書かれていたエピソードやこの本の中でも重複があるけれど、そういったエピソードをうまくつなげていく流れが巧みなので、あまり気にならない。もともとの記憶力の問題もあるのだろうけれど、同じエピソードをどれだけ違う見方で書くことができるかということが、随筆を書くうえでいかに大切かということがわかります。(もちろんそれだけではない)

1月に、ハーモニーグラスからエジソン・ライトハウスまで、イギリスのハーモニーグループをよく聴いているということを書いて、ちょうどサンフランシスコに行く前だったので、フラワーポット・メンの「Let’s Go To San Francisco」に強引に引っ張っていったのは、半分ネタで聞いてみただけだったのですが、その後、意外とはまってしまい、2月、3月は、アイヴィー・リーグとかグレープフルーツ、オレンジ・バイシクル、ホワイト・プレインズ、マーマレイド、シンボルズ‥‥といったハーモニーグループをずっと聴いてました。って、それだけなんですけど。
いや、何を書きたいかというと、70年代のトニー・リヴァーズはいい!ってこと。トニー・リヴァースは、基本的にビーチボーイズフリークというか、コーラスも含めてかなりサウンド全体がアメリカ寄りなので、もう少しイギリスらしさがあればいいのに‥‥なんて書いてしまってすみません!(誰に謝っているのか?)もうね、「HARMONY WORKS IN THE STUDIO」を聴いてると、トニー・リヴァーズのコーラスが大爆発で、“アメリカ寄りとか”とか“イギリスらしさ”とかどうでもよくなってしまいます。今まで70年代のだからという理由で敬遠しててもったいないことしました。いつか「Top Of The Pops」とかクリフ・リチャードとかも聴いてみたい。といっても、自分でアナログを集める気はないので、どこからかコンピが出ないかなぁ、と思う今日この頃です。

「短編集 道端」-吉田健一-

週末にちょっと出かけるといえば、たいていは吉祥寺か西荻、あるいは渋谷くらい、たまに下北、代官山、原宿~表参道、高円寺~阿佐ヶ谷といったところで、それもごはんを食べるところやお茶するところ、買い物する店など、ほどんど決まっているため、いつも同じルートばかり歩いているような気がする。雑誌やブログなどを調べて新しいカフェに行ってみる、ということもあまりない。そんなわけで、先日のように、たまには普段行かないようなお店に行こうと思って、何年かぶりに原宿のEATに行ってみたら、すでにお店がなくなっていてびっくりした、なんてことになってしまう。
週末は、代官山周辺を歩いてみたのだが、代官山に行くといつもokuraかeau cafeでごはんを食べているので、これまた久しぶりにFISH CAKE & DELIに行ってみたら、なかった~。そんなにFISH CAKE & DELIに思い入れはないのだけれど、開店した当時は、フードメニューの監修を長尾智子、制服や食器のスタイリング監修を岡尾美代子がやっているということもあって、わりと頻繁に行っていたし、経営は、小田原の鈴廣だったのでなくなるとは思ってませんでした。(あとで調べたらららぽーと横浜に移転しているとのこと。)

さて、代官山に行った目的の一つは、collexで30日までやっている「100冊の絵本展」。1960年代~70年代にグラフィックデザイナーやイラストレーターが手掛けた絵本が展示、販売されてます。販売といっても、安くて5000円、高いもので20000円以上という価格だったりするので、もちろん買えないし、知っている絵本や再発されて持っている絵本もわりとあったりするのですが、古い絵本は、紙の質や絵の色あいがよいので見ているだけでも楽しい。堀内誠一、柳原良平といった日本のイラストレーターの本の英訳もありました。柳原良平の「まほうつかいのでし」は、日本語でいいので欲しいと思った。こういう本を、カヌー犬ブックスでもそろえたいなぁ~なんてことは無理なので思わない(ようにしている)。

「Mexicoガイコツ祭り」-緒川たまき-

「ガイコツ祭り」というのは、毎年11月1日と2日にメキシコで行われる祭りで、死者の霊が帰ってくる日らしいです。日本で言うお盆ですね。“ガイコツ祭り”というのが直訳なのかわかりませんが、写真を見る限りでは、色鮮やかでなにやらかわいい雰囲気のガイコツグッズで、街中がいっぱいになっているみたいですね。メキシコかぁ~遠いな~。
「緒川たまきのまたたび紀行―ブルガリア篇」みたいに、緒川たまきを被写体としたものではなくて、緒川たまきが撮った写真集なので、たまきファンには評価が分かれるのか、どうかはわかりません。それにしてもアマゾンでは、2002年に出た本なのにすでに絶版になっていて、中古価格が4500円~になっているのもわからん。思えば、「またたび紀行―ブルガリア篇」は、最近の東野翠れんの「アムール 翠れん」や加藤ローサの「SLOW LIFE TRAVELER」、蒼井優の「トラベル・サンド」「ダンデライオン」といった写真集と旅行記(?)を合わせたものの先駆けだったのかも、なんてことを思ったり‥‥。まぁブルガリアには3~4日ぐらいしか滞在してなかったみたいですけど。っつか、緒川たまきと蒼井優はどちらもロッキング・オンで、東野翠れんと加藤ローサはプチグラだからな~

年明けからカートゥーン・ネットワークで「ドラドラ子猫とチャカチャカ娘」をやっていて、なにやらゴーバンズみたいな音楽がいいな、と思っていたらいつのまにか、「爆走バギー大レース」になっていたり、今週からは「秘密探偵クルクル」というリスの秘密諜報部員とモグラの相方を主人公にした番組に変わっていて、これがなかなかおもしろい。クルクルは、「ドラ猫大将」以来のヒットキャラですね。この番組は、ほかに「タコのろくちゃん」「マジックおばさん」の3つのオムニバス形式になっていて、タコなのに6本しか足がという「タコのろくちゃん」のキャラもいい。ディズニーよりハンナ・バーベラの方が、絶対キャラクターがかわいくていいのに、どこかB級扱いになってしまっているのが納得いかないです。
個人的には、その辺のB級感の要因の大きな一つが、先日亡くなった広川太一郎のギャグだったりするのですが、亡くなった記事を見て、ちょっと広川太一郎が声を担当した役を調べてみたら、ハンナ・バーベラ作品では、「チキチキマシン猛レース」ぐらいしかなかったみたいです。再放送の回数なども含めて、「チキチキマシン猛レース」のイメージって大きいな、と。(わたしだけ?)

「町ッ子 土地ッ子 銀座ッ子」-池田弥三郎-

会社の有給休暇の切り替えが3月までなので、2月3月はなんとなく週休3日の日々が続いている。7日は久しぶりに鎌倉に行ってみた。3月の平日の鎌倉。まだ暖かいと言えるほどの季節ではないし、小町通りもいつもに比べて人が少ないといいなぁ、なんて思っていたのに、駅を出たら学ランを着た修学旅行の生徒の団体が駆け回っていて、ちょっとがっかりする。それは別としても、平日だからといって空いているわけでもないらしい(当然か~)。
とりあえずお腹も空いたので、いつものようにディモンシュに入ってごはんを食べ、お店に置いてある鎌倉に関する雑誌を眺めて、予定以外のところでおもしろそうなところがないかチェックしてみたり、テーブルの上に置いてあったフリーペーパーを読んだりしながら、最近出た小西康陽の「ぼくは散歩と雑学が好きだった。」が読みたくなったり、いや、別に慌てて買うこともないなと思い直したりする。
その後は、いがらしろみのジャムのお店で量り売りされているジャムを買ったり、丸七商店街の中にあるパン屋さんキッキリキでラスクを買ったり、鎌倉中央食品市場を周りながらの市場のケーキ屋さんのシフォンケーキも食べたいなぁなんて思ったり、KIBIYAベーカリーでパンを買ったり、こ寿々でわらび餅を食べたり、長谷まで歩いていって力餅家で福面まんじゅうや力餅をお土産にして‥‥と、おやつばっかりの鎌倉の一日。ということもないんですけどね。小町通りとは違って、前は人通りの少ない普通の商店街だった御成通り周辺に、レコードと古本のセレクトショップや北欧雑貨のお店など、おしゃれなお店がいくつかできてきてて、ちょっと雰囲気が変わってきたなぁと思う。

「町角ものがたり」-池内紀-

まとまったお休みを取って、時間に縛られず、一つの町にだいたい4、5日滞在して、ヨーロッパの小さな町角をゆったり歩く、そこが気に入れば滞在をちょっと延ばしてみる‥‥なんてという贅沢な旅は、わたしにはできそうにない。まぁそういう旅をしたいのなら、少なくても英語ぐらいある程度話せるようになっておくべきで、そういう努力もせずに、夢ばかり見てもしょうがない。でもこういう本を読んでいると、つい夢が広がっちゃいますね~。ちなみにいい味だしている表紙や文中のイラストも池内紀本人が描いていて、町角のベンチに座って、小さなスケッチブックに、周りの景色や気になった建物などを描いていんだろうなぁ~なんて。

わたしは絵が下手なので、結局旅先にカメラを持っていくことになるのですが、普通のカメラとポラロイドカメラを両方持ち歩いているので、けっこう恥ずかしいと言えば恥ずかしい。ポラロイドカメラは、行った場所の風景や町角はもちろん、食べたもの、その日に買ったものなどを撮っておいて、夜、ホテルに帰ってから切符や入場券、お菓子の包装紙などの紙ものと一緒にノートに貼って、コメントをつけたりしてます。別に旅行記を書くわけではないし、同じ所に二度三度行くわけでもないのでそれが役立つ訳でもないでもないし、後から眺めたりすることもあまりない。何かの機会があって見たりすると、書いている内容よりも、写真の撮り方がヘタだなぁと思う。基本的にポラロイドは、ちょっとの差で画面が白くなったり暗くなったりしてしまうので、露出の加減だけが問題なんですよね。フィルムの値段が高いので、撮り直しはあまりできないし‥‥。
で、あー、でも今どき、フィルムの一眼レフとポラってのもどうなんだろう、そんなことを思ってたら、このあいだ、「ポラロイド、インスタントフィルムの生産を夏までに終了」ってニュースが出ててびっくり。うちのポラどうなるのよ。修理代15000円もかかったのに!

「粋と野暮のあいだ」-高橋義孝-

内田百けんを“百けん先生”と呼んでしまうように、高橋義孝も、“高橋義孝先生”と言いたくなってしまうのはなぜか?単に大学の教授をしていたから、あるいは山口瞳の本を読み続けているから、だけではないような‥‥。と、前回から半月も経っているのに、同じふりをしてみたりして。どちらかというと内田百けんよりも高橋義孝の方が、“先生”というか“師”という言葉が似合う気がします。まぁ、二人ともすべてのことにかなり細かいこだわりがあるので、どちらの“生徒”になってもたいへんそうですけど‥‥。逆に、そのこだわりがあるからこそ“師”として、たくさんの人に慕われたとも言えるわけで‥‥。
若い頃にそういった“先生”とか“師”に出会っていたらもう少し違った人生を送れたのではないかと、この歳になってみると思う。今考えると無駄な回り道をしたり、めちゃくちゃな20代を過ごしていたので、そういう“師”に出会うような環境でなかったとも思うけれど、実際は、それに気がつかなかっただけ、受け入れるための姿勢ができていなかったことが大きかったと思う。「先生は自分で決める」という言葉もありますしね。