だんだん寒くなってきて、布団から出るのも、外に出るのも億劫になってきて、そんなことを思いつつ、一日を過ごしていると、まだなんにもしていないのにもう外は暗くなり始めて‥‥なんて季節になってしまってます。冬は空気がきれいなので、写真を撮るには絶好の季節と言うけれど、すぐに暗くなってしまうのでなんとなくカメラを持って出歩く気にもなれなくて、北海道に行ったときに取ったフィルムの残りがカメラに入ったまま、1カ月が過ぎてしまってます。実を言うと、北海道で撮った写真も現像が楽しみという感じでもなかったりして、昔だったらシャッターを押したときに「これはよく撮れただろう」という感触があったのものだけれど、そういうのが最近はまったくない。むしろ“なんか失敗したな”という気分ばかりが残ってしまってる感じです。困ったものだなぁ。
土曜日、映画を観るついでに寄った渋谷のデルフォニックスでは、「Camera People」の発売を記念した展覧会が開かれていて、そういえば、夏頃、写真を募集していてちょっと応募してみようかな、なんて思ったことを思い出しました。こうやってプロではない普通の人が撮った写真を見ていると、少しだけカメラ熱が再燃するのだけれど、写真とともにポラロイドカメラやオートハーフ、LOMOなど、今人気のあるカメラが売られていたりしているのをみたりすると、ちょっとどうなのかなぁ、とも思う。オートハーフ高すぎだし‥‥。
ついでにパルコミュージアムでやっていた「サンダーバード イン ジャパン」展も見て来ました。サンダーバードは、世代的にはわたしよりもう少し上の世代なので、わたしはリアルタイムで見たことはなくて、お兄さんがある友達の家に行くとおもちゃが置いてあって、それで遊んだ記憶があるくらい。あとは小松崎茂が書いたプラモデルの箱といったところ。サンダーバードに限らず1970年代くらいまでの子どもにとって、小松崎茂の絵の印象というか影響は大きい。先日まで逓信総合博物館ていぱーくでやっていた「ぼくらの小松崎茂展」も行きたかった‥‥。
ところで、この本の表紙を見たときに、「食いしん坊の記録」という副題とあってるし、文字とのバランスもいいし、いいなぁ、と思って、軽い気持ちで装丁を手がけた田代光という人を調べてみたら、“昭和の出版美術界、挿絵の世界において巨星と称される洋画家”とか小松崎茂が師事していたということなどが書かれていたりして、違う意味で驚いた。安藤鶴夫の「巷談本牧亭」の挿絵も手がけているらしい。本は中の文章だけ読んでいてもダメで、隅から隅までチェックすることで新しい発見に出会うのだな、とあらためて思います。
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「あまカラ(抄)2」-高田宏編-
「あまカラ(抄)」第2巻は学者・評論家篇。私が知っている名前をピックアップすると、池田弥太郎や池島信平、福田恆存、小泉信三、小林秀雄、串田孫一、奥野信太郎、高橋義孝‥‥といったところか。前に読んだ「巻頭随筆」の時も思ったけれど、学者による随筆は名前をぜんぜん知らなくても面白い。まぁ知識があるということもあるし、海外に行く人があまりいなかった時代に、研究などの目的でわりと普通に海外に行っていたりしているということもある、かもしれません。といっても、やはり食べ物のこととなると、ほとんどの人が日本の食べ物のことを書いているんですけどね。
うちのリビングに置いてあるテーブルは、何年か前の夏に自分で作ったもので、おおざっぱに言うと、底のない箱を横にして、下に車輪がつけたというだけのものですが、もう4、5年使っていることもあって汚れてきてしまっているし、ソファーをソファーベッドに買い換えたせいで少しじゃまになってきたので、シンプルで小さめのテーブルを探しに、前々から行ってみたかった横浜のIKEAに行って来ました。
第三京浜港北インターチェンジから2分という立地や、1階と2階が売場、レストラン、食品売場、3階から上は駐車場となっているところから、基本的には車で来る人が対象となのだろう、新横浜からのシャトルバスはぎゅうぎゅう詰めで、(気分的なものも含めて)15分くらいかかるし、店に行く前から疲れ気味になってしまう。確かに品物のデザインはいいし、欲しいものはたくさんあるけれど、引っ越しをひかえているわけでもなく、電車で来ている以上、持ち帰れる量も限られているので、当初の目的だったテーブル以外は、それほど買うものはなかったです。でもディスプレイが工夫されているので見ているだけでもけっこう楽しいので、今度は船橋のほうに行ってみようかな。個人的には、なんとなく家具の安売りと北欧のイメージが結びつかなかったりもするんですけどね。いい家具を何十年、あるいは何代にも渡って使い続けるのが、北欧の国々の人々のよさではなかったのか?ついそんなことを思ったりもします。
そんなわけで、ソファーもテーブルも買い換えて、前に書いたようにカヌー犬用の本を移動させたとこもあって、週末は部屋の掃除をしたりしていました。でもクローゼットの奥から段ボールを引っ張り出して、いるものといらないものを仕分けたり、ものをこっちに置いたり、あっちにしまったりといろいろ移動させたりして、一日中動き回ってみたわりには、終わってみるといつもの部屋とあまり変わらず。なんだか労力の割にはきれいになったという実感がわかないのが悔しい。そのせいで今週は脚と腕が筋肉痛だし‥‥。まぁ部屋の片づけなんてそんなものか。
「夫婦百景」-獅子文六-
いろいろな夫婦の形をレポートするという内容で、前半は獅子文六自身の夫婦論に始まり知り合いの夫婦について、後半では雑誌の読者から寄せられたちょっと変わった夫婦について、それぞれ「婦人倶楽部」「主婦の友」に連載されたもの。
“ちょっと変わった”と言っても現代からみれば、そう変わった感じもしなくて、それよりも見合い結婚がより人間らしい理性的な結婚の仕方であるといった主張がところどころにでてくるのがおもしろい。よほど一番最初の時のフランス人との恋愛結婚で懲りたのだろうか(その後の2回の結婚は見合いなはず)。横浜で生まれ育って若い頃にフランスに行ったような人でも、そういう考え方をするものなのだなぁ、と何度も思うところ多し。もちろん新たしい考え方がいいとか、古い考え方のほうはいいとか、そういうことではなくてね。中には離婚にいたっちゃうケースもあるけれど、それを含めても全体的にハッピーエンドで終わるケースが多いところがいいです。
ところで、30も半ばを過ぎたので、周りで結婚する人ももういないだろうと思っているのだけれど、今年も、10、11月と2次会やら結婚パーティに参加してます。そういえば、直前になって都合が悪くなってしまい出席できなかったのですが、9月にも親戚の結婚式がありました。先日、パーティを開いた友達は、大学の頃からのつきあいなので、もう15年以上か。でも「●●もついにねぇ」とか「なんだか気がつけばみんな結婚しちゃったなぁ」とか思ったりもするけれど、それほど大きな感慨はなかったりします。まぁそんなものですよ。「昔は2人でむちゃしてさ」なんて感じでもないし。もちろんわたしの知らないところでいろいろあったのだろうけどね。なんて書いていると「あんなこともあったなぁ」なんて思い出したり、思い出さなかったり‥‥。う~ん、なんか書いちゃまずそうなことばかり思い出したりしてあとが続かん。
そういえばこの本のあとがきにも、「人から材料をもらって書くのは、ラクな仕事だと考えていたら、事実はそれに反した。~要するに、夫婦百景なんていうものは、見物するのも、容易ではないことがわかった」と書いてある。
「ひざ小僧」-秋山安三郎-
個人的には銀座というと、映画を観に行くということが多かったので、映画を観なくなった最近は、年に数回行くか行かないかという感じになってしまってます。この秋山安三郎とか安藤鶴夫、池田弥三郎といった人たちの本を読んでいると、銀座を歩いているだけで楽しかった、といったことが書いてあって、そういう文章を読むのは好きなほうなので、ときどき、東銀座の方まで裏道を歩いてみたらそういう風景がまだ少しは残っているかもしれない、などと思ったりもするけれど、やはりそれは銀座に夜店が出ていたり、資生堂パーラーや千疋屋、風月堂といったお店がハイカラだった時代の話で、少なくとも私には、今の銀座は歩いているだけで楽しいという感じの街ではないですね。かといって、じゃ、歩いているだけで楽しい街ってどこ?と聞かれると困りますけど‥‥。
でも小林旭の「銀座旋風児」とか「銀座の次郎長」を観ていると、下町的なところもあったりして楽しそうな街だと思ってしまいます。人が住んでいる街かどうか、というのも大きいのかもしれません。
昨日の夜は、早めに会社を出て、銀座でやっていた大橋歩の展覧会「歩のあゆみ」展を見て来ました。土日、祝祭日お休みで、平日は7時半、水曜だけは8時半までという会社勤めにはやさしくない開館時間、しかも24日まで、なので、今日しかない、と。健康診断のため午後から会社に行ったのに、夕方の打ち合わせが終わるとともに7時前には会社を出るという‥‥ぜんぜん仕事してないよ、という状態だったわけですが、まぁしょうがない。そういうときもある。
展覧会は、クリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンの二会場で行われていて、学生時代の習作から初期の代表作「平凡パンチ」の表紙、1980年代の「ピンクハウス」関連のイラストレーション、村上春樹の本の挿絵、そしてすべてを自身の手で行っている季刊誌「Arne」までが展示されていて、大橋歩のデビュー当時から現在までを網羅できるようになっています。こういう風に作品を見てみると、そのときどきでの作風が変わりぶりに改めて気がつきますね。同時になんとなくデビュー当時からあまり変わっていないような気になってしまうのは、そのときどきでのスタンスやポジションにあまり変化がないせいかもしれません。あくまでも個人的な意見ですけどね。でもやっぱり1960年代後半、アイビールックの男の子たちを描いていた頃の絵が好きだなぁ。
「私のなかの東京」-野口冨士男-
11月から倉庫として駅前のトランクルームを借りたので、毎日、会社から帰ると段ボールに本を詰めて少しずつ運んでいたのですが、週末にラストスパートで4往復してようやく引越完了しました。いままで本を置いていたキッチンの片隅がすっきりして気分がいい。もともとカヌー犬ブックス用の部屋があるわけでもなく、キッチンの隅にカラーボックスを2つ置いてそこに本を詰め込んでいただけだったので、半年くらい前からいろいろ迷っていたのです。一時期は、どうせなら、と引越まで考えたりしたんですよ‥‥。駅前のトランクルームは、古いビルの一画なのでいきなり閉鎖されてしまうのではないかとちょっと不安ですが、まぁとりあえずよかった、という感じ。といっても、そんなに在庫を抱えているわけでもなくて、現在でも850冊くらいだったりするんですけどね。いや実を言うとはじめは100冊くらいだったのです。いくら趣味といえども、いま考えるとかなりひどい。普通1000冊くらいは在庫を作ってからサイトを始めますよね。ここ半年はほとんど在庫が増えていない状態でしたが、これからは少し増やせるようにがんばります。年末だし買取強化キャンペーンでもやろうかしらん。
「あまカラ(抄)1」-高田宏編-
「あまカラ」に掲載された約3000本の随筆の中から、“生きていることが何とはなしにうれしくなるもの”というテーマで選んで、3巻130篇を選んだ本。この第1巻は“作家篇”ということで、幸田文、武田泰淳、今東光、伊藤整、開高健、獅子文六、大岡昇平、大佛次郎‥‥といった作家の随筆が収録されています。一人1作品という制約を設けているので、個人的にもっとこの人の随筆を読みたいなと思うこともありますが、それはそれでまた個々の作品を読めばいいことで、この本の主旨とはなれてしまうのでしょうがない。でも新書で持ち運びやすいし、そばに置いておいて何回も読見たい本かな。
前に表参道にあったカフェエイトが、中目黒で新たにお店を開いたせいで、神泉で電車を降りて、道玄坂から旧山手通りに出て、青葉台の坂を降りていってエイトでちょっとご飯を食べて、その後、コーネリアスの「Breezin」のジャケット写真にも使われていた赤い橋を渡ったりしながら、目黒川沿いを歩き、駅まで来たら代官山の方へ上がって、ボンベイバザールでお茶。ここまで来てまだ余裕があれば歩いて、なければ電車で渋谷という散歩コースが、最近定番になりつつあります。晴れた日に目黒川沿いを歩くのは気持ちいいし、この辺はわりと古い建物が残っていたり、外は古いままで内装だけリフォームしたお店があったりするし、一つ裏の道を歩いてみるとまた違う雰囲気の路地があったりして、さくらの季節でなくても歩いているだけでけっこう楽しい。
日曜日は、風は強かったけれど天気も良かったので、午後から家を出て、そんな定番コースに加えて、山手通りを渡って関口ベーカリーまで行ってきました。関口ベーカリーは、もともと「私の部屋」でパンの出張行商をしていた人が開いたお店で、パン好きの間では有名なパン屋さんらしい、のですが、そういうことをあまりチェックしない私はぜんぜん知りません。で、どこかのお店でもらった簡単な地図を見て、途中、迷ったりしながら、実際に行ってみた感想をひと言で言うと、とても感じのいい街のパン屋さん。訪れた人はみんな誰もが「自分の家の近くにあったらいいのになぁ」と思うと思います。店に置いてある棚とかも趣味のよい古い家具が使われていたり、お店の外観ももともとの建物をうまく使っていたり、いろいろ細かいところにもこだわっているのだろうけれど、それが過度になっていないところに、センスの良さを感じますね。もっともこの通りは大きな木が並んでいたりして、周りの風景もいいんですけど。
「諷詠詩人」-上林暁-
高橋鏡太郎を題材にした「諷詠詩人」や、死期が迫り寝臥せっている父親を見舞うために故郷に戻ったときの様子を描いた「目下帰省中」や「生家にて」、刑務所にいるらしい幼なじみからきたお金の工面のための手紙に対してあたふたとするする「番外番地からの手紙」‥‥といった作品を収録した短編集。高橋鏡太郎については、上林暁だけでなく、吉屋信子が「月からきた男」で、石川桂郎が「俳人風狂列伝」でとりあげているとのこと。もちろん私は知りませんでしたが、「戦後、東京新宿西口の酒場に入り浸り、その店主に死ぬまで面倒をみてもらった」、「まわりの友人に迷惑をかけ続け、愛想をつかされたため、重症の結核患者の痰を飲んで病状を悪く見せた」など、数多くの逸話がある(らしい)無頼派俳人。ついには市ヶ谷の崖から転落死を遂げる。「諷詠詩人」では、その死をきっかけとして、数は多くないが、著者にとってなんとなく気になってしまうといった感じの高橋鏡太郎との交流が描かれてます。
札幌から帰ってきて、スペースシャワーTVで放送されていた中目黒テレビを見ながら、コーネリアスのライブのチケットを取った。来年3月9日のリキッドルームなので、まだまだ先だけれど、堀江博久、清水ひろたか、あらきゆうこというバックのメンツもいいし今から楽しみです。番組の方は、9月29日に六本木で行われた完全招待制のコンベンションの模様を独占オンエア、ということでかなり期待していたのだけど、期待していたよりもライブの様子が流れず、本人が出てきたりすることもなく、「SENSUOUS」からのPVがほとんどでちょっとがっかり。PV自体は音とシンクロしていていいんですけどね。それにしても今回のアルバムではベックなみにPV撮ってます。DVDとか出るのかな。
ところで、10月の終わりにコーネリアス、11月には延期されていたドゥーピーズのアルバムが出たら、今年はそれだけでいい年だ、なんておおげさに考えていたのだが、ドゥーピーズのほうはまた延期になったらしいですね。う~ん。11年ぶりだし、あと1年くらい延びてもぜんぜん違いはない、といえばない、のですが、出るのかどうか不安‥‥。
「庭の山の木」-庄野潤三-
三連休に北海道に行って来ました。
札幌に行こうと思いたったときから、あまり動き回ったりせずにのんびりとしたいと思っていたので、行きの飛行機も昼ごろ羽田を出発する便だったし、帰りも午後には東京に着くような便だったので、札幌にいたのは実質、一日だけ。いや単に飛行機の予約が取れなかっただけなんですけど‥‥。
昔は、どこかに行くとなると、その街の周辺の喫茶店やカフェ、レコード屋、雑貨屋‥‥などをチェックして、一日になん店もカフェをはしごしたりしたものだけれど、今回はわざわざ出かけていって‥‥という気にもなれず、まぁどこかでカニとジンギスカンを食べて、一つくらい札幌の喫茶店にでも入って、羊ヶ丘展望台で羊でも見ながらソフトクリームでも食べられればいいかな、という軽い気持ちで羽田を出発。実際、ほんとにそれしかしなかったです。基本的に自分たちだけではほとんどなにもせず、札幌に住んでいる友達に車で案内してもらっていたしね。
そんな中で気になった場所といえば、狸小路を抜けたところ、FAB cafeの周辺とロイズ珈琲館かな。Fab cafe自体は、ちょっとおしゃれな普通のカフェなんだけれど、昔からあるような建物がまわりに残っていたり、そういう建物を改造した雑貨屋さんがあったりして、しかも通り全体に適当に寂れた感が漂っているのがよかった。ロイズ珈琲館は、旧小熊邸と言う昭和2年に建てられた建物を移築復原した喫茶店。まさに昭和初期のモダンな建築。私は特に建築に関して興味があったり、知識があるわけではないけれど、その土地に昔からある建物を見るのは、旅行の楽しみの大きな一つだと思う。結局のところ喫茶店とかカフェ、雑貨屋‥‥なんて言っても、売っているのものは東京とそう変わらなかったりするわけだし‥‥。
けっこう楽しみにしていた羊ヶ丘展望台は、寒かったせいで(といってもこの時期の札幌にしては暖かかったのですが)、柵のすみにひつじたちがかたまったまま動かず、中には寝そべったままで口だけ動かして草を食べているものぐさなひつじもいたりして、なんとなく勝手に広い草原をひつじたちが走り回っているところを想像していただけに少し肩すかしでした。でも晴れていたので見晴らしはよかったし、ソフトクリームもおいしかったです。
「竹とんぼ」-安藤鶴夫-
この作品は、完全なフィクションなのか、なにか実在の芸人をもとにしたモデル小説なのか、どっちなんだろう。今まで、安藤鶴夫に対しては、評論家や随筆家というイメージしか持っていなかったし、直木賞を受賞した「巷談本牧亭」もモデル小説と思っていたので、フィクションとしてとらえていいのかどうもわかりません。ただ戦後の銀座を舞台に若い芸人たちがさまざまな人たちに見守られながら独り立ちしていくストーリーが、久保田万太郎の作品にどことなく近い雰囲気がありつつ、でも戦後の新しさみたいなものもあって‥‥単なる人情話にとどまらなくて、安藤鶴夫の新しい面を知ったような気がします。というのはちょっとおおげさか。
一方で、この作品は発表当時どんな人に読まれ、どのような反響があったのだろうか、とも思う。というのは、この本が出たのは昭和39年、1964年といえば、なんといっても東京オリンピックの年、高度成長期の象徴のような年で、先日読んだ開高健の「ずばり東京」に描かれているような風景の中では、懐古にさえならないような気もしてしまうのだけれど、実際のところはわかりません。
ちょっと調べたところによると1964年のベストセラーは「行為と死」(石原慎太郎)、「楡家の人々」(北杜夫)、「秀吉と利休」(野上弥生子)、「砂の上の植物群」(吉行淳之介)、「されどわれらが日々」(柴田翔)‥‥、ヒット曲は「君だけを」「お座敷小唄」「ウナセラディ東京」「アンコ椿は恋の花」「涙を抱いた渡り鳥」「東京五輪音頭」「プリーズ・プリーズ・ミー」「ダイアモンド・ヘッド」「イパネマの娘」‥‥、話題の映画は、洋画では「マイ・フェア・レディ」「007/危機一発」「シャイアン」「シェルブールの雨傘」「突然炎のごとく」‥‥、邦画では「喜劇・駅前茶釜」「砂の女」「赤い殺意」「愛と死をみつめて」「赤いハンカチ」‥‥とのこと。う~ん、ぜんぜんイメージつきません。もっとも「巷談本牧亭」は1963年の直木賞受賞作なんですけどね。ちなみ1962年の直木賞は「江分利満氏の優雅な生活」です。
「朱色の卵」-上林暁-
途中で会社を抜け出して、青山ブックセンターでやっていた堀内隆志のトークショーに行ってきました。店内の片隅で行われたのだけれど、思っていたよりも人が来ていて、しかもほとんどが女の子という中で、スーツ姿の男性が混じっていたりしてました。話の内容としては、最近出た「珈琲と雑貨と音楽と―鎌倉のカフェから“好き”をかたちに」に関連して、お店を始めたきっかけや開店したばかりのころのことなどが中心で、堀内さんって意外と話がうまいのだなぁなんて思ったりして‥‥。25、6歳の頃は、誰でもあいつより自分の方が知ってる、と思うときで、そのときだからこそカフェを始められた、という言葉が印象的でした。
質問コーナーの途中で会社に戻ったのですが、カヌー犬ブックスもだらだらと3年間続けてしまってるなぁ、と反省。これからでも少しずついろいろやっていこう、なんてことを歩きながら考えてしまいました。そろそろまた鎌倉にも遊びに行きたいです。