「燃焼のための習作」-堀江敏幸-

■運河沿いに建つ雑居ビルの一室で探偵のようななんでも屋の主人公とその助手、そして依頼人の3人による会話だけで話が進む。過去を手繰るうちに探偵と依頼人の過去の接点が明らかになったりしつつも、そしてそれぞれが勝手に思ついたことを話すので、横道に逸れたり、飛んでしまったりする。その一方でお腹の調子が悪い依頼人を看病(というほどでもないか)したり、お腹がすいた助手がご飯を作り始めたりと行動のほうも、何か結末に向かって進んでいくわけでもなく、永遠に続くかのような錯覚に陥ってしまいます。そんなつかみどころのないやり取りを「ん、ん、ん」などと思いつつ読み進めていくと、特にきちんとした謎解きがあるわけではないけれど、最後に「ひゅっ」と心を奪われてしまう、そんな不思議な感覚の堀江敏幸らしい小説。
登場人物の会話が中心に話が進んでいくところやとりとめのないところ、会話の内容が急に専門的になったりして、狭まったり広がったり深くなったりしていくところは、どことなく吉田健一の小説に似ているといえるかもしれない。いや、単にわたしが自分の好きな作家を結び付けようとしているだけですが‥‥

■(前回からの続き)泥酔ファンクラブから酔っぱらって戻ってきた次の日は、普段、渋谷のエッジエンドでやっているインザパシフィックの仲間と、調布の京王多摩川アンジェでバーベキュー。きちんとしたテーブルに人数分の椅子が並べられ、その横にはバーベキューコンロというシチュエーション。そして持ち込み禁止でドリンクは飲み放題、3時間制、とくれば、バーベキューというよりも焼肉パーティみたいなもの。まぁ何も持たずに行けるし、普段は夜遊びばかりというこのメンバーでやるにはちょうどいいかもと思っている。3時間はまぁまぁあっという間に過ぎてしまうので、遊んだりする時間もなく、その辺がちょっと物足りない。

■そんなわけで夕方からは居酒屋で2次会。日曜は調布の花火大会だったので、当初の予定では、暗くなったら多摩川のほうに行くつもりだったのですが、2次会から座敷で横になる人が出たりして、歩いて川まで行く感じではありませんでした。ということで、時間が来て店から出されると、そのまま3次会。結局、9時くらいまで飲んでました。漣くん連れての飲みだったのですが、花火大会中ということもあり、それほどお客さんもいなくてよかった。漣くん自身も去年よりうるさくしたりしなくなったしね。途中でジュース飲むのにも飽きてきたみたいだったけど。当然、帰宅後は何もする気もなく、漣くんをお風呂に入れて、そのまま一緒に寝ましたよ。

■夏の最後の週に入っていきなり涼しくなって、もう夏も終わりという感じ。今年はよく働いな、と思う。行きたかった目黒美術館の「ジョージ・ネルソン展」にも行けず、近くなのに小金井のはけの森美術館の「猪熊弦一郎展」にも行けず、子どもも連れて行こうと思ってたちひろ美術館の「いわさきちひろ×佐藤卓=展」にも、八王子夢美術館の「11ぴきのねこと馬場のぼるの世界展」にも行けず、そのほか開催している展覧会を調べる余裕もあんまりなかった、そんな2014年の夏、でした。とはいうものの、毎週何かしら遊びに行く予定があって、近くがほとんどだけどいろんなところに遊びに行ってました。

「今宵も酒場部」-牧野伊佐夫、鴨井岳-

■ステキなお酒の嗜み方のあくなき追求を目的として、牧野伊三夫部長と鴨井岳が都内を中心にさまざまな酒場をめぐった1年の活動記録。酒場での二人も良いけれど、高橋みどり、高橋みどり、平松洋子、松長絵菜、石田千、セキユリヲ、福田里香といったゲストが登場するのが楽しい。そしてはけのおいしい朝市でお世話になっている(漣くんの幼稚園も紹介していただきました)横須賀さんの弟、横須賀拓さんもたびたび出てくる。というわけで武蔵小金井の酒場も登場。調べてみたらそのお店は10時過ぎには閉店しちゃうみたいなので、会社帰りに一人で行くのは難しいけど、機会があれば行ってみたい。ちなみに横須賀拓さんは、東京蚤の市でロスパペロテスの手伝いをしていて、お互いのお店を見に行ったりしてます。ついでにロスパペロテスでは、友だちの友だちだった小栗さんも手伝いをしていて、最初の時はいろいろいろいろつながっててびっくりしたものです。その小栗さんは、今年の6月に鎌倉に古書ウサギノフクシュウという古本屋を開店。今月末に鎌倉に行く予定があるので、その際には行ってみようと思ってます。
そういえば、ずっと「幸田さんと小栗さんを会わせたいんですよ~」って会うたびに言っていた女の子は、しばらく会わないなーと思っていたら東京蚤の市に遊びに来てくれて、しかもお腹が大きくなっててびっくりしたなー元気な赤ちゃん産んだかな?

-■週末は谷保にあるラマパコスの夏市に行ってきました。夏市では、鳥取にある食堂カルン(アジアンフード)TAIYODO(植物性焼菓子と冷たいデザート)、アグネスパーラー(季節のひんやりドリンク)、ラマパコス(お酒と蚤の市)が出店していて、それほど広くない店内に関田君の作った机やいすが並べれていて、5月に生まれたばかりの女の子の赤ちゃんを抱っこしたりあやしたりしつつ、おしゃべりをしたり、おいしいものを食べたり、遊んだり、といい雰囲気でした。週末くらいから暑さもちょっと和らいせいで、扉を開けっ放しにしておいても汗だくになることもなかったですしね。しかしいつもはお兄ちゃんたちに囲まれている暁くんが、赤ちゃんを見てものすごく興奮してたのが笑えた。

■わたしはビールを飲みながらカルンのアジア風おかずのっけご飯を食べる。
-いろいろな香辛料や調味料が混ざっていておいしかった。ふだん野菜は食べない漣くんも野菜がたっぷり入ったサモサ(?)とか食べてたしね。ほんとはここでTAIYODOの甘くないお菓子とかをおつまみにビール飲みながら、夕暮れまでだらだらと居たかった。そしてカルンに鳥取の話を聞くたびに鳥取に行きたくなります。

■谷保に行ったついでにやぼろじでやっていた西舘朋央の「NEW FOLKS」も見てきました。木片を使ったコラージュで、デザインそのものもモダンな感じよかったのですが、木片のツヤや凹凸などで見る位置によって印象が変わるところのがおもしろかったです。ジャーナルスタンダードの広告(?袋?)や本の表紙なども手掛けていて、それはコラージュを写真に撮るという形なのですが、光の当て方とか角度とか撮り方によって変わるので難しいとのこと。

-■谷保の町は、細い裏道があったり、こじんまりと商店が集まっていたり、団地やそれにくっついたスーパーがあったりといつかゆっくりと散歩してみたいと思う。山口瞳の「居酒屋 兆治」のモデルとなった文蔵→婆娑羅にも行ってみたい。つうか地図で調べたら、ラマパコスと婆娑羅ってものすごく近い。あるいて1分かからないところにあるのね。

■で、一回家に帰ってきてお父さんは、梅ヶ丘へ。2か月ぶりの泥酔ファンクラブ。今回はマヌロックフェストいうことで80年代のメタルやハードロックがかかったりして、普段、クラブで聞かないような曲がガンガンかかっててめちゃくちゃ盛り上がってました。
わたしはその辺まったく通ってないので、イントロが流れただけでみんなが反応してるのがうらやましい。10代の頃、メタルのレコードを貸してくれるような友達もいなかったしなぁ~(そもそも友だちが少ない。とほほ)
そんなわけで昼からビール飲んで夜も飲んで帰宅は1時。すっかりいい気分で布団に入りましたとさ。(まだまだ飲み倒した週末は続くのであった)

「残光」-吉田健一-

■気を抜くと雑記の更新もほとんどしてしない状態になってしまいますね。年の初めに比べ読書量も減ってきているので、冊数としてはそれほどたまってない気がしていたけれど、この本を読んだのは6月の終わり。もう2か月以上前のことで内容も忘れ始めてる感じ。いや、そもそもあんまり集中して読めてなくて、読み終わったすぐ後でもぼんやりとした印象だったような‥‥吉田健一の本はある程度、時間を取って集中して読まないとだめですね。それとは別に、随筆と小説をもう一度リストアップして、残りの本をきちんとチェックしていくようにしたい。なかなか手が出せない評論はそのあとかな?

■もう終わってしまいましたが、先日、昼休みを利用してIMAギャラリーで行われていたグループ展「THE STREET GOES ON」を見に行ってきました。海外からはスティーブン・ショアやピーター・サザーランド、ロレンツォ・ヴィットゥーリ、国内ではホンマタカシ、北島敬三、春木麻衣子といった写真家のストリート写真が展示されていました。スティーブン・ショアの新しい写真集「WINSLOW ARIZONA」に関連した展覧会だと思うのですが、ちょっと人数が多かったかな‥‥わたしとしては過去のものも含めてスティーブン・ショアの写真を見たかったかも。いや、ほかの写真家の写真もよかったんですけどね。

-■ちなみに「WINSLOW ARIZONA」は、ニューヨークから南西部を通ってロサンゼルスを経て終着点をサンフランシスコとする「アート列車」で全米を横断するという、現代美術作家のダグ・エイケンによる「Station to Station」というプロジェクトで発表した作品の一部を収録したものとのこと。このプロジェクトでは、スティーブン・ショアのほかにアーティストやライター、映像作家やパフォーマーらが参加し、あらかじめ決めていた停車駅に到着するたびに、彼らは、ダグが「ハプニング」と呼ぶ、各地に用意した会場で作品を展示したり、パフォーマンスを行ったらしいです。

■写真集では、タイトルにあるようにそのプロジェクトの最中に撮影された写真の中からアリゾナ州・ウィンスローで撮られた写真がおさめられています。荒涼とした風景をあまり感情的にならず、そのまま写していているところがよくて、写真集も買おうと思ったのですが、まぁこれまでのスティーブン・ショアの写真をよく見ているわけではないので、これを買うなら過去の写真集が欲しいと思い保留にしました。

-■ついでに同じ建物にあるタカイシイギャラリーでやっていた小平雅尋、原美樹子、吉野英理香という3人の写真家による「グループ展」も見てきました(こちらもすでに終わってますが‥‥)。吉野英理香は以前、移転する前のタカイシイギャラリーでの個展を見たことがあって気になっていた写真家。ほかの二人の作品は初めて。
普段は淡い感じの色彩の写真に惹かれることが多いのですが、吉野英理香の作品はわりと暗め画面構成でどことなく内省的で、何気ない日常的な風景や壁に貼られたポストカードを写したものでもどこか心にひっかかって立ち止まって見つめてしまいます。もともとはモノクロフィルムでストリートでのスナップを撮っていたらしく、最小限の色が抑えられている感じがいい。逆の意味で淡い色合い、とも言えるのかもしれません(かなり強引)。

■原美樹子も街角ですれ違った人々を被写体としたスナップで、独特な“間”というか雰囲気のある作品でした。記憶があいまいなののですが、西東京の風景が多かったような気がするのと、後で調べたらイコンタシックスを使ってるそうで、ちょっと気になってきてます。
一転、小平雅尋のほうはモノクロの端正な作品で、ほかの二人とは作風が異なる感じ。会場を入口から右回りに吉野英理香→原美樹子→小平雅尋と見ていくと、吉野英理香→原美樹子の流れがスムーズなだけに、この写真展での小平雅尋の作品の違和感が際立ってしまう気がします。単独で見たら違う印象になりそうだけどどうなんでしょう?

「おいしいはなし:台所のエッセイ集」-高峰秀子編-

■向田邦子、幸田文、山田風太郎、井上ひさし、玉村豊男、安野光雅、中山千夏、石井好子‥‥など、高峰秀子が50冊近い本から選んだ料理随筆を23編収録したアンソロジー。どこかユーモアのただよう文章が多く収録されていて気軽に読める感じがいい。
高峰秀子自身もたくさんのエッセイ集を出していて、「台所のオーケストラ」など食に関するものもあるし、旅に関する旦那さんの松山善三との共著もあるので、ちゃんと読んでみようと思っているのだけれど、意外と読んでないかも。何気に沢村貞子とごっちゃになっている部分もあります(すみません)。

■7月は本の更新もほとんどせずに、スマートフォン用のサイトを作ってました。といってもスマートフォンで見やすいようにレイアウトを変更したものを追加しただけですが‥‥。ほんとはスマートフォンならではの見せ方をもう少し考えたくて、ライブラリーとか見てみたのですが、今って文字コードがUTF-8なんですよね。カヌー犬ブックスのプログラムはShift-JISなんでそこから変更するのはいろいろ難しく‥‥。そろそろプログラム自体も変更する時期に来てるのかもしれません。
今回スマートフォン対応を見送った雑記についても、時期を見てなんらかの対応を行う予定。まぁ特にどうという内容でもないので、わざわざスマートフォンで見る人も多くないと思いますが。

-■そんなわけでこの雑記もほとんど更新できず。読み終わった本が何冊かたまっているので、ちょっと頻度をあげて更新していきたいと思ってます(思ってるだけ?)。

■金曜の夜は思っていたよりも早くMTGが終わったので、無理やりさくっとあがって、ブラックベルベッツのライブを見に丸の内ハウスに行ってきました。新丸ビルなんて行くのは初めて。金曜だけあってレストラン全体ではほぼ満席の大賑わいでしたが、ライブをやっていたテラスはそれほど人がいなくて、時間は短かったけれど、ゆっくり演奏を聴けてよかった。ここで飲んでてライブ見ないなんて、なんてもったいないことだろうと思うけれど、楽しみ方はひとそれぞれ、ですからね。
ブラックベルベッツは、明和電機の経理のヲノさんとして知られるヲノサトル、センベロ名義でも活動するサックス奏者の田中邦和、デミセミクエーバーのギタリストのテラシィイ、打楽器奏者の山口ともの4人組のバンド。
-昭和の歌謡曲やラテン、ジャズのスタンダードをちょっと変わった感じのアレンジで演奏していて、このバンドを知らない人でも楽しめるのではないかと思う。当日の朝にライブがあることを知ったので一人で行ってしまったけれど、5人くらいで行きたかったかも。

■週末は小金井公園の江戸東京たてもの園でおこなわれた下町夕涼みへ。遊びに行くのは今年で3回目ですが、年々人が多くなって、中に入るのも食べものを買うのにも長い列ができていました。行くのが遅かったこともあり、建物や盆踊りの様子を楽しんだりすることもなく、、中に入って焼きそばやお好み焼きをちょっと食べてから、路面電車で遊んだり、消防服を着て消防車に乗ったり、妖怪の展示を見たりと、お祭りとはあまり関係ないところで遊んでいました。そのせいか一緒に飲もうと思っていた女の子二人の幼稚園のお父さんとは会えず。男の子と女の子では狭い会場でも行動範囲が違ってきますね。