「毎日が冒険」-萩原朔美-

◆蒲田東急プラザの観覧車とホットケーキ

萩原朔美は、萩原朔太郎の孫であり萩原葉子の息子。10代後半にジャズ喫茶でバイトしていた時に寺山修司と出会い、「天井桟敷」の立ち上げに参加。役者として舞台に立ったりしたあと(一度だけのようですが)、演出を手がけるようになります。演劇だけでなく、実験映画を制作したり、雑誌「ビックリハウス」の編集長をしたり、大学で教鞭をとったりと幅広い活動をしているようです。

この本では、日々のできごとや天井桟敷時代などの想い出といった身辺雑記や植物や街をテーマにしたエッセイなどが収められています。三月書房の小型本は、小さい割にはわりと分量があるので、特にテーマもなく随筆が収録されていても、かといって一つのテーマに絞っても、途中でちょっと飽きてきたりしてしまうので、3部構成になっていて、しかもテーマやスタイルがはっきり分かれているのはいい。

ちなみにこの本の装幀は、当時24歳だった萩原朔美が手がけた同じ三月書房から出ている母親の萩原葉子の本「望遠鏡」を踏襲したものになっているらしいです。そして萩原葉子の本では望遠鏡だった絵が、「毎日が冒険」ではエンピツになっており、その絵を描いたのは萩原朔美の長男という‥‥と言っても「望遠鏡」のほうはまだ手に入れてないんですけどね。

7月も終わり、二週間の一人暮らしも終わり。子供たちを羽田空港に迎えに行く前にちょっと蒲田に寄り道。あんまり時間もなかったのでまずは東急プラザの屋上へ。ここは東京で唯一屋上にある観覧車があるのです。しかもレトロな雰囲気のこじんまりとしたもので、前々から子供たちと遊びに行きたいと思っていたのですが、さすがにこれ目的で蒲田まで行くのはちょっとね。観覧車のほかにもそれほど広くはない屋上にたくさんのゲーム機や乗り物があり、近くにあったらしょっちゅう行きそう。吉祥寺や立川にこんな屋上があればいいのにね。さすがに一人で乗るわけにもいかないので、屋上を歩き回っただけで、降りてきました。

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-その東急プラザの4階には、シビタスというもともとは万惣フルーツパーラー蒲田支店だった喫茶店(?)があります。万惣フルーツパーラー仕込みのホットケーキが食べられて、それにまつわる話が壁に貼られていたりするのですが、全体的にデパートの中にあるカジュアルな喫茶店という雰囲気。平日の昼間だったこともあり、お客さんも年配の女性の団体や子供連れの親子、外出途中の会社員といった人たちがほとんどでした。特に売り場と壁で区切られているわけでもないのに全席喫煙可って今どきあまりないですよねぇ~

万惣フルーツパーラーのホットケーキは10年くらい前(?)に神田で食べたことがあるだけなので味の方は比べられないけれど、適度にふわっとした食感がよかったです。前回ホットケーキが築地のコリントだったこともあってそう感じただけかもしれませんが‥‥

ついでに古本屋をちょっと見たりして(いや、こっちが本来の目的だったのですけどね)、商店街にある純喫茶リオでコーヒーを飲む。おばあさんが一人でやっていて、しかも店内にお客さんが誰もいないという状態。でもこういう古い喫茶店で今でも続いているお店って、テーブルや椅子をはじめお店の中にあるものすべてがそのままなんだけれど、きちんと手入れされていてきれいに使われている感じがしますね。そういうところが長く続いているりゆうなんだろうなぁ、なんて思いました。

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「写真ノ話」-荒木経惟-

◆デイジーワールドの集い@青山スパイラルCay

荒木経惟の写真は雑誌をはじめとしたメディアでちょこちょこ見るけれど、きちんとした写真集は見たことがないです。エキセントリックな言動がフィルターになってしまっているせいか、どうも自分の嗜好とはまったく違う次元の人で、接点を感じられないところにその原因があるんじゃないかなとか思ったりしてしまいます。でもこうやって一冊を通して本を読んでみると、ちゃんと写真集を読みたくなるようないい話、フレーズに溢れていたり、アラーキーの正統な面とエキセントリックな面が出ていておもしろい。この両方の面をきちんと見ないとダメなんだという荒木経惟のファンならあたりまえのとも言えることにようやく気がついた次第。

さて、先週の水曜ははじめてデイジーワールドの集いへ行ってきました。
前々から行きたかったのですが、なかなか行く機会もなく、最近はチェックもしていなかったのですが、前日にたまたま知りこれは行くしかないと‥‥。

ゲストは事前に告知があったリトルクリーチャーズと、直前になって決まったらしいハナレグミ。まぁそんなに細野晴臣に交流のあるミュージシャンではないような気もしますが(わたしが知らないだけです‥‥)、両方ともライブを見るのも久しぶりなので、7時過ぎに強引に会社を出て、スパイラルへ‥‥

リトルクリーチャーズは、新しいアルバムも聴いてないし、最近の活動もあまりよく知らないけれど、ほんと変わらないスタンスで活動を続けていて、なんだかすごい。この日はライブということもあってか、インスト部分が多い演奏だったのがよかったです。こう言っちゃなんだけど、青柳拓次は、けっして歌がうまいわけでもないので、演奏がうまいだけにヴォーカルになるとちょっと肩透かしな感じになっちゃうんですよね。別に歌わなくてもいいのでは?とも思うけれど、それはリトルクリーチャーズ以外での活動でやってるからいいのかな?でも3人でのインストアルバムを聴きたい気もしました。

ハナレグミは基本弾き語り、途中でユザーンのタブラが入る形。歌の途中に「ブギーバック」が入ったり、ユザーンとの掛け合いがあったりと、和気あいあいとした盛り上がりが楽しい。こういうノリのライブを見ているとスーパーバタードッグも解散せずに並行して活動を続けていてくれてたら、と思いますね。

高田漣の弾き語りを挟んで、最後は細野晴臣。最近のアルバムからの曲で、鼻歌のような細野さんのヴォーカルがcayの雰囲気に合ってました。こうやってシンプルな演奏をバックに歌を聴いていると、細野晴臣の作るメロディって実はあんまり変わっていないというか、その時々によってサウンドが変わるのでぜんぜん違うものとして聴いてしまうけど、多分、「泰安洋行」の中の曲をこのバンドでやってもあまり違和感はなんじゃないだろうか。というか、むしろ聴いてみたい。

最初に告知されていたゲストがリトリクリーチャーズだけだったせいか、人で溢れかえるという感じでもなく、席に座ってカレーを食べたりしながらリラックスした雰囲気でライブが見れたのもよかった。フェスもいいけど、まぁ大人なんでこういうところでのんびりライブを見るのがいいなぁ。

「やきもの随筆」-加藤唐九郎-

◆鎌倉で飲んで帰る

前々から陶器とか磁器、工芸品などについて知りたいと思ってるのだけれど、どうしたものか、とまったくわからないままになってしまってます。実際の物を見に行ったり集めたりしないとわかってこないんだろうと思う。
そんなわけで、おそらく、それほど陶磁器について詳しくない初心者向けに書かれたと思われるこの本も、イメージがわかないところも多く、読むのに時間がかかってしまいました。とりあえずはこういう本を読みつつ機会があれば実物を見にいければ、という感じですかね。

専門性を別にすれば、中国のものが最上だった時代があったり、朝鮮のものの価値を重要視するようになったり、その後、日本で作られたものが再評価され、そこに日本の地方に争点を当てた(ちょっと違うか)民藝運動がおこったりと、読んでるとなんだかレコードコレクターみたいな話のようでもあり、いつの時代もあまり変わらないんだなぁとか思ったりしてしまいますね。

-さて、間があいてしまいましたが、横須賀、鎌倉散歩の続き。
今回の鎌倉散歩は、前日に飲みに行った時に「BRUTAS」を読んだせいで、夜の鎌倉で飲むというのがテーマでした。単に夏休み中なので、昼間にディモンシュでお茶したり、イワタでホットケーキを食べたりするのは無理だろうってこともあります。

夕方くらいに鎌倉に着いて、古本屋や雑貨屋、市場などをさっとまわって、夕方から友だちと合流。ちょっと遅れるというので、歩き疲れたし「BRUTAS」で岡本仁さんが紹介していたブルールームでサラダとフリッターをつまみに一人先に飲み始める。釜焼きのクラフトビールがいくつかあるこじんまりとしたいい感じのピッツァリア・ビアバーで、ピザもおいしそうでしたが、前日もビザを食べたこともあり、ベアードビールを2杯飲んでさくっと移動。

なんとなく海の近くで飲もうということになり、行く店も決めずに御成通りを海の方へ歩いていたらギターの音が通りまで聴こえてきて、そのまま立ち飲みのスペインバル、パンダバルに入る。入ってから壁のタイルを見て、ここも岡本仁さんが紹介していた店と気づく。う~ん、なんなんだか。
でもギター一本で爪弾かれるボサノバやクラッシックの演奏が心地よく(フラメンコとかはほとんど演奏しなかった)、グリゼット(スペインバルだけどベルギービール)を飲んだりしながら、演奏が終わるまで飲んでしまったのだけれど、一日中歩いていたのでちょっと立ち飲みはつらかったです。
(すみません、演奏していた人が誰だったかは忘れました。帰り際にCDのチラシをもらってきたのですが、どこかで失くしてしまいました)

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その後、もう一軒入ろうと思ったのだけれど(できれば岡本仁さんが紹介してないところ)、鎌倉の夜は意外と早くて、なかなか手頃なところが見つからず無駄に歩き回った挙句、市場のラーメン屋で締めて終了。鎌倉を出たのは10時くらい。家に着いたのは12時過ぎでした。
いやーよく歩きました!そして一日が長かった。出かける前、7時半くらいに投票に行ったことなんてすごい前のことのようでした。