「その他大勢」-小堀杏奴-

◆横須賀美術館再訪、海辺の散歩

最近(と言っても去年のことか?)森茉莉の本を読む機会が多かったのですが、久しぶりに小堀杏奴の本を読んでみる。そして素直にやっぱり姉妹でも全然違うなぁ、と思う。まぁ当たり前ですけどね。
森茉莉のファンが読んだら「子どもの自慢話とか受験の話なんてどうでもいいんだよぉ~」と言いそうな内容でもある。正直わたしも読んでてそう思う時がありました。ただ森茉莉の文章はいい意味でも悪い意味でも偏ってるということは否定できないし、文章も万人向きとは言えないのも確かなので、森鴎外の娘としてこういう文章に対するニーズもあるんだろうな、という気もします。むしろ一般読者向けと言えるかも?。
ついでに森於菟の「父としての森鴎外」や「耄碌寸前」も読んでみたいけど、古本屋で見たことないですね。そもそも「大人の本棚」シリーズは一部を除いてなかなか古本屋で見かけないし、あったとしても元の値段が高いのでそれほど安くもなってない場合が多いんですけど。

先週からミオ犬たちが長崎に帰省しているので、ひさしぶりに一人の週末、横須賀→鎌倉めぐり。一人暮らしになると、いつも鎌倉に行ってる気がする。一人なんでちょっと遠出でも、なんて思うとなんとなく鎌倉あたりに行ってしまいます。別にどこでもいいんですけど、まったく知らないところにして、事前にいろいろ調べるのもまぁまぁめんどうなもんで‥‥(それが楽しいって時もあるけどね)

で、特に妖怪が見たかったわけでもないのにわざわざ横須賀美術館へ。現代の作家よりも浮世絵を中心にした昔の絵のほうが、物語性というか、絵の隙間や描かれている妖怪の背景が想像できる感じがよかったです。当時はかなりリアリティがある絵として受け入れられていたのかもしれませんが。それから、なぜか幽霊の絵になると掛軸に墨で描かれたものが多くなってしまうのは何でなんでしょうね。夏とかに床の間に飾ったりしたのだろうか。それはそれでめちゃくちゃ怖い気もするんですが‥‥

前にきた時は、屋台が出ていて、ちょっとしたものを食べたり、ビールを飲んだりできたのですが、今回はそれがなかったのが残念。あの時は芝生のところに大きなスクリーンが張ってあって夜、映画の上映をしていたりしたんだよなぁ~

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そんなわけでさくっと展示を見たあとは、観音崎灯台に登ってみたり、海辺を歩いてみたりして、美術館の周りを散歩。なんか前日に伊千兵衛でやっていたart of noise にいたわりと美術系の人たちとはまったく違う感じの人たちがバーベキューをしていて、遠くにきた感じを実感しました。
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その後は鎌倉に移動、つづきは次回?

「忘れえぬ人」-山口瞳-

◆ユーロスペースで4年半ぶりに映画「TRAIL」を見ました。鳥取に行きたい~!

黒尾重明、鳥井信治郎、梶山季之、柳原良平、関保寿、中原誠、向田邦子、色川武大、井伏鱒二‥‥などについてつづった文章をまとめた本。途中、ニュースになった人の話が出てきたりするのがちょっと唐突。収録する文章が足りなかったのだろうか?

ギャラリーセプチマの波田野くんが監督した映画「TRAIL」をユーロスペースで見る。去年、達郎のライブと調布でやっていたキンダーフィルムフェスティバルに行ったけれど、ちゃんとした映画を見るのは漣くんが生まれて初めて。4年半ぶりくらい。
あまりにも久しぶりなんで上映中ずっと集中できるのかなとか、いきなり小難しい内容だったどうしよう、ついていけるのだろうか?なんて実をいうとかなり不安だったのですが、実際は頭を空っぽにして100分間映画の世界に引き込まれっぱなしでした。鳥取の自然とちょっとノスタルジックな街の風景がひたすら美しく、でもそれだけでなくて見る人に「!」や「?」を提示し、見る人、見る度に違う解釈せざる得ないというストーリーの共存がめちゃくちゃよかった。
光と影、生と死、現実と非現実、ギターの音の響きと役者たちの声の生々しさ、叙情的な風景と廃墟や見る人を一瞬不安にさせるような映像・・・など相反する要素があくまでも自然に一つの混じり合い境界線のない世界。
そしてストーリー展開に際しての伏線や暗示が、意図的に各所にちりばめられているので、一回見ただけだとその印象に引っ張られてしまったような気がしてしまってます。セプチマの受付でニコニコしながらビールを売っている波田野くんが実は詐欺師なんじゃないかと思ってしまったりして‥‥。

そんなわけで映画を見たあとで「あのシーンがよかった」とか「あれは私はこう思った」とかいろいろ話したりしてから、また見てみたら違う受け止め方ができて楽しいと思う。でもまぁここで独りよがりな解釈を語っても野暮というもの。というか人それぞれの思いを語り合うことが重要な気がしますしね。

あと見終わってからふと大林宣彦監督の尾道三部作や林海像の濱マイクシリーズを思い出しました。もちろん映画の内容も方法論も町へのアプローチも全然違くて、作品としてはむしろ似ているところはほとんどないんですけどね。

それにしても久しぶりに見る映画が「TRAIL」でよかった。映画館で映画を見てその世界に何時間か浸かるのは、いろいろな意味で気持ちもリセットできていい、ということを改めて思った次第。吉祥寺とかでまた上映されるといいなぁ~

「四角い卵」-永井龍男-

◆リッツパーティー@セプチマ

永井龍男は長編になると、短編にある緊張感のある引き締まった感じがなくなってしまって、残念な感じになってしまうのはなぜだろう。「皿皿皿と皿」は短い章をつなぐ形で成功していたので、この形でもう何冊か作品を書いて欲しかったと思う(もしかしたらあるのかもしれないが)。
わたしは小説に対して、別につじつまが合ってないとか、軸となるテーマがないとか、そういうことにはまったくこだわってないんですが、それでもちょっとどうかなって思うくらい。わたしの読み飛ばしてしまっただけなのかもしれませんが、そもそもタイトルがなんで「四角い卵」なのかもわかりませんでした。とはいうものの、まだまだ読んでいない長編が何冊もあるので、どこかで見つけたらまた読みますけどね。

でも年表を見るとこういった長編は、戦後、永井龍男が文藝春秋で仕事ができなくなって、作家として活動し始めた頃に多く発表されていて、その後だんだんと短編が主になっていくという感じなので、もしかしたらこの辺の作品は習作ぽいのかなんて気もします。もしくは生活のために量産しなくてはいけなくて、あまり熟考できてないままの作品とか。実際、戦後1949年に「ああ、この一球」を出した後、1950年代に22冊も本を出してるんですが、1960年代になると12冊、1970年代には13冊とかなり減ってます。単に年齢的なことなのかもしれませんが‥‥
そういう意味も含めてこの時期の作品を、永井龍男自身がどうとらえていたのかちょっと気になります。全集とかにもちゃんと収録されてるのでしょうか?

週末はセプチマでやっていたリッツパーティにいってきました。名前のとおりいろいろなものをのせてリッツを食べながら、ライブを楽しむというセプチマらしいイベント。ディップも定番のチーズ系からカレー風味なもの、アイスなど全部食べきれないくらいたくさん種類があっていちいち迷ってしまいました。うちはさくらんぼを持って行ったのですが、けっきょく漣くんと暁くんがパクパク食べてたという感じでした。

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ライブの方はFriendly Hearts of Japan、Miitsy、地底紳士、Yoshino momoko – Yamamoto sei、Miss Donut(a.k.a. Americo)、pagtas、フムフムといったラインナップ。行く前にまったくチェックしていなかったのだけれど、Momo-Seiはチロリアンテープやサニチャーのヨシノモモコとプレイメイツの山本聖の二人組だったんですね。
ギター2本と二人のーヴォーカルというシンプルだけどメロディとハーモニーが心地よい、なんていうのかな、すごく気分が高揚するとかじゃなくて、歩いてるうちに地面から10cm浮き上がるような気分になるようなウキウキ加減がよかったです。セプチマという会場自体の響き加減も二人の奏でる音楽にあっていたような気がしました。一番最初のライブというとこもあり、子供たちもリッツ片手に最前列で聴いてたので、ゆっくり聴けてよかったです。

でも、その後は中に入ってリッツを食べたと思ったらすぐに外に出て駆け回ったりして、それを追いかけるのに精一杯で、ライブどころではなかったのがちょっと残念。特にフムフムさんがライブで使用したシャボン玉マシーンを庭に出してくれてからは、それに夢中で、シャボン玉液がなくなるまで遊び倒してました。
あと、かなり山本聖さんに二人が絡んでて、勝手に名付けたパンチを浴びせたり、一方的にウルトラマンの話を話したりたくさん遊んでもらってしまいました。みなさん、ありがとうございました!山本聖さんは福生でいろいろイベントを行っているみたいなので機会があれば行きたいです。

このあともセプチマではFilFilaが出る「逆まわりの音楽」やQuinka with a Yawnが出る「すなななフェス」など気になるイベントがあるので(しかもその時期、ミオ犬たちが長崎に帰省するので一人なのだ!)、うまく都合をつけて遊びに行きたいと思ってます。

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