「鶴の舞」-野尻抱影-

◆築地・新橋、レトロ喫茶めぐり
野尻抱影は、星座とその伝説を解説した本をいくつも出しており、星の和名の収集研究で知られている英文学者、天文民俗学者。作家、大佛次郎の兄で、今回ウィキペディアを見て知ったのだけれど、血のつながりはないですが、中川翔子と姻戚関係でつながっているらしいです。
さてこれは星とは関係ないテーマでつづられた随筆集(星にまつわる話もすこしあり)で、構成としては、生まれた場所である横浜の明治時代からの風物から現在までの思い出をつづったもの、落語や芝居、古典について語ったもの、南アルプス登山にまつわるものなど、いくつかのパートに分けられています。
横浜の話などは弟の大佛次郎や獅子文六の随筆などとあわせて読んいくとおもしろいと思うし、身辺雑記的なものも少しだけ天体の話が出てきたりしてよかったのですが、古典や山の話はあんまりついて行けず、って感じでしたね。そもそも山や渓谷の地名がわからない‥‥。前回、文章を書く(読む)ためには草木の名前を知っておくべきと書きましたが、日本の細かい地名もちゃんと知っておくべきかと(あと、教養として古典もね。その辺、わたしは理系なんでかなり弱いのです)。

装丁は、佐多芳郎。山本周五郎の「樅ノ木は残った」「ながい坂」、平岩弓枝の「南総里見八犬伝」、円地文子の「国性爺合戦 近松物語」などの挿絵を描いた画家。「四十八人目の男」「桜子」「冬の花」「今日の雪」といった大佛次郎の作品の挿絵や装丁なども多く手掛けているので、そのつながりでこの本の装丁を手がけた感じでしょうか。

-2月の後半からわけあって仕事で築地方面への外出が多くなってきたので、少しの時間を使って築地近くでランチをしたりお茶したりしてます。時間的に築地市場の中でごはんを食べるということはできないのが残念なのですが‥‥

といいつつ、まずは朝の訪問に合わせてまず築地市場の中にあるセンリ軒へ。朝ごはんを食べてきたのでとりあえずコーヒーとチーズケーキ。カウンターに座っても椅子をちょっと後ろにしたら壁によりかかれてしまう通路の狭さがけっこう好きです。カウンターだけに店員さんや常連の人たちの話が直接聞こえてきて、なんとなく気になってしまい本に集中できないんですけど、まぁ真剣に本を読みたいわけでもないのでそれでいいのではないかと‥‥。
築地市場の中の喫茶店と言うとここともう一つ喫茶 岩田があります。こちらはメニューにフレンチトーストがあったので、次に機会があれば朝ごはんを食べずに来てフレンチトーストを食べたいですね。

-新橋の喫茶ジャパンは前に純喫茶コレクションというブログを読んでいた時に知って、前から行きたいと思っていたところ。新橋を降りてSL広場を抜けてちょっと行ったところにあります。(築地市場と逆じゃんというツッコミはなしで)
看板も昭和なフォントですが、店の前に置いてあるショーケースもなかなかいい。形や中に置いてあるメニューは古めかしいけれど、ケース自体はすごくきれい。細い階段を降りていくと、なんの前ぶれもなく店内が広がる感じで、思っていたよりも広くてテーブルの間隔もひろくてゆったりしていました。ぜんぜん雰囲気は違うけれど、京都にあるオパールというカフェが移転する前、エレベータから出るといきなり店内になっていて、ドアが開くと開放的な気分になったのを思い出しました。
外に置いてあったショーケースもそうだけど、お店自体は古いみたいだし、置いてあるものも新しいわけではないのに店内の感じがとてもきれいで清潔感があるのがとてもよかったです。ここではあまり時間もなかったのでコーヒーのみ注文。座り心地のよいイスに座って本を読んでいると打ち合わせに行く気力がどんどんなくなってしましますヨ。

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で、場所がらと時間帯も朝ということもあって、会計をすますと「いってらっしゃい」と見送られました。

続いては築地市場の浜離宮の近くにある喫茶コリント。友だちにここのフルーツパンケーキを勧められたので、一緒に行った会社の人とランチ。ここもお店の雰囲気はまさに昭和。

注文したのはもちろんフルーツパンケーキ。まずびっくりしたのはそのパンケーキの大きさとフルーツの量。フライパン一杯の大きさくらいのパンケーキが2枚もあり、フルーツもパイナップルなんかは小さめのものとしても1/4くらいあったし、そのほかにいちごやバナナ(これも一本)、オレンジやグレープフルーツなどが盛りだくさんでした。

そして店内はほとんど近くの会社に勤めるサラリーマンで、わりと平均年齢の高めの人たちがパンケーキと格闘している姿はちょっと不思議。カレーやナポリタンといったメニューもあるのですが、どれも量が多かったです。

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次に外出する時に食べたフランクパンケーキ。これも一見ウィンナーのようですが、見た目よりもかなり大きいのです。

ちなみにわたしは2回ともパンケーキを食べきれず、残しました。

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「続 春夏秋冬帖」-安住敦-

◆ジブリ美術館に行ってきました
久保田万太郎から引き継いで主宰した俳句雑誌「春燈」の編集後記をまとめた本。その前に出た「春夏秋冬帖」から10年くらいの年月が経っているので、その間に書かれたものが厳選され、お正月用の繭玉を作る話に始まり大晦日で終わるという一年の流れに合わせて再構成されているという感じでしょうか。
前にも書きましたが、書かれた年に関係なく再構成されているので、読み進めていくと一気に年代が進んだり戻ったりして「ん?」と思うところもときどきあります。ただ俳人らしく季節をいろどる草木や風景、その時々の行事など、季節のうつろいをつづった描写が多いこともあり全体としてはスムーズな流れになっています。
残念なのは、わたしが出てくる花や木の名前をあまり知らないこと。いや、知らなくても雰囲気が伝わってくるのですが、やはりちゃんと分かってて読むとぜんぜん違う感銘を受けるんだろうなぁと思います。
文章を書くのなら草木の名前を知らなくてはダメだ、といったのは山口瞳の師匠、高橋義孝だったか、山口瞳本人だったか。永井龍男も同じようなことを言っていたような‥‥。

-10年ぶりくらいにジブリ美術館に行ってきました。でもわたし自身はいわゆるジブリ映画というものをほとんど見たことがないのです。年齢的にも「風の谷のナウシカ」が公開されたときは中学3年だったしね。もう2、3年遅く生まれてたら見てかも。この辺の2、3年はけっこう大きい。宮崎駿とぜんぜん意識してないけど、「アルプスの少女ハイジ」とか「未来少年コナン」とか「ルパン三世 カリオストロの城」は普通にリアルタイムで見てたしね。そんなわけで子どもが「となりのトトロ」とか「崖の上のポニョ」とかテレビで見て盛り上がってるのでまぁ行ってみますか、という感じ。
まぁ今一番漣くんが気に入ってる宮崎駿作品は「パンダコパンダ」なんですけどね。

親バカな発言をしちゃうと、やっぱり子どもが一緒だと楽しい。漣くんや暁くんが猫バスに乗ったりできるってのもあるけど、単に螺旋階段登るだけ、館内を歩き回るだけで楽しめます。展示されていたり販売されてる絵本とかもいろいろ参考になるし。そんな中でなぜか堀田善衛のDVDや著作集があったりしておおっ!と思ってみたり‥‥。
-けっきょく途中ごはんとかお茶とかしながらも12時に入って5時まで遊んでしまいました。館内はわりとカップルできている人が多かったけど、わたしの場合ミオ犬と二人だったら絶対5時間もいられない。

で、すみません。ここまで書いてみたものの、わたし自身ここに来ていろいろ発見したとか、宮崎駿を再認識したとか、ないッス。もしかしたら何年か後、漣くんとジブリ映画を映画館に見に行くようなことがあるのかもしれないけど、自分からはあいかわらず見ないかも。う~ん、なんだろ?別に嫌いとかではないんですけどね

とりあえずわたしのジブリ美術館での収穫は、トトロのフローティングペン。なんか最近またフローティングペンがわたしの中でブームになりつつあるのです。

「ピーナツ・バターで始める朝」-片岡義男-

◆東京おもちゃ美術館や消防博物館、フクナガフルーツパーラーと四谷三丁目でいろいろ
片岡義男は2012年も小西康陽との共著「僕らのヒットパレード」をはじめ(まだ読んでない)、エッセイを4冊、写真集、小説を1冊ずつと相変わらず本を出し続けている。さすがに2010年、2011年はそれほど出していないけれど、2009年は3冊出してる。その衰えない好奇心と創作意欲はどこから来るのだろうか。今知ったのだけです今年で73歳、あ、ちょうどわたしの父親と同じ歳なんですね。う~ん(特に大きな意味はなし)

さてこの本は2009年に出たエッセイ集。特に決まったテーマはなく、いろいろな媒体に発表した音楽や本のこと、食べもの、文房具‥‥など、片岡義男の興味の向くままにつづられた43篇が収録されています。

ざっとタイトルと並べてみると

    旅と小説はどのように関係し合うのか
    瀬戸の潮風、うどんの香り
    アイスクリームには謎がある
    天赴羅蕎麦はこうして生まれた
    『草枕』のような旅を
    サソエツ、ニッタケ、コダワラの女たち
    猫が階段で寝ている
    猫のことを書くなら
    ピーナツ・バターで始める朝
    ハワイの田舎町を訪ね歩く
    今日も小田急線に乗る
    商店街が終わって三叉路になるところ
    本を三冊買う
    真夏のシャーロック・ホームズ
    僕はチェリーを忘れてた
    後悔くらいしてみたい
    手帳が溜息をつく

‥‥などタイトルを見ているだけでちょっと読みたくなってきませんか?という気持ちがする一方で、このタイトルを見ただけで敬遠する人もいるのかもしれないなんて気もしてしまうのは、片岡義男の文章は、ときおり気障な言い回しで話が進められるというか、もったいぶった口調というか、レトリックで書かれた独特の口調で書かれているのがタイトルからなんとなく伝わるような気がするから。その辺が好みの分かれるところなんだろうな、と思う。
でもその点を考慮してもエッセイストとしてファンだけではなくもっと広く読まれてもいいんじゃないかな。(余計なお世話か!)

-先週の金曜は、お休みをいただいて四谷三丁目にあるおもちゃ美術館に遊びに行ってきました。おもちゃ美術館は、閉校になった小学校の教室に厳選されたおもちゃを展示し直接遊べるようになっている施設。
置いてあるおもちゃは、木琴や大きなソロバン、カラコロきれいな音の鳴るおもちゃ、ままごとのおもちゃ、ゲームなど木を使ったシンプルなおもちゃが多く、一緒に遊んであげないと分かりにくいものもけっこうありました。そんなわけで最初のもくろみとしては子どもたちに勝手に遊んでもらって、わたしはのんびり見てればいいかなと思っていたのですが、漣くんはすぐに「おとうさんこっちきて」と一人で遊んでくれないし、暁くんはちょこちょこ歩きまわってどこかに行ったり、おもちゃを倒したり投げそうとしたりして目を離せないし、けっこう疲れました。2歳以下の赤ちゃんのための木育ひろばもあるのですが、こちらは3歳以上は中に入れず。う~ん‥‥。

-おとうさんの楽しみとしては、4月7日までやっている企画展「アメリカと日本の古き時代の玩具- FISHER・PRICE TOYS & JAPANESE TOYS in 1930-1980 -」かな。あと昔の小学校を利用しているので、館内(校内)を歩いてるだけでもわりと楽しかったです。
それから大通りを横に抜けて美術館前の路地が、特になにもないけれどいい感じの路地になっていてよかったです。新宿御苑から曙橋、四谷三丁目あたりの路地は、例えば谷根千のような“何か”があるわけではないけれど、ちょっと前の路地の様子がそのまま残っていてよいです。昔、セツ・モードセミナーに通っていた友だちとあの辺をカメラ片手に歩きまわったりしたことを思い出しました。セツ自体もいい感じの建物だったなぁ~

-ついでに四谷三丁目に直結している消防博物館にも寄りました。こちらは屋外には消防ヘリコプターが置いてあって操縦席に入れたり、昔の消防車がそのまま展示されていたり、災害が起きた時の様子を映し出すモニターがあったりと、小さな男の子が喜ぶものが満載で、漣くんも大はしゃぎ。帰ってからも消防車の話ばかりでこっちをメインで遊びに行けばよかったと思うほどでした。まぁそういうものです。

帰り際にはフクナガフルーツパーラーへ。一階が果物屋さん、二階がフルーツパーラーになっているちょっと昭和な雰囲気のお店。通りから店内が見えないので子どもを連れて入るのはどうなのかなと思ったけれど、全然平気でした。ほかにもベビーカーに赤ちゃんを乗せてる人もいたし、帰りにはお店の人に近くにあるらしいアンパンマンショップのショップカードをもらったくらい。まぁでも平日の中途半端な時間だったので空いてたからってのもあると思いますが。
パフェがおいしいらしくその時にいたお客さんもほとんどがパフェを食べていましたが、1歳児がいるのでフルーツサンドを注文。柔らかなパンとイチゴやパイナップル、キウイなどのたくさんのフルーツ、そして生クリームのバランスがとてもよく、ふんわりとした食感でおいしかったです。

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