「作家の旅」-コロナ・ブックス編集-

◆年末からジャイブ/ジャンプのCDをよく聴いてます
コロナブックスの「作家の~」シリーズの何冊目?旅をテーマにその作家の文章+写真+その作家の家族による思い出というほかのシリーズと同じ構成でになっており、安心して読めます。ただ何冊か読んだせいもあるかもしれませんが、とりあげられている作家が、山口瞳、寺山修司、田中小実昌、吉田健一、澁澤龍彦など、このシリーズによく登場する作家が多いような気がするのがちょっと物足りないかな。いや、単に自分が好きな作家や旅と言ってすぐに思い浮かぶ作家が多いので新鮮味がないだけかもしれません。好きな作家の話なんでそれはそれで何回読んでもいいんですけどね。
そういう意味では、“おやつ”、“酒”、“食卓”、“家”‥‥と分野を広げていくのと並行して、「作家の旅 第2集」「作家の旅 第3集」‥‥と一つのテーマで何冊か出していくのもおもしろいのかなと思いますがどうでしょう。まぁ売り上げはだんだん落ちていきそうですけど。

去年の終わりからいろいろな要因が絡んで、ルイ・ジョーダンやスリム・ゲイラード、キャブ・キャロウェイ、ルイ・プリマといったジャイブ/ジャンプのCDをよく聴いてます。

ジャンプ/ジャイヴとは、簡単に言うと、ビッグバンドによるスイングジャズが、若者のダンスミュージックとしては物足りなくなって来た時代に、若者のためのダンスミュージックとして生まれたブルースが主体としつつパワーがあって陽気で跳ねるようなサウンドにおもしろい歌詞を乗せたエンターテイメント性にあふれた音楽。そしてジャズからリズム&ブルースやロックへの橋渡し的な存在、という感じですかね。細かくわかってないんでざっくりとした説明ですみません。そもそもジャイブとジャンプの違いも分かってないんですよ。

デヴィッド・ボウイが主演したジュリアン・テンプル監督の「ビギナーズ」という映画にスリム・ゲイラードが出ていてそのサントラを聴いたのがきっかけで、80年代終わりから90年代初めに一度自分の中でのブームがあって、その時に何枚か聴いたのですが、当然、その頃はあまりCD化もされてなかったし、アナログも手に入りにくかったので、この手の音楽をまとめて聴いたのは初めてかも。

ちなみに「ビギナーズ」は「ラビリンス/魔王の迷宮」とともにデヴィッドボウイが出演した失敗作として記憶されている映画ですが(笑)、サントラはシャーデーやスタイル・カウンシル、ワーキング・ウィーク、ジェリー・ダマーズなど、ジャズとかボサノヴァとかをとり入れたイギリスのアーティストが参加していていいのですよ。

まだそんなにたくじさん聴いてるわけでもないし、詳しいわけでもないですが、例によって備忘録として、よく聴いたCDを何枚か紹介。あまりにも基本的なミュージシャンなので、少しずつ何回かに分けて紹介しようかな、とか思ってます。あと、基本的にベスト盤ばかりです。(それぞれのミュージシャンでいろいろベスト盤が出ているのでどれを買うべきなのか初心者はほんと迷います)

-■「Are You Hep to Jive」-キャブ・キャロウェイ-
まずは映画「ブルースブラザーズ」にも出演し、ジャイブ/ジャンプと言ってすぐに思い浮かぶキャブ・キャロウェイのベスト盤。彼の全盛期とも言える1930年代後半から1940年代後半に録音された代表作を収録。今回選んだCDは1950年代に録音されたものが多いので、音だけ聴いていると、それらに比べてわりとおとなしめのストレートなジャズになっているし、コーラスなどもちょっと古い感じになってます。まぁそれが本来のサウンドなんですけどね。逆にそのゆったりとしたサウンドのせいで、猥雑な雰囲気がきわだってるとも言えるかな。音だけよりも映像で見たい気がしますね。

-■「Rock’n’ Roll」-ルイ・ジョーダン-
かつてのヒット曲などを1950年代半ばに再録音したもの。クインシー・ジョーンズがプロデューサーをつとめています。「私の考えるジャズ」とほぼ同時期の仕事になるのかな。そんなわけでバックのサウンドはかなり洗練されておりそれに合わせてかルイ・ジョーダンのヴォーカルもどこかモダンな感じがします。録音されている音もいいです。ストレートなジャズヴォーカルっぽい曲からノベルティ的なもの、ラテン音楽など幅広い曲調の曲が収録されてて飽きません。それからロックンロールというにはちょっとモンドな音やフレーズのエレキギターが意外といいアクセントになってます。

-■「Greatest Hits」-ビッグ・ジョー・ターナー-
なんとなくジャケットで選んでみたCD。CDなんで迫力は半減してると思われます。レーベルもアトランティックなので、初めて買うビッグ・ジョー・ターナーのCDとしてはベストなのではないかと‥‥。大ヒットした「Honey Hush Shake Rattle And Roll」「Fip Flop And Fly」やロックンロールの名曲「Sweet Sixteen」「Chain Of Love」といった曲をブギ~リズム&ブルース~ロックンロール・ナンバーがいい。ただアトランティック時代以外は、カウントベイシーやデューク・エリントンなど共演するなどかなりジャズ寄りな活動が多かったようなのでその辺も聴いてみたいですね。

-■「Laughin in Rhythm: Best of Verve Years」-スリム・ゲイラード-
1940年代から1950年代初期のVerveに所属していた時期のベスト盤。歌だけでなくピアノ、ギターなどの楽器も弾き、タップダンスもしちゃうという多才なミュージシャン。芝居がかった感じの歌も多いので、どんな内容を歌ってるのか分かるともっと楽しめるんだろうなと思います(ジャンプ・ジャイヴの歌手全体に言えることですが)。“コメンナサイ~♪オハ~ヨ~♪”と歌う「Gomen Nasai」も収録されてます。1930年代後半のスリム&スラムやベーシスト、バム・ブラウンと組んだ時代、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーなどをフューチャーした録音などの音も聴いてみたい。

-■「Capitol Collectors Series」-ルイ・プリマ-
ルイ・プリマは、ヴォーカリストとしてはもちろん、トランペッター、バンドリーダー、「Sing Sing Sing」を作曲した作曲者でもあるというマルチプレーヤー。これはキャピトル時代(1950年代?)の曲を収録したベスト盤で、「Sing Sing Sing」やブライアン・セッツァーがカヴァーしていた「Jump Jive an’ Wail」などの代表作をはじめ、当時の妻だったキーリー・スミスとのデュエット曲も収録。時代によってサウンドが異なるようですが、この時代はキャピトルですし30年代、40年代をちょっとノスタルジックに振り返りつつ、わかりやすく軽快なノリのサウンドになってます(偏見か)

「私の好きな料理の本」-高橋みどり-

◆「田中一光とデザインの前後左右」@21_21 DESIGN SIGHT
去年、最後に読んだのは、高橋みどりさんの「私の好きな料理の本」。通勤の電車の中で読むのがもったいなくて、昼休みにひとりでごはんを食べている時に、これうちにあるなぁとか、これ前にうちにあったけどすぐに売れちゃったなぁとか、こういう本を扱いたいなぁ、なんて思いながらページをめくってました。

夏に「暮しの手帖」で“私の好きな料理本”という特集とした時に、

「料理本はヴィジュアルもきれいだし、昔の本はイラストなどもかわいいものが多いし、いろいろな人がおすすめの料理本を紹介する本があったらおもしろいと思うのですがどうなんでしょう。そんなに多くの本を載せなくてもいいし、本の厚さも薄くていいのでオールカラーで、できればハードカバーだとちょっとうれしい。和書と洋書の2部構成になっていて、それぞれ数ページずつちょっとしたテーマにあった本を紹介して、そのあいだに料理家を紹介するコラムや本を作ったときのエピソードが掲載されているとか‥‥などなど、と妄想。」

などと書いてみたけれど、この本でだいたい実現された感じになっていてうれしい。もちろんいろいろな人のおすすめの料理の本が載っているわけではなく、あくまでも高橋みどりさんの好きな本が主に紹介されています。でもその本に関連する人にインタビューをしていたり、インタビューしている人に関連するほかの本やその人がすすめる本なども紹介されているので、テキストも紹介されている本を補足しているだけではなく読み物としてもおもしろい。
インタビューでは、それぞれの本が単にいろいろな料理やそのレシピを紹介するだけでなく、その時代背景や料理の種類によって見せ方を工夫していたり、取り上げた料理自体の歴史や作者との関わりなど、レシピをさらっと見ているだけでは分かりにくい試行錯誤があったことが語られており、これから料理の本を読む時に、そういうことを頭においておくと、いままで気がつかなかったことに気がついたりして、また違う角度から料理の本を楽しめるようになりそうです。

それからその本に掲載されているレシピも別に掲載されていて、本だけでなく実際の料理の写真も掲載されているので、ページの見た目もちょっと華やかになってます。

-去年の9月からミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTでやっていた企画展「田中一光とデザインの前後左右」がもうすぐ終わってしまうので、金曜日、会社帰りに見てきました。21_21 DESIGN SIGHTは、ときどき前を通るけれど中に入るのは初めてで、受付から階段を降りて展示会場まで行く構造になっていることにちょっと驚いたり‥‥(設計は安藤忠雄)。

田中一光については特に好きというわけではなく、一連の西武や無印良品のポスターや広告や印象的にタイポグラフィを用いたデザインといったくらいの知識しかないのですが、作品をまとめてみてみると、大きなサイズのポスターが多く展示されていることもあってインパクトがあるなぁと思いました。まぁやっぱり見たとこのあるデザインのものが多いんですけど、一つ一つを広告としてさまざまな場所で見ているだけでは分かりにくい工夫や作風の違いが分かったりして認識を新たにしました。

日本の伝統文化のデザインを取り入れたものや日本語をもとの文字が分からなくなるくらい崩したものもおもしろかったし、ロゴや河出から出ている「今日の海外小説シリーズ」や山口瞳の「血族」「家族」といった単行本の装丁、雑誌のエディトリアルデザインも気になりましたね。

最近、会社の人に田中一光の本ももらったので、今読んでいる本を読み終わったら読んでみようと思ってます。

ちなみに21_21 DESIGN SIGHTの次回の展覧会は「デザインあ展」。2月8日から6月2日までと会期は長いですが、できるだけ早めに見ておきたいところ。

「たのしい写真―よい子のための写真教室」-ホンマタカシ-

◆明けましておめでとうございます。今年もカヌー犬ブックスをよろしくお願いします。
予定では、これを年末の30日にアップして、もう一冊、大晦日に紅白とかカウントダウンとかおママ対抗歌合戦などを見ながら今年一年(もう去年ですが)に読んだ本を振り返ってみようというつもりでした。でもツイッターなどにも書いたように30日に39度の熱を出して寝込んでしまい、気がつけば年を越し2日、そして3~4日は二宮に帰省したりして、すでに5日になってしまいなんだか振り返るという感じでもなくなってしまいましたね。まぁ振り返ってみて特にどうというわけではないんですけどね。
それにしても風邪をひくとだいたい39度以上の高熱になっちゃうというのは子どもの頃から変わってない。でもそのくらい熱が出るとさすがにもう何もできないので、いろいろあきらめがついていいのですが‥‥。

去年は写真についての本をいろいろ読んでみようと年の初めに思ったのですが、古本屋でしか本を買わないのである程度読むとなかなか読みたい本を見つけられなくなってしまい、なんとなくフェードアウトしてしまいました。
で、結局読んだ本は、「明るい部屋―写真についての覚書」(ロラン・バルト-)、「写真術―21人の巨匠」(ポール・ヒル、トーマス・クーパー)、「写真の時代」(富岡多恵子)、「私の写真作法」(植田正治)、「写真の秘密」(ロジェ・グルニエ)、「僕とライカ」(木村伊兵衛)の6冊のみだったので、年の最後の読書は、ホンマタカシの「たのしい写真」で締めてみました。このシリーズは最近パート2も出ているのですが、そちらは市川実日子のデビューから現在までのポートレート集になっていて今さら買うべきかどうか迷ってしまってます。
あとはアンリ・カルティエ=ブレッソンのこころの眼―写真をめぐるエセー」とヴァルター・ベンヤミンの「図説 写真小史」とロベール・ドアノーの「不完全なレンズで」、セルジュ・ティスロンの「明るい部屋の謎」、ゲルハルト・リヒターの「写真論/絵画論」、スティ-ヴン・ショア-の「写真の本質」、中平卓馬と森山大道、荒木経惟あたりの本は1冊ずつくらい読んでおきたいと思っているので、まだまだ先は長そう~

さてこの本では、ホンマタカシが影響を受けたと思われるブレッソンを中心とした決定的瞬間、エグルストンを中心としたニューカラー、そしてニューヨーク近代美術館の写真部長になったピーター・ガラシが提示したポストモダンの3つの概念を中心におき、「講義篇」「ワークショップ篇」「放課後篇」「補習篇」を4部で構成されてます。
まずその3つの概念を説明した後、それを念頭にある課題に対しての写真を撮ったり、そこからちょっと違う視点で3つの概念に基づいた例を出してみたりと、あえて焦点が絞られている分、さまざまな角度からわかりやすく、また具体的な指摘がされていたりしておもしろい。
また去年、オペラシティ行われた「ニュードキュメンタリー」と同様に、この本で記載されている内容に対してもそういったポストモダン的な手法が随所にとられているのも楽しく、さらりと読めてなんとなく写真のことがわかった気になってしまうところがこの本のすごいところだなって気がします。でもそこで分かった気になっているとあとから「あれ?」って感じになりそうだなと思うのは、ホンマタカシの写真もそんな感じだから。
また上記であげたような写真についての本を読んだ後、読み返してみたらちょっと印象が変わるのかもしれません。適当。