「記憶の蜃気楼」-鈴木信太郎-

◆賑やかな週末@レットエムイン
鈴木信太郎といえば、個人的には西荻にあるこけし屋や長崎のお菓子クルスがすぐに思い浮かびます。このほかに学芸大前にある洋菓子店のマッターホーンや神田志乃多寿司といったお店でも鈴木信太郎の絵をモチーフにした包装紙などが使われていたり、井伏鮮二や丹羽文雄、尾崎士郎といった作家の本の装丁なども手掛けており、こちらも気になっているところ。
なのですが、この本の著者の鈴木信太郎は、その洋画家の鈴木信太郎とは別の人でフランス文学者。しかもこの二人同い歳ということで、かなり紛らわしい。そのおかげでこのフランス文学者のほうの鈴木信太郎を知ることができたので、それはそれでよかったんですけどね。

墓本的には、生涯、大学教授として東大仏文科を活性化に努めた人なので、翻訳を除くとそれほど多くの著作はないようですが、断片的に描かれるパリ留学時の話ゃ岸田国士、辰野隆といった友人たちの話など、もっと読んでみたい。中でもびっくりしたのは、森茉莉の元夫だった山田珠樹と親友だったということ。山田珠樹については今まで森茉莉の視点からしか描かれているのを読んでなかったので新鮮でした。逆に森茉莉の随筆には、辰野隆が出てきたりするのだけれど、わたしが読み飛ばしただけで、鈴木信太郎も出てきてたのだろうか?出てきたとしたらどんな風に描かれてるのが気になります。(辰野隆もあんまりよく書かれてなかったし、鈴木信太郎もよく書かれていることはないんでしょうけど‥‥)
こうやっていろいろな人の“点”がつながって“線”になっていくのが、交友緑のおもしろさの一つですよね。

TAIYODOがレットエムインで出店しているということで国立へ。
レットエムインのある国立市北区商店会は初めて来たときは、駅から遠いなぁと思いながら、暑い中ベビーカーを押して行った記憶がありますが、それからワイワイ祭など何回か来ているうちにそれほど遠いという気もしなくなりました。ほとんどがTAIYODOが参加していたり教えてもらったりしたイベン卜がらみなんですけどね。
TAIYODOのかんちゃん(サイ卜に名前が出てなかったので愛称で書かせていただきます)は、昔、ミオ犬が吉洋寺のバウスシアターでバイ卜していたときに、一緒にバイトしていた人なのですが、武蔵小金井に引っ越してきてニチニチ日曜市によく行くようになってから、国立の情報をいろいろ教えてもらったり、イベントに誘ってもらったり、イベントを通じて新しい友だちができたりと、かんちゃんがいなかったらかなり味気ない生活になってしまっていたのではないか、と思うくらいなのです。

レットエムインの帰りは籠太でビュッフェランチ。籠太は、会津の郷土料理を中心とした居酒屋なんですが、昼間はビュッフェになっていて、しかもキッズスペースがあったりと子ども連れでも入りやすい。並べられている料理は、煮物が中心なのですが、サラダやポテトグラタンなど子どもでも食べやすいものが多いし、ケーキや和菓子などのデザートなどもいろいろあります。唯ーないのがお酒、ですかね。これでビールが飲めたら最高なんですけどね。って、じゃ夜に行きなよ、と。

ここは20年以上国立に住んでいる友だちに教えてもらいました。この友だちも昔、一緒にイベントをやったり、フリペを作ったりしてた人。そのあともずっとお互いのイベン卜に行ったり一緒に飲みに行ったりしてましたが、引っ越してきて、月に一度レコ―ドを回している福助という飲み屋に遊びに行くようになったり、ニチニチ日曜市に一緒に行ったりと、またよく会うようになりました。

ほんと近所の友だちに感謝です。

-
TAIYODOのスコーン

「贅沢貧乏」-森茉莉-

◆森茉莉と吉田健一が似ている点
・エッセイとも小説とも言えるような形式
・根がお壊さまだけに深刻さや悲愴ささがまったくない貧乏生活
・賛沢というものへの独自の、そして確固とした価値観
・食べ物ペの執着
・自分の気に入らないものに対する侮蔑の仕方
・難しい漢字を使ったり、長かったりと文章が読みにくい
・今でも熱烈な(特に同性の)ファンが多い
‥‥など

実際に書かれている内容や主張は違うんだけれど、方向性というか姿勢というかカテゴリとして森集約と吉田健一の共通点は多いなぁとこの本を読んで改めて思いました。そもそもこの「贅沢貧乏」というタイトルも、吉田健一の「三文紳士」とか「乞食王子」と、どことなく意図するところが似てるね。

あと二人ともフォトジェニックですよね(美男美女という意味ではなくてね)。

さて話が変わりますが、吉祥寺にヨドバシカメラができたのが2007年、もう4年近くも経つし、その前は何年も三越だったにもかかわらず、今でも近鉄裏と言ってしまうのは、わたしだけではないはず。改めて調べてみたら吉洋寺の近鉄が閉店したのって2001年!もう10年も前のことなんですね。
この辺は、駅から歩いてくるとうブホテルゃ風俗店、スナックなどの飲み屋が並んでて、夜になると客引きでいっぱいになるような場所なんだけど、そういうお店に交じって昔はバラレルハウスやSide-Cなどの雑貨屋さんがあったし、今でも洋服屋とかおもちゃ屋、雑貨屋、古本屋など小さなお店がたくさんあって、東急裏とはまた違った雲囲気で、わりと好きなエリアだったりします。

そんな近鉄裏を散歩したときにたいてい行くのが、ダーチャというカフェ。近鉄裏周辺よりもさらに離れた五日市街道沿いのマンションの2階にあります。街の中心から離れている分静かだし、店内の様子もこじゃれた感じでもなく、かといって昔ながらの喫茶店という感じでもなく、その両方をうまく活かした‥‥いや、本やCDがたくさん置いてあったり、ギターなどの楽器や古いカメラ(たぶん壊れてる)、おもちゃなどがが無造作に置いてあったり、小さな水槽で魚を飼っていたり‥‥お店というより友だちの家に行ったような独特の空気が流れていて妙に落ち着くカフェです。

一人で行ったときなどは、ご飯を食べたりコーヒーを飲んだりしながら、店内にたくさんある本を読んだり、ノートにやらなくちゃいけないことなどをメモしたり、買ってきたものをチェックしたりのんびりしてしまっているのですが、先日、ヨドバシに用事があつたついでに、そんなある意味大人なカフェに漣くんを連れていくという暴挙を試みてみました。
ちょうど窓際の席が空いていたので、そこ座らせると、いきなり目の前に 置いてあったチェブラーシカの人形で遊びはじめるは、窓際に置いてある電車のおもちゃを指さして「ガタン、ガタン」と叫び出すは、棚に置いてあるものを次から次に取ろうとするは、本人は楽しそうだったけれど、けっこう大変、というか静かに本を読んでいたりする周りの人にあきらかに迷惑。

すみませんでした~

-

「春の予感」-増田れい子-

◆西荻は遠くになりにけり
去年の11月に取り上げた「いろんな瓶」と一緒に買ったのだけど、題名にあわせて春が近づいたら読もうと思って、本棚にずっと置いておいた本。3月になってようやく春になってきたかな、と思って読んでみましたが、なかなか暖かくならならなくて、まだまだ春は遠い、という感じです。そう言えば去年もゴールデンウィークくらいまで寒い日が続きましたね。今年はどうなんでしょうね。

なんてことをぼんやりと思いながら過ごしていたら大きな地震が。
わたし自身は、地震が起きたときには会社にいたし、家も本棚の本が飛び出したくらいで、大きな被害はないし、家族や知り合いもみんな無事だっし、当日帰ってくるのがちょと大変だったくらいで、そのあともしかしたら停電があるのかな?なんて思いながら電気を使わないようにしたり、通勤の電車がちょっと混んでたり以外は、今のところ特に生活に支障があるわけではないので、できるだけいつも通りの気持ちで生活をしてます。
いや、わたしはわりと鈍感に生きてるほうなので、こういうときほどきちんとアンテナを広げて自分にできることのレスポンスを早くするようにしなくちゃいけないんでしょうけど、なかなかできず‥‥。しばらく経ってから気づくことも多いんだろうなぁ。
被災地で避難生活を送っている方は、ほんとにまだ冬の気候の中、不自由な生活を強いられていることを考えると、少なくとも被害を受けている方々に迷惑をかけるようなことや救援活動などに支障を来たす可能性があるようような行動をとらないように気をつけたいと思ってます。

そんなわけで、いつも通りの週末。土曜日は、漣くんを連れて西荻を散歩。
会社の帰りに音羽館などに寄ったりすることはあっても、武蔵小金井に引っ越してから、休日の昼間にのんびりと西荻を歩くなんてこともまったくなく、ほんとうに久しぶりです。前と違ってベビーカーにのせる必要もないので少々お店が狭かったりしても抱っこして入れるだろうと思うとちょっとワクワク&感慨深い、というと大げさか。

とはいうものの、とりあえず子ども連れでも安全パイと思われるKIKUでごはんを食べて、にわとり文庫や雨と休日をちょっとのぞいたり、音羽館や花鳥風月のほうまで歩いていったついでに古道具屋に入ってみたり‥‥と、うろうろしてみたけど、道が狭いわりに車通りがあるから自由に歩かせるわけにもいかないし、抱っこしてお店の中に入るのもけっこう難しいお店が多かったりして、意外と思うようにいかず、でした。西荻って子どもを連れて歩くにはあんまり向いてないのかもね。

あ~西荻は遠くになりにけり。一時期は“西荻夫婦”になりたい、と思ってたくらいだったんですけどねぇ~

でも近いうちにまた行こうと思ってます~

-

KIKUで食べたお総菜3品。これなら漣くんも食べられます。

「ロボッチイヌ」-獅子文六-

◆2月によく聴いたCD
表題の「ロボッチイヌ」は“ロボット犬”と思いきやロボットをフランス語の女性形にした造語ということで、女性を性の奴隷から開放するために売春ロボットを作るという話。このほかにも容姿が西洋人に似た日本人が西洋人になりきる話など、風刺的要素が強い短編が収録されています。
長編だと風刺的要素が背景に漂うという感じで、ある意味隠し味になっているところが、獅子文六の作品の“味”になっていると思っているのですが、ここに収録されている作品では風刺的要素が前面に出過ぎっちゃってる気がします。どこか筒井康隆や星新一的な雰囲気もあります。

年末に「電子音楽InTheLostWorld」を読んだときに、1970年代後半から1980年代にかけての日本のテクノポップを聴き返してみようかな、なんてことを書きましたが、その後、見事にはまってしまいました。でもまだまだ聴き始めたばかりで、YMOやプラスチックスの周辺を中心に昔聴いたアルバムをCDで買いなおしてるって感じです。ついでにNew MusikやBuggles、New Order、OMD、Strawberry Swichbladeなどのエレポップまで手を伸ばしかけていたりして、今年はこの辺だけでなく80年代の音楽をいろいろ聴き返してみようとまで思ってる次第。
80年代の音楽って一部(邦楽だと大瀧詠一と山下達郎、洋楽だとネオアコ周辺くらい)を除いて、90年代以降あえて聴いてこなかった分、ある意味新鮮な気分で。いや、単なる懐古なのかもしれませんけどね。
しかしこの頃のアルバムをCDで手に入れようとすると意外と見つからないもんですね。

そんなわけで2月によく聴いたCDを5枚‥‥

-■「Singing Circuit」-Shi-Shonen-
これは高校時代にほんとによく聴きました。前半の「Lovely Singin’ Circuit」「デジタブル・イン・ベッド」「N-Sマグネティック」「Bye-bye Yuppie」という流れは完璧(もちろんそのあともいい曲が続きますが)。今の音楽に比べるとぐっと前面に押し出す感じがないので、パフュームとかエレクトロ系の人の曲と続けて聴いたりするとかなり軽い感じになってしまうんでしょうけど、おじさんにとっては耳に優しくてうれしい。パフュームも好きだけれど、ずっと聴いてると疲れるのよ。隙間がある分、奥行きが感じられるのね。
今考えるとこのShi-shonen~ピチカート・ファイヴという流れが、わたしのビートルズに影響と受けた人たち離れを促進させたんだなぁと。

-■「マイ・ガール・フライデー」-サロン・ミュージック-
90年代の真ん中くらいにイベントをやっていたときに、よく「マッスル・ドーター」をかけていたので、それほど懐かしい感じでもないのですが、CDで買い直して改めて通して聴いてみるといい曲がそろっているなぁと思いますね。リアルタイムでは、1990年の「Psychic Ball」まで聴いてました。逆に90年代のトラットリア時代以降はぜんぜん聴いていないので、こちらも聴いてみたいかも。
そういえば、吉田仁はピンクの岡野ハジメとQuadraphonicsなんてユニットもやってましたね。懐かしい~
CD化の際にジャケットのデザインが変わってしまったのが残念。

-■「緑の法則」-鈴木さえ子-
鈴木さえ子のアルバムは、「科学と神秘」とアンディー・パートリッジがプロデュースした「スタジオ・ロマンチスト」しか聴いてなくて、これを聴くのは初めてなのですが、でもどこかで聞いたことのある曲が多いのは、鈴木さえ子のラジオ番組を聴いていたせいかもしれません。
ほかのアルバムでもそうなのですが、このアルバムもインストがいいんですよ。1曲目の「夏休みが待ちどおしい」とか、インストなんですけどメロディはもちろん使われている効果音や音色などが、ほんと「夏休みが待ちどおしい」って雰囲気を出してるんです。
それにしてもファーストアルバムのタイトルが「毎日がクリスマスだったら」で、次のアルバムの1曲目が「夏休みが待ちどおしい」って‥‥。

-■「SF」-鈴木慶一-
鈴木慶一プロデュースによるSFをテーマにしたイメージアルバム。
ムーンライダースのメンバーが変名で参加していることもあって、テクノポップというよりもプログレというかフュージョンというか的なインストが収録されています。この頃のテクノ(ポップ)ってあんまり演奏力はないけれど、アイデアやひらめきがあればいい音楽が作れるという発想のものと、もともとプレイヤーでアレンジャーも兼ねていたりするようなミュージシャンが、シンセを取り入れることによって一人で音楽を作っちゃう多重録音的なものと2つの面があると思うのですが、これは後者。もちろん鈴木慶一なのでそれだけではないですけどね。大村憲司とか佐藤博とかこっち方面のCDにも手を広げたいところ。
あと、萩原朔太郎の孫(萩原葉子の息子)である萩原朔美が作詞で参加しています。

-■「浮気なぼくら」「サーヴィス」-YMO-
「浮気なぼくら」とか「サーヴィス」など、いわゆる歌謡曲路線と言われているYMOのアルバムをまた聴くことがあるとは?という感じですが、この歌謡曲路線が今の気持ちに合っていて、けっこう繰り返し聴いています。歌謡曲といえばYMOの3人が作詞、作曲、編曲、プロデュースで関わった歌謡曲を収録した「イエローマジック歌謡曲」というCDも出ているみたいですね。イモ欽トリオとか伊藤つかさ、三田寛子、スターボー、安田成美、中原理恵‥‥といったアイドルの曲を3枚組、全55曲収録、かなりお腹いっぱいになりそうです‥‥。
ちなみに「サーヴィス」のほうはSETのコントを外してiPodに入れてます。ははは。