「くるみが丘」-井伏鱒二-

井伏鱒二の本を読むのは、今年初めてですね。特に作品をリストとかにして追っているわけではなくて、たまたま古本屋で見つけたら買う、という感じなので、ちょっと気を抜くとあいだがあいてしまいます。
とりあえずこの本の何がいいってタイトルがいいですよね。くるみが丘自体は最後のほうに少し出てくるだけなんですけどね。同級生の二人が、いじわるな教師に、異母兄弟だと言われたことがきっかけで、二人で家出をし、東京に出てきて日雇いの仕事などに就きながら過ごす顛末が描かれていきます。パチンコ屋や横浜での船の仕事場、ファッションショーの様子など、映像にしたら映えそうな場面がたくさん出てくるし、ストーリーも単純なので、映画化しやすそうだなと思って調べてみたのだけれど、映画化されてるわけではなさそうです。ざんねん。

あっという間に5連休も終わり。連休中は、久しぶりに外苑前~表参道に行って、ワタリウム美術館で「ルイス・バラガン邸をたずねる。」を見てきました。ルイス・バラガンは、ピンクや水色など、メキシコらしい原色を壁などに取り入れる一方、水面や光、庭の木などをうまく取り入れた建築が特徴的なメキシコの建築家。昔、ルイス・バラガンが手がけた建築の特集を、テレビで放送していたのを見て、ずっと気になっていて、出かけてみたのだけれど、さすがにその建築物の特徴をうまく伝えきれてるとは言い難いかも?建築家の展覧会は難しいですね。唯一人だかっていたのが、その建築を紹介しているモニターの前ってのも、なんだか‥‥という気がしました。

「日本競馬論序説」-山口瞳-

山口瞳が続いてます。リストアップした文庫本で手に入れてないのが、「草競馬流浪記」「酒食生活」「諸君!これが礼儀作法だ」の3冊のみになっていて、ほかに最後に読もうと思ってとっておいた男性自身シリーズ最終巻、「江分利満氏の優雅なサヨナラ」だけになっているので、一気に読んでしまおう思ってるんですが、なぜか「草競馬流浪記」が見つからず。このあいだまでよく見かけていたような気がするんですが‥‥。
でも今まで一度も競馬をやったことのないわたしには、さすがに競馬関連の本はちょっとわからん~。騎手と馬の名前を知らないのが一番のネックですね。もっとも、この本が出たのが1986年なので、今の競馬ファンが読んでも、名前などについては分からないのかもしれないですけど。草競馬だとさらにハードルが上がりそう~

週末、いい天気だったので、久しぶりにニック・ヘイワードの「フロム・マンデイ・トゥ・サンデイ」を聞いていました。9月の晴れた休日の定番。いつも電子音楽やらハードコアやらジャズやらそのときの気分によってばらばらの音楽を聴いてますが、このアルバムとフィールド・マイスの「セプテンバーズ・ノット・ソー・ファーラ」は、この時期なると今でも聴いてしまいます。毎年9月の第1週の「サンデーソングブック」で、竹内まりやの「セプテンバー」がかかるのと同じ。「セプテンバーソング」ではないけれど、そうやって9月を過ごしているうちに、すぐに今年も終わってしまうのかもしれません。今年は年末にかけてちょっと忙しくなりそうなんですよ。

「小説・吉野秀雄先生」-山口瞳-

かなり以前に買っていて、いつか読もうと思っていた本。中身を見ていなかったので、タイトルと表紙から勝手に、1冊全部が吉野秀雄について書かれたものだと思い込んでいたのです。さすがに吉野秀雄で1冊は敷居が高い‥‥。
ところが実際ページをめくって目次を見たら、吉野秀雄は、半分くらいしかなくて、川端康成や山本周五郎、高見順、木山捷平、内田百けんと、いろいろな人について書かれていることがわかり、もっと早く読んでおけばよかった、とちょっと後悔。しかも解説は野呂邦暢。
先日(?)山口瞳は、思い入れがある人について書いたとき、ほんとうにいい文章を書くって書いたけれど、ここでもまさに当てはまってます。ただし、後半は文章の量が少なくて、表面的な記述でのみ、踏み込んだところがなく終わっていて、少し物足りないものもありますが‥‥。

さて、シリーズ「今年の夏によく聞いたウエストコーストジャズ」。第一回目は、ホーン・セクションのアレンジが心地よい4枚ということで‥‥

「The West Coast Sound」-Shelly Manne & His Men-
チェット・ベイカーやアート・ペッパーをウエストコースト・ジャスの4番打者、5番打者とするならば、シェリー・マンは、7番打者、守りの要、キャッチャーというところか。しかもドラムなのに編曲までする頭脳派。実際に誰に当てはまるのか普段まったく野球を見ないので分かりませんが‥‥。その4番打者アート・ペッパーをはじめ、バド・シャンク、ボブ・クーパー、ビル・ホルマン、マーティ・ペイチなど、ウエストコースト代表するプレイヤーによる勢いのあるカラっとした演奏が、いかにもウエストコーストという感じがしますね。

「Bud Shank-Shorty Rogers-Bill Perkins」-Bud Shank-
邦題は「昼と夜のバド シャンク」。前半のショーティ・ロジャースとのセッションのジャケット写真が昼のハリウッド・ボウル、ビル・パーキンスとのセッションが夜のハリウッド・ボウルだからという理由でつけられたらしい。演奏的には、ビル・パーキンスとのどちらかというとなめらかというか、やわらかい演奏になっていますが、どちらも昼なんじゃないかな。同時に「夜!しかも熱帯夜!」みたいなオルガンジャズも聴いていたので、それと比べてしまうとねぇ。

「Vol.1: The Quintets」-Lennie Niehaus-
解説にもあるけれど「流線型」という言葉がぴったりのアレンジが心地よいです。上の2枚はまだ個々のプレーヤーのセッションということで、演奏が「個」の集まりという感じなのですが、これは個々のプレーヤーの演奏よりも、アレンジのよさを楽しむという感じですかね。ソロパートでさえも個性よりもアレンジの一部という‥‥。と思ったら、レニー・ニーハウスは、最近では、映画音楽の作曲家として活躍していて、クリント・イーストウッドの映画のほとんどを担当しているらしいです。

「Cool And Sparkling」-Paul Smith-
ポール・スミスがウエストコースト・ジャズなのか、と言われるとかなり微妙、というか違うと思うんですけど、このアルバムは今年かなり聴いたかも。ジャスのイージーリスニング境界線?逆にこのジャケットで、レコード会社がキャピタルという情報から想像したら、ジャズっぽいと感じでしまうのではないか、と思ったりしますが、どうなんでしょう。ラウンジテイストのピアノとゆったりとしたなめらかなホーンセクションがかぶさり合うのだけれど、適度なスイング感あるので甘過ぎになる一歩手前で踏みとどまってます。

「世相講談(下)」-山口瞳-

ツイッターによるとこの本を読み終えたのは8月7日らしい。どんだけ放置しているのやら。備忘録にもなってません。
そういえば、8月7日は、夕方から大雨が降ったときで、会社の人たちと大門から竹芝桟橋までずぶぬれになりながら歩いて行って、東京湾納涼船で飲んでましたね。で、帰り浜松町から山手線に乗ったら、つい寝過ごして池袋まで行ってしまったという‥‥。あの時は早めに帰ってきてよかったなぁ。終電まで飲んでたら帰れなくなるところだった。といっても、ほかの人たちは、納涼船を降りた後、浜松町で朝まで飲んでいたらしいですが‥‥。

さて、前にも書きましたが、今年の夏は、太陽が出ているあいだは、ウエストコーストジャズと聴いて、夜になったらオルガンジャズを聴いて過ごしてました。
基本的にジャズって、各プレーヤーが、楽器を使って「俺が~、俺が~」って主張し合いながらぶつかることで、化学反応を起こす音楽だと思っているのですが、今は、その「俺が~俺が~」の主張がなんとなくうるさく感じてしまいます。だからジャズでも、ウエストコーストジャズみたいなアンサンブルをベースにしたもののほうがしっくりくるんですよね。オルガンジャズやソウルジャズも、一見(一聴)すると、個性の応酬みたいかイメージではあるけれど、実は、個性よりも全体の「ノリ」のほうを重要視していて、一人のプレーヤーが突っ走るということはあまりないように思うのだけれど、どうでしょう。
というわけで、次回から、今年の夏によく聞いたウエストコーストジャズ/オルガンジャズのCDをいくつか紹介していこうと思ってます。まぁ特に名盤というわけでもないですし、レアなわけでもなくて、単に今年の夏にわたしが聴いてたってだけですので、あいからず。(次回へつづく、と書いて続いた試しはなし)