「ON THE ROAD」-Jack Kerouac-

というわけで‥‥。
三泊五日でサンフランシスコに行ってきました。自由になるのは初日の午後からと2日間だけだったのですが、サンフランシスコ行きの飛行機は、大雨のため上空を一時間半旋回し、結局オークランドの空港へ着陸、給油後、再びサンフランシスコ空港へ向かうというアクシデント。予定よりも4時間以上遅れてサンフランシスコに到着、でももちろん外は大雨で、街を歩き回ることもできず‥‥かなりへこむものの、2日目、3日目は、昼間は曇り、夕方から夜にかけて雨という天気が続き、少し救われました。

今回の大きな目的は、ファーマーズ・マーケットと蚤の市に行くこと、市内の古本屋をちょっと回ること、そしてCity Lightsにいくことで、City Lightsでは、読めもしないのに、「On The Road」のペーパーバックを買ってしまいました。近くには「アメリカの鱒釣り」の表紙にもなっているワシントン・スクエアもあり、さずがにブローティガン御用達のコインランドリーや行きつけのカフェ&バーには行かなかったのですが、なんだか大学の卒業旅行みたいだなーと。いや、勝手なイメージですが‥‥。そういう卒業旅行に行きたかったなーという願望もあり。(つづく)

「小さな町」-小山清-

ようやくというか、今さらというかハーモニーグラスの「This Is Us」のCDを買いました。emレコードから出ているサマーワインもキャスタウェイズもソルト・ウォーター・タフィーの「Finders Keepers」のカバーが一曲目に収録されたトニー・リヴァースのCDも持っているのだけれど、なぜかハーモニーグラスだけは買っていなかったのです。このCDが出たのが1998年なので、気がつけば10年。よく廃盤にならなかったものだと思います。普通のメジャーなレコード会社から出ていたらとっくの昔に廃盤になっているんじゃないかな。
そんなわけで、前述のCDを全部iPod nanoに入れて、電車の中などでずっと聴いているのだけれど、トニー・リヴァースは、基本的にビーチボーイズフリークというか、コーラスも含めてかなりサウンド全体がアメリカ寄りだし、カバーも多いので、何枚も続けて聴いているとちょっとお腹いっぱいな気分になりますね。個人的には、コーラスだけでなく、メロディやサウンド全体に、もう少しトニー・リヴァースらしいさやイギリスっぽさがあるとうれしいのだけれど、まぁ基本作曲家ではなくて、ヴォーカリストだと思うので、その辺は仕方ないのかもしれません(よく分かりませんが。)。

その点、同じトニーでも、マコーレイのほうが(この人のカタカナ表記の仕方がわからん)、サウンド的には、A&M的なMOR(ってすご言い方だな)にもかかわらず、ちょっと曲を聴くだけでトニー・マコーレイだとわかるし、どことなくイギリスっぽさがあって好きかも。ファンデーションズの「Build Me Up Buttercup」や「Baby now that I’ve found you」、ペーパー・ドールズの「Something Here In My Heart」ピケティウィッチの「That Same Old Feeling」、フォーチューンズの「Here Comes That Rainy Day Feeling Again」、エジソン・ライトハウスの「Love Grow」‥‥などなど、一聴すると普通のポップなヒットソングなんだけれど、全然飽きないしね。
でも1960年代後半から1970年代初めにかけてのある意味ブリティッシュロック全盛の時期に、トニー・マコーレイやジョン・カーター、ロジャー・クック&ロジャー・グリーナウェイといった職業作家が、セッション・ヴォーカリストを中心にした実体のないセッショングループを作ってヒットを出していたということ自体が不思議な気もします。しかもモンキーズやアーチーズみたいに、最初からヒットを狙ってグループをでっち上げているという感じもあまりない。それはお国柄の違いか!?
そもそもフラワー・ポットメンが、どういう経緯で作られたのかいまいち分かりません。デモ?で、デモにしち出来過ぎてるからそのまま発売しちゃおう、てな感じで出した「Let’s Go To San Francisco」がヒットしちゃったので、気をよくしていろいろ作っちゃった~という感じなのか?適当。よく考えたら「Let’s Go To San Francisco」ってタイトルもすごいですよね。「そうだ、京都に行こう」みたいな‥‥「そうだ、サンフランシスコに行こう」。

「一本の道」-小林勇-

先日、会社帰りに古本屋さんに寄ったら、レジの横にアルバイト募集の張り紙がしてあって、応募条件のところに「大卒もしくは大学生」と書いてありました。どこの古本屋かは書かないけれど、大学に行かないと町の古本屋でも働けないのかーと思うと、ちょうどこの本を読んでいた時だったけに複雑。小学校卒の小林勇が代表取締役を勤めた岩波書店も、もちろん今では、そんなことはありえないだろう。そういえば、「文芸別冊 池波正太郎」にも、小学校卒で作家になったのは池波正太郎が最後になるのでは‥‥、と書いてあったっけ?
その小林勇の自伝。本を読みながら付箋を貼るような習慣がないので、改めて書き出そうとすると、きちんと思い出せないのだけれど、明治生まれの堅実でひたむきな生き方がにじみ出てます。出版社が、とりあえずタレントに本を書かせて儲かればいい、みたいな感じになってしまっている今、出版社に勤めているすべて人に読んで欲しいような、どうでもいいような‥‥なんてことを言える立場でもない。草思社の倒産とか見ていると、出版社も大変そうなので、こうなったらタレントでも何でもいいからめちゃくちゃ売れる本をいっぱい出してもらって、儲かったお金で、昔の優れた作家の本や、これから100年間読み継がれていくような新しい作家の本を出して欲しい‥‥なんてことも言える立場でもないです‥‥。

話は変わりますが、年末からずっと原田知世の「music & me」ばかり聴いてます。デビュー25周年記念、5年ぶりということで、過去の曲のセルフカバーがあったり、鈴木慶一、大貫妙子といったつながりのあった人たちが参加したりと過去を振り返る要素を入れつつ、プロデュースは伊藤ゴローで、高木正勝やキセルが曲を提供していたりとそのバランスがとてもいい。ずっと追いかけているわけではないけれど、原田知世は、そのときのサウンドを適度に取り入れつつ、でもマニアックにもならず、基本的には自分の声を活かすということに重点が置かれていて、あまりブレがない。「時をかける少女」をボサノヴァのリズムで再演するというありがちな手法も、原田知世が演るといいなと思ってしまうのは、単にわたしがファンだから、というだけではないと思う。

「文芸別冊 池波正太郎」

「鬼平犯科帳」の最後には、「人間というものは妙な生きものよ。悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事を働く。心をゆるし合う友をだまして、その心を傷つけまいとする」と妻に向かって鬼平が言い、この本のどこかで“ただ偉い人を書いてもおもしろくない。」みたいなことを言っていたような気がする(該当箇所が見つからず)。
でも、池波正太郎に関してはっきり言ってしまうと、欠点が見あたらないのが大きな欠点なんじゃないかと思う。池波正太郎のエッセイには、酔っぱらって醜態をさらすようなことも出てないし、一人で悶々と悩む姿もない。経歴的にも、親が離婚して苦労したことも出てこないし、戦時中、軍隊で嫌な目にあったということもないし、デビューするまでに苦労したということも出てこない。また脚本を書くだけでなく、演出もするし、原稿は締め切りの3日までにはきちんとできてるというし、絵もうまいし、料理もできる‥‥。そういう部分はあえて出す必要はなく、裏で努力するもの、と考えているのかもしれないけれど、読み手としてはなんだか堅苦しい気持ちになってしまう。人間なんてこうしたい、こうあるべきだ心がけていても、実際にはなかなかそうはいかないものじゃないだろうか。そういう意味で、わたしは、池波正太郎の「男の作法」よりも、山口瞳の「礼儀作法入門」が支持したい気持ちになってしまうのだ。

「温泉へ行こう」-山口瞳-

「未老先白頭」
1日に浅草寺に初詣に行ってことを前回書きましたが、その時に引いたおみくじに書かれていた言葉。「それ程の年令でもないのに白髪が目立つのは心労が多いためでしょう」という意味らしいです。大きなお世話です。そんなに白髪目立ってないぞー。というと苦労してないみたいでそれもちょっとどうなのか、という感じになってしまいますね。そもそもこれは占いの言葉として適当なのか?「今年は心労が多くて白髪が増えますよ」ってことなのかし知らん。それもそれでいやだなぁー。
だったら温泉でも行ってのんびりしようか、というわけではないけれど、去年はあまり山口瞳の本を読めなかったので、年の終わりくらい読んでおこうと思って、ストックしてあったこの本を年末から読んでみました。タイトル通り、西伊豆や由布院、奥鬼怒など、国内の温泉を巡る紀行文なのですが、「酔いどれ紀行」や「湖沼学入門」といった紀行文のように珍道中というわけではなくて、多少のトラブルはあるにしても、大筋ではつつがなく旅が終わります。まぁ物足りないと言えば物足りない。どことなく「仕事ではあるけれど、山口先生の体調が悪いので、すこしゆっくりしてもらおう」という編集者(スバル君)の心づかいも見え隠れするような気もします。実際、この「温泉へ行こう」の単行本が出たのは1985年12月、山口瞳が“還暦老人”と称して絶筆宣言をした年でもあるのだ。

さて、今日で年末年始のお休みもおしまい。朝ゆっくり起きて、日の出ている頃は家にいて、夕方から出かけることが多かったので、なんとなくだらだらとしているうちに、三が日が過ぎて、気がついたら普通の週末しかお休みが残ってなくて、明日からは仕事始め、みたいな気がするけれど、うちで新年会をやったり、友だちのうちに遊びに行ったり、実家に帰ったり‥‥、よく考えれば、忙しくはないけれど、休みが長いだけにいろいろ遊んだな、という気はします。「遊んだな」というより、「よく食べて、よく飲んだな」の方が正しいのだけど‥‥。お正月というのはそういうものかねぇ~。

「残夢三昧」-内田百けん-

あけましておめでとうございます。今年もカヌー犬ブックスをよろしくお願いします。
年が明ける前にこの雑記のまとめをしておこうと思っていたのですが、年末は九段下ビルで行われていたカウントダウンのイベントに行ったり(カウントダウンといっても29日)、大掃除したり(30日)、大晦日は吉祥寺でちょっと買い物をして、夕方からのんびりしつつ、夜は近くの銭湯に行って、ワインを飲みながらぼんやりとテレビを見ているうちにジャーニーズカウントダウンになっていて、気がついたら年が明けてました。そんなわけでざっと数えてみたら、昨年は69冊でした。一番多かったのは、やはり内田百けんで13冊(今回を含めると14ですか)、次が山口瞳で7冊、あとは1~3冊くらいが続いているという感じですね。今年は大佛次郎の現代物と随筆を読みたいというのと、自分にとって新しい作家との出会いがあるといいなという感じです。

さて、新年になって、浅草に初詣に行って来ました。出かけた時間が遅かったので、落語を聞いたりということはもちろんできなくて、浅草に着いてすぐに天国でお茶して、お詣りしただけで帰ってきました。元旦の渋谷はすいてていいな。
天国は、伝法院通りを歩いていったところにあるホットケーキやホットボッグが主なメニューの小さなかわいい喫茶店。前に浅草に行った時に見つけて、それ以来行きたいな、とは思っていたのですが、行く機会がなかったので、ちょうど店内から人が出てきたタイミングで入れてうれしい。ちなみにディモンシュの店長、堀内隆志さんも前にABCで行われたトークショーの時に、「トークショーの前に浅草にある天国でホットケーキを食べてきました」と言ってました。店の様子もいい感じですが、コーヒーカップやコーヒー豆からピンバッジ、帽子などお店のオリジナルグッズがたくさんあったり(わたしもカヌー犬ブックスグッズ作りたいー。そもそもロゴもキャラも決めってませんが‥‥)、包装紙がかわいかったり、大滝詠一や南佳孝、EPOといった曲がBGMで流れていたりしていて、お店の人に親近感を覚えてしまいます。
でも浅草に行く機会もそんなにないし、浅草にはアンジェラスを含めていい雰囲気の喫茶店がいっぱいあるし、次に行けるのはいつになるのかなぁー。