◆手紙社さんのアカテガミー賞の授賞式に行ってきました~
川崎長太郎の本を読むのは2冊目かな。
小田原の魚屋の長男として生まれにもかかわらず、家も継がず文学を志して東京に出るものの、東京での生活に行き詰まり小田原に戻り、37歳の時から20年以上、実家の庭の片隅にある二畳ほどの物置小屋での一人住まい。台所もないため三度の食事は外食(ちらし寿司多し)トイレも公衆便所に行き、外の明るいうちは散策、夜は読書と執筆という生活を送った作家。作品の内容は、どれもその生活ぶりや月に数回の遊郭通いや時折その物置を訪ねてくるファンの女性との関係などをつづった私小説なのですが、その女性との金銭のやり取りなどまで書かれていてすごいです。
何年か前に芥川賞を取った西村賢太を思い出すような生活ぶりですが(よく知らないけど)、昔の作家はこういう人がたくさんいたんだろうな。文学を志した段階で不良扱いだし、この後、読んだ鈴木信太郎の本でも東大に入ってフランス文学を専攻したときに親が嘆いたというエピソードが出てくるしね(東大なのに‥‥)。
この本では、まず川崎長太郎の実家について何代にもわたって苦労しつつ、魚屋として独り立ちした経緯が描かれていて、そのあと、師でもある徳田秋声や田畑修一郎、宇野浩二といった友人のことが描かれ、後半以降は年代を追って小田原での生活を、そして60歳を超えたときに30歳年下の女性との結婚し、その二人での暮らしの様子までが描かれている。そのため、最初に一人暮らしをしている背景や過去が分かるので、初めて川崎長太郎をはじめて読む人でも分かりやすい。
特に起伏があるわけでもない日々をつづった文章で、かつ読点で区切られた一文が長い文章にもかかわらず読みにくさが感じられないというところにこの人の作家としての文章の力を感じます。
しかし実家の手伝いをするわけでもなく、ほかに職を探すわけでもなく、日々を暮らしていく状況を何十年も続けているというところ、そして家族も特に手を差し伸べるわけでもなくそのままにしておくところに、鬼気迫るものを感じますね。もしあるのなら父親や家業を継いだ弟の話も読んでみたい気持ちにさせられます。
まぁ何冊か読んでみたら同じエピソードが出てきたりして、もういいや、ってことになるのか、それでもおもしろく読めるのか、どちらになるか知るためにももっと読んでみたいかな。
週末は雨。2月以降雪が降ったりと週末の天気がよくなくて家にこもりがちです。それでも土曜の夕方には漣くんを連れて手紙社さんのアカテガミー賞の授賞式にちょっと行ってきました。会場となった柴崎になる手紙社の2nd STORYは、なかなかいく機会もなくて去年、開店する前のお披露目のとき以来になります。
おつまみを一品持っていくという形で、わたしはスプンフルさんのマフィンを持っていったのですが、皆さんの持ってきたおいしいものを食べながら、普通にビールをおかわりしてりして、しかも授賞式の途中で帰るという、何しにきたの?と言われそうな感じですみません。でも出席した人とちょっとだけ話したり、受賞された方のすてきな作品などちょっとでも見れてよかったです。
一つずつ手作り(?)された羊モチーフのトロフィー&スクリーンの前で記念写真(笑)
なお当日は手紙舎さんの新しいお店troisのお披露目もありました。こちらは2nd STORYの上の階にあるアパートメントの一室を改装したお店で、テキスタイルや布をテーマにした作品、商品が、屋根裏をテーマにしたというお店の中に並んでいていい雰囲気でした。
しかし、新しく地下になった調布駅はいまだに慣れず、帰りは柴崎から各駅停車に乗り、調布で一本橋本行きを見送った後、逆側のホームについた準特急に乗ったら、それも橋本行きだったという‥‥パルコ側のホームで橋本行きとか、橋本行きが二本続くなんて、5年以上調布に住んでいたわたし(かなり前のことですけど)には罠としか思えません~