「放浪時代/アパアトの女たちと僕と」-竜胆寺雄-

◆吉野英理香写真展「Digitalis」@タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
竜胆寺雄の名前を知ったのはここ1年くらいのことだと思うのだけれど、どこで知ったのかは忘れてしまった。手帳の読みたい本のリストに入ってる作家の中では、ちょっと作風が違う作家なので気になってるんだけど、思いだせない。

竜胆寺雄は、昭和初期に「放浪時代」でデビューし、高等遊民というか大正・昭和初期のモダンガール・モダンボーイの生態、昭和初期の風俗を描いた作品を多く発表している作家。車庫(ガレージ)、多謝(メニサンクス)、拡声器(スピーカ)、広間(ホール)、涼台(テラス)、虹形(アーチ)、筆触(タッチ)、受信機(セット)‥‥と、ルビがふってある単語をピックアップするだけでその作風や雰囲気をなんとなく想像できるのではないでしょうか。
ただしこのほかにも歴史小説、童話、シナリオ、コント、SF、ファンタジーなど多岐にわたるジャンルの作品を発表しているようです。でもこの本以外には簡単に手に入りそうなものはなさそう。ちなみに1980年代に全集も出ていて、月報に村上春樹が文章を寄せていいるらしいのですが、これらも手に入れるのは難しそう(日本の古本屋で検索したら全12冊で20000円くらいでした。そんなに高くはないですね)。

そして、「放浪時代」の発表から6年後、この本にも収録されている菊池寛や川端康成などの実名を挙げ文壇の腐敗を攻撃した「M子への遺書」発表。それによって文壇的地位を失い、以後、文学活動ができなくなったとされています。今ではそれは竜胆寺雄の被害妄想、誇大解釈だったという説が主流になってるみたいですけど。まぁでも現状で手に入る本がこれだけということを考えると単に被害妄想と片付けてしまっていいのかという気もしないでもないですが‥‥

-先週は、昼休みにタカイシイギャラリーでやっていた吉野英理香の写真展を見てきました。郊外の風景や部屋の中の様子などを深めの色合いで撮ったカラーの作品が展示されてます。普段、自分の撮る写真も含めてわりと淡い色合いのカラー写真を好んで見ているせいもあって、久しぶりにこういう色合いのカラー写真を見ると新鮮でした。

もともとはモノクロのスナップ写真を撮っていたらしく、最近になってカラー写真の作品を撮るようになったとのことですが、モノクロの作品をちゃんと見たことがないので、カラーになってどのように作風が変化したのかなどはわかりません。そもそも吉野英理香という写真家の写真を見るのもはじめてだったもので‥‥。

会場のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは会社から近く、昼休みにちょっと見に行けるので、知ってる・知らないに関わらずできるだけ時間を作って通おうと思ってます。最近はいろいろ調べたりして新しいものを探して、かつそれを見に出かけていくというのができなくなっているので、自分の周りのものに対しては、知ってる・知らない、あるいは好き・嫌いに関わらずできるだけ触れておくようにしたいな、と。などといいつつ、国立新美術館やサントリー美術館、ミッドタウンのギャラリーなどにはぜんぜん行ってませんが。
ちなみにここを知ったのは去年の年末でラリー・クラークの展示をやっていた時で、今年に入って、植田正治、奈良原一高、田原桂一の展示を見に行ってます。奈良原一高、田原桂一のように前後期で展示を分けたりして、通してみると割とたくさんの作品に触れることができたりするのも、ここの個展のいいところです。