◆宮内優里ライブ@江戸東京たてもの園下町夕涼み
本の内容ももちろんいいんですが、本自体がものとしてすばらしい。芹沢錐介による装丁のデザインや色合いのよさはもちろん、函も普通のものではなく本を包んでマジックテープでとめるという凝った作りになっています。しかも署名の入ったしおりがはさんであるという‥‥いつまでも大切に手元に置いておきたいですね。ちなみに芹沢錐介は、このほかにも「湯葉・隅田川」や「染彩」「下町の空」といった芝木好子の本の装丁を手がけています。
本に限らず音楽もそうだけれど、中身だけがあればいいというものでもなくて、パッケージのデザインや仕掛けなどとの相乗効果でその作品の世界がより鮮明になることも多いし、またそれをきっかけに興味の広がっていくことも一つの楽しみとしてあると思うんですよね。なので、パッケージがなくなっていくということに関してはかなりさみしいです。ほんと、レコードジャケットや本の装丁などを入り口に知ったデザイナーや写真家などがどれだけいるか!ってことですよ。
いろいろ技術が進歩したというけれど、本当の進歩というのは、「今までこういう本を作るのはものすごく手間がかかったけれど、手間が削減されてより簡単に同じものを作ることができるようになりました」ということなんじゃないかな。「こういう本を大量に作るのはやっぱり難しいから、より簡単に作れる本で大量生産を可能にしました。」ってのは進歩と言わないんじゃないだろうか、とか。あるいは「これからは○○だ」ではなく「今までは△△が主流だったけど、これからは△△とOOのそちらかが選べます」とか。こういう本に触れるといろいろ考えてしまう。多分、そうやってすべてにおいて昔に作られたきちんとしたいいものにちゃんと接するということが大事なんじゃないかな。そうしないと今ものとの違いや、これからのどういうものと自分がつきあっていくべきなのか、ということの判断ができなくなってしまうのではないかと思う。
昔のものに接するということでつなげるわけではないですが、先日は、小金井公園の江戸東京たてもの園でやっていた下町夕涼みというイベントに行ってきました。たてもの園は、江戸時代から昭和初期までの建造物が復元されて展示されているのですが、そんな中で焼きそぱや焼き鳥といったいろいろな屋台が出ていたり、駄菓子が売っていたり、盆踊りや歌謡ショーが行われていたりするのを見ながら、ビール片手に歩いているとなんだかタイムスリップしたかのようでした。まあ実際は、漣くんが展示してある路面電車で遊ぶのに夢中でぜんぜん離れなかったのと、目的のライブがちょっと離れたところでやっていたため、その雰囲気を存分に味わえなかったんですけどね。
で、そんな昭和なイベントでなぜか宮内優里とausのライブ。なぜエレクトロニカ?という疑問もわきますが、涼音堂茶舗が温泉やお寺でライブイベントをやっていたりするし、意外と日本的な環境とエレクトロニカは合っているのかもしれません。実際、甚平姿で演奏する宮内優里は、古い日本家屋をバックにしたステージ?にかなりマッチしてました。音楽的にも、音に隙間が多い分、周りの虫や鳥の鳴き声や木々が風に揺られる音などがまじりあい、野外ならではの相乗効果で心地よかったです。また途中から観客の小さな子どもが前に出て音楽に合わせて踊りだしてみんなを盛り上げ(ちょっとドラゴンアッシュで踊っている人風のダンスでこれがまたうまいんですよ)、それに合わせて宮内優里もちょっとアップテンポな曲を演奏したり、いろいろ話しかけたりしてして暖かい雰囲気のライブでした。
ausのほうは子どもたちがちょっとぐずりだしてあまり見れず。かなりアンビエントな音だったので子どもには無理があったか。単に昼寝をしてなかったせいで眠かっただけか。
来年は漣くん、暁くんに甚平でも着せて盆踊りのほうをゆっくり楽しみたいと思ってます。