「店じまい」-石田千-

◆今年、前半の後半によく聴いたCD
手芸屋、文房具店、銭湯、自転車屋、居酒屋といった個人商店から大型デパートまで、閉店したお店の思い出を軸に、現在と過去の風景や心情が交差する石田千らしいエッセイ集。この前に読んだ「きんぴらふねふね」は、「食」をテーマにしていて、石田千のエッセイのテーマとしてはちょっと広いかなと思った記憶がありますが、今回は全体の世界観が際立っていていい塩梅です。一つのエッセイの中で時間の移動がわりとあるので、空間的に動かないものをテーマにしたほうがおもしろくなるのかも?なんて適当なことを思ったりしますね。
あと、全体的な文章の雰囲気も、文章にひらがなが多く使われてるのもあまり変わらないけど、なんとなく読みやすくなったような気がするのはなんでだろう?

今年の前半は、1960年代のイギリスのハーモニーポッブ、ポッブサイケばかり聴いていたけれど、後半は、アメリカのグループを中心に聴こうと思っています。こんなに60年代の音楽ばかり聴いてるのはひさしぷり。聴いているつもりで持ってなかったCDとか、いつのまにかCD化されていたものなど、今年は60年代のポップスにこだわって聴いていくつもりです。

そんなわけでこの間もちょっと紹介しましたが、今年前半によく聴いたCDをいくつか。前半の後半はほんとポップサイケの定番といったCDばかり聴いてました。

■「Tomorrow」-Tomorrow-
-トゥモロウに限らず、ニック・ロウが在籍していたというキッピントン・ロッジや「ティーンエイジオペラ」「ラテン・ア・ゴー・ゴー」といったソロなどマーク・ワーツ関連のCDをけっこう聴いてましたね。マーク・ワーツはCD化されてないイージーリスニング~ラウンジ系のソロアルバムなどもたくさんあるみたいなのでそれらも機会があれば聴きたいところ(高そうだが)。で、このトゥモロウですが、テープの逆回転やインド風味なテイストなどをサイケデリックな要素をうまく取り入れつつも、プリティッシュビート~スウィンギソロンドン的なポッブなサウンドマナーをしっかり守っている感じが気に入ってます。

■「an Apple a day」-Apple-
-キンクスのプロデューサーとして知られるラリー・ペイジによるレーベル、ペイジ・ワンから1969年に発売された唯一のアルバム。オリジナル版はン十万円もするらしいです。グループ名とジャケットからなんとなくビートルズのアップル関連のグループなのではないかと思ったりしてましたが、どうやら違うらしいです。サウンド的にはビートルズの影響は大きいですけど。いや、ビートルズの影響を受けていないイギリスのポッブサイケのバンドなんてないんじゃないかと。メロディやサウンドもポッブで聴きやすいのですが、何回か聴いていると意外とハードなギターが鳴っているのに気がついたりして、それが聴き飽きないアクセントになっています。

■「Tangerine Dream」-Kaleidoscope-
-力レイドスコーブという名前のバンドは、アメリカにも日本にありますが、ジャケットもサウンドもアメリカからは出てこないバンド。サイケとフォーク(イギリスのね)とブログレ的な要素がまじりあって、なんとなくつかみどころがないサウンドになってる気がします。いや、端的にサウンドを説明すると直球のサイケなのですが‥‥。加えていい意味でも悪い意味でも強い個性を持ったメンバーがいないため、ポッブなんだけど地味な感じは否めないです。そういう部分も含めて、すべてがイギリスぼいスタイルで統一されているところがよかったりするんですけどね。あとマイナーなメロディがわりと多いんですが、メロディがマイナーになると一気に日本のGSぽい雰囲気になりますね。

■「The Huge World Of Emily Small」-Picadilly Line-
-男性二人によるデュオによる1967年のアルバム。二声のコーラスで歌われる柔らかなメロディに、繊細なオーケストラが全体を覆う優しいサウンドで、トリップ感や妖しい感じはまったくなく、ポッブサイケというよりソフトロックに近いです。アメリカのバンドのような開放感はなく箱庭的なせいか、初期のドノヴァンとかアル・スチュアートなどの音を思い出したりします。あとニック・ドレイクとか。あそこまで繊細じゃないか。この後、二人はエドワーズ・八ンドと改名し、ジョージ・マーティンのプロデュースのもと、英国的な叙情性を持ち合わせたトラッドなアルバムを発表することを考えると、時代的な影響でこういうサウンドになったという感じなのかもしれません。

■「Tinkerbells Fairydust」-Tinkerbells Fairydust-
-バッ八の「誓いのフーガ」が日本だけでヒットしたというグループ。クラッシックをもとにした曲って日本人好きですよね。これは当時録音はされたもののお蔵入りとなったアルバムにシングルトラックをカップリングしたもの。スパンキー&アワ・ギャングの「Lazy Day」やアソシエイションの「Never My Love」のカバーなどが収録されていたり、ビーチボーイズ風のコーラスが聴ける曲があったりとソフトロック度はかなり高め。でも油断して聴いているとヴァニラ・ファッジのバージョンをベースにした「(You Keep Me)Hangin’On」やヤードバーズのカバーなどハードな曲がはじまったりしてびっくりします。

しかしカレイドスコーブでアルバム二枚。そのほかは一枚とかお蔵入りと、なんか裏道にひっそりと開店して、ちょっとだけ固定客がついたと思ったらすぐに閉店してしまったお店みたいですね。強引にまとめると。