「芹沢銈介の世界」-文藝春秋デラックス-

◆「可否道」の装幀って芹沢銈介によるものだったんですね!
民藝館で芹沢銈介の作品を見た後、この質感や細かさは印刷では魅力が半減してしまうなあと思ったけれど、古本屋でこんな本を見つけたらつい買ってしまいますよ。織物だけでなく、芹沢銈介が手がけた本の装幀や挿絵、陶器、のれんや団扇などの生活雑貨‥‥など、さまざまな分野の作品が収録されています。獅子文六の「箱根山」や「可否道」の装幀も芹沢銈介だったとは!?で、いきおい最近出た別冊太陽の「染色の挑戦 芹沢銈介」も買っちゃおうかと迷いはじめたりして‥‥。

週末は汐留ミュージアムでやっている「濱田庄司スタイル展」を見てきました。濱田庄司は、柳宗悦とともに民藝運動の中心人物として活動した陶芸家。バーナード・リーチとともにイギリスに滞在、ロンドンで個展を開くなどしたのち、益子で民家を移築しそこで暮らしながら、自身にとっての理想の生活と作陶を追求しました。また柳宗悦の没後は日本民藝館の第2代館長にも就任しています。

陶芸については、まったく知識がないので、技法の説明などがされていてもそれがどの部分を指しているのかさえ分からない場合があったりするくらいなのですが、今回の展覧会では陶芸の現場や作品が濱田庄司の生活にどのように活かされていたのかわかるようになっていて、初心者でも楽しめました。益子での生活と言ってもイギリス滞在時に影響を受けたライフスタイルが元になっているので、単なる田舎の生活ではないのです。

ところで、今思い返してみても柳宗悦の本を読もうとしたきっかけって特になくて、ただなんとなくという感じだったとしか思い出せません。でも読み始めてみたら、静岡市にある芹沢銈介美術館の開館30周年記念だったり、それに合わせて太陽の別冊が出たり、濱田庄司の展覧会が開かれていたり、デパートのイベント会場ではあるけれど、9月15日からは銀座の松坂屋で柳宗悦のコレクションを集めた展覧会が開かれるなど、いろいろイベントがあって、なにやらわくわくしてしまいます。なんでかな?と思って調べてみたら今年は柳宗悦の没後50年と、日本民藝館の開館ア5周年でもあるとのこと。

こういうのって自分で意識してなくてもサブリミナルな感じで少しずつどこかでインプットされてるんでしょうね。自分で選んでいるような気持ちになっていてもけっきょくまわりの影響を受けているんだよ、という好例でした。わたしとしては、それがいいとも悪いとも思ってなくて、むしろこの機会を利用して見れるものは積極的に見ておきたいと思ってます。

さて、話変わりますが、汐留まで行ったついでにお台場の日本科学未来館まで足をのばして、レイ八ラカミが音楽を手掛けた「暗やみの色」の特別上映を見てきました。谷川俊太郎が詩を書き、原田郁子がナレーションをしているという作品。2005年から2007年にかけて上映されていたらしいのですがぜんぜん知りませんでした。
光イメージした抽象的な映像を交えつつ星空の映像と、レイ八ラカミの音楽、原田郁子のナレーションの声がぴったり合ってて心地よかった(そしてちょっと寝た‥‥)。当然、その辺の人が好きな人に向けて作られたものではないし、大人向けというわけでもなくて、子どもが見て普通に楽しめるものだけれど(ちょっと難しい?)、こういう風に自然とレイ八ラカミの音楽を聴いたり、谷川俊太郎の詩にふれて、大人になってからそれらに気づくっていう経験はいい。気がつかない人がほとんどだとしてもね。

ちなみに今上映されているのは、原案・詩・ナレーション構成が谷川俊太郎で、麻生久美子が朗読を担当というこれまたうれしい内容。未来館まで来る機会もそうそうないので、一瞬、入場券2枚買って両方見ようと思ったくらいです。