本家の「我が輩は猫である」を読んだのは、小学校6年か、中学1年の頃か?新潮文庫で読んだ記憶があるのだが、当然細かい内容は忘れてしまっている。この本は、設定はもちろん、登場人物のネーミングなど、「我が輩は猫である」のかなり細かいパロディとなっているらしい。となれば、やはり「我が輩は猫である」をもう一度読んでからでないとだめかな、と思っていたのだけど、寝る前にベッドに腰掛けて、なんとなくページをぱらぱらとめくっていたら、繰り広げられる会話がなにやらおもしろそうだったので、読んでしまった。
きちんと元ネタの詳細を把握して読むとまた違ったおもしろさがあるのだろうけれど、正直な話、ストーリー的には、「我が輩は猫である」を意識したものではないと思うし、元ネタがわからなくても普通におもしろい。いや、どちらかというとストーリーは二の次で、登場人物たちが酒を飲みながら話している内容を読んでいるだけでいい。なんてことを書きながら、雰囲気はまったく違うけれど、それって吉田健一の小説と同じではないか、なんて思った。どこか世の中の流れから離れて(浮いて?)過ごしているようなスタンスが、ベクトルは違うけれど、内田百けんにも吉田健一にもある。そうでなければ、45円の月給を初めて取り出した時、見栄を張ったり贅沢をしているわけでもないのに、月に80円以上の生活を送るなんていう芸当はできない。