旅行から戻って、時差ぼけが戻らないまま、終電近くまで仕事したりして、ようやく週末。さすがにぐったりとしてしまって、昨日、今日は、朝、目が覚めたら12時近くなってました。そのせいで体はすっきりしたけれど。
「ザボンの花」はパリに持っていった本。これに加えて前に読んだ庄野潤三の本を3冊持っていきました。3泊5日の旅行で移動もまったくないし、前回のバリのようにホテルでのんびりと、という感じではないし、飛行機の中でもほとんどの時間は寝ているだろうし、映画も見たりするだろうから本を読む時間なんかないとわかっているのに、つい多めに持っていってしまうのは「もしかしたら‥‥」と思ってしまうからなんだけれど、やはり旅行中に読み終えたのは、この「ザボンの花」だけでした。
最初の予定ではパリといえば獅子文六、というわけで新しく獅子文六の文庫本を手に入れて、それに加えて何冊か持っていこうかと思っていたのだけれど、いざ探そうとすると見つからず、断念。いや、パリに行くからといって獅子文六という発想もどうかと思うけれど、私の拙い知識では、フランスといえば、獅子文六以外には堀江敏幸や山田稔、あるいは河盛好蔵、金子光晴、青柳瑞穂、くらいしか思い浮かばなかったりします。あるいは島崎藤村とか林芙美子とか‥‥。でも戦前までは文学といえば、アメリカ文学なんて論外だし、イギリス文学よりもフランス文学という感じだったと思われるので、ちゃんと調べてみれば普段読んでいるほかの作家の中にも仏文科出身だったり、渡仏している作家は多いはず。だからといってわざわざ調べる気もあまりないのですが‥‥。
「ザボンの花」は、1955年に日本経済新聞に連載されたもの。時期的には第一作品集である「愛撫」、そして芥川賞を受賞した「プールサイド小景」に続いて発表された初期の作品なのだが、内容的にはあまり暗い影もなく、ときおり強引な押し売りや強盗に襲われることもあるけれど、基本的にはサザエさん一家のような幸せな家族の記録です。そう考えると、庄野潤三は50年間、“幸せな家族の記録”というテーマで作品を書き続けているわけで、個々の作品のでき云々よりも、その姿勢だけでも評価に値するような気もします。家族の性格はまったく違うけれど、ある意味「ゴッドファーザー」みたいだな、と。盛り上がりがないので映画化してもおもしろくないだろうけれどね。