庄野潤三の作品は初期の頃をのぞくと、そのほとんどは郊外での子どもたちとの静かな生活の、ほんのささいな出来事や、遠くで暮らす兄弟とやりとり、学生時代のことなどをつづったものなのだけれど、読んでいて静かな共鳴を受けるようないい作品に感じられるものと、読み進めるのがちょっと苦痛なくらい退屈さを感じてしまうものがあるのはどうしてだろう。そういう風に感じるのは私だけなのだろうか。そう感じながらも作品によってどこかどう違うのかよくわからなくて、実はその時の自分の気分に合うかどうかによって、印象が変わっているだけなのかもしれないとも思ったりもする。
この「小えびの群れ」は、前作「丘の明り」から続く、日常生活の、ほんのちょっとした会話をきっかけにして、童話や民話の世界に入っていく作品や、戦時中、学生時代に中国に旅行したときの話、夫婦でアメリカへ行ったときの話・・・・など、ほかの作品でも見られるような題材が取り上げられている。でもその日常的な世界がとても心にしみます。ついでに「丘の明り」を読んだときの雑記をみてみたら、「どれも日常的な断片を紡ぎ合わせたような穏やかで静かな作品で、こういう作品を読んでみると機会があれば60年代くらいまでの作品は読んでみようかな、と思ってしまう」と書いてあったので、やはりなにかしらの基準があるのかもしれない。
さて、寒い季節になると近江屋に行きたくなるのは、食べ放題のボルシチが目当てだからで、温かいボルシチを軽い食事にして、ケーキと飲み放題のジュースをデザートにするという感じだろうか。いくら甘いもの好きな私でもこの歳になれば、ケーキとストロベリーやみかん、マンゴスチン・・・・などのジュースを飲み続けてたら、胸焼けがしてしまいます。いつもは本郷の方のお店に行ってスコスや古本屋をのぞいたり、東大の周辺を歩いたりするのだけれど、天気が良かったせいもあり、土曜日にはじめて神田の方の近江屋に行ってみました。神田といってもJRの神田駅からも神保町からもちょっと離れていて、最寄り駅は都営新宿線・小川町、丸の内線・淡路町になります。お店の内装や雰囲気、メニューは本郷とほとんど同じ。本郷では、お休みの日に行くことが多いので、ノートとか広げながら時間をつぶしている東大の学生らしい2、3人の団体がいるくらいで、たいていすいていたけれど、神田の方のお客さんは、背広の男性や何人かできておしゃべりしているおばさんたちから親子連れ、若いカップルまで幅広く、それほど多くない席がいつも埋まっている感じですぐには入れず。地図を見た感じでは繁華街から少し離れていたので、混んでいて入れないことなんて予想もしてませんでした。みんな近江屋が目当てなのか知らん。で、いつものようにボルシチやジュースを何度もお代わりして、モンブランを食べてお腹いっぱい。モンブランはケーキ部分ももちろんおいしかったけれど、栗がとてもおいしかった。
そのまま、先週吉祥寺で見つけたちらしを見て知ったアテネ・フランスのバザーへ足をのばす。アテネ・フランスに行くのははじめてだったのですが、ピンクの色がゲバゲバしく感じられない建物の外装から、中で使用されている棚や椅子、テーブルなどもいい雰囲気でした。こんな学校に通ってみたいとちょっと思ったりもするけれど、特にフランス語やギリシャ語を習いたいと思うことはない。映画の上映会などもときどきやっているようなので、これからはこまめにホームページなどをチェックすることにしたい。バザーそのものはカフェテラス(自習室?)の片隅で、有志の人たちが、ワインや灰皿などの雑貨、クッキーやマフィンを、こじんまりと売っているという感じでしたが、こういう機会があってアテネ・フランスに来た、ということだけで満足かもしれない。灰皿とかも欲しかったけれど、とりあえずマフィンとビクコッティを買って帰ってきて、今日の朝食にしました。