山口瞳に関しては、少なくとも文庫本だけは全部買っておこうと思っているので、持っていない本を見つけたら、そして高い値段がついていなければ、内容も見ずにそのまま買ってしまう。なので、バリから帰ってきて、この本を読み始めて、はじめてその内容がドスト氏(関頑亭画伯)との紀行文ということを知った。これならば先の池内紀とこの本と、もう一冊くらい探してみて、旅の本をバリに持っていっても良かったかな、と思う。ただし、今、ちょっと思うだけで、実際に持っていくことはない、と断言もできる。率直言って、旅行先でのんびりと山口瞳の本を読むという気にはなれない。ましてや、こちらは夫婦で旅行しているのに、この本の内容といえば、奥さんと家にいるのが窮屈になったいい歳の男二人が、蒸発と称して日本各地の旅に出る(逃げる?)のだが、二人の会話のほとんどは、それぞれの奥さんのことばかり・・・・というものだもの。気持ちは分からなくはないが、バリのホテルで読む本ではない。シチュエーション的には、弥次さん喜多さん的な男二人の気楽な旅の顛末となるバズなのだが、そうはならないところが山口瞳の山口瞳たるところ。もし女性の作家が、同じシチュエーション(逆?)のもと、女二人組で旅に出ることになって、その顛末を書いたとしたら、絶対にこういう雰囲気にはならないだろう。