「アイロンと朝の詩人」-堀江敏幸-

エッセイや書評、散文などを、特にテーマなども決めずまとめた回送電車シリースの3冊目。全体としてはうまくカテゴライズできなくて、一見寄せ集めみたいな印象もあるけれど、何気なく集められた文章も、実はきちんと全体のバランスなどを考えて選ばれていると思われるし、収録順もかなり熟考されていて、細部に堀江敏幸に本領が発揮されているシリーズ、と言えるんじゃないでしょうか。
以前、クレストブックスのアンソロジー「記憶に残っていること」が出たときに、青山ブックセンターで行われたトークショーでも、アンソロジーを組むときにはものすごく順番にこだわっていて、本当ならその組み合わせのバリエーションすべてを読んで順番を決めたかったけれど、10作品の並び変えたとき、ぜんぶで何通りになるのか計算するだけでクラクラしてしまった、みたいなことを言っていたような記憶もありますし‥‥。そのときは、それってアルバムの曲順を決めるときの大滝詠一じゃーん、なんて思ったりしましたけどね。

さて、今日からゴールデンウィーク。今年は30日をお休みにしたので、7連休。今年もどこかに行ったりする予定もなく、毎日、近くを散歩したりして過ごす予定。
今日はちょっと買いたいものがあって立川に行って来ました。といっても、グランデュオの中の中華街で中華を食べて、月餅をお土産に買ったり、上から一階ずつ降りていって、洋服を見たり、スイマーで面白キャラグッズを見たりしながら、最後にアメリカンファーマシーに寄って帰るという、ほとんど駅から出てない感じなんですけどね。
それにしても、なんで今、アメリカンファーマシーが立川にあるのか分かりませんが、輸入雑貨やお菓子、化粧品(これはわたしには関係ないけど)など、置いてある品物も、隅にペーパーバックが置いてあったりする店の中の様子も、昔、日比谷にあった頃のままで、銀座に映画を見に行くときに、アメリカンファーマーシーやソニプラに寄ってお菓子を買ったりしていた高校生や大学生の頃を思い出したりして、懐かしい気分になりました。
結局、ほんの3時間くらいしか出かけてないけれど、漣くんが一歳になって大人と同じものを食べられるようになったせいで出かけるのがほんと楽になりましたね~。で、多分、今日がこの7連休のうち一番の遠出になるのではないかと‥‥。

「石蕗の花―網野菊さんと私」-広津桃子-

広津桃子は、松川事件の追求・支援したことや長い文学的生活をつづった回想録「年月のあしおと」で知られる広津和郎の娘。
広津和郎は、長い間奥さんと別居していたらしく、森茉莉や室生朝子と違って父親を見る目はわりと冷静ですね。まぁこの本は父親の話よりも網野菊との交流をつづった随筆が中心なので、「父広津和郎」を読んでみないとわかりませんが‥‥。
でも、この本を読んでいると、広津桃子の歳の離れた網野菊に対する親愛の情がじんわりと伝わってきて、網野菊の本も読んでみようかな、なんて気分になってしまいます。実際に読むかどうかはまだ保留ですけど。

先々週から漣くんの体調が悪くて、夕方熱を出したり、おなかをこわしたり、吐いたり‥‥という毎日が続いていたので、週末もどこに出かけるわけでもなく、家で漣くん遊んでるだけで終わってしまってます。春になったら歩き始めるのかなぁなんて淡い予想もはずれ、本人もつらいらしくハイハイさえもあまりせず、ごろごろ転がっているか、泣いて抱っこをせがむかという、なんだか半年前にもどった雰囲気。でも半年前に比べて確実に体重は増えているので、そうそう抱っこばかりもしてられないわけで‥‥。今週は体調もよくなってきたみたいなので、もう一週様子を見て、ゴールデンウィークにはちょっと出かけたいですね。

「あやめ随筆」-室生朝子-

室生朝子は室生犀星の長女。室生犀星の小説「杏っ子」のモデルと紹介のされることが多いけれど、わたしは「杏っ子」を読んだことがないので、どんな風に描かれているのかわかりません。森茉莉もそうだけれど、これだけ父親に心酔(?)していると、結婚生活を続けるのもなかなか難しいんだろうなぁ、と思う。それが本人にとって幸せなのか不幸せなのかわたしには分かりませんが‥‥。

さて、これまで借りていたサーバーの期限が3月で終わってしまったので、カヌー犬ブックスのファイルを、4月から新しいサーバーに移行しました。今までのサーバーは、縁があってただで使わせていただいていたのですが、都合によりそれも終了。カヌー犬ブックスを始める前、PickwickWebのみの時から利用させてもらっていたので、2001年から約9年、思えばかなり長い間使っていたことになります。
移管に際しては、もう5年近く更新していなかったPickwickWebとミオ犬のLittleChopWebを削除しました。残しておいてもよかったのですが、両方とも放置の状態が続いていたし、PickwickWebのほうは、2001年に作ったときのままだったので、今どきフレームのレイアウトはないよな、と。
ついでになんとなくリンク集に入っているホームページを見てみたら、すでになくなっているものやブログに移行しているものが多くて、なんだか自分でホームページを作るという時代ももうおしまいなのかな、と思いました。

昔は、htmlの知識がなくても書きたいことがいろいろある人が、本などを見ながら作ったページとかが多くて、そういうホームページは、レイアウトとは稚拙なんだけれど、内容はものすごくマニアックできちんとしている、といったものが多くて、おもしろかったような気がします。ブログが主流になったことで、わりと誰でもホームページ(?)を作れるようになったためか、そういうおもしろいサイトが少なくなってしまったと思うのはわたしだけでしょうかね。というのも、最近、ミュージシャンのディスコグラフィとか、作家の作品リストとか、映画監督の作品リストとか、レベールのリリースリストとか‥‥完全なものを調べようとすると意外と難しいんですよ。ウィキペディアは、項目によってかなりむらがあるし‥‥。わたしがチェックしていないだけかもしれませんが、今どき、個人の趣味で、ブログではなく、一からホームページを作ってるって人がどのくらいいるんでしょうかね~。
ブログは、構造的に日記やコラムを書くのにはいいんでしょうけれど、まとまったもの、例えば雑誌やフリペみたいなものを表現するのにはむいてないような気がするんですけど、どうなんでしょう。‥‥とか、PickwickWebを削除しながら、そんなことを思ったりもしていたのですが、そもそもブログの最盛期もとっくに終わっていて、その後にSNSもあったし、今だとツイッターだったりするし、ネットに上がっている個人が発信する情報はだんだんうすくなっていて、10年くらい前は個人が発信する場としての意味がわりと大きかった(と思われる)ネットも、今では主に企業が情報を発信する場となっていて、実は個人が隅に追いやられていたり、企業の作った器の中で遊ばされているだけになっている、という‥‥いやいや、こんなこと書くつもりじゃなかったんですが‥‥。

「父の帽子」-森茉莉-

ちょっと暖かいと思ったら、コートが必要なくらい寒くなったりして、今年はなかなか春らしい時が来ない。去年、漣くんが生まれた時はほんと春らし暖かい日が続いて、根津駅から病院まで歩いていると、花を見たり散歩している人がたくさんいたのになぁ、と思い出したりしてます。それでも4月に入ってからの週末は、わりと暖かかったりしたので、花見に行ったりした人が多いんじゃないかな。
わたしも、多磨霊園の中を散歩したり、府中の桜まつりに行ったりしてきました。まぁ多磨霊園の方は桜を見るだけでなにもないんですけど、桜まつりのほうは子ども向けの遊び道具があったり、ミニSLが走ってたり(両方とも漣くんにはまだ無理ですけど)、ステージの上では、おじさん、おばさんが民謡?にあわせて踊っていたり、模擬店も青年会とか自治会、NPOなどが手作りっぽいものを出していて、かなりファミリー向け、地域密着型の花見でした。
なんか今まで見てきた井の頭公園とかとはまったく違う雰囲気で、しばらくのあいだは花見といえばここかな、と思ったりして‥‥。とはいうものの、今の家の近くは、小金井公園をはじめ武蔵野公園、野川公園、府中の森公園‥‥など、桜が楽しめる公園や場所が多いので、毎年いろいろなところにちょこっとずついってみるのもいいかもね。

「神楽坂・茶粥の記」-矢田津世子-

年末に売れない作家と芸者の駆け引きの話もなぁ~と思ったにもかかわらず、年明けの1冊目は妾の話ってのどうかと‥‥。矢田津世子は、坂口安吾に結びつけられて語られることが多い作家。なんとなく今年は女性の作家の作家の本を読んでみようと思っていて、なんとなくこの本を選んだだけなので、もう少し他の作品も読んでみたいと思っているのですが、他の作品を手に入れるのは難しそうな気がしますね。KindleとかiPadとか本が電子化されたらそういう今手に入らないような本でも読めるようになるのかな?やっぱりそれとこれとでは話は別、って感じなのだろうか。
ちょっと話が変わるけれど、音楽をダウンロードする割合が増えているのに、ダウンロードされる音楽はアナログ盤やCDの時と同じというのはどうなんですか。個人的にはダウンロードという提供方法の変化によって、音楽自体もそれに合わせたおもしろい提供の仕方ってのがあるんじゃないかと思ったりもしてます。私が知らないだけで、いろいろな試行錯誤が行われているのかもしれませんが、今の状態ってダウンロードで手軽になりました、以上、ってだけで、テクノロジーの進化に人間の創造力がついていってないのでは、なんて思ったり‥‥いうと大げさですが。