「落穂拾い・犬の生活」-小山清-

◆今年は1963年のアメリカンポップスをテーマにしたい(のだが‥‥)
タイトルどおり一作目の「落穂拾ひ」と三作目の「犬の生活」をまとめたもの。編集しなおして作品集とするのではなく、そのまま全部を合わせた収録されているところがいい。最近のちくま文庫は充実していて、これが続くようにちゃんと新刊で買わねばと思うけれど、古本ばかり買ってしまって新刊はなかなか買えてないです。そんなわけであんまり売り上げに貢献できてませんが、この勢いでほかの本も文庫化してくれないだろうか。特に「幸福論」「日日の麺麭」はもともと筑摩書房から出ているわけだし‥‥(全集もですね)。ちなみに二作目の「小さな町」はみすず書房の大人の本棚から出てます。

基本的には生い立ちや日常生活、これまでの体験をつづった私小説なんですが、貧困で孤独な生活をつづりながらも、文章はどこか余裕やユーモアさえ感じられ、周辺の人たちの描写もどこかやさしく暖かい。その中でところどころでつぶやくように小さく小説家として独り立ちすることへの決意がつづられているところが心に響きます。
私小説だけに、もともと知っている小山清の実際の境遇や出来事と描かれているエピソードをつい重ね合わせてしまいますが、もちろんそれだけではなくて、登場人物や情景の描写など、はっとするところも多い。もう少しいい境遇で作品をある程度自由に書けたなら、もっと違うタイプの作品も残せたんじゃないかと思うと残念です。もっといろいろな作品を読んでみたかった。

年が明けてからは、なんとなく(いや、ほんとはなんとなくじゃないんだけど)、ビートルズ以前、1950年代後半から1960年代前半のロックンロールやアメリカンポップスばかり聴いてます。といっても、幅広すぎて改めて聴くには何から手を出していいのかわからないので、フィル・スペクター関連のものやエリー・グリニッチ&ジェフ・バリー、ジェリー・ゴフィン&キャロル・キングといったブリルビルディングのソングライターチームの楽曲を集めたもの、エルヴィス、バディ・ホリーといった基本的はロックンローラー、フォーシーズンズやディオン&ベルモンツ、アールズなどのホワイトドゥーワップ、あとはいわゆるガールポップスやティーンポップスなどをばらばらと聴いている感じ。
この辺のアメリカンポップスはジャンルの境があいまいなので、どこから手を入れてどこまでを聴き進めるかの按配が難しいのだけれど、そのジャンルの境があいまいないところがこの時代のポップスのおもしろさなんだと思います。

あと、言い方は変ですが、やっぱり歌が中心にあるってのがいい。ここ数年は、電子音楽とかエレクトロニカをはじめ、ポップスでもどちらかというとインストをよく聴いていて、どうしても歌(メロディ)よりもサウンドばかりに興味がいってしまいがちだったので、こういう歌のメロディとサウンドのバランスがぴったり寄り添った音楽を改めて聴くといまさらながらに楽しい。改めてキャロル・キングの曲のよさとか実感している次第です。

そんなわけで今年のテーマは1963年以前のアメリカンポップス、となるのだろうかな?(すぐに違う方面に興味がいってしまうのはいつものことか)