「夏の葬列」-山川方夫-

◆山川方夫の「二宮」は別な他の世界への入り口という感覚はなんとなくわかるな
山川方夫の本を読むのは初めて。なんで読もうと思ったかと言えば、先日「『洋酒天国』とその時代」を読んでいたら・山口瞳のあとに「洋酒天国」に関わっていた編集者として紹介されていて、それだけでも読んでみたくなるところなんですが、加えて“住んでいた二宮駅の国道でトラックにひかれて亡くなった”なんていう記述があったから。もうこれは読むしかないという感じで本屋さんに行ってみたら、意外と簡単に見つかってちょっと拍子抜けでした。タイトルとなっている「夏の葬列」は中学の教科書に載っているらしいですね。

それに合わせてかこの本自体も中高生が読むことを想定して、「疎開児童」「畦道」「ウクレレ」「納戸」といったかなり平易な言葉まで細かい注釈がついていたりします。でもそもそも疎開していた海岸の小さな町で空襲に会い、主人公をかばおうとした少女を動揺した主人公が突き飛ばしてしまい、少女は銃撃されて死んでしまう。それから何年か経ち成長した少年が思い出の町に戻ってくる‥‥という話は、結末は書きませんがかなり残酷。ほかにも夫婦げんかを題材にした話や幼い子供を亡くした夫婦がそれをきっかけに別居するという話、無個性な団地に住んでいたことに気づいた男の反乱を描いた話など、これは中高生向きなのか?中高年じゃないのか?というテーマの作品が収録されてるんですけど、どうなんでしょ。

わたしとしては海岸の小さな町(二宮)を舞台にした作品がいくつか収録されているのがちょっとうれしい。小学校の時、引っ越してきたばかりの頃(1970年代)の二宮の様子を、ぼんやりと思い出しながら読んでました。木造で銃撃された跡がまだ残ってる駅舎だとか、小学校の木造校舎だとか、舗装されていなくて岩肌がそのまま出ているトンネルだとか、山のてっぺんまトンネルが続いてた防空壕だとか、もちろん海岸の様子だとか‥‥ね。
山川方夫がなくなったのは1965年なので10年以上後の町の様子なんだけれど、たぶんそれほど変わっていないと思う。いや、ある意味、今でもそんなに変わってないのかも?実家に帰っても家のまわりから出ないので、今の二宮の様子なんてぜんぜん分かんないんですけどね。